2024年03月29日
続きです。
(4)アイドリングでは充電されない・・・は、昔の自転車のリムダイナモをイメージしているから?
昔のスーパーカー自転車だとライトが4灯とか6灯式とかだったりするんで、一生懸命漕がないとライトが暗かったですが、このイメージを引きずっている年輩の方が多いように思います。
その自転車のリムダイナモですが、ダイナモという名称から直流発電機だと思っている人が多いですが、実は整流子を持たない交流発電機です。
ただ車のオルタネーターとは異なり、永久磁石を使っている単純な構造のため磁束を制御できず、発電量は回転数にのみ依存します(自転車ではライトを点けるだけで良いため)
一方、自動車のオルタネーター(三相交流発電機+ブリッジダイオードによる整流器=三相全波整流)は、電磁石を使っていますが、他励式つまりレギュレーターによってフィールド電流をデューティ制御(ON/OFFにより磁束を制御)することで、発電量を調整しています(もちろん最大量は回転数に依存しますが、回転界磁形のためアイドリングでも昔のダイナモより高速回転させることが可能です)
40年近く前の86年式のデボネアVの定格90Aタイプでも、修理書を見るとアイドル時のオルタ回転数は、エンジン回転数(700~750回転)✕1.6倍=1,120~1,200回転で、温感時(=min)でも25Aは出せます。
更に、最近のSC(セグメントコンダクタ)タイプのオルタネーターだと、アイドル時でも50Aぐらいは出力可能なようです。
アイドリングだけなら(充電分を除き)消費はせいぜい~10Aなので、余裕で充電できますし、A/Cをつけていても発電不足にはなりません(負荷が増える事で状況によっては電圧降下が起こるが、すぐにアイドルアップが働くようになっている)
でなければ、タクシーや観光バスは夏場にA/Cつけたまま長時間の客待ちはできないし、公園等の駐車場でよく見かけるサボリーマンに至っては、うっかり寝込んでしまえば、最後にはバッテリーが上がって会社に戻れなくなります(笑)
(5)ネットは嘘だらけ?
例えば知恵袋で、「ディーラーのサービスマンから2〜3日に一度15分程度アイドリングするとバッテリーは大丈夫と言われたが、ネットで調べるとアイドリングで充電するなら1時間は必要となっている。15分のアイドリングで本当に充電できるか?」との質問に対し、大半は厳しいとの意見で、「15分程度の充電量はほんの少し。スマホのような小さなバッテリーでも、15分の充電で何%進むかを考えれば(車の大きなバッテリーならもっと掛かると)容易に想像できるはず」などと、全く的を得ない素人回答がBAになっていました。
仮に2.5日放置した場合、暗電流は0.24~0.72Ah✕2.5=0.6~1.8Ah、スターターでの消費が(温感時の4倍としても)0.08Ahで、合計0.68~1.88Ah。
バッテリーの充電状態もあるので一概に言えないにしても、15分のアイドリングで平均4Aで充電するとしたら1Ahが充電されるので、充放電効率とかの細かい話は抜きにして、サービスマンの話は大筋で合っています。
サービスマンも様々ですが、彼らの話の方が、誰が言ったか判らないネットの情報よりも信頼できるのは当たり前なのですが、最近は特に若い人ほどネットへの依存度が高いようです。
ちなみに、(4)で書いた通り、オルタが正常な限りアイドリングで発電量が足りないことは基本的にないので、
アイドリングでも走行中でも、充電電流は全く同じです(非充電制御車の場合)
なのに、カーメディアあるいは業者系のサイトにも、「アイドリングではダメで、走行してエンジン回転を上げると早く充電できる」といった嘘が、平気で書かれています。
そもそも発電能力にいくら余裕があっても、バッテリーの受入電流(負荷電流)以上の発電はしないのですが、それをよく解っていないスーパーカー自転車世代の人が書いた記事を基に、安くで請け負った外注ライターが炬燵記事を量産するので、ネット上に誤りが蔓延していくという状況です。
もっとも、肝心の自動車評論家やショップのオーナーなども、「アイドリングじゃダメ」と口を揃えて言っているので、彼らも皆「スーパーカー自転車世代」のようですが・・・(笑)
なので、ネットで何かを調べる場合、官公庁や業界団体、あとはマトモな企業のHP以外は当てにならない内容が多いので、気を付けてください。
因みに、大手だからマトモという訳でもありません。
事実、業界最大手の某自動車メーカーのように、「アルミテープで除電すれば、走行安定性が良くなる」とか、「ホイールボルトの方が、足回りの剛性が高くなる」などと、変なことを平気で言う会社が現実にありますので・・・
いずれにしても、ネット情報を鵜呑みにして「アイドリングでは不十分、走らないと十分には充電されない」なんて吹聴すると、(詳しい人からは)知ったかさんとか半可通などと笑われますからご注意を。
Posted at 2024/03/29 17:01:42 |
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2024年03月29日
ネットを見ると、バッテリーに関して「エンジン始動時に大量の電気を使う」とか、「アイドリングではオルタの発電量が少なく、バッテリーには殆ど充電されない」といった誤った情報がよく目につきます。
では、どこが誤りなのでしょうか?
