
最近の 3Dプリンターは Crealityも QIDIも PRUSAも ANYCUBICも ELEGOOも、猫も杓子も
CoreXYタイプが人気の様です。
高速化に効果を発揮する CoreXYというイメージがありますが、よくよく考えてみると45度斜めに設置したベッドスリンガー式とXY軸の位置決めの理屈は同じだという事に気が付きます。そしてさらに考えるとY軸方向の移動に弱点があることが分かりました。
3Dプリンターの印刷品質の向上と高速化には、稼働部品に対して
1,軽量化
2,低フリクション化
3,高い駆動力と解像度の高い制御
が求められることになります。
こちらは従来の? ベッドスリンガー式 3Dプリンター
家庭用3Dプリンターを牽引してきた方式なだけあって中々に理にかなった設計になっています。
一見で分かりますが、Y軸のテーブルが重量物となって印刷速度向上のボトルネックとなり易い形式です。ですが過去からの流れの中でプリントヘッドのダイレクトエクストルーダー化や大型の冷却ファンの採用が行われてX軸上に乗るプリントヘッドの重量が増加傾向にあるので、それを考えるとX軸とY軸でうまい具合に重量を分担する形になっています。(それでもY軸は重たそうですが)
なので低価格なベッドスリンガー式の3Dプリンターを選択する場合には小さめのプリンターが良いのかな?
ですが現代においてベッドスリンガー式3Dプリンターにどうにもならない弱点が発生しました。
印刷が進むと印刷物によってY軸の重量が重たくなります。するとインプットシェーパーで計測した振動特性に変化が生じてしまうので、制御に頼る印刷品質の向上にはある程度の妥協があると言わざるを得ない形式となってしまいました。
そこで一気に採用が進んだのがCoreXY式の駆動方式のプリンター。
印刷テーブルはZ軸上に配置する事になるのでXY軸は印刷物の重量の影響から解放されます。
という事で印刷品質の向上を目指すインプットシェーパー制御と矛盾の無い形式となっています。
CoreXYと聞くと高級なイメージが付いてしまいますが本来そんな事は無く、使っているモーターは同じだし、個数が増える訳でもなく、ただベルトが長いのとベルトを受けるローラーを多く使うだけなので、USAでは200ドルを切る価格で販売されてたりします。
出典 https://reprap.org/wiki/CoreXY
このCoreXYですが、X軸の移動はベッドスリンガー式と同様に印刷ヘッドのみの移動なのでとても軽量なのですが、Y軸の移動はX軸を支える機構ごと移動する事になるので重量が重たいのと、フリクションも同時に大きくなってしまいます。ここに機械的な弱点を持つのですが、、
印刷品質の良い機種ではX軸の軽量化の為に贅沢にもカーボン製のパーツが採用されていたりする訳ですが、、
出典:https://fablabkamakura.fabcloud.io/FabAcademy/support-documents/SimpleCoreXYPenPlotter/
CoreXYのモーターとベルトの配置の図ですが、

Y軸上の直線移動を得る為にはABのモーターを逆回転で同じだけ回転させて直線移動を得ます。
(機械的に重たくなるY軸の移動時に2つのモーターから駆動トルクを得られる配置になっているんですね。)
X軸上の直線的な移動では、2つのモーターを同じ方向に同じだけ回転させて直線移動を得ます。
(軽量なX軸の移動に対して大きなトルクが出るのはモッタイナイかな?)
という事は45°移動の時には片方のモーターだけを動かして45度移動を得る事になりますね。
(ここはシングルモーターで駆動力が減ってしまうのと、重たいY軸の動きが重なるのと、モーターの回転が1.41倍必要になるのでモーターの回転が高速になりトルク低下が発生したり、でプリンターとしての弱点になり得ます。)
XY軸の位置決めに関しては斜め45度に配置したベッドスリンガー式のプリンターと同じことになります。
CoreXYだからと言って凄い訳でも無くて、ベッドスリンガーだから劣ると言う訳でも無く、
何だかCoreXYって機械的にカッコ良く見えるので高性能な気がしてしまいますが、見た目に引かれないように考えるってなかなか難しいですね。
CoreXYの特性を纏めると、
機械特性
駆動特性
合成?
