2012年12月22日
911びいきになっていようが否であろうが、とりあえず書こう。
今年ついに新型911が発表された。コードネームは法則を破り991となり996以来の大幅な進化を遂げた。まさに「第3世代」というわけである。
現時点では991型はクーペボディとカブリオレそれぞれにRRのカレラとカレラS、4WDのカレラとカレラSというモデル構成である。ターボモデルやNAモデルのチューンド版・GT3は現在開発中とのことである。事実、ニュル近郊で数々の目撃情報がある。
991型のエンジンは水冷フラット6に変わりはないが、カレラのエンジンのみ3.6リッターから3.4リッターに「ダウンサイジング」されている。しかし、カレラのエンジンは5psアップの350ps、カレラSのエンジンは3.8リッターのまま20psアップの400psである。今回はカレラに焦点を合わせていきたい。
昔はカレラ2と呼ばれていた911のベーシックモデル、カレラ。964の時代は空冷3.6リッターSOHCで250psであったから確実にパワーアップしている。実はこの3.4リッター、996カレラ初期型と同じ排気量であるから驚きである。その当時は300psであるからポルシェがいかに確実な成長をしているかを嫌でも見せつけられる。
このブログを書くにあたって、私はあるベスモの特集を思いだした。売れに売れていたという1992年でのポルシェ特集(1992年10月号)である。徳大寺氏が滑らかにポルシェを振り返り、終わりには氏が「ポルシェのようなメーカーが日本にあっても皆さんつまらないでしょう、僕もつまらない(笑)」と締めた号である。
父がこの頃気まぐれなのか否かベスモをほとんど買っておらず、事実後にブックオフ通いを始めるまで92年に撮影されたベスモはこの号とNSX-Rの号(1993年2月号)のみであった。おそらくこの号と同時に購入したのがホットバージョンVol.3であろう。ベスモ黄金期のものをあまり所持していなかった分、この号はかなりの回数観ており実家に帰省した際は今でも必ず目を通す。
この号(ポルシェ特集)ではカレラ2はバトルであまりパッとしなかったが、バトルだけじゃないのがこのベスモ黄金期の特徴である。箱根のワイディングインプレッションを担当されたガンさんは「911の中でカレラ2が1番好き、よくできていると思う。路面を手で直接ずっと触っているいるような感じ。」とコメントしている。
少々思い出にひたり過ぎたが早速991カレラについて触れよう。997後期型から直噴化されたのを受け継いだ3.4リッターフラット6は、吸気バルブ側のみにバリオカム・プラスを持ち可変バルタイと可変リフトの機能を果たす。排気側にもできれば欲しいが997GT3が非直噴で排気側にもバリオカム・プラスが装着されていたのでマイナーチェンジに期待しよう。NAエンジンでの可変バルタイ及び可変リフト機構の有無は燃費と出力・トルクの同時向上に大きく影響する。
エンジン自体はセミドライサンプ方式である。シリンダーがスリースレスなのも実は今のGT-Rと共通である(あくまでこの2点のみであるが)。これは燃費と重量の面での採用のこと。
エンジンに限った話ではないが、実はポルシェはレーシングモデルのパーツをそのまま使用している(市販車用の改良はあるものの)場合がほとんどであり、しかも過去のモデルのパーツがベースになっている場合もある。おそらく今回の991型も996や997、さらには993型がベースになっていると推測している。
今回新911をこのダウンサイジング特集に挙げたのは実はエンジンだけではない。ボディ等にも「ダウンサイジング」の要素が詰まっているからである。
ボディ自体はモータースポーツ部門からの要望でフロントトレッドを拡大し安定性をトレッド拡大分ホイールベースを60mmも長くした。しかも安全対策や燃費向上、装備類の増加で本来なら997比で100kgの増加になっていただろう。しかし、車、特にスポーツ性を重視するスポーツカーにとって重量増加は歓迎されず燃費を考慮すると尚更である。
そんな心配をよそに、911はなんと約60kg軽くしてきた。そのうちボディだけで25kg軽くしてきた。964で204kgだったボディシェルは997で275kgに増加したが991で250kgに軽量化された。それでいてボディの動的捩り剛性は997比で20%高くなっている。
軽くできた要因として、まず大幅なアルミの採用によりリアフェンダー以外ほとんどのボディ外板をアルミにしている。また、Bピラーに降伏点1200MPa(引張強度1500MPa程度)の熱間成形鋼を使用しておりハイテン鋼も大幅に採用している。
その他にもコックピットモジュールの構造体であるステアリングメンバーにマグネシウム合金製を採用しているなど、パナメーラ譲りの軽量化技術を使っている。
このハイブリッドボディ、国産車に果たしてできるのか・・・。
実は997型も十分すごいボディであったがパナメーラの登場の際にあまりの衝撃で新911も期待していたのが本音である。ポルシェが少しずつ、しかし確実に進化をしている過程を見てきたから。
ボディだけでなく足回りも軽量化を施しており、PDK(デュアルクラッチ式2ペダル)や燃費対策を施してもこの軽量ぶりである。
このカレラが1100万円で購入できる。「1100万」と聞くと確かに高いが、未だ円高の状況において果たして日本車が本当に安くコストパフォーマンスに優れているのだろうか。ましてや、今のGT-Rもなかなかの値段であり次期NSXはGT-Rよりも値段が高いと予想されている。ベスモのバトルでもフェード知らずのブレーキは相変わらず。
ポルシェ特集で清水和夫氏が「1000万円は決して高くない(当時911カレラは1000万円であった)。」という言葉を残しているように、もし1100万円の国産スポーツカーが出てもこの言葉は決して間違いではないように思う。中谷明彦氏も自署の本で同じような言葉を残している。
この911に注文をつけるとすれば、エンジン以外だとフロントサスペンションが未だにストラットなのでダブルウィッシュボーンなどに変更して横剛性を更に上げて欲しいものだ。
セグメントもメーカーも違うがプジョー208も軽量化で「ダウンサイジング」をしている。かつて「過給の神様」と自称していた某エンジニアがこう言った。
「ダウンサイジングには過給が必須。水平対向は使えない。」
その言葉を嘲笑うかのように今回の新911は見事に「ダウンサイジング」を達成している。次回をもってこの特集は締めたいが、題名の「俺のダウンサイジング論」について触れたい。
Posted at 2012/12/22 03:17:28 | |
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