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2022年12月06日 イイね!

エンジンのパワーアップを考える。3

エンジンのパワーアップを考える。3エンジンのパワーアップを考える。1、2 では、P-V線図の読み方が分かって来たかと思います。



燃焼の速度はピストンの移動速度に対して十分に高速では無いため、TDCの手前から燃焼を開始しても、ピストンの降下による燃焼圧力の低下が発生するまでに燃焼が完了する事も無く、理想的な燃焼は得られて無い事が分かりました。



出典 https://glanze.sakura.ne.jp/ignition_timing.html

そこで早過ぎもせず、遅過ぎもせず、ノッキングもせず後燃えも少なくなる、熱効率が一番良くなるタイミングに点火タイミングを調節する必要が発生します。
上図で見るとグリーンのラインが最大の熱効率になる点火タイミング、MBT点(Minimum advance for the Best Torque)Wikipedia となっていて、P-V線図にすると面積が一番大きくなる点火タイミングになります。そこから早過ぎても、遅すぎても効率(パワー)は落ちてしまう事になります。ですが点火タイミングの調整ではMBT点以上の改善は望めませんし、逆にノッキングなどの要素によりMBT点に点火タイミングを設定できるとも限りません。
(補足 右のグラフはP-V線図のTDC付近を拡大表示したグラフです。色付きの面は各点火時期に応じ、下図の理想に対して失われる面を表しています。)


↓パーフェクトに理想の燃焼



根本的にはこの燃焼を目指して燃焼を改善してパワーアップや効率の改善を行う訳ですが、要するに「燃焼を一瞬で済ませば良い」と言う事になります。
実際には、”燃焼の速度を上げる” 事がエンジン改善の全てとなる事と成ります。その上での点火時期の設定ですね。

ここまでで初めて触れる要素になりますが、エンジンには ”圧縮工程” が有り、混合気を圧縮してから燃焼を行っています。P-V線図で見ると圧縮の工程は黄色の面積を狭める働きしかしておらず無駄のように見えますが、圧縮比を上げると燃焼速度を上げる事ができると言うのが圧縮を行う理由となっています。
何と無くで圧縮して点火するとバーーンと燃えると言うイメージが湧きますが、間違いでは無い様です。


出典 https://autos.goo.ne.jp/column/984332/

この図を見ると、圧縮比14位までは熱効率の改善(燃焼速度の向上)の効果が大きく得られるようです。圧縮にはエネルギーが必要なので得られる効率とロスとを相殺して考えるために「熱効率の改善」と表現されているようです。


では実際に圧縮比を上げたエンジンを用意したと仮定して、燃焼をグラフで見てみましょう。

出典 https://glanze.sakura.ne.jp/knocking.html

ココで問題が発生します。上図では2種類の問題が表現されていて、一つは「プレイグニッション」。スパークプラグでの点火の前に自己着火してしまいTDC手前での燃焼が大きくなり燃焼室の圧力が大きく上昇してしまっています。ヘッドガスケットが抜けてしまいそうですね。もう一つの問題はグラフ中で赤線で書かれている「ノッキング」。スパークプラグでの点火の後にプラグ以外の場所から自己着火してしまい、燃焼室内の圧力が通常時よりも大きく上昇してしまいます。
これらの異常燃焼はシリンダーヘッドやピストンなどの表面から発生する為金属に大きな熱を与える事になり、ピストンに穴を開けるなど絶望的な故障に繋がります。
出典元のページにはノッキングが発生している燃焼の動画が有りますので参考にして下さい。SRの燃焼室の状態ともプラグの位置など似ていると思います。

ノッキングの原因はプラグから遠い場所にある混合気(エンドガスと呼ばれる)が、プラグに近い混合気の燃焼により圧縮され熱を帯びて自己着火する事で発生します。点火による燃焼の開始から燃焼の終了までに時間が掛かるとノッキングの可能性は増加する事になりますし、圧縮比が上がると着火前の圧力が高く成るのでリスクが高くなります。エキゾーストバルブやその周辺では燃焼室壁の温度がインテーク側と比較して高くなっているのでそれも原因となります。
逆にプラグが燃焼室の中心にあったり燃焼室がコンパクトなど、燃焼終了までの時間を短縮できる要素が有ればノッキングが発生する可能性が低下するので、圧縮比を高く設定する事が出来ると言えます。
ハイオクは燃え難いと言いますが、このような過酷な状況の中でエンドガスに火炎が届くまで自己着火せずに待てる性能が有るって事ですね。


エンジンの圧縮比の設定は、混合気を急速燃焼させる為の”燃焼室の性能” に応じて設定されている。と言っても良いかと思います。


仮定の話ばかりでしたので実際の話を少し。
SR500のオーバーホール時にピストンが無くSR400のピストンを流用してハイコンプ仕様にする場合があるかと思います。その場合の圧縮比はSR500ノーマルの 8.3 から 10.5 まで上がります。
だいぶ圧縮比が高くなるので燃焼速度は改善される筈ですね。あらかたの評判には、「パワーは上がるけれども壊れる」と言う物がありますが、何が起きているかを考えてみると、
1、燃焼のスピードが上がっている。
2、燃焼室内の圧力が上昇しているのでノッキングへの耐性が低下している。
この2つが同時に発生する事になります。

