
イタリアの、というよりヨーロッパの大手カーオーディオメーカーaudisonから出たメディアプレーヤーです。
昨年初めのCES2014で参考展示されて以来注目していて、年末から国内販売が始まったのでちょっと迷った末に導入しました。
迷っている間に結構オーダーが入ったようで、注文からインストールまで1ヶ月ほどかかりました。
24bit/96kHzまでの光デジタル出力に対応する本機、業界の皆さんは「ハイレゾ」で売りたいようですが自分はCD音源のファイルをメインに使います。
(デジコアに24bit/48kHzまで入力できることがわかったので実験はするつもり。)
ハイレゾはホームオーディオで実験してきて、音の良い音源も確かにあるので
(また微妙な表現をw)再生能力は欲しいと思いながら・・・なんだか世の中流行ってきたので、自分は逆にゆっくりやろうと天邪鬼に。
今はCDフォーマットでももっと楽しく聴かせてくれるシステムを目指すこと、それが将来ハイレゾが来たときの伸びしろになると考えています。
じゃあこいつをCDフォーマットの音源のデジタルトランスポートとして見た時に最高の音質を引き出すマシンかといえば、資料を見る限りオーディオ機器としての特別なこだわりは見あたりません。
これが国内オーディオメーカーであれば、「ビットパーフェクト出力」とか「高精度クロック」とか「独立電源システム」とか言いそうなものです。
この製品に期待したのは、あえて音質よりも「固定機であること」。
「flac」を「光デジタル出力」できるので、ある程度のクォリティは確保できるだろうと踏んでのうえですが。
現在自分のメインソースとなっているUSBオーディオのような接続の手間もなく、クルマに乗り込めば自宅と同じ大量の音楽にアクセスできる、そんな環境が気に入っての導入となりました。
非常に多機能な製品なので、今回は使用開始までの様子を中心にレポートします。
製品の概要は、
過去の当ブログでも紹介していますのでご覧ください。
1. 設置

本体はトランクルームにインストール。セダンって便利。
カジュアルに使いたいので、USBオーディオのような特別なパーツは使いません・・・ん?
おなじみ「赤いスリーブのTOSケーブル」。長くなるこれだけは少しこだわり。
本機は純粋なプレーヤーでアンプは内蔵していないので、ナビ・ヘッドユニット・プロセッサーなどと組み合わせる必要があります。音声(RCAアナログまたは光デジタル)および映像(HDMIまたはRCAコンポジット)を接続します。なおスマホからも操作が可能ですが初期設定はできないので、映像の接続は必須です。
自分は光デジタルをプロセッサーアンプに、コンポジット映像を純正ナビに入力しました。
本体にUSBポートが2つあり、USBメモリーなどの接続用に手元に延長するためのケーブルが1本付属します。市販のUSB延長ケーブルを追加して2ポートとも車室内へ引き込んでおいた方が便利でしょう(後述)。
Wi-FiのドングルもUSB接続なので、スマホを接続する場合に電波の飛びが悪いようならこちらも同様に車内に引き込みます。
赤外線リモコンの受光部はモニターの近くに。
2. 操作

赤外線リモコンか、スマホで操作します。
リモコンはフル機能版と簡単リモコンの2種類が付属します。スマホからは再生およびSSDへのコピー操作が可能です。
こういう後付け機器でもナビの画面でタッチ操作できるようになると良いのですが、それが実現するのはもう少し先でしょう。
スマホで操作したい時は、ホーム画面に表示されるSSIDにWi-Fiで接続します。
専用アプリでコントロール可能です。Android用のアプリはGoogle Playで入手します。通信はDLNAで行われるので、サードパーティー製のDLNAアプリも使用可能です。
3. 初期設定

ホーム画面はこんな感じ。文字、小っちゃ!フリッカも少し残ってますし、PCの画面をスキャンコンバーターで昔のTVに表示した時みたいです。どうやらHDMI前提の画面設計のようです。
内容はまんまメディアプレーヤーですね。設定画面を呼び出して確認してゆきます。

システム設定。
言語設定は普通に日本語対応です。
文字コードはUTF8とShift-JISが選択できます。よくできました。
レジューム再生は現状無効のようです。バージョンアップに期待。

