
皆さんこんにちは。
久しぶりに、お仕事の話題です。修理工場様からのご依頼で、
お車はN-BOX、CVTミッション異音からの載せ替え後のECUセッティングです。オドメーターは75000km程です。
今回のご依頼はリビルドのCVTミッションを載せ替えたのでECUの初期化をして欲しいとのご依頼です。
そして、ミッションから異音がしているのでそちらも確認して欲しいとの事でした。
そこで、ん?と思うのですが…。リビルドのミッションに載せ替えたのに異音?との事で少し違和感を感じつつも車両点検からはいります。
CVT-ECUの初期化、G-センサーの学習、クリープの強さ確認など診断テスターにて各項目の点検設定、調整を行いました。
試運転するも異音は感じず、坂道でのクリープの確認、ヒルスタートアシストなど関連する項目はもちろん、オールシステムのチェックをして異常無しを確認、試運転完了…と、なるはずか…。
走行中、いきなり、スピードメーターが0を指してエンジンチェックランプ点灯。さらにオートマ表示の「D」ランプが点滅、そしてパワースライドドアの警告灯も点灯してスライドドアが開閉不能、電動パワステも警告灯が点灯しています。
ここで工場に戻り、一連の問診を思い出します。
①ミッションからの異音でリビルド品へ交換した。
②異音はミッション交換後も出ていた
③弊社で試運転する時は異音を感じなかった
④異音はカサカサカサ…カタカタカタ…と言う感じの音
⑤エンジンの回転と共に比例する異音
⑥停車すると異音は止まる
⑦リフトアップして車輪を空転させてテストしても異音は出ている。
⑧空ぶかしでは異音はしない
と、こんな感じ。
⑥.⑦.⑧の事からタイヤ関係(当該車両はスタッドレスを装着)は
排除しました。
やはり気になるのはミッション交換後も異音が出ていると言う点です。
ベテランの整備士が3人とも発生源はミッション内部からとの判断
でありましたので、誤診は無いだろうと思います。
まずは診断テスターのエラーコードの確認と点検です。
エラーコードは
セカンダリースピードセンサーの出力不良
と出ています。
リアルタイムデータ診断で確認すると、やはり出力は0rpmのまま。

(ぶれている画像ですみません)
このセカンダリースピードセンサーは車速の検出も行っております。
車速信号はABSユニットからも得られています。ABSユニットからの
車速信号とセカンダリースピードセンサーからの出力を交互監視して
どちらかが欠落しても最低限の制御を可能にしています。
パワースライドドアのDTCを確認すると、
この様に出ます。
スライドドアユニットはどちらの車速を信じてよいか判断できないため、
フェイルセーフとしてパワースライドドアの動作を禁止します。
ここでミッションを載せ替えたメカニックの方に確認をとります。
リビルドミッションの供給状態は、各種センサーやポンプ類が
付属していたか、車両から下ろしたミッションからの付け替えか
の確認→後者、付属品を付け替えをしているとの、ご回答です。
付け替えた際にセンサー類のチェック等はあまり詳しく見ていないが
明らかな異常は無かったとのお話でした。
正常に走行していたにも関わらずいきなりセンサーが故障するのは
あり得なく無いですが、あまりにもタイミングが良すぎます。
カプラー外れ等もあるかと思い点検するも接続は良好。
やはりセンサー不良との判断をしつつ、異音の点検に移ります。
すると、異音はほとんど、と言うか全く聞こえなくなりました。
走行条件を変えたりしても異音は発生しません。
とてもイヤーな感じで、色々と音の出所の推測です。
ロックアップクラッチやトルクコンバータ周りの異音
CVTベルトからの異音
もしかしてブロワモーター等全く違う音源…
そこで、
走行時のみの異音、停車すると消える
エンジン回転では無く速度に、比例する異音
速度が上がると音が大きくなる
セカンダリースピードセンサーの故障
これらを総合すると、音源はCVTベルト以降でデフまでと絞れます。
まさかとは思うが、スピードセンサーが回転するローターに接触?まさか
そんな事無いよなぁ…
と思いながらもあながち外れでは無いような予感。
そこで下ろしたミッションのセンサー取り付け部分からミッション内部を覗く
と…。
なんと、セカンダリースピードセンサーの取り付け部分から
覗き込んで見えるローターに微かな擦過痕があります。
本当に微かですが、あります。
どうやらこのローターはセカンダリープーリーに取り付けられている薄い
鉄板のプレスでできており、歯車状の鉄板の先端を90°折り曲げているような
作りになっています。非常に薄いなあとの印象です。
抵抗のあるCVTフルードの中で常に攪拌されているプーリーに
取り付けられているにしては薄い鉄板のプレスでできたこのローター。
遠心力も働きますし、熱膨張による変形などもあります。
それなのにこんな薄い鉄板で出来ていることに驚きます。
さて、色々とわかってきた事ですので、現車に取り付けてある
セカンダリースピードセンサーを外してみます。
すると…
というか
やはり…
と言うか…
あれれれれ〜?センサーの先端部分が破壊されてるよぉ〜?
変だなぁ〜(。-_-。)どうしてこんなことになるんだろう〜
(コナン君風に(。-_-。)
ビンゴです。
センサーの先端部分が破壊されています。
ズバリ、セカンダリースピードセンサーのローターとセンサーが
接触していた事による異音と故障と判明しました。
そこで、ふと思います。下ろしたミッションは仕方ないですが、
リビルドミッションはコレではマズイ気がします。
リビルドミッションも対策などはされていないと言う事です。
ホンダさん、これ、相当ヤバくないですか?
明らかにセンサーとローターのクリアランスが不適切です。
警告灯が点灯しても、エンジン停止にはならないものの、スピード
メーター不動、変速はエンジン回転に応じて少し変化がある程度、
パワースライドドアに関してはメインスイッチを押しても開閉が出来ず
更には手動でもドアが動かないと言う状況は女性やご年配の方々
には相当な恐怖を感じるでしょうし、お子様をチャイルドシートに
乗せていた場合、お子様を降車させる事も困難になる事は明白です。
事実、スライドドアが20センチほど開いたまま、閉める事が
出来なくなったので、私も焦りました。
そして、取り寄せたセカンダリースピードセンサーですが、対策も
品番変更もされていません。
このまま取り付けすると間違いなく壊れたセンサーの様に首チョンパ
になってまた同じ症状になります。
このタイプのCVTを搭載するホンダの軽自動車のオーナーの皆様、
修理をされる業者の方々、エンジンルームから、ミッションからの
異音の診断、修理には特に注意が必要かと思います。
CVTミッションを分解してセンサーローターの形状を確認したい
所ではありますが、リビルド品供給の為コア返却が必要なので、分解して
確認することができなかったのが残念です。