
みなさまご無沙汰です。
さて、毎日のようにいろんな症状の車が入りますが、今回は修理工場さんが
捨てたくなるよ・・・とぼやくお車です。
お車は・・・
スズキ エブリイ
NAエンジン K6AのAT車15万6千キロ走行のお車です。
お客様からの問診内容は
1気筒死んでる感じの振動が出る。
エンジンチェックランプが点滅するときとしない時がある。
診断テスターをつないで確認した所、DTCは何も出ない。
とりあえず該当しそうな以下の部品を中古部品を使用して交換したが直らない。
今一度。中古部品を使用して修理を試みている、ということがのちに事件を生むことに・。
イグニッションコイル 3本
スパークプラグ3本(プラグはNGK標準プラグ新品を使用)
クランク角センサー
カム角センサー
02センサー上流側(社外新品を使用)
o2センサー下流側(社外新品を使用)
水温センサー
バキュームセンサー
インジェクター3本
デリバリーパイプ
スロットルボディ
エンジンECU
と、まあ、考えられるものを片っ端から交換したそうです。
そこで、まず気になるのがエンジン本体。圧縮点検をコンプレッションゲージを
使い、点検すると・・・3気筒共に12.3近辺である、との事。
スズキのディーラーに点検を出したところ、圧縮も良好、多少振動はあるものの
15万キロ走行してますので・・・と、故障探求するつもりもなさそうな感じだったとも伺いました。
さすがにここまで交換しても直らなければね。。。きもちはわかります。
さて、私のところでも今一度圧縮から点検です。コンプレッションゲージを
使って点検。①12.412.3③12.4という結果に・・・。
診断テスターを使用してもエラーコードなし。
しかし、アイドル中には間違いなく1気筒死んでいるような振動が・・・。
そこで、車内にあった色々と交換された中古部品を見ると。。。
エンジンECUやらスロットルボディ、インジェクターやセンサー類、
ISCVまであります。とりあえずエンジンECUを付け替えるも症状は
変わらず振動が出る。
あ、そうそう、診断テスターを使ってリアルタイム診断をしてみます。
すると、アイドル中はリッチ・・・。3500回転くらいまで上げると振動は
さほど感じず、リッチとリーンを往復しているので問題はなさそう。
と、なるとアイドル回転近辺での点火不良を疑います。
圧縮測定の時にプラグを点検するも新品でカブっている感じはない。
燃料薄い?いや、リッチ判定の為燃料は薄くない。アイドル中に2番の点火を
止めると振動はさらにひどくなる。
この事から2番シリンダーに何らかの不具合がある事は間違いなさそうと判断、
そこで、各シリンダーの点火コイル駆動信号を点検します。
こんな時の為に4チェンネルのオシロがあります。
同時に4か所の測定ができる働き者です。
ん?ん?んんん??
黄色のラインが1番シリンダコイル駆動信号、青が2番、緑が三番です。
3気筒は点火順序1-3-2ですので黄、緑、青の順番でしっかり点火信号が
出ています。。。が???
オシロのスケールは1グリッド5vレンジです。なので、1.3気筒はしっかり
5Vの駆動信号が出ていますが、2番シリンダの点火信号だけが振り切れてます。
思ったよりドエルタイムが短いなあ。。。と思いつつも・・・。
この波形で察しがつく方もいらっしゃると思いますが・・・。
イグニッションコイルからの逆起電力が駆動信号側にリークしているようです。
こうなってしまう原因は。。考えられるのはパワトラ内臓と非内蔵のコイルを
間違えて使用したことによるエンジンECU破損の疑いが濃厚です。
そこでご依頼元に確認をしてみました。
イグニッションコイルの中古品は互換性の確認を取ってますか?
と適合の確認すると、イグニッションコイルは手持ちであったスズキ?や
ダイハツ?の物を5-6本寄せ集めてテストしました、との事でした。
カプラーは無理なく嵌りましたか?と聞くと、嵌ったんだよね。。。と。
ううーん。すんなり嵌ったのか、押し込んで嵌ったのかは聞きませんでした。
この辺まで来るととても危険な点検・診断をしているなぁ、と思います。
そしてイグニッションコイルやエンジンECUを入れ替えているうちに
正常品と不具合品が混在してしまったことも原因探求を困難にする要因で
あったと思われます。
そもそも正体不明のイグニッションコイルを付けてみて点検することが危険
だという認識はなかったようです。
残念ながら正体不明のイグニッションコイルは処分してしまったとの事で画像は
ありませんし、どのようなコイルだったのかもわからずじまいでした。
そして念のためエンジンECUの品番と車両年式を確認すると、車両年式から
適合する品番のどちらも当てはまらないことも分かりました。
エンジンECUもカプラーが嵌るから大丈夫、品番の一部の1桁が違うだけ
だから、対策品や互換部品と判断して大丈夫、と思われる方がいらっしゃいます
が、コレ、とても危険です。
もちろんすべてがダメではありませんが、基本的に中古部品での故障診断は
かなりのリスクが伴いますので、十分お気をつけてお試しください。
今回のようにエンジンECUを壊してしまったり、車両ハーネスが燃えたり
することもありますので・・・。
どうやら、どこかで中古エンジンに載せ替えている可能性もありそうですね・・・
等と話をして点検完了となりました。
長文お付き合いいただきありがとうございました。