音声設定。
なんですかこの設定、ホームシアター機ですかw
デジタル出力に関するダウンサンプリング設定などは特に見あたりません。よって96kHzまでのソースはそのまま出力されそうなので、未対応のプロセッサーに接続する場合は注意です。
(bit One用のオプションとして用意されているサンプリング周波数コンバーターSFCを挟めば48kHzに変換します。)
細かい話ですが、カーオーディオではプロセッサーにより音声の方が遅れることがあるので、リップシンクがあるならホーム用と逆方向の設定が欲しかったです。
(2016/8/18追記)
HDMIと光デジタル出力のサンプリング周波数が連動するようです。ナビのHDMI入力と接続すると48kHzとなるケースが多いので、96kHzで出力させたい場合は注意です。

画面設定。
HDMI接続なら1080pまで対応します。DeepColor設定とかブルーレイレコーダー並みです。対応モニターあるんかいな。コンポジットは当然480iです。

ネットワーク設定。
DLNA機器として、プレーヤーはもちろんサーバーにもレンダラーにもなる強力な実装です。つまり、
・SSDのファイルを本体で再生/スマホから再生コントロール(DLNAプレーヤー)
・スマホのファイルを本体でストリーミング再生(DLNAレンダラー)
・SSDのファイルをスマホでストリーミング再生(DLNAサーバー)
の3通りの使い方ができます。特に3つ目は応用次第でちょっと面白いかも。
(2015/6追記)
DLNAサーバーで
遊んでみました。

詳細設定。
BD関係の設定が並びますが、日本では使いません(後述)
画面外に「メディアライブラリ」の設定があり、デフォルト設定のOFFではシンプルにフォルダ構造を辿って再生ファイルを選択する方法になります。ONではDAPやスマホと同様、タグ情報をもとにアーティスト名などのデータベースが構築される・・・はずですが(後述)
4. ファイル転送
内蔵SSDへの楽曲転送は、2つある本体のUSBポートのどちらかにUSBメモリーなどを接続して行います。

ファイルマネージャ画面からファイル・フォルダを選択してコピー。このあたりの操作はPC的です。
HDDや光学ドライブは電力不足で認識しないことがあるので、電源を2本使うUSBケーブルを使用します。このため、2ポートとも使えるようにしておくと良いです。
5. 再生方法その1 SSD内ファイル
一通り準備できたところで、再生してみます。
画面は、オンライン購入したAACファイルです。
内蔵SSDからの再生。
ファイル名は普通に日本語で表示されます。文字サイズはやはり小さめ。
しかし画面にはなぜか「No ID3 Tag」の表示。自分のファイル(flac/aac)では、設定画面で「メディアライブラリ」をONにしてもタグ情報解析は機能しませんでした。アルバムアートも(表示される仕様なのかどうか微妙な画面ですが)未表示。タブレットのアプリ上では普通に表示されるファイルなのですけど。
うーむ・・・詳細調査中。
6. 再生方法その2 DLNA
Android版の専用アプリからはSSD内のファイルもスマホ内の音声・動画も再生可能です。iOS版の純正アプリはリリース前ですが、こちらはSSDの再生のみでスマホ内ファイルのストリーミングはサポートされないようです。サードパーティー製アプリを検討してみても良いかもしれません。
DLNAということでスマホ・タブレット側からの操作はどうか、使い勝手が気になるところ。でも自分の環境ではタグ情報によるメディアライブラリが構築できていないようなので、後日・・・と思いながら試しに純正アプリで接続してみたところ
オッサン(+α)ホイホイな画面が撮れました。
アーティストタグ認識してるじゃん!
アーティストを選択すると、アルバム→曲 と進みます。
本体でリモコンをペチペチ操作するより、こっちの方が便利そうです。
でもなぁ・・・自分はタブレット使うならUSBオーディオがあるし・・・
ナビゲーションツリーは上記の「アーティスト→アルバム→曲」のみで、他のタグを起点としたツリーは表示されません。
本体の画面では表示されないタグがDLNA経由では見えるということは・・・メディアライブラリ関係はまだ未完成なのかも。
サードパーティアプリとして
Bubble UPnPも使ってみました。SSDの再生コントロールはもちろん、タブレット側の楽曲をDLNAで送り込んでの再生(レンダラー動作)、SSD楽曲をタブレットで再生(サーバー動作)もできました。ただしレスポンスはちょっと遅め。
7. 再生方法その3 USB
まだあります。
USBストレージはSSDへの転送用だけでなく、直接再生も可能です。

