2024年03月25日
(前回からのつづき)
では、何がおかしいのでしょうか?
そもそも「シロキサン結合は、非置換の低分子化合物は不安定で酸化されやすい。しかし、Rがアルキル基などで置換された有機シロキサン化合物は概ね安定である。」(ウィキより抜粋)のとおり、シロキサンが原料と謳っていても、現実にはシロキサン結合に何らかの有機基が結びついたシリコーンを使っており、シロキサンのみをベースとする無機物のコーティングなんてあったら、逆に長持ちせず使い物になりません(※)
なので、これも結局はシロキサンと書くかシリコーンと書くかという、書き方の問題です(例えば饅頭で、原料をあずきと書くか、あんこと書くかというのと同じ)
つまり、一般の人がよく知らないシロキサンなる言葉を使い、何となく良さげに聞こえる「天然系」や「無機系」、更にはガラス「系」ではなく、ガラスそのもののコーティングと謳うと、
何だかよくわからないけど凄そう、高級そうと思う消費者の心理をついた、巧みな広告手法だと思います。
突き詰めるとオカルトパーツと同じで、こういう話を強調している業者は個人的に怪しいと思いますが、逆に最近は、それらの業者とのさらなる差別化を狙ってか、「シロキサンを用いた従来の無機物コーティングは結合力が弱く、当社が施工する無機物と有機物を融合したハイブリッド型コーティングは強い」と謳っている業者もいるようですが、これも解っていて敢えてそう謳っているのか、それとも単に無知なだけか解りませんが、同様に怪しさ全開です(なぜなら、前述のとおり従来から有機物であるシリコーンを使っているのは明白だから)
ちなみに、無機物と有機物を融合したら、それは有機物です。
そういえば、まだ中国語をよく知らない日本人が多かった80年代、「福建省茶葉公司推奨」と大きく表示した飲料メーカーS社のウーロン茶がありました。
当時10代だった自分は、何だかよくわからないけど「福建省が公式に認めた、茶葉を司る偉い人(?)」が推薦しているなら、きっと美味しんだろうなあ、と勝手に勘違いしていました(え、それはお前だけだろって?いや、絶対他にもいたはず・・・実際、後に注意勧告だか何かを受けたというニュースを見聞きした記憶がありますし、その後は表示をやめたようです)
その飲料メーカーの関連会社であるSウェルネス社が、今では機能性表示食品のTVCMを怒涛の如く流しているのは、何かの因縁かも・・・
最後に、ガラス(系)コーティングについて、前回紹介したカープロテクトマテリアルズのHPより引用しておきます。
ここから→
『認識されているガラスコーティングの姿
透明なガラスの被膜でボディーを包むことのできるコーティング剤。多分そういった感じの認識が強いかと思います。
インパクトとしては抜群な宣伝文句「本物のガラス被膜で塗装とボディーを覆う(※検索でキャッチコピーに使用されていないことを確認済み)」のような感じでそのまま認識されているかと思いますが、実際にガラスの膜が表面にあったら割れてしまいます。
(中略)
硬化系コーティング全般指す
硬化した物質がガラスであるか否かという問題点を考えなければ一般的にガラスコーティングと呼ばれている製品は、常温で硬化反応を起こし被膜を形成するコーティング剤全般を指します。(中略)
実際使っている液材も触媒も溶剤も似たり寄ったりですが、何種類かあるため実態が掴みにくい印象にはなっていると思います。よって常温で硬化するタイプの「コーティング剤全般をガラスコーティング」とする認識で間違ってはいません。』
←ここまで
・・・ガラスの膜が表面にあったら割れる、という表現には笑いましたが、前回書いたようにコーティング剤の殆どがシリコーン系なので「コーティング剤≒シリコーンコーティング=ガラスコーティング」と認識しておけば間違いありません。
だから、市販の1,000円程度のシリコーンと界面活性剤から成るコーティング剤だって立派なガラスコーティングですし、さらに言えば直接シリコーンを塗ってもガラスコーティングなのです。
もっとも、本来は「ガラスコーティング」なるものをもっと明確に定義すべきでしょうが、逆に言うと、
シリコーンって安価なのに凄い奴ですね。
注釈(※)
ガラスは、二酸化ケイ素(SiO2=シリカ)に炭酸ナトリウム(Na2CO3)や炭酸カルシウム(CaCO3)などを混ぜて作られた固体で、共有結合 (-Si-O-Si-) でネットワークを作っていますが、原子や分子が液体のように不規則な配置のまま固まった非晶質(アモルファス)です。
このガラスの表面には、製造時に急冷されることで生じる目に見えない細かい傷が沢山あるため、大きな衝撃が加わると傷が一気に広がりヒビだらけになります(割れやすい)
一方、シリコーンは [-Si(-R)2-O-Si(-R)2-O-]nという構造の高分子化合物(ポリマー)です。
Rは本文にあるようにアルキル基やメチル基、フェニル基などです。
Posted at 2024/03/25 10:42:41 |
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2024年03月25日
いきなりですが、ガラス(系)コーティングと聞いて、どういうものか正確に説明できますか?
