
中学生の時、オーディオ店の試聴会でおじさん達を横目に
「右のスーパーツイーター鳴ってないですよ、それ」
とうっかり口走ったら追い出されました。若かったな~(遠い目)
それなりに機器を買えるようになる頃には聴力が衰えているなんて、オーディオとは無情な趣味です。
遅ればせながら我が車もハイレゾ対応を果たしました。96kHz処理となったプロセッサーアンプは48kHzまで、スピーカーも30kHzまでは出せるはず。
あ、これだと業界の定義には足りないんだっけ。まぁ、40kHzを再生できれば高音質!なんてものではないことは皆さんもう気付いてるんでしょ?気にせず進みます。
これまでプロセッサーが未対応であるのを言い訳にCD音質特化でやってきたのですが逃げられなくなったので、クルマで快適に、しかしダウンサンプルなど無くちゃんとハイレゾ体験するには?と考えていた方法を試してみました。
システム図
こんなシステムで実験しました。普通は黒のライン、今回は下のラインで、ここでのUSBはUSBメモリーではなくスマホからのUSB出力を利用することに注意してください。
ディスプレイオーディオ(ワイヤレスCarPlay対応品)

国内メーカーではアルパインに続きカロからも対応機種が出ました(2024/11 ケンウッドも)。そちらはAndroid Autoもワイヤレス対応していますが、今回の使い方ではiPhoneをおススメしておきます。理由を最後に追記しました。
CarPlayでは有線接続の方が音質が良いと
されています(末尾に遠回しに書かれています)が、今回さらに高音質を目指すためスマホのUSBは別のUSBオーディオ出力用に使います。ワイヤレス接続となるDAは操作専用で音質には関与しません。
この場合車載ルーターなど他のWi-Fiネットワークには参加できないので注意。これはワイヤレスCarPlayが(Android Autoも)通信方式として1対1接続のWi-Fiダイレクトを使用するためです。
(2024/11/17追記)ワイヤレスCarPlayとスマホのテザリング(インターネット共有)は併用可能なことがわかりました。レー探などWi-Fi接続が必要な機器がある場合はこれで対応できます。ただしWi-Fiの周波数帯(2.4GHz/5GHz)はCarPlay接続時にDAとのネゴシエーションで決まるため選べません。自分の機種では2.4GHz、ワイヤレスAndroid Autoが5GHz必須のため両対応の機種ではCarPlayでも5GHzとなるようです。5GHz Wi-Fi対応のレー探はまだ無い?ので結果的にDA7Zで正解でした。
共有はCarPlay接続後にONにする必要があり、ONのままにしていると次にエンジンを始動した時にCarPlayが自動接続されません。ちょっと面倒なので

iOSのオートメーション機能を利用し、CarPlayの接続に連動して共有をON/OFFさせるようにしました。
USBオーディオ機器

プロセッサー、DAC、DDCなどお好みで。上でも述べた通りUSBにはいくつかタイプがあり、ここで使えるのはUSB Audio Class対応のものです。
Lightning - USB 3カメラアダプタ

スマホに給電しながら使えるのは「3」がつく方のアダプタ。本体部のUSB(A端子)側にUSB機器、Lightning側に電源を接続します。
最新のUSB-C対応iPhoneの場合は、Apple純正の同等品はまだ無くHDMI付きの大柄なものになるようです。市販のPD対応HUBは使えるんだろうか。
CarPlay/USBオーディオ対応アプリ

(2024/8/10更新)自分はこんなアプリを使ってます(データ専用SIMのため電話は未使用)。このうち「Apple Music」「Roon ARC」「ベルリンフィル(Digital Concert Hall)」はロスレスやハイレゾロスレスに対応しています。
今回は「自宅からロスレス配信」のRoon ARCで試します(他のアプリも追記)。述べたようにWi-Fiは使えないのでモバイル通信で受信します。
接続手順
スマホをCarPlayに接続しておきます。といってもエンジン始動で自動接続するので初回以外特にすることはありません。
スマホとUSBオーディオ機器を(こちらは物理的に)接続。
コントロールセンターを呼び出し、右上のAirPlayアイコンをタップ。
CarPlayとUSBオーディオが表示されています。

