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2026年07月17日 イイね!

メンテナンスの話し クーラント編②

規格には理由がある

前編では、「クーラントはエンジンオイル以上にメーカー規格を守りたい」という話を書きました。

ブログを書きながら、一つの疑問が湧いてきました。

「なぜメーカーごとに、こんなにもクーラントの考え方が違うのだろう?」

BMWはシリケート系。

ルノーはOAT系。

日本メーカーの多くはリン酸塩系。

同じエンジンを冷却するクーラントなのに、メーカーによって採用している技術は様々です。

その疑問が気になってしまい、続編を書くことにして、メーカー資料やクーラントメーカーの技術資料を読みながら、少し深く調べてみることにしました。


調べてみると、疑問はさらに増えていきました

私は専門家ではありません。

だから、

「BMWはなぜシリケートを採用しているのか。」

「ルノーはなぜOATなのか。」

「日本メーカーはなぜリン酸塩なのか。」

そんな素朴な疑問を、一つずつ調べていきました。

調べる前は、「ドイツ車とフランス車だから考え方が違うのかな。」くらいに思っていました。

ところが、同じドイツメーカーのVWを調べてみると、BMWとはまた違う考え方でした。

「あれ? 国の違いじゃないのか。」

そこから、メーカー資料を読み比べる時間が始まりました。


BMWはBMWの理由

BMWは長年、G48(HOAT)系クーラントを採用してきました。

特徴は、少量のシリケートを配合していることです。

シリケートはアルミ部品の表面に素早く保護膜を形成し、腐食を防ぐ役割があります。

BMWはアルミ化が進んだエンジンを早くから採用し、高速巡航や高負荷運転も想定した設計を行っています。

そのため、冷却系を素早く保護するという考え方が採用されたのではないかと感じました。

そして近年はHT-12へ移行し、新しいエンジンや材料に合わせてクーラントも進化しています。

エンジン設計が変われば、クーラントも変わる。

そんなメーカーの考え方が見えてきました。


VWは時代とともに進化

VWもG11からG12、G13、そして現在のG12 evoへと規格を進化させています。

これは以前の規格が悪かったということではなく、その時代のエンジンや材料、環境性能に合わせて改良を重ねてきた結果なのでしょう。

クーラントも、エンジンの進化とともに変わっていく。

そんなことを感じました。


ルノーはルノーの考え方

ルノーはBMWとは異なり、OAT系クーラントを採用しています。

即効性のあるシリケートではなく、有機酸による長期間の防錆性能を重視した設計です。

どちらが優れているという話ではありません。

ルノーにはルノーの設計思想がある。

それだけのことなのだと思います。


日本メーカーは水質も考慮している

今回、特に驚いたのが水質との関係です。

日本は世界的に見ても軟水が多い国です。

そのため、日本メーカーではリン酸塩系クーラントが広く採用されています。

一方、欧州には硬水地域が多く、リン酸塩は水中のカルシウムなどと反応して沈殿を生じやすいため、シリケート系やOAT系が発展してきた背景があります。

つまり、販売される地域の水質まで考えながらクーラントは設計されていたのです。


希釈する水にも理由がありました

実は今回、BMWのクーラントを交換したとき、私自身も一つ疑問に思ったことがありました。

G11規格のクーラントを希釈するとき、私は国産の精製水を使いました。

でも、ふと考えたのです。

「BMWは硬水地域を前提に開発されているなら、硬水で希釈するのが正しいのでは?」

調べてみると、現在はBMWをはじめ、多くのメーカーやクーラントメーカーが脱イオン水や精製水など、ミネラル分の少ない水で希釈することを推奨しています。

昔からそうだったのではなく、クーラントやエンジンの進化に合わせて考え方も変わってきたようです。

ここでも、「今、メーカーが何を推奨しているのか」を知ることの大切さを感じました。


調べてみて思ったこと

ここまで調べてみて、最初の疑問の答えが少し見えてきました。

BMWにはBMWの理由。

VWにはVWの理由。

ルノーにはルノーの理由。

そして、日本メーカーにも日本メーカーの理由があります。

どれが優れているという話ではありません。

それぞれのメーカーが、自社のエンジンや冷却系、使用環境、水質などを考えた結果が、メーカー規格という形になっているのです。

だから規格があります。

だからメーカー指定があります。

そして、その規格は単なる形式ではなく、メーカーの設計思想そのものなのだと思います。


規格には理由がある

今回クーラントについて調べたことで、規格に対する考え方が少し変わりました。

以前は、「メーカー指定だから守るもの」と思っていました。

でも今は違います。

メーカーがその規格を指定するのには、きちんと理由があります。

その理由を知ることで、「指定だから使う」のではなく、「納得して使う」に変わりました。

これからもクーラントを補充するときは、「色が同じだから」ではなく、「その車が求める規格だから」という理由で選びたいと思います。

私にとっても今回のクーラント調査は、「規格」の見方が変わる、とても良い勉強になりました。

規格には理由がある。

今回、メーカー資料を読みながら、一番強く感じたことです。
Posted at 2026/07/18 00:08:50 | コメント(0) | トラックバック(0)
2026年07月11日 イイね!

