これは我が家の3代目ワンコ、通称アリちゃん(シェットランドシープドッグ、セーブル&ホワイト、オス)が我が家にやってくるまでの回想録です。
先代のワンコを亡くしてから6年ほど経った頃、父が突然僕にたずねた。
「前に飼ってた犬の種類は何ていうのか分かるか?」
「シェットランドシープドッグだよ。略してシェルティと言われることもあるよ」
「ひいろ、また犬飼ってみるか?こんなメール来たよ。ただで引き取れるみたいだ。同じ犬いるかな?」
そう言って父が僕へ携帯を差し出した。父の会社の同僚の娘さんから転送されたメールということで、たしか内容はこんな感じでした。
「知り合いのペットショップが倒産してしまいました。たくさんの犬猫が引き取り手も決まっておらず、このままでは数日後に処分場へ送られてしまいます。無料でいいので引き取ってもらえる方を探しています」
以下、犬猫のリストがズラリ。
そのリストの中にシェットランドシープドッグがあった。
「あったよ。これがそうだよ」
そういって父に携帯を返した。
「そうか。じゃあ明日にでも聞いてみる。まだ残ってるといいな」
父は嬉しそうにそう言った。
翌々日、ネットで改めてシェルティという犬について調べていたとき、偶然ほかの犬種を飼っている方のブログでガッカリする様なエントリーを見つけてしまった。内容はこんな感じ。
「悪質なチェーンメールに注意!知り合いのペットショップが倒産して子犬、子猫の引き取り手を探してるという内容で、少しづつ違う内容で何通か回ってきてます。倒産したお店は実在しません。メールに連絡先が無いです。転送してきた人、5人以上さかのぼって誰もお店と連絡先知りませんでした。私以外にも注意喚起するブログを上げてる人がいますから、チェーンメールで確定です」
ガッカリしました。そして帰宅した父にもその事を伝えました。父はほんの一瞬、とても残念そうな表情を見せました。
「ウソならそれでいいんだ。今日も返事来なかったしな」
その残念そうな表情を見逃していたら、そこで話は終わっていたかもしれません。でも僕は見逃さなかった。それが三たび犬を飼おうと思った動機です。
父がシェルティを気に入ってるのは分かりました。あとは簡単、探すだけです。ネットでシェルティの写真を見ている内に、ある事に気が付きました。先代とそっくりな顔をしたシェルティと、もっとコリーっぽい愛らしいと言うよりは気品がある顔立ちのシェルティ。大まかに2系統の顔立ちがあると。
父が覚えているかどうか分からないけど、先代に似た顔立ちのシェルティを探すことにしました。
ほどなくして、お隣神奈川県のペットショップで子犬の出産予定の情報を得ました。
偶然は重なるもので、父犬、母犬ともに先代と似た感じのシェルティでした。早速ペットショップと連絡を取りました。
「問い合わせは既に数件入っています。出産したら見に来て決めてほしい」
運良くアポが取れ、トントン拍子で話が進みました。今思えば本当に運が良かったと思います。
3週間ほど経ってペットショップから連絡が来ました。
「生後10日以上経ちましたので見に来れますよ。男子3女子2の5兄妹です。早い子は目が開きました。」
連絡をもらった週の土曜日にペットショップへ行きました。早くもメス2頭は行き先が決まったと告げられましたが、希望はオスだったのでそこは問題ありませんでした。
5兄妹の父犬と少しのあいだ遊んでいるとオス3兄弟がお店の奥からやってきました。やってきたと言っても生後間もない赤ちゃんですからスヤスヤ眠っています。小さな箱に3兄弟は入っていました。
「うわっ!小さっ!」
思わず声に出して言ってしまいました。3兄弟のサイズは見事に大中小で、一番大きな子でも手のひらサイズでした。起きたかと思うとまたすぐ眠ってしまう3兄弟を見ながら、いろいろなお話を聞かせてもらいました。僕の方からも先代シェルティの思い出話をさせてもらいました。
「まだネズミみたいでどの子がいいか決めにくいでしょう。生後1ヵ月もすればそれぞれの外面的内面的特徴が出てくるので今日決めなくても構いませんよ。」
そう言われる少し前から、僕の気持ちは既に決まっていました。
「この一番小さい末っ子をもらおう」
これはのちに僕の取り越し苦労だったと知るのですが、JKC(ジャパンケネルクラブ)が理想とするシェルティのサイズ(体高、体重など)がありますが、末っ子は成犬になったとき、その理想とするサイズから外れてしまうかもしれないと言われていました。父犬も先代のシェルティと比べると1周り小さい印象でした。
「小さいからという理由で売れ残ったらかわいそう」
そんな勝手な思い込みから小さな末っ子をもらいたいと名乗りを上げました。(実際にはセーブル&ホワイトのシェルティは非常に人気で、少々大きかろうと小さかろうと売り出せば即完売すると後に知りました。)
末っ子をもらうと決めてから、できるだけ週1度会いにペットショップに通いました。自宅へ連れて帰る日、兄弟と離れ知らない人と2人きりという不安な思いをさせない様に僕に馴れてもらうためです。
2008年は世界中の投資家のマネーゲームの影響でレギュラーガソリンの価格がリッター200円近くまで上昇した年です。片道90キロ、それも箱根越えするためガソリン代もバカになりませんでしたが、子犬に会えればそんな事は忘れることができました。
生後約40日で家にやってくる1週間前。ペットショップにて。
この頃の3兄弟はヤンチャ盛り全開でした。僕が手を差し出すと前足でバンバン叩いてみたり、手の平に飛び乗ろうとしたり。次男と末っ子の共通の行動が手を差し出すと指先をペロリとなめた後、一生懸命噛みついてきました。僕の顔を見ながら噛みつくことで何かを感じ取っているようでした。
「子犬は力加減が分からないから力いっぱい噛むんです。痛かったら手を引いてください」
一生懸命噛む顔がかわいらしく、見とれていると出血してたなんてことがありました。
生後50日過ぎ。自宅到着直後。

待ちに待った引き取りの日。父にはいつアリちゃんをペットショップから引き取るのか教えていませんでした。ちょっとサプライズを狙ってたんです。
「今日子犬を引き取ってくるよ。仕事から帰ってくる頃にはもういるから」
「そうか、楽しみだな」
父は笑顔で仕事に行きました。僕はアリちゃんを迎えに行く前にホームセンターに寄って、写真に写っているヌイグルミと鈴入りのボールを買って行きました。
「アリちゃんおいで。これはお前のオモチャだよ。わかるかな?」
狙いは大成功。噛むとプープー音が出るヌイグルミが気に入った様でした。
「あら~アリちゃんオモチャもらえて良かったね~」
「先代のシェルティを家に連れていくときは、車の中でブルブル震えてとても不安そうだったんですよ。20年近く経った今でもよく覚えてます。だからアリちゃんの気を紛らわすために用意しました」
「人見知りする子はそうなんですよね~アリちゃんは人なつっこいから大丈夫かな」
そんなこんなで各種手続きを済ませ2008年5月24日、アリちゃんは我が家にやってきました。
仕事から帰ってきた父もとても喜んでくれました。寝ていたアリちゃんを起し、初対面です。
「小さいな。人形みたいだな。今日から一緒に暮らすんだぞ」
アリちゃんは父の部屋で飼うと決まっていました。初めて会う父に何の警戒もせず受け入れた様でした。
翌日から父とアリちゃんのドタバタな毎日が始まるとは、まだ知る由もありませんでした。
やってきた翌日に撮影
回想録はとりあえずここまでとします。読んでいただきまして、ありがとうございました。