
久しぶりの投稿で。。。
いやあ、久しぶりの達成感。
のべ30時間以上はかかったんじゃないかな。
ま、そのうちの半分は試運転だったけど今回は非常に困難なお仕事でした。
症状は、走行中にいきなり以下の症状に見舞われたとのことです。
⓪新車から5年半経過車、走行25000㌔で修復歴無し。e-POWER車。
①パワステ効かない(電動パワステ車)
②ナビ・オーディオ全く動作せず画面も点かない
③エアコン風は出るが冷えない
④プロパイロット作動しない・エラー表示が出る
⑤デジタルインナーミラーが映らない
という症状です。今現在症状発生中とのこと。
まずは診断機にてエラーコードの確認。
すると、電動パワステユニット(EPS)にアクセスできない、と言うか
EPSを認識しない。という感じ。
まずはヒューズ回りの点検。するとIG系統のヒューズが見事に切れていた。
ヒューズを交換すると、何事もなかったように電動パワステは作動、その他
動作しなかった②~⑤もすべて良好に。。。
そこで、依頼元(中古車販売店)に報告の上、今までの状況を確認してもらうと、
納車してから2週間ほどで上記症状が発生。納車前にドラレコを装着(別業者)を
してもらったので、ドラレコを装着したことによる異常を疑い、その業者に確認を
してもらうとヒューズが飛んでいたので交換したら直った、という事だった。
その際にはヒューズが飛んだ原因の追究はせずに納車をしたという。
その後、もう一度同様の症状があり、ヒューズが飛んだので交換したという事。
これは、明らかにヒューズが飛ぶ原因があると判断して、飛んでしまうヒューズ
から下流側の回路をチェックすることになるのだが・・・・
依頼元にはかなり時間がかかることも予想されます。2~3日で直るようなものではないかと思います。ヒューズが飛ぶという症状がずっと出ているわけではないので、絞り込みは相当に困難を極めます。急ぐなら関連する部品と車両ハーネスのすべてを交換するようになるかと思います、それでも良いですか?と
念には念を押したところ、ディーラーに投げるかもしれないので、ちょっと待ってくれ、という返事。翌日に、ディーラーでも同じことを言われ、症状が出てないなら預かることはできないとピシャリと言われたそうで。。。やっぱり引き続き見てもらえないか…と。
そりゃあ、こんな内容だと付きっ切りで見ることは難しいし、頻繁に症状が出るまで乗ってくれって言われるのは当然だよな。
だって、修理マニュアルにこんなの修理方法なんてのって無いんだから。
そのヒューズが飛ぶのは2~3週間に1回というなんとも言えないモヤモヤとそちらで見てわかるんですか?直せるんですか?と言われた上に、直らないならディーラーに出すからと言われてちょっとカチンと来ていましたが・・・・・
とりあえず、ヒューズが飛ぶという状況を確認するために、ヒューズボックスから自作したリードを助手席足元に引き回してそこにブレーカーを接続します。
試運転することを了承していただき、目的の無い走行をしながらブレーカーの作動を待つことに。。。1日目2日目・・・・5日目。全く症状が出ない。
依頼元からは、まだわからないですか?時間かかりますか?あとどのくらいで直りますか??と矢のような最速。すぐに直らなそうならお客に話して車交換することになるかもしれないんですよ、と。
お客様のクルマなので、買い物したり用事に使うわけにもいきませんし、症状が出たときはエアコンとパワステを失う事になります。
試運転と同時にお世話になっている日産に配線図を依頼してみたのですが、このヒューズが受け持つ回路は相当多く、もう少し絞れないか?という回答です。
試運転6日目。ついにその時は訪れます。突然「プチっ」と音がして、一気にエアコンが温風に。。。35度を超える外気温に車内温度も急上昇。異音確認のためにオーディオは当然OFFでナビ画面だけ出していたのですが、ナビ画面は消えました。
しかし、パワステは生きています。プロパイロットはエラー表示、デジタルインナーミラーも作動を止めました。パワステ以外は症状通りです。安全な場所に停車して診断テスターを接続、すると最初に診断した時と全く同じエラーが出ています。
パワステ(EPS)を認識していないのも同じだが、パワステは動作している。
もしかして・・・と思い、エンジンを再始動すると・・・おお。パワステが効かない・・・。まじか。工場に戻るまで30㌔位ある・・・
灼熱の中、エアコンとパワステなしで戻ることに。
あ!とりあえずブレーカーを戻してみるか、と思って復帰ボタンを押してみる。
恐る恐るエンジン始動・・・あ、直った。直ってしまった。。。
そこで、先ほどブレーカーが飛んだ方向に向かいながら同様に走ってみる。
その途中でまたパチッと音がしてブレーカーが作動。なるほど。どうやら右にステアリングを切っているとブレーカーが飛ぶ。もう一度復帰させて停車してすえ切りするが全く飛ばない。ゆっくりと走行しながら右カーブを速度を変えながら走ってみる。すると、40㌔以上くらいで飛ぶ確率が高いことが分かった。
