
自宅からのロスレス配信を実現したroon ARCを導入して8か月ほど。我が車の主力音源として定着しました。
思えばクルマ用のライブラリを作る作業はカセットテープの時代から連綿と続いてきたわけで、それが必要無くなったのは大きな変化です。
ドライブのシチュエーションを想像して選曲する、そこに意義を感じる人もいるでしょうけどプレイリストに変わったと思ってください。味気ないですか?
パーソナルストリーミングとしてはApple Music(iTunes Match)が先行していますが、自分のライブラリはAACに変換されるので音質にこだわりたい向きにはARCをオススメします。もちろんroonの使い勝手に惚れた人にも。
一番の心配事であり興味でもあった、
モバイル回線を経由したロスレスストリーミングは使い物になるのか?
については、音質設定を「CD Quality」にすれば車載ルーターや格安SIMでもほぼ実用レベルにあります。実際、自分がこれまで走った道ではトンネルを含め全く聴けなくなったことはありません。
カーオーディオの「5G無し」「高速移動」「地方」と、考え得る最悪条件でこれなら優秀、携帯さえつながる場所なら少なくともCD音質で楽しめる可能性は高いと思います。
ハイレゾもロスレス再生する「Original Format」設定の場合は当然ながら音源のフォーマットと回線次第となり、例えば45Mbpsにも達するDSD512なんて100%無理、自分の回線では24bit/96kHzでも時々音飛びや「Poor Connection」エラーを起こすので常用はちょっと厳しいかな、という感じです。車ほど動かないモバイル利用、都市部の安定した(最近は都市部がネックのようですが)高速回線、大手MNOの大容量プランとかなら使えるのかな?
なおopus圧縮となる「Balanced」や「Bandwidth Optimized」設定ではエラー無く配信できるものの、音質に少しデグレードを感じるため使っていません。
Roon ARCにはダウンロード機能があり、任意のアルバムをスマホの内蔵ストレージにコピーしておくことができます。自分の回線で再生できない高レートの曲だけダウンロードしておけば、全てのライブラリをダウンサンプルすることなくロスレス再生可能です。そういう意味で「CPUだけ最新の安い機種でいいだろう」とiPhone SE(3rd)の64GB版を購入したのはちょっと失敗でした。ハイレゾ再生にこだわる場合は、Roon ARCであってもストレージの大きな機種が良いです。
フォーマット毎のデータレートはExcelで簡単に計算できます。

Roon ARCの「CD Quality」では最高24bit/48kHzまで通すので、flacで少し縮んで2Mbps以下、バッファリングを加味して4Mbpsもあれば安定再生できそうなものですが、車載ルーターの
DCT-WR100D(carrozerria、回線はドコモin Car Connect)
では日によって、また時間帯によってエラーが頻発することがあります。昨年購入した頃はこんなことは無く快調だったのに、少しずつ速度低下して4月頃にどん底、最近は持ち直してきています。1年分の通信料と2年分のSIMを前払いして性能が保証されないのはちょっと、ね。
「主力」音源として使うからには、たまにでも聴けなかったり音質モードを落とすのは許せません。そこでバックアップとして

のSIMを契約し別のモバイルルーターにセット、docomoの調子が悪い時は24時間の無制限プランを購入して運用しています。24時間といっても翌日24時まで有効※なので実質2日間使えて330円、土日だけならドコモ以下のコストで運用可能です。
※2024/9/17からはきっかり24時間となるそうです。
in Car Connectは停車時間や同時接続数の制限に少しストレスを感じてはいるもののデータ量無制限としては格安で、最終的な体制をどうするか?引き続き検討中です。
回線速度を担保してくれる業者が無い以上、「最終的」な解などなく2回線を確保して切り替え・状況により契約先も入れ替えるといった対応が必要かもしれません。
それにしても、たかだか数Mbps(それも下の方)のストリームでも100%安定再生できるわけではないのですね。5Gのギガbpsなんてどこの世界線の話ですか?と思ってしまいます。
携帯各社はいつ出るかもわからない最高速度なんて訴求するより最低速度を、10Mbps位は「いつでも」「どこでも」出せるようになってほしいものです。
さて、ここからは昔話をしてみようかの。
インターネット元年は何年?フレッツADSLが2000年12月提供開始だそうなのでその前後でしょうか。BSデジタルの放送開始も同じ2000年12月で、ネットにPCにAV機器(どれも今ほど安くはない)と、当時のオタクは欲しいものが多くて大変でしたなぁ。
ISDNがADSLに変わり、接続時間という概念が無くなったのはまさにパラダイムシフト、衝撃的でした。さらに光回線になって上り速度も上がったちょうどその頃登場したのが、かの

