昨日は栃木県鹿沼市で行われたヴィンテージ・カー・イヴェント「マロニエ・オート・ストーリー」に参加しました。昨年同様、ボルボ・ジャパンの木村社長の愛車、1971年製P1800のコ・ドライヴァーとして、全行程の半分、去年は後半だったので今年は前半を私が運転させていただきました。
全部で約80台の名車の数々の中で今年特に私の心を捉えたのは「ルノー16」。1965〜1980年の間に185万1502台が生産された、当時のフランスの高級実用車です。15年間にわたり毎月平均1万台が生産されたという台数は、現代の基準に照らしても大変なヒット作。私が1986年に初めてパリに行った時には、まだ路上にたくさんのルノー16が走っていました。しかし時が経つと、古いフランス車好きが大切に乗るフランス車は、一にシトロエン、二にプジョーという感じで、ルノー16は、特に日本では、滅多にお目にかかれなくなりました。
しかし昨日、素晴らしく美しいルノー16がマロニエ・オート・ストーリーの会場に忽然と現れたのです。
私がそのルノー16を舐め回すように眺めていると、オーナーが「どうぞ運転席に座ってみてください」言ってくださいました。
座った瞬間に感動する素晴らしい座り心地!! 伝説には聞いていましたが、実際に体験すると本当に感動します。見た目は平板なシートが、座るとふわっと柔らかく沈み込んでお尻、腰、背中にぴったりフィットし柔らかく支えてくれます。
「試みにルノー16の運転席に、あなた腰掛けてごらんなさい。躰がスポリと座席に吸い取られる具合というのが、これはすごい。普通、私たちが座り心地がいいという場合、これは不愉快な要素がほとんどない、というほどの、いわば消極的な意味ですね。ところがルノー16のシートというのはそうじゃない。かけ心地のいいということが、もっともっと積極的な快感を形成している。すなわちこのシートに身を沈めるのが既に独立して気持ちのいいことなんだな。」(新潮文庫「女たちよ!」伊丹十三著より)
私は調子に乗ってオーナーに頼み込み、私を助手席に乗って走って貰いました。走り出した瞬間、シートに座った時に勝るとも劣らない感動に襲われました。会場はバーベキュー場で路面は砂利道。それなのに乗員の身体にガタガタした振動は一切感じ取れないのです。全体にゆったり揺れるだけ。窓を開けて走ったのでタイヤが砂利を踏みつける音と視覚で砂利道と分かりますが、目を瞑って乗っていたらそこが砂利道とは分からないくらいです。舗装路に出てからの乗り心地は更に素晴らしく、フワーッと滑るように走り、シートの素晴らしさと相まって夢心地です。
一番似ているのはやはりシトロエンの乗り心地ですが、シトロエンはもっと頑固なフラット感なのに対し、ルノーはフラット感よりも自然な柔らかさのゆったり感に思えます。
1965年と言えば、日本車では初代カローラより前、310ブルーバードの時代です。それらに比べると、ルノー16が如何に優れて快適な乗用車であったか、当時の日本との差の大きさを思いました。
オーナーさん、素晴らしいルノー16体験、ありがとうございました!
Posted at 2017/04/30 07:31:53 | |
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