「午後は丸々まるっきりテレビ、人生相談の時間です。
今日は、千葉県にお住まいの×才の主婦の方からの相談です。
ご主人の買い物癖について、悩んでらっしゃるということですね」
「奥さん、ご主人、そんなに無駄遣いがひどいの?」
「あのー、酷いというか、まったく理解がですね
できなんです」
「理解できないくらいひどいって、どんなふうにひどいの?
何を買うの?」
「あの、こないだもですね、なんか、小さな植木を買ってきたんです」
「植木くらいいいじゃないの。高いの?」
「高くはないんです。2000円もしないくらいなんですけど。でも
窓の外には緑が沢山あるし、あの、庭にもですね、草はあるし…」
「奥さん、でも庭の草と観葉植物は違うでしょう」
「でも、私には同じなんです。なんでわざわざ買うかなって思うんです。
で、問い詰めたんです、私、カーってきて。そしたらですね
とんでもないこと言うんです」
「どんなこと言うの、ご主人は」
「緑のものが欲しかった、っていうんです。
最初はですね、あの、初音なんとかの、アニメみたいなのの
人形を買うつもりだったって、その、いうんですよ」
「ああ、初音ミクね、緑色だしね。ご主人おたくなの?」
「おたくです」
「でも、買わなかったんだ」
「買わなかったんです。
その代りに、なんて言うんですか?テラリウムとかなんとかいって。
でも、苔なんです、私から見れば単に」
「そのほか、何を買うの、ご主人は」
「眼鏡です」
「眼鏡くらいいいじゃない。たくさん買うの?」
「5年ぶりです」
「じゃあいいでしょう、眼鏡くらい」
「でも、でもですね、主人、カメラが趣味だとか言って
レンズは、ライカが良いとかツァイスがいいとか
長野のフォクトレンダーがどうだとかこうだとか
馬鹿みたいにこだわってですね」
「高いレンズをたくさん買うの?」
「いえ、そこそこのは1本だけ」
「じゃあ、いいじゃない、1本くらい」
「でもですね、『あー、いい写りだ』とかですね
わかったようなこと言うんですけど
でも、そのレンズの前に、眼鏡があるんですよ」
「…?だから、なんなの奥さん」
「どこのメーカーだか判らない眼鏡レンズ越しに
やれライカのレンズがいいとか、ツァイスがいいとか
ニッコールだ、非球面レンズだ
シングルコーティングだ、絞り羽の数がどうだとか
そんなのちゃんちゃら可笑しいって思うんです」
「…どう思いますか、仲尾さん」
「ウチの志乃はそんな細かいことは言わないねぇ。
奥さん、相談したいのは、ご主人の買い物癖なんだよねぇ?」
「そうです」
「他になに買うの?ギャンブルとかは?」
「そんな度胸はないです。
こないだなんて、はさみを買ってきたんです。
うちにあるんですよ、はさみなんて、たくさん。
それなのに、『切る角度が常に30度になるのが凄い』とかいって
だから何だって、おまえは切り絵職人かって思うんです。
それから、『2色成形キーボードが欲しい』とかゆって
キーボードのキーだけが別売りになってるらしくって
こんな子供のブロックの玩具のかけらみたいなやつで
5000円もするのを買おうとしたりするんです。
キーボードなんて打てればいいじゃないですか。
それから、霧吹きも買ったんです。
買った苔にかけるとかいって。
霧吹きなんて、百均で売ってるじゃないですか
それが、なんていうんですか?ひと目惚れしたとか言って
ステンレス製なんですよ。高いのを買うんです。
ひとめぼれって、買い物の理由になるんでしょうか」
「まあ、それはね、判らなくはないけど。
そんなに高いの?」
「3,000円しないくらいです。
でも、108円で事足りるんですよ。
水なんか出ればいいんです。
苔にしてみたら、108円だろうが3000円だろうが
水が掛かればいいんです、用が足りるんです。
苔がですね、3000円の霧吹きだから、日本製だから
頑張って苔がむそうかなんて思いますか。
だいたい、主人はですね、むかしから
あの、つげなんとかって漫画家に感化されていましてね
つげ、つげ…つげ義春ですか?
河原で石を売る漫画なんですけど
中古カメラとか鳥とか、そういう偏屈な趣味がですね
出てきたりするんです。
いずれ石を集めだすわこの人、って
わたし警戒してるんです。
それに、変な二人しか乗れないクルマをですね…」
「ここでいったん、コマーシャルです」
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♪ 無能の人 GONTITI
Posted at 2014/05/24 06:47:57 | |
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