「強固なガラス被膜でボディー(塗装)を守るコーティング剤」
・・・そんなイメージを持つ人が多いと思いますし、実際そのようなイメージで説明している業者も多いようです。
さて、そんなイメージを抱くガラス(系)コーティングですが、実は殆どの業者は「ガラス被膜で」と言っている訳ではなく、よくあるのが次のような解説。
「主成分はガラスではなく、二酸化ケイ素という物質です。シロキサンといったガラスの組成に似た成分を原料とすることで強度を増し、車に使用できるようにしています。」(※)
ただ、このような説明を受けると、「ガラスって確かケイ素が原料だったよな~」程度の認識の消費者は「なるほど、ガラスコーティングというからには、やはりガラスと同じ成分の原料を使って強固な被膜を作っているんだな」と考えるでしょう。
しかし、実は、
「二酸化ケイ素、あるいはシロキサンを原料とする」は言い換えれば「シリコーンを原料とする」と同じことを意味します。
以下、信越シリコーンのQ&Aから引用
ここから→
『「シロキサンとは、ケイ素(Si)と酸素(O)が交互に結合してポリマーが形成された状態のことをいい、シロキサン結合と呼ばれるシリコーンの主骨格となっています。炭素結合(C-C)の結合エネルギーが356kJ/molであるのに対し、シロキサン結合(Si-O)は444kJ/molと大きく、非常に安定しているのが特長です。また、シロキサン結合は結合角が広く、らせん構造をしており、これらの分子構造がシリコーンの特長を生み出しているわけです。」
「シロキサン結合に有機基がついたオルガノポリシロキサンをベースとした材料を総称して、シリコーンと呼びます。(中略)
シリコーンポリマーは、シロキサン結合が主骨格であるため耐熱性や耐候性、化学的安定性などに優れ、さらに有機基(主にメチル基CH3)を持つことからはっ水性や離型性といった独特の界面特性をも備えているのです。」』
←ここまで
ガラスに似た成分を使っていると謳って、表面に強固なガラス被膜を作るようなイメージを抱かせますが、結局はシリコーンを原料とするコーティング剤なんです。
つまり、前回のオルガノポリシロキサンと同様に、
シリコーンでは有り難みがないので、二酸化ケイ素だのシロキサンだのと言っているのです。
なので、ガラス(系)コーティングと呼ばれているものは、市販されているもの、業者が施工するものを含めて、実は全てがシリコーン系ということになります。
よって、コーティング剤はシリコーン系かフッ素系かの2つになります(フッ素樹脂系の場合、それだけでは被膜が弱いため、実際はシリコーンが含有されているものが多いので、逆に言うとシリコーンを全く使っていないコーティング剤の方が珍しい)
中には、うちが施工してる「ガラスコーティング(系はつかない)」は、その辺のガラス系コーティングとは別物だと主張する業者もいて、
「ガラスコーティング剤には、シロキサンと呼ばれる成分が含まれる商品がありますが、シロキサンとは、ケイ素と酸素が交互に結合してできた物質です。そして、ガラスはケイ素の酸化物である二酸化ケイ素でできています。
詳しい化学反応は難しいので省きますが、ガラスと同じ元素から成り立つシロキサンが含まれたものは、シリコーンやフッ素などが含有されたガラス系とは違い、何も含まれない完全な無機物のガラスコーティングです。」というような感じで、うちはシリコーンを使った偽物のガラス「系」ではなく、本物のガラスコーティングだと説明していたりします。
・・・先ほどの信越シリコーンの説明内容を(言われなくても)理解している化学に詳しい方なら、この業者の説明の矛盾に気が付くでしょうが、おぼろげに高校化学程度の知識しかない消費者なら、「そうか、純粋なシロキサンを原料とするものが本物のガラスコーティングで、シリコーンを原料とするものは偽物(?)のガラス系コーティングなんだな」と納得してしまうかもしれません。
ですが、これも間違いです。
理由は次に書きます。
注釈(※)
この表記だと、そもそも硬度と強度の区別がついていないようですが、言うまでもなくガラスは硬度は高いが、強度は低い(簡単に割れる)
何でもかんでも「剛性ガー」と叫ぶ自動車評論家がいるように、硬度と強度と剛性とをごちゃまぜにしている人が非常に多いですが、全く別な言葉です。
Posted at 2024/03/25 10:06:28 |
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