先月、栃木県の鹿沼で開催されたマロニエ・オート・ストーリーに福太郎さんのCXのコドラとして参加したことは報告済みですが、東京からの往復200kmの内、約150kmを福太郎さんが私にCXのステアリングを預けて下さるという幸運に恵まれました。
福太郎さんの愛車はシリーズ1のプレステージュ。普通のCXよりホイールベースが長いVIPを後席に乗せることを主眼とした仕様です。
(写真はイヴェント本番で福太郎さん運転のCXプレステージュ。撮影はプロカメラマンのシバッチさん。私は助手席に乗っていましたが、ロードホールディングが良いせいか、こんなに大きくロールしているとは感じ取れません。これから推察するに、通常我々がロールを感じ取っているのは、車体そのものの傾き以上に、ロードホールディングの乱れ、というか外輪に偏った加重によるのではないでしょうか?)
帰路は高速道路の事故渋滞に遭遇し、それを回避するために高速道路のみならず郊外の一般道を走ることも出来ました。
長い距離を運転し、ますますCXの魅力に嵌りそうです。
- 徹頭徹尾フラットな乗り味。巡航中の乗り心地にとどまらず、加速時、ブレーキング時のフラット感も感動的なレベル。
- ロングホイールベースからは想像も出来ないシャープなハンドリング。ハンドリングがシャープと言われるBMW3シリーズあたりより私のC5のほうが数段シャープであるが、CXはそのC5より更にシャープ。
- 外から見ると大きくロールしているのに、乗っていると全くそれを意識せず高い速度を維持できるコーナリング性能。ロールを意識させられないのは、車体が傾いても四つのタイヤのロードホールディングが素晴らしいがゆえに不安感が無いのだと思われる。
- 現代の基準ではスポーツカーかと思うような低い着座位置と広いグラスエリアによる開放感。
- メーターフード脇に設置されたウィンカースイッチ(オートキャンセル無し)のような独特でありながら慣れると実に使いやすい操作系のインターフェース。
これらの特徴の中でも、やはり特に印象的なのは、走行時のボディーのフラット感でした。
日本の自動車雑誌でしばしば“ハイドロらしいソフトな乗り心地”と書かれますが、私はこれは"大嘘“だと思っています。シトロエン初心者の私は、急に興味が高まったこの3年間に現行C5、初代C5、C6、XM、CX、CXプレステージュ、エグザンティア、BXというハイドロ車に乗る機会を得ましたが、その中で乗り心地がソフトと感じたのはC6のみ。その他のハイドロ車はソフトというよりフラット感が優先されたサスペンションチューニングだと感じていました。C6の乗り心地は確かにソフトで素晴らしいのですが、それはハイドロらしいソフトな乗り心地、なのではなく、ハイドロらしからぬソフトな乗り心地、と言うべきものではないかと。
そしてCXプレステージュを長距離運転し、その思いを強くしました。
一番印象に残ったのは往路の東北道で時速100kmくらいで路面の大きなうねりを突破したときです。普通の乗用車なら大きなうねりに前輪が差し掛かった時に車両前半部が持ち上がり、リアが沈んだような姿勢になります。前輪が突起をどこまで吸収できるかにより前半部の持ち上がりは減衰されますが、相対的にリアが沈んだ姿勢になるのは共通。普通のドライバーはそういう動きを自然と感じます。そしてうねりを吸収する動きが柔らかければ、ソフトで良い乗り心地、と感じます。
しかし、CXプレステージュは全く予想外の動きをしました。前輪がうねりを吸収してサスペンションが縮みつつ車体前半がやや持ち上がったとほぼ同時に、リアサスペンションが突っ張るように伸び上がり、車体はほとんど前後に傾かずにフラットなまま全体がやや持ち上がるようにしてうねりを突破したのです。フラットに感じたということは、リアが突起を吸収するために縮んだときはフロントが突っ張るように伸びてフラットな姿勢を維持したはずです。
大型クルーザーで水面を行くとき、小さな波にあたると船体と水面の硬さを感じながらも波を砕いて船体はフラットに進んでいく感じ、に似ている。
ハイドロはフラットな姿勢を維持するために時に縮みますが、時には突っ張るように伸びるような動きをする。この突っ張り感は、船体が波に当たるときの硬さに似た感触であり、決して"ソフト“なフィーリングではありません。
この突っ張り感はシャシーからもたらされるもので、ご存知のようにCXのシートはマシュマロのようなソフトさなので、シートがシャシーの硬さを見事に吸収してしまう。
これがCXの真髄なのだと感じました。
そして今回の長距離ドライブでもうひとつのなぞが解けました。オーナードライバーである福太郎さんが、何故後席居住性重視でロングホイールベースのプレステージュを選んだのか、というなぞです。
私は昨秋、やんぢさんのノーマルホイールベースのCXを運転させていただき、おおむね上記の印象に近いものを感じ取りましたが、車体のフラット感は、ロングホイールベースのプレステージュのほうが明確に強く感じ取れるのです。ですから後席に乗ろうと乗るまいと、ハイドロの真髄=フラット感をより強く感じながら楽しみたいとなると、ロングホイールベースのプレステージュ選びたくなりそうです。あるいはCXファミリアールやブレークもロングホイールベースなので、それらも同じ性格かもしれません。
(ハイドロではありませんが、先日試乗した新型ピカソと新型グランドピカソも、ロングホイールベースのほうが圧倒的にフラットで、その差は想像以上に大きかったです。たとえ一人で運転するとしてもグランドピカソのほうが快適です)
ということで、ハイドロの真髄はフラット感にあり、決してソフトな乗り味ではない、ということを深く深く再認識することになりました。
そしてCX欲しい病がジワジワと私の心を蝕み始めております。
福太郎さん、貴重な愛車のステアリングを預けてくださり、ありがとうございました!
Posted at 2015/05/20 17:43:17 | |
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