メンテナンスの話し クーラント編①

メンテナンスの話し クーラント編①エンジンオイルより、規格を守ったほうが良いもの


今までブログでは、エンジンオイルにフォーカスを当てて書いてきました。

粘度や規格、ベースオイルの違いなど、オイル選びにはさまざまな考え方があります。

私自身も、メーカーが求める性能を理解したうえで、自分の使い方に合わせて選択肢を広げるのは、一つの楽しみだと思っています。

しかし実は、エンジンオイル以上に「メーカー規格を守ること」が大切なものがあります。

それがクーラント(冷却水)です。

「クーラントなんて、色が同じならどれも同じ」
そんなイメージを持っている方も少なくないと思います。

ですが、実際は違います。

クーラントは凍結を防ぐためだけの液体ではありません。

主成分はエチレングリコールやプロピレングリコールですが、実際の性能を決めているのは、そこに配合される防錆剤、腐食抑制剤、pH緩衝剤、消泡剤、ウォーターポンプシール保護剤などの添加剤です。

これらの組み合わせによって、アルミ、鉄、銅、真鍮、はんだ、樹脂部品といった異なる素材を長期間守る設計になっています。

そして、この添加剤の考え方には大きく分けて、IAT(無機酸塩系)、OAT(有機酸系)、HOAT(ハイブリッド系)といった種類があります。

たとえば、IAT系はシリケートやホウ酸塩、リン酸塩などの無機系添加剤で素早く防錆膜を作る一方、OAT系は有機酸を使って長寿命化を図る設計です。HOAT系はその中間で、即効性と長寿命性のバランスを取っています。

つまり、クーラントは「冷えるかどうか」だけではなく、「どの金属を、どの期間、どのように保護するか」まで含めて設計されたケミカルなのです。

そして、その設計思想はメーカーごとに異なり、メーカー指定の規格にも反映されています。

たとえば、トヨタのスーパーLLCはリン酸塩系の防錆剤を採用した代表例ですし、BMW純正クーラントはシリケート系の保護性能を重視した設計として知られています。

さらに、VW/Audi系のG12、G13といった規格は、従来型とは異なるOAT系やSi-OAT系の考え方がベースになっています。

同じ「赤」「青」「ピンク」といった色でも、中身の添加剤パッケージが違えば、求められる性能も互換性も変わります。

つまり、色ではなく「規格」と「中身」が重要なのです。


私も経験しました

実は私のBMWも、前々回の車検で純正とは異なるクーラントを入れていました。

幸い、そのときは全量交換だったため、大きな問題は起きませんでしたが…

反省して、いろいろお勉強しました。

そして、改めて思ったのは、「全量交換」と「継ぎ足し」はまったく別の話だということです。

クーラントは、単に液体を入れ替えれば終わりではありません。

メーカーが想定している防錆剤の組み合わせや、アルミ合金・樹脂・ゴムシールとの相性まで含めて成立しているため、異なる系統を混ぜると本来の性能が崩れることがあります。


一番気を付けたいのは『継ぎ足し』

クーラントが少し減っているのを見つけると、
「ホームセンターで青いクーラントを買って足せば大丈夫。」

そう考えてしまう方もいるかもしれません。

ですが、同じ青色でも中身はメーカーによって異なる場合があります。

たとえば、リン酸塩系のクーラントとシリケート系のクーラントを安易に混ぜると、防錆剤同士が干渉して沈殿やゲル化を起こすことがあります。

OAT系と従来型のIAT系を混ぜた場合も、長寿命を前提にした添加剤バランスが崩れ、期待した耐久性が得られなくなる可能性があります。

もちろん、すぐにトラブルが起きるとは限りません。

だからこそ、軽く考えられがちなのです。

しかし、クーラントは数年という長い期間をかけてエンジンや冷却系統を守る液体です。

防錆性能が落ちれば、ラジエーター内部の腐食、ウォーターポンプのシール劣化、ヒーターコアの詰まりなど、じわじわと不具合につながることがあります。

特に、アルミエンジンやアルミラジエーターが主流の現代車では、冷却系の保護性能は非常に重要です。

日本車ではリン酸塩系のクーラントが相性の良いケースが多く、欧州車ではシリケートやOAT系の設計が採用されることが多いなど、メーカーごとに前提条件が異なります。

長く乗るつもりなら、「たぶん大丈夫」ではなく、「規格が合っているから大丈夫」という安心を選びたいところです。

オイルとクーラントの違い

私はこれまで、エンジンオイルについて書いてきました。

オイルは、メーカー規格を理解したうえで、粘度や銘柄を自分の使い方に合わせて選ぶ楽しさがあります。

一方で、クーラントはそうではありません。

クーラントは、JIS K 2234やASTM D3306のような基本規格を満たしているかどうかに加えて、実際には各メーカーの承認規格に適合しているかが重要になります。

つまり、単に「冷却水として使える」だけでは不十分で、その車両の冷却系に合わせた添加剤設計であることが求められるのです。

遊びや冒険をするよりも、メーカーが指定する規格を守ることが、エンジンを長く安心して使う近道だと私は思っています。

もし補充が必要になったら、「青だから」「赤だから」で選ぶのではなく、一度取扱説明書や整備記録を確認してみてください。

クーラントは目立たない存在ですが、エンジンを陰で支えている、とても大切な液体なのです。

次回へ続く
Posted at 2026/07/11 08:44:55 | コメント(0) | トラックバック(0)

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