適当に合成して検討すると、特にY軸の重量とフリクションが原因となり45度方向の駆動トルクが足りない?ことと、駆動の方向によって駆動トルクがバラつく事が分かります。
(最近、某有名メーカーのフラッグシップ機に円をうまく印刷出来ないという症状が発生している様ですが、この様なトルク変動にサーボモーターの駆動コントロールがうまく適用出来てない事が想像出来ます。)
対策として、
Y軸にアシストモーターを付けてみました。
(実際には左右にシャフトを伸ばしてベルトを左右で2本張ると、CoreXYの過渡特性でX軸をよじる様な力が加わりフリクションが増加する懸念を、Y軸の2本のベルトでX軸をY軸に対して垂直に保持する効果を同時に得られるので、モーター追加の脳筋的な発想だけれどテクニカルな要素にも効果的に作用。結構良い方式だな笑。Y軸2モーターX軸1モーターも考えられるけれどちょっと脳筋が過ぎる?Y軸の単純さに対してX軸の複雑さにバランスが? ココは実験的に印刷品質を観察する必要がある? 長くなるので以下省略。(今日は「脳筋」という表現がマイブームです。)
再度、適当な合成で確認すると、
XY軸の駆動特性が良い感じに改善しました。
このようにCoreXYにプラスしてY軸にアシストを追加すると全方向に同じ様な駆動トルクを発生するのと共に、大型化によるX軸機構の重量増に対応し易い構造とする事ができます。
こう言う素性の良さが印刷品質を向上させるかと思います。
今日、25日23:00に発表になる Bambu Lab社の H2Dという新型フラッグシップですが、多分↑のような構成のXY機構を採用してくるんじゃないかな? と、このカーボンシャフトを採用せず金属製のリニアレールに変更になったX軸を見て想像するわけであります。
最近、車中泊仕様の荷室を作り変えていて 3Dプリンター製のパーツを使いたいのですが、車内の熱に対してはABSだったり、重量物に対してはポリカーボネイドを使いたかったり、大きさも欲しかったりで新しいプリンターの購入を考えていたので納得のいくXY機構を考えて見ました。
(静的には成立するんだけど動的にはどうかな??軸別のベルトの長さとテンションの差はインプットシェーパーで何とかなるのかな?疑問は残ります。)
・E軸の解像度と精度問題
・理論的に弱点の無いXY機構
・庫内を加熱するホットチャンバー
・ある程度大きいビルドボリューム
・熱抵抗の小さい厚めのビルドプレート
ここに上げた要素を満たすプリンターが出現したら、少し高価でも不満少なく長く使えるのではないか? と思いますが、どうなんでしょうか? 今のところ上記の要件を満たすプリンターは存在しませんが、
Bambu Lab
H2D 期待大です。
数年前まではCoreXYはベルト機構の調整が難しくて直進を得るのにも調整が大変だ。とか、MARLINファームウェアの8bitCPUでは計算スピードが追いつかなく成って仕舞うと言う不都合もあり敬遠する様な意見が多くあったのですが、3Dプリンターは時代の変化が早く時代が変われば言う事が変わるものだなぁと、つくづく感じるのでありました。
Klipperの台頭もこのCoreXYとインプットシェーパーの導入と共にメインストリームになった感じですね。
クリアリティーのK2 Plusは昔言われていた欠点を愚直に改善した感じで納得感のあるハードウェアで良いのですが、昔からの不安のあるサポート体制と、フィラメントが座屈しやすい欠点がある様なので購入まであと一歩の所で断念してしまいました。
QIDIは大型でヒートチャンバーも装着で一見良いのですが、お茶目なハードウェア設計と最新のKLIPPER0.12採用でも0.12内でのバージョンが古くリニアアドバンスに問題があって使用出来ない問題があり、メーカーが対応しない姿勢を表しているのでこちらも購入一歩手前で断念。
PRUSA は割高で触手が伸びず。
そんな感じで調べている間に理想が高くなり今に至ります。
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2025/03/25 06:39:12