
最近の3Dプリンターの進化は物凄く速いペースで進んでいますが、進化が遅れていると言うか足りて無いのではないかな?_と思えるE軸の解像度。
最近ではスカーフシームなどと言うシーム跡が出難い印刷方法が出てきましたが、今まで以上に吐出量のコントロールが微細になり、機体の限界を超えているのでは?って感があります。
そんな事を言いつつも、私も具体的な数字で確認した事が無く気になっていたので、今回確認して見たいと思います。
E軸の解像度を考える前にXY軸の解像度を確認して見ます。そのXY軸の解像度とE軸の解像度がイコール位であれば良い印刷が出来るのでは?と思います。
XY軸を1mm移動させるのに必要なステップ数は、オールドプリンターでは一般的に80ステップになっていると思います。なので1ステップでの移動量、すなわち最小の解像度は 1÷80=0.0125mmとなります。
PRUSAスライサーをオールドプリンターで使用する際にプリセットであらかじめ設定されている設定値を使用すると思いますが、あまり気にしない項目の解像度の項目が今回の計算結果と同じ 0.0125mmとなっていることが多いと思います。XY軸の解像度とスライスの解像度を合わせて無駄が無いように設定されているようです。
ですが実際にはXY軸は同時に同じだけ動くとベッドスリンガータイプのプリンターでは45°に移動する事になり、解像度が√2倍低下してしまいます。
なので実際には最小の解像度はもう少し粗く、80 →57パルス、0.0125 →0.018mm程度となります。
チョットだけ脱線ですが、
最新のプリンター、例えば PRUSAのMK4Sではステップの細かいモーターが採用になってXY軸の解像度が向上しているので、PRUSAスライサーの設定値を見ると解像度に細かい数値が設定されていることが見て取れます。1mmで125ステップ程の解像度になっているようです。(エレファントフットの補正値も結構大きな値が入ってるんですね。)
ここからE軸の解像度の確認になります。
写真はオールドプリンターでよく使われているMK8のエクストルーダーです。私の環境ではフィラメントを1mm押し出すのに97ステップ必要になります。
ここから少し小難しくなりますが、通常印刷している時にどれだけの押出が必要になるのかを考えます。条件として印刷幅0.42mm、積層高さを0.1mmとして計算すると、1mmの長さを印刷するのに0.042mm3の体積のフィラメントが必要になります。直径1.75mmのフィラメントの長さで考えると0.017mmの長さが必要になり、ステップ数に換算すると1.7パルスとなります。
XY軸の解像度は1mm当たり57パルスありますが、E軸は1.7パルスしかありません。コントロール出来ていないと言って良い感じです。
次にMK8の次の世代に当たる?TITANエクストルーダーです。パンケーキモータと組み合わせてダイレクトエクストルーダーに改造した人も多いと思います。このエクストルーダーがギヤードになっていて減速されているので解像度が向上しています。3:1と3.5:1のタイプがあるようですがMK8から3倍程度の解像度向上なので焼け石に水かな?
350パルスで1mmの押出しとして、1mmの印刷長さ当たり6.1パルスの押出しになりました。MK8よりは良い感じですが6.1パルスと言うのは1/16のマイクロステップを含む数値なので、フィジカルステップでは6.1/16=0.38ステップにしかなりません。マイクロステップについては
https://minkara.carview.co.jp/userid/2092714/blog/48025485/ ←こちらのブログに書いてありますので興味があれば読んでみて下さい。
最後に最近世代のプリンターのエクストルーダーです。QIDIで9.5:1、PRUSAでは10:1のギア比が採用されたようです。
1000パルスで1mmの押出しとして、1mmの印刷長さ当たり17.5パルスの押出しになりました。フィジカルステップにして約1.1ステップになります。やっと何とか制御が出来るような解像度になってきましたがスカーフシームなどを考えると全然解像度が足りないのでは?
スカーフシームを20mmで行うとき必要な吐出量は平均で通常印刷の半分になるので、E軸は20mmのスカーフ中にマイクロステップで175ステップ、フィジカルステップで11ステップの制御感になります。
対してXY軸は20mm移動でマイクロステップで1131ステップ、フィジカルで71ステップになるので、E軸の解像度はX軸に対して1/6.5程度しか確保されていません!
やっぱり解像度が全然足りていない。。このあたりがコンシューマ用のプリンターの「今ココ」の様です。コンシューマ用はあくまでもホビーなのでこんな物のようです。今の所は未だ余り高級な機種を購入しない方が良いかな?
業務用の3Dプリンターはスペックが公表されてないので確認出来ないのですが、唯一数十万円のローエンド機で確認できた物では19:1のギア比が採用されていました。それでもXY軸の57ステップに対してE軸33ステップなので、もう少しE軸の解像度が欲しい感じです。
現在のコンシューマ向け3DプリンターはE軸のギア比を高くする事で印刷品質の改善が望めるという事が確認できたかな?
(プロフェッショナル向けとコンシューマ向けの業界でしがらみでもあるのかな?という事でメーカーはこの辺りの話には触れないようにしているのかな?)
計算が間違っていたらごめんなさい。初めて計算したので確かめ算するまでに至っていません。
そして簡単にE軸のステップ数を増加させる方法は、「積層高さを2倍にする」です。
積層高さを厚くすれば1mm印刷当たりのE軸ステップ数を増加させる事ができます。
積層高さをあまり薄くしないのが「吉」。
~おまけ~
PRUSAスライサーの プリント設定 → モード||アドバンスド → オーバーラップ の項目がありますが、15%の値が標準的の様です。プリセット値が25%になっていることがあると思いますが、その場合15%も試してみると良いと思います。
オーバーハングの印刷品質が改善する気がします。
QIDIのプリンターのX軸。伝統的な金属製丸パイプのリニアレール。
ここが重たいと印刷品質が低下します。
↑66000円@中国深圳
PRUSA CORE ONE のX軸。VORONみたいな作りですね。重たそうに見えますが、まぁVORONスタイルなので大丈夫なのでしょう。
リニアレールはXZ面に装着するのが良いみたいです。XY面に装着されているモデルではトラブルの原因になることがある様です。
コミュニティーと仲良しのPRUSAさん。
↑20万円@チェコ
bambulab X1C の X軸。 カーボン製の丸パイプのリニアレール。このパーツは工業規格の標準品ではなく、このプリンタの為の特注品?specialパーツで出来ているそうです。(そうどこかで読んだ記憶です。)
カーボンは難切削で大変だそうなので、よく採用したな!っていうパーツです。深圳のサプライチェーンのプレミアムな部分が生かされています。(bambulabの人がYoutubeでそう言っていた)
3Dプリンターにとって可動部の軽さは最大の正義になります。
↑20万円@中国深圳
ハードウェアはBambuLabが一歩リードといった感じですが、最近のスライサー問題の悪手の一件で業界内での嫌われっぷりにとどめを刺してしまった感があります。悩ましい問題です。Stratasys社からは特許侵害で全機種の販売停止を求められ係争中でもあるようです。
E軸の解像度で見ると今の所どれもイマイチです。次のモデルからはスカーフシーム対応のためE軸の解像度を上げた機種が販売されるのか?? 今の所安価なQIDIがベストバイかな?
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2025/02/18 03:37:53