USBオーディオ(「Primary Play Interface」がプロセッサーのUSB入力)を選択すると、画面はCarPlayのまま音声だけUSB側に切り替わりました。成功です。
実は以前USBオーディオの代わりにAirPlayレシーバーで同じことができないかと試した(この場合CarPlay側が有線接続)のですが、その時はAirPlayを選択するとCarPlayの接続が切れてしまいました。USBオーディオに対しては音声のみルーティングできるようです。

もちろんハイレゾもロスレス伝送できています。CarPlayの音声仕様はUSB接続のロスレスでも48kHz止まりでワイヤレス接続時はAAC伝送(
WWDC2016のプレゼンテーションより)、DAにはデジタル出力もないのに対してアドバンテージです。
ただし
以前実験した結果では、4G回線でRoon ARCを使ってストリーミングできるハイレゾは24bit/96kHzがぎりぎりいけるかどうかで、安定的に常用するのは困難でした。その後回線を変更し96kHzの成功確率は上がりましたが、それでも100%にはなっていません。
高レートの音源はRoon ARCのダウンロード機能を使って予めスマホにコピーし、CDフォーマットはストリーミングするよう設定すれば全ての音源をロスレス再生できます。自分のライブラリを集計してみたら、512GBのiPhoneが必要と出ました…
このように最初だけスマホでの操作が必要ですがあとは自由。

通常のCarPlayとしてDAの画面で操作することも、
カメラアダプターが野暮ったいのと白くて目にうるさいので、CableJiveの延長ケーブルを使ってコンソールボックスに隠しました。
ナビアプリと併用したり、DAとスマホで2画面運用することも可能です。CarPlay対応でないアプリもこの方法で使えます。
残念ながらナビアプリの音声はUSB側には割り込んでくれませんでした。これさえクリアできればパーフェクトだったのに惜しい。(これは再生アプリがUSBを排他的に使用できていることの証左でもあります。96kHzや192kHzで再生中に案内音声を割り込ませる「ハイレゾ対応ナビアプリ」なんてあったらたまげるけどねw。余計な音声が出ないのでかえって好ましいという人もいると思います。)
案内が必要な時は音質を気にしている場合でもないのでアナログ接続を使えばいいか。
以上で実験終了。
ガチなオーディオではUSBと言えどソースユニットによる音質差はあり、今回のようなスマホベースのシステムで高級DAPやハイエンド車載プレーヤーのレベルまで行けるかどうかはわかりませんが、ロスレスで伝送できておりデータとしては同じ。十分高音質と言ってよいと思います。それが使い勝手の良いCarPlayで得られるのは魅力です。
ワイヤレスCarPlayなら今後も純正採用されるでしょうから、社外品の接続が難しくなってきたカーオーディオでは希望が持てる方法ではないでしょうか。
加えて、演算能力に長けるスマホなら信号処理による音質向上も期待でき、「化ける」可能性もあるのでは?と思っていますが、このネタはいずれまた。
(2024/9/9追記)
ロスレス再生が可能な他のアプリも試してみました。CarPlayとスマホの画面を並べています。
Apple Music / アップルミュージック

Apple Musicでは、44.1/48kHzのALACを「ロスレス」、88.2/96/176.4/192kHzを「ハイレゾロスレス」と表示します。配信されているフォーマットはスマホ側には表示されますがCarPlayの画面ではわかりません。

ロスレスのバッジをタップするとフォーマットが表示されます。

ロスレスやハイレゾロスレスを指定し、その音源があっても、回線速度が十分でない場合は自動で下位のフォーマットにフォールバックされるようです。

フォールバック状態ではこのような表示になります。「利用可能」だけど何らかの理由でそうなっていないことを示しています。音質よりも安定して聴けることを優先しているわけで、Roon ARCが音飛びしようとエラーになろうと設定した音質で再生しようとするのに比べると設計思想の違いが見えて面白いですね。どちらが優れているとは言えません。
Apple Music Classical / アップルミュージック・クラシカル

Apple Music Classicalもロスレスやハイレゾロスレスでの再生が可能です。回線速度に対する挙動はApple Musicと同じ。
アプリはまだCarPlayに対応しておらず選曲をスマホで行う必要がありますが、この通り再生中の曲はDAに表示されました。
(2024/11/13追記)CarPlayに対応しました。
Digital Concert Hall / デジタル・コンサートホール