パワステに何らかの故障があるのか、はたまた遠心力によってどこかショートが発生するのか絞れてきた。ブレーカー復帰して走行していると、わずかな段差(舗装のつなぎ目)でプチっと音がしてブレーカーが飛ぶ。この時は直進状態だった。
どうやらステアリングには関係なく、段差などによる振動が原因という感触が強くなってきた。工場に戻りながらいろいろとテスト走行をしながら戻ります。
事務所に戻ると依頼元から電話があったという事で折り返すと、
当該車両はリコールが出ていて、エンジンハーネスと車両ボルトが擦れ走行不能
になるという事が出ている。それが原因かと思うのでそこを調べてもらいたい。
という事だった。
早速お世話になっているディーラーに電話をして確認してもらうと、
その車両はこのリコール対策済みです。なので原因としては違うと思いますし、パワステ系統のヒューズが切れる症状とは因果関係がなさそうですのでお伝えしませんでした。
と、いう事です。私が配線図をお願いしている間にすでにそこまで調べて頂いて
いたディーラーのSさん、流石です。先手を打ってくれていました、感謝!。
フロントバンパーを脱着してリコール対策部を確認、対策済みを依頼元に報告しました。
さて。そういった状況から、担当するヒューズの負荷側の資料を頂くと。。。
まずは大まかな系統図を頂き確認すると16系統に分かれている・・・。まじか。
前後ブロアやPTC、DLCコネクタからADAS、フロント・リアA/C、メーター、オプションコネクタ系統、そしてEPSにインナーミラーやアラウンドビューカメラ系統と。当該ヒューズブロックから3系統に分かれて負荷に向かいことが確認できたので、3系統を1つずつカプラーからターミナルを抜いて点検していく。
すると、その中の1系統にヒューズが飛ぶことを確認しました。
残念ながら一番接続される負荷が多い系統で、DLC、ADAS、イオン発生機、インナーミラー、シートヒーター、リアA/C、EPS、オプションコネクタ3系統の10個に絞られました。半分にもならなかったなぁ。。。orz。
こうなるとその負荷・機器までのハーネスかユニットに絞られますので、まずはその負荷・機器のカプラーを外してチェックをしていきます。
ADASユニットは左リアクォーター、EPSは運転席。結構幅広いよな。
経験上、ヒューズの飛び方を見ると、何となくですがショートしている部位までの距離が分かります。私の見立てではヒューズから1メートル以下、割と近いところでのショートであると確信。助手席Aピラー付け根付近のヒューズブロックから近いところから攻めることにしました。
デジタルインナーミラーまでのハーネスとミラー本体のチェック。
次に助手席シートヒーターの配線。次にエアコンECUと操作パネル。
エアコンECUはナビユニット下に装着されているので純正のナビ本体を外す。
すると、ここでブレーカーが飛ばなくなった。「キタ!!」となるのですが原因がナビユニットなのかエアコンECUなのかは分かりません。
そこで今までバラした部分をすべて戻してナビ・エアコンユニットを外しただけの状態にして試運転。ブレーカーは飛ばない。
そこでエアコンECU、操作パネルを戻して試運転。ブレーカー飛ばず。
いよいよナビか??と思い、ナビを戻していく。なんと、ナビユニットを戻してもブレーカーは飛ばなくなってしまった。。。マズイ・・・実にマズイ。
ここで振出しに戻ってしまった!!!と落胆しつつもこの近辺に何らかの原因があるのは間違いなさそう。と、いう事で周囲をよーくチェックしていくと。。。。
あった。
あったよ・・・。これだわ。
インパネ内部にある鉄製のホネ、インパネメンバーとハーネスが振動による被覆損傷でショートした形跡がありました。
予想通りヒューズブロックから1メートル以内の場所でした。
このショートした痕跡のある部分を短絡させるとブレーカーが飛ぶという事を確認、この配線が接続されるカプラーやターミナル部分に焼損や熱による変形がないことを確認、ほかの配線材、ハーネスにも異常がないことを確認しました。
修理はいたって簡単。絶縁処理をしてハーネス保護テープで仕上げ、インパネメンバーのエッジ面には緩衝用のウレタンの保護材を張り付けて終了。
バラバラに分解したところをすべて復元し、完了検査の試運転。
原因が分かれば修理はほんの10分ほど。故障探求は数十時間にも及ぶ今回の修理でした。試運転は症状発生した時の状況を何度も再現しながら1時間以上運転、当然ですがヒューズは飛ばずに完了という判断をして納車する運びとなりました。
終わってみれば、ドラレコの取り付けとは全く関係がなく、車両のハーネス側に問題があったという結論です。
ハーネス保護不足、金属部品のエッジ処理、ハーネスのクランプ処理不良が原因という事で終了しました。
終わりの見えない作業で、モチベが上がらなかったでしょ?とよく言われますが、
私はこういったときには逆に「燃え上っちゃう」タイプなので。。。
とりあえず、完了したのでメデタシメデタシでした。