父親の免許返納までの話

世間では高齢者ドライバーの「逆走事故」や「店舗突入」等がニュースでよく見掛けます。
私の父も80歳を過ぎ他人事ではないが、危機感はあまり感じなかった。
当時、父も自分の衰えを実感していて毎日孫を駅まで送り迎えを楽しみにしてたので孫の高校卒業したら免許返納すると言っていたからだ。

しかし父の違和感を感じたのが今年の始め。
通い慣れた店の場所が分からないと言い出した。

母達と相談し病院で検査すると、やはり「認知症」の診断。

父には可哀想だが事故で他人様に怪我をさせるよりはいいだろうという事で父も納得の上で車の鍵を私が預かるという事で話がついた。

しかし大変なのはここからだった…
翌日から父の車で通勤したのだが、帰ってくると父が「俺の車の鍵を返せ！」と言ってきた。
昨日「認知症だから車の運転は出来ないよ」って言ったよな？と言うと父は「誰が認知症だって？知るか！早く鍵返せ！」と
正直、認知症をなめていた。まさか昨日の事を覚えていないとは…

その日を境に父に説得の繰り返しの毎日。最初は「認知症だから仕方ない」と思い優しい口調で説得する様に話していたが「俺の車の鍵を返せ！」と毎朝毎晩、延々と繰り返し言ってきた。

そんな日々が何週間か続いたある日、父がいつもの様に言って説得をしていたら、「この泥棒が！」と言ってきた。父の顔は真顔だった。

その一言が私の限界だった。

毎日、我慢していた。ずっと胃が痛かった。
極力、父を避ける様に行動していたが同居の為、無理があった。

自分が何を言ったかは覚えてないが、今まで溜まりに溜まっていた鬱憤を全て吐き出していた。
母が止めに入らなければ、どんな悲惨な結果になっていたか正直分からなかった。

母の方が一日中一緒で大変なのに、自分はまだ楽な方なのに… 自分の言動に後悔した。

そして翌日も前日の事を忘れている父から罵倒の繰り返しだったが、こちらもストレスを溜めない様に笑いながら聞き流し、こちらも父を軽く罵倒してやる事にした ww

そんな毎日が続けていると父が突然、免許返納の事を言い出した。
どうやら父は免許返納の事を覚えていたのだ。
「誕生日には免許を返す」その一言が私達に一筋の光になった。

勿論、その後も同じ毎日の繰り返しだったがゴールが分かると、かなり気分が軽くなった。

そして誕生日１ヶ月前のある日、父を病院に連れて行き、その帰り道突然父が「免許返納に行きたい」と言い出した。
正に青天の霹靂… 前日もやり合っていたのにw

気が変わらないうちに免許証を握り締め父と警察署に… 警察署に入れば気が変わっても警察官達が免許返納を説得してくれると思ったからだ。

そんな心配をよそに父は淡々と免許返納の手続きをした。
使う事はないだろうが「運転経歴証明書」も発行してもらいプレゼントする事にした。
全ての手続きが終わると私は何故だか泣いてしまった。
家に帰り車から降りると父が「もう車の鍵は要らないから…」そう言うと、また泣いてしまった。

まだ時々、母に鍵の事を言う様だが、母が「免許返納したでしょ」と言うと、直ぐ納得しているそうだ ww

今は認知症前と同じ様に接する事が出来る様になった。父の顔も当時に比べると少し柔和な顔つきになった様な気がする。

父には健康に気をつけて長生きして欲しいと思っています。
(^^)b