ベルリンフィルの配信サービス、デジタル・コンサートホール。動画が見られるスマホの画面にもフォーマット表示は見当たりませんが歯車アイコンの設定画面で確認可能です。

「ハイレゾ」設定で48kHzまたは96kHz(音源により固定)のFLACになります。回線速度が足りなければ自動的に「通常モード」のAACにフォールバックされます。つまりロスレス再生のためには96kHzまで対応する必要があり、再生システム的にも回線速度的にもApple Musicよりハードルは高めです。

回線が不安ならダウンロード機能が使えます。ただし動画や曲により空間オーディオも含まれるためデータ量は大きく、ダウンロード速度も速くないので家で準備しておいた方が良さそうです。クラシックなら1回ダウンロードすれば一日もつ場合が多いでしょうから負担感はそれほどでも。
Qobuz / コバズ

(2024/11/3追記)
全曲ロスレス対応の高音質配信サービス、Qobuzが日本で待望のサービスインを果たしたので早速加入しました。始まったばかりで楽曲のラインナップやメタデータの整備が追いついていない感はあるもののそのうち改善されてゆくでしょう。
QobuzはRoonと統合可能なためRoonのユーザーはRoonや
Roon ARCアプリから利用できますが、このQobuzアプリもCarPlay対応しており使いやすく仕上がっています。高音質をうたうだけに?フォーマットの表示が他より直接的です。
回線速度が遅いと、バッファリングのため再生開始が遅れます。挙動としてはRoon ARCと同様フォールバックを避け音源のサンプリング周波数を守ろうとする傾向のようです。(本当によわよわな回線ではわかりませんが)
バッファリングは再生開始直後の早い時期に1曲分終わらせる動作で、次々にスキップしながら丸一日使ったらデータ量が10GBを超えましたw

ハイレゾ配信の上限を96kHzと192kHzから選べるのは現在のモバイル回線の実力に合っており、(DSPの処理レートが96kHzや192kHzへの移行期にある)カーオーディオでも使いやすいです。Roon ARCではCD Qualityの上はOriginal Formatとなりこういう設定ができないので、自分のライブラリがある程度カバーされたらこっちを主力アプリにしてもいいかも、と思いました。
回線状態さえ良好なら、という条件はつくものの各アプリとも音源通りのサンプリング周波数でUSB出力できており、アプリを切り替えても特に問題なく周波数がスムーズに切り替わります(USBDACモードにしたDAPで確認済み)。iOSでのUSBオーディオの処理はAndroidはもちろんMacOSと比べても洗練されているように思います。
また今回利用したアプリでは強制的なアップサンプリングもなくCD音源が44.1kHzで出力されるのもオーディオ的には安心できる動作です。Roon ARCでは明示的にアップサンプルすることも可能で、この「明示的に」選択できるのが大切なんです。
対してAndroidの場合ハイレゾ再生するには、というかそれ以上に重要なOSによるデータ改変なく再生するには、UAPPやRoon ARCのように独自のUSBドライバーを備えたアプリが必要で、その仕組みをもたない多くのストリーミングアプリではOSのミキサーを介した48kHz(ビット数はAndroid OSのバージョンにより16または24bit)での出力となります。ただ一部の機種では独自にOSを拡張してハイレゾ対応していたりと状況は複雑で、このあたりの事情は自分がAndroidでUSBオーディオを追いかけ始めた2014年から大きくは変わっていません。
HiByやiBassoなどSRC回避機能を備えたDAPという選択もできるようになりましたが、スマホのようなディスプレイオーディオとの連携は困難です。OS側ではようやく
対応の動きがあったところなので、市場の入れ替えが進みアプリが対応するまでもうしばらくかかりそうです。
Android派の自分ですが、オーディオ端末としてiOSは優秀と認めざるを得ません。ストリーミングとローカル再生を取り混ぜ利用するには様々なアプリでイイ音で楽しめることが要求され、そういう使い方では依然差は埋まっていない感があります。
(2024/11追記)試していませんが、QobuzはUAPPやRoon ARCに対応しており、この組み合わせがAndroidにとって一つの解になるかも。

Geminiさんにちょっと意地悪な質問をしてみました。