
年末年始は一週間しっかり休みを貰えて、東京で気ままに過ごすことができました。
今年は曜日の関係からか、私と同じように長めの休みを取れた人が多かったのか、東京の道路は12月27日土曜日頃から1月3日まで、ガラガラという印象でした。
ガラガラの東京は、実は結構楽しいドライブ・コースになります。屈曲路や坂道が入り組んでいて、渋滞がなく、無闇に信号に引っかからない状況になると、運転して楽しい道路が多いのです。
と言うことで、年末年始は、昼食や夕食には色々な人と会う傍ら、午後や深夜には都内でC5のドライヴを堪能しました。
何度も書いたことですが、C5は全く異なる二つの性格を併せ持っています。豊かな低速トルクを生かしてエンジン回転を2千くらいに抑えて粘らせながらゆったり流すような走り方では、実にたおやかな乗り心地で、経験上この乗り心地は現行メルセデスSクラスより上等、ベントレー・コンチネンタル級の心地好さです。
一方、意識的にエンジンを回して走ると、BMW設計の1.6リッターエンジンはその素性から想像する通り、小気味良いレスポンスで回転を上げます。まさしく音もBMW4気筒のそれ。直前まで愛車だった320と同じ音がします。そして同じシャシーのC6より250kg軽く、約20cm短いボディーをまるでライトウェイトスポーツのように走らせます。その時のサスペンションはまるでかつてのウィリアムスF1のアクティヴサスのオンボード画像を思い出す滑らかさ。コーナーリングの切り返しも実にこの図体のセダンとは俄かに信じられないレスポンスの良さが快感です。
そして一番の美点は、上記どちらの走らせ方をしても、ステアリングやスロットルやブレーキの操作に込めた自分の意思に実に性格かつ微細にクルマが反応してくれることです。これが1.6ターボのC5の最大の気持ち好さ。同じC5でも重い3リッターV6や2.7HDiでは、このレスポンスが実は微妙に変わってくることも経験上知っています。私の感覚に一番心地好いのは、絶対的な動力性能ではやや劣ったとしても、車重の軽い1.6なのです。
そんなC5と、空いた東京の街を堪能して、先ほどシンガポールに帰国。所用のために約2週間ぶりにカムリを運転しました。
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あらためて、本当にがっかりです。ステアリング操作から実際にボディが曲がり出すまでの鈍い時間差。まっすぐ走る時も、曲がる時も、どうにも正確な手応えがつかめず、曖昧かつ大まかなラインを走らされるような隔靴掻痒感。微妙な加速感の調節を拒むようにオン・オフ的な反応を示すドライブ・トレーン。不自然に重さを演出する電動パワステの手応え。
カムリは、視界に優れ、車両感覚が掴み易く、その意味では運転し易い。安全設計も贅沢装備も充実している。A地点からB地点へ移動するためにはなんの欠陥も無い機械です。でも移動のプロセスや、操作の際に人間に与える情報の豊かさは、C5とは比較にもならない貧しさです。
移動のプロセス、機械操作が人間に与える情報の貧しさ。単なる移動のための手段なら公共交通機関のほうがよいと思われてしまうのは当然の帰結です。
C5はフランスでは普通の実用車です。世界的にはカムリと同クラスのセダンです。でもC5を運転していると、他にスポーツカーなんか要らないと思えるくらい、その実用車の運転が楽しく心地好い。電車ではなくC5で行きたい、と思わされます。
トヨタの豊田章男社長は、もっと好いクルマを作ろうよ、をスローガンにし、途絶えていたスポーツカーやランクルを復活させているのは、それ自体は悪いことでは無いと思いますが、一番大切なことは、そういう車種を増やすことよりも、世界中で大量生産・販売するクルマ、カムリやカローラやプリウスなどを、運転して楽しいクルマとして作りこむことではないでしょうか?ユーザーイヴェントに86やLFAで乗りつけて、クルマ好きの自分をアピールするのはなんだか”底が浅い”。だってそういうクルマが楽しいのは当たり前だからです。
それよりも、豊田章男社長がカムリやカローラを運転して楽しいクルマに仕立てるようにし、自らもそれをアピールできるくらいにならなければ、お里が知れると言われても仕方が無いと、今日カムリに乗ってつらつらと考えてしまいました。
Posted at 2015/01/05 02:17:38 | |
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