(1)バッテリーが減る一番の要因は暗電流(スターターは大して食わない)
JIS(D5301)に始動用鉛蓄電池と定められているように、バッテリー本来の仕事はスターターを回すことですが、スターターには確かに200Aぐらいの大電流が流れますが、ほんの一瞬です。
実際、東京都環境科学研究所が行った実験では、エンジン再始動時(温感時)の電力消費量は、ガソリン車で1回あたり平均0.23Wh≒0.02Ah相当です(電力消費量なので本来Whで表示すべきだが、ここから先は5時間率容量で馴染みのあるAhで統一する)
一方、暗電流による消費量は、(財)電池工業会によれば、10~30mAとして0.24~0.72Ah/日です。
どちらが少ないかは、誰の目にも明らかですね。
つまり、1日乗らないだけで再始動時のスターターの12~36回分も消費しちゃうのです。
逆に1回始動しただけでは、仮に冷間時始動として上記の4倍かかったとしても0.08Ahで、バッテリー容量の僅か0.2%しか減りません(小型の38Ahのバッテリーとして)
アフィブロ辺りだと、「クルマのエンジンを1回かけるだけで、バッテリーの10~20%が一度に消耗するといわれています。」などと平気で書かれていますが、この事からも、アフィブロが「いかに役に立たない糞情報嘘情報の宝庫であるか」がよくわかります。
(2)どのぐらい放置するとバッテリーが上がるか?
さて、1週間乗らなかった場合は、0.24~0.72Ah/日✕7=1.68~5.04Ahを消費します。
先の38Ahのバッテリーなら、放電率は4.4~13.3%になります。
これが3週間なら13.2~39.9%、更に6週間なら26.4~79.8%となって、最悪エンジンが掛からなくなります(一般に60~70%の放電で掛からなくなると言われているため)
もっとも、バッテリーは車載状態ではそもそも80%程度までしか充電されていないと考えるべきで、また最近の車は暗電流も増えているので(特に駐車監視とかつけた場合)、上記の計算よりもっと早く上がるかもしれません。
なお、電圧と充電率の目安は、以下の通りです(開放電圧)
13.0Vを仮に100%とした場合、12.2~12.35V=50%、11.9~12.05V=30%
経験的には、12V辺りでスターターを回すのがかなり辛い感じとなり、11.8Vではウンともスンとも言いませんでした。
(3)エンジン再始動時の消費電力をどのくらいで回収するか?
先の東京都環境科学研究所が行った実験では、エンジン再始動時の電力消費量は、始動後10~30秒以内に消費量の90%が充電されているそうです(温感時)
想像していたより、あっという間ですね・・・でも計算してみると、仮に0.02Ahの90%を10秒で回収したなら平均6.5Aの充電電流が、30秒なら平均2.2Aの充電電流が流れた計算になるので、納得です。
この充電電流の差はバッテリーの充電状況(受入れ性能)によるもので、始動直後はオルタとバッテリーとで電位差が概ね1.5V以上あるので10A以上の電流が流れますが、バッテリーがほぼ満充電なら、すぐに1~2Aぐらいに落ち着きます。
後編へ続く
Posted at 2024/03/29 09:54:59 |
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