上り帯域をガンガン使うアプリケーションで、日本で広く知られた最初のものではなかったでしょうか。
Winnyの技術的な仕組みは見れば見るほど興味深く、アップロードするデータ(暗号化されたキャッシュ)を多く持っているクライアントがダウンロードも高速に行えるという発想に、
ブロードバンドらしい使い方が現れた!
と軽い興奮を覚えたものです。
まぁ、作者の意図と関係あったかどうか不明ですが、主な使われ方が割れDVDISOの共有というアングラ行為※だったためにその後は残念な経過を辿ることになります。
※当時はまだ違法ではなくグレーゾーンだったかな?インモラルであることは間違いないでしょう
アニメでは1995年(Windows95の年)ヱヴァンゲリヲン放送。全人類の思考が共有されてLCLに溶けちゃう描写はネットが急速に広がってゆく、そんな時代背景と合致しています。(2023/9/20:年号を修正しました。)
攻殻機動隊やserial experiments lainあたりもそうで、個人が高速回線で常時つながる時代はすぐそこなんだろうと、割と普通に思っていました。
ところが世の中そうはならず。補完計画は発動しませんでした。
ソフトバンクのおじさんあたりが仕掛けてくると期待していたのですが。
全ユーザーが回線容量を使い切るような使い方にはネットワークが耐えられないとして、プロバイダーや携帯会社は回避呪文「ベストエフォート」を発動。「ベスト」という名の「出来たなり」を提供し、
ユーザーが行き過ぎた大容量の通信を行うのは悪(abuse)である
との認識醸成に成功します。
「行き過ぎたデータ量」って何だろう。
他の人より多いのはダメ?
事業者の想定(=価格)に見合わないから?
理由は理解もしますが、なんか楽しくない。
携帯の料金体系しかりで、
「コネクテッド」の時代に、まだこんなことやってる。
接続時間分の電話代を払っていた頃に引き戻されたみたいで、もやもや。
これで「ギガ」の代わりに「Mbps(最低値)」だったら良いのに。
いちおう擁護しておくと、IIJmioは十分魅力的な価格で提供していると思います。しかし、その社名の通り日本のインターネットを切り開いてきたIIJさんだけに、こんな従量制の料金体系は打ち破って頂きたい。
mp3がflac、CDはハイレゾ、映像はHDになっても、ユーザーはサーバーのコンテンツを想定された回線容量の範囲内でダウンロードするだけ。
これではインターネット黎明期のユースケースと変わらないではないか。
あるいは、データ量の足りない双方向アプリの典型として古くは2ch、今ならTwitter改めXでしょうか。短絡的な感情だけは簡単に伝わるけど思考の共有なんて無理、すぐにミスコミュニケーションを誘発するので疲れます。
Winnyの作者である金子さんが亡くなって10年。あの事件以降ネットは進歩が止まってつまらない、と思うのはシニカルに過ぎるでしょうか。
Roon ARCは久しぶりに登場した「ユーザーが上りも下りもフルに活用する」ネットワークアプリケーションで、もちろん違法性はなく便利だから使っているのですが、入れ込んでいるのはこんな意識があるからかもしれません。
ARCのようなアプリが当たり前になって、ユーザーは自由に大容量の通信を活用する時代が来て欲しいし、関係各社は「ベストエフォート」とか「速度制限」からの脱却を目指して欲しいと、真面目に思っています。