接続するとファイルマネージャー画面にUSBが表示されるので、普通にフォルダを辿ってファイル選択すればSSDと同様に再生します。
USBメモリー、ポータブルHDD、メモリーカードリーダーなどが使用可能です。この柔軟さはPC並みですね。
8. 動画再生
日本では2012年の著作権法改正以降、(レンタルかセル、個人利用かそうでないかによらず)市販BD/DVDのリッピングは違法行為となりました。
よって入れるならDRMフリーの動画を探しましょう。
手持ちのファイルで簡単に試したところmp4の互換性はイケてます。DivX・flvは再生不可なものが結構ありました。
USBの光学ドライブも接続してみましたが、UDFのディスクを読めないためBD-VideoやDVD-Videoは再生できません。対応するのはISO形式なので、残念ながら本機で合法的にBDやDVDを見る方法はない、ということになります。
映画は無理としても、ライブビデオやMV/PV、アニメだけでもDRMフリーの世界に来てくれたら、この手のメディアプレーヤーは活用できて楽しいのですが。
とりあえずこんなところですか。まとめます。
機能について。
本体でフォルダを辿る再生方法なら日本語含め普通に使えます。
しかし海外製のしかも初モノということで正直「ん?」な所も多少あります。個人的には、タグを表示せずアーティストシャッフルや全曲シャッフルができないのは痛い。(自分だけかもしれないので何かわかったら更新します)
幸い、デジタル接続していることもあり音質的には大きな問題はないので、バージョンアップで改善されると良いのですが。
(2015/3/28更新)
設定画面で「メディアライブラリ」をONにすると、本来のタグによる分類はできないながらSSD内の全曲がファイル名で並んで表示されるので、とりあえず全曲シャッフルは可能であることがわかりました。フォルダ再生と使い分けるためには「メディアライブラリ」の設定を都度ON/OFFする必要があり操作性に難ありですが「やりたいことができる」のは第一歩なので当面これで運用します。
操作性について。
大容量ストレージを搭載しているので、目的のアルバムや曲に素早くアクセスできるかは最も重要な性能だと思いますが、今までナビやヘッドユニットなど車載専用機を使っていた人にはそれほど違和感ないレベルかと。タブレットの
「全アルバムをフリック1発で超高速スクロール」
に慣れた自分には少しまどろっこしいです。個人差があるので、実機で確認することをおススメします。
想定ユーザーについて。
家庭用AV機器(というかBDプレーヤーそのものです)の機能プラスDLNAなので、使いこなすには最低限のAV・PCスキルはあった方が良いですね。よって誰にもおススメとは言いませんが、デジモノ好きには楽しい機器だと思います。
最近自分はショップに行くと
「業界ハイレゾハイレゾと煽りすぎじゃない?」
なんて話していますが、この製品に関しては「わかっている」人がメディアサーバーやハイレゾで遊ぶのが正解かもしれません。
これだけ多機能なマシンが投入されたことで国内メーカーさんはハードルが上がりました。日本語タグ未対応とか、いい加減もうナシでお願いします。頑張って。超頑張って!
現在のオーディオシステム図
ついにプロセッサーアンプの入力端子が全て埋まりました。
命名「デジタルおもちゃ箱」。全然スマートじゃない・・・
(2015/6/14追記)
ファームウェアのバージョンアップがありましたので導入しました。
・MEDIA_FW_V1.1.1.0
・CONTROL_FW_V1.1.2.0
最新ファームウェアを取得するには
オーディソンのサイトで予めユーザーおよび製品シリアルを登録しておく必要があります。
ファームウェアにはメディアFWとコントロール(システム)FWの2種類あります。PCのOSとBIOS、AndroidのROMイメージとブートローダのような関係でしょうか。
手順はダウンロードするファイルに説明がありますがそれぞれ方法が異なり、コントロールFWの書き換えにはWindowsPCが必要です。いずれも本体に触る必要があるので、車両の奥深くに設置していると厳しいです。今後もバージョンアップがあるなら、設置場所は考えた方がいいかも。
・メディアFW
ファイルを入れたUSBメモリーを本体に接続し、起動時に本体の「アップグレード」ボタンを押す。
・コントロールFW
本体とPCをUSBケーブルで接続しPCで更新プログラムを実行。(途中で本体のスイッチ操作を要求されます)
※コントロールFWの更新が正常に完了すると、本体のロゴ表示が青点灯になります。赤点滅状態ではエンジンOFFでも電源が切れていないとの情報がありますので要注意です。コワイヨー
で、肝心の改善内容ですが・・・リリースノートもないので何が変わったのかよくわかりませんw
判明しているのはレジューム対応。短時間であれば再始動時に元の再生画面に戻るようになりました。短時間とは給油程度で、食事はダメなようです。エンジンOFF後の一定時間再生を続けているような動作なので、再生していた曲に復帰するとは限りません。その他タグの扱いとかは変化なし。
まぁ・・・1回目のバージョンアップがあったということで次回に期待しましょうかね。
何と言いますか、先は長そうです同志!ボクは萎えそうですw
(2016/3/6追記)
Audisonのサイトに、今後のバージョンアップ予定について発表がありました。内容は次の通り、かなり大がかりなものです。
1. 新グラフィックインターフェース
・視認性とユーザビリティ改善
2. iOS/Androidアプリのアップデート
・スマホ版とタブレット版を用意
・接続スピード改善
・プレイリスト対応
・ペアリング機能(セキュリティ改善)
・iOSアプリでのwav/alac対応
・flacファイルのアートワーク表示対応
・画面回転サポート
3. Wi-Fiダイレクト接続(Android)
・4G接続を保ったままでアプリを使用可能
4. AirPlay対応(iOS)
・こちらはiOSの制限により4G接続は不可のようです。
5. 内部コードの最適化
・動作速度・起動時間の改善
6. DRC(リモコン)対応
・DRC MP使用可能
7. レジューム
・bit Play HDを「OFFした」時の状態に復帰する、とありますな・・・
自分のbit Playは、なかなか改善されない使い勝手にしびれを切らし、箱替えを機に降ろしてしまいました。今は自宅で保管していますが、これだけ改善されるならあるいは復活も・・・
発売後1年も過ぎれば機能追加どころかバグフィクスすら止められてしまう製品も多いですし、そもそも機能追加なんて期待できないメーカーも珍しくはない中、こうやってソフトウェアの改善を続けていたのは大変好感の持てる姿勢ですね。
(2017/8/16追記)
アナウンスから1年と5ヶ月、ようやくバージョンアップが実施されました。上記の改善項目はほぼ達成されているようです。「ようです」と歯切れが悪いのは、察してください・・・
注意点としては、新バージョンを使うためには付属のWi-Fiドングルを交換する必要があるとのこと。正規リテーラから無料配布されるとなっていますが、日本ではどうなるんでしょう?
(追記)
まとめページが作れるほど、昨年プッシュし続けた「USBオーディオ」について。
ようやく車載製品が登場します。大阪オートメッセにオーディオテクニカがUSB-DAC兼DDCを参考出品していました。その時の展示パネルがこれ。
・・・その書き方でDSD対応とは普通言わない。それともDoP対応って意味?アナログだけでも出力されるなら面白そう。
基本パーツは同社のポタアン
AT-PHA100に近い構成ですが出力段は別設計。デジタル入出力やGNDリフト、フィルタ特性選択などオリジナルの機能もあります。
従来製品(AT-DL5HD/AT-DL3i)と比べると映像出力は削除、初代DL3iのリモコンも復活しませんでした。その分より純粋なオーディオ機器として企画されたようです。DACが付いたので、受け側がハイレゾ対応するまでとりあえずアナログで接続するといった使い方も(意味があるかは別として)できそうです。
まだ型名もないプロトタイプだったので、発売はもう少し先でしょうか?
個人的な興味は次の2点。
・USB部がバスパワーなのかセルフパワー動作なのか。
バスパワーだとホストの電池を食う代わりにエンジンOFFでも接続が切れない。またバッテリー電源などで音質に関与できる余地がある。セルフパワーならその逆の特性。さてどちらを選択しますかね。
・CD音源での音質は自分のバッテリー駆動DDCと比べてどうか。
なかなか魅力的なパーツを使っているので、基本的な音質には徹底的にこだわって欲しいなと。
「本気音源」としてbitPlayよりも注目していたりします。
いよいよクルマでもUSBオーディオが花開くか、それともbit Playのような固定機にフォロワーが現れるか。今年はこのあたりが面白そうです。