MBTでの点火のグラフを用いて考えると以下のようになります。圧縮アップ後の状況を破線で書き足しました。


青→点火タイミングが早過ぎ、緑→最適MBT。赤→遅過ぎのラインです。(後燃えのラインは面倒なので書きませんでした)
実線がノーマルの圧縮比でのラインで破線が圧縮比アップのラインとなります。
圧縮比アップ後の破線は燃焼速度が上がった分だけノーマルよりも立つ事になりますので、点火の始点は一段階遅くしています。
そうするとP-V線図で最大の面積を稼ぐMBTはTDC側に点火タイミングが後退する事になります。一歩理想に近づく訳です。
点火時期をノーマルから動かさない場合は点火時期が早過ぎて効率が向上しないばかりでは無く、ノッキングが発生してしまいます。ノッキングが一度発生すると燃焼室の圧力は想定を超えて上昇するので温度も上昇してしまいます。そうするとプラグが熱せられてプレイグニッションが発生してしまったりで状況は更に悪化し、プラグやピストンを溶かす事となってしまいます。
MBTでの点火でも圧縮比の上昇でノッキング耐性は低下しているので、燃調を濃くしたりハイオクを使用したり、補助的な手法も併用してマージンを確保します。

SR400のピストンを使用したハイコンプ仕様で何が起きているのか?理解が出来るようになりましたね。圧縮を上げたエンジンでは燃焼速度が向上するために、点火時期を未調整とすると燃焼効率がBESTでは無いだけでは無く、プレイグやノッキングでエンジンを壊す恐れがある。圧縮比の事を理解するにもコレだけの知識が必要になってきます。

エンジンの実際は、特に高負荷域ではノッキングが発生しやすいのでMBTで点火を行うとノッキングが発生してしまいます。なのでMBTよりも遅い点火タイミングで運用されていることが殆どです。なので点火タイミングに対するノッキングの余裕がある場合には点火タイミングは早めた方が効率は良くなるイメージになります。

ハイコンプにしたエンジンの壊れる壊れないの話に、「エンジンオイルの交換を指定の距離できちんと行なえば…」と言う人がいるらしいけど、、、そう言う考え方はどうなのかな?w



https://www.daytona.co.jp/products/single-95233-parts

デイトナの点火時期調整プレートです。商品ページに行って「備考」の欄を見てみましょう。
――――――――――――――――――――
備考
※ハイコンプエンジンの場合、遅角させてノッキング対策も可能。
※点火時期は年式により異なります。
※FI('10~)の場合は取り付けは可能ですが、ノーマルの点火時期がBTDC約38度とかなり進角しているため、ベースプレートでさらに進角させても性能向上しません。
※点火時期の変更によって燃調のセッティングが必要な場合があります。
――――――――――――――――――――
何となく小難しくて読み飛ばしてしまう備考欄ですが、商品PRの文面よりも備考欄の方が意味がある事が理解できるようになったかと思います。こうなってくるとエンジンの仕様を考えるのが楽しく成ってくるかと思います。


ですがメーカーが作ったエンジンなので、そうは簡単にパワーアップはさせてくれません。しかも日本メーカーのエンジンは、世界でもTOPを争えるエンジンですからね。


ココまででエンジンのパワーアップとは、
・兎にも角にも燃焼速度を向上させる手段を探す事になる。
・点火タイミングは燃焼のスピードに合わせて変更が必要になる。
・エンドガスの存在がノッキングの原因で、エンドガスが燃焼ガスに圧縮・加熱されて自己着火を起こしてしまう。ソレがノッキングの正体。ハイオクは燃え難いという話はこういう場面で有効に働く。
・大体のエンジンはMBTまで点火時期を進めるとノッキングが発生してしまうため、MBTよりも遅い点火タイミングで運用されている、



昔のエンジンは馬力競争の中での開発だったので、吸排気を改善するためにと大きなバルブを装着したがりました。その為にボアを大きくとり燃焼室を大きくして排気量に対して大きなバルブを配置しました。必然的にショートストロークとなり高回転での最大出力を大きく取る事に都合が良いコンセプトとなりました。排気規制も緩く燃費に対する意識も低かったのでノッキングはガソリンを多く供給して燃焼室を冷却する事で回避していたようです。
最近では排気ガス規制が厳しく燃費への意識が高いので、燃焼室を小さくコンパクトにする為にボアを小さくするので必然にロングストローク傾向となる事になります。バルブ径はレイアウトの制限を受けて小さくなりすが、燃焼改善の為にタンブル流が重要視されているので都合が良いです。全て必然の流れになっているんですね。



つづく。



難しく専門的な参考にしているページの方が正しい知識が書かれていると思います。ですがいきなりソレで全てを理解するのは難しいので、知識を身につける基礎、専門的なページへの橋渡し的な読み物になればな と思います。




Posted at 2022/12/06 03:23:57 | コメント(2) | トラックバック(0) | 日記
2022年12月05日 イイね!

エンジンのパワーアップを考える。2

エンジンのパワーアップを考える。2前回の「エンジンのパワーアップを考える。1」では、下図の様なグラフを用いて ”理想の燃焼” と ”現実の燃焼” には剥離が有る事を説明しました。出典 https://glanze.sakura.ne.jp/propagate.html



横軸がクランクシャフトの角度で縦軸が燃焼室内の圧力となっていますが、今回はこのグラフをもう少し詳しく見ていきたいと思います。




少し補足を入れました。
①吸気が完了した下死点。圧縮工程の始まり
②圧縮工程
③上死点前の良き所で点火
④グリーンのラインは燃焼期間を表す。
⑤膨張行程の終わり

となっています。ピストンの位置と燃焼室の圧力のイメージが頭内に再現出来ているでしょうか? 燃焼は膨張行程のい大きな範囲で行われているイメージが有ると思いますが、実際は上死点付近が燃焼の期間となっていますね。

https://youtu.be/KayDMu6_x70

こちらの動画は大分デフォルメされたエンジンの燃焼のイメージですが、燃焼の期間が正しく理解できると思います。


次の補足は燃焼で得られる圧力を黄色の面で表しました。

青の富士山型のラインは点火を行わない場合の圧力変動のラインになります。点火を行うとその上に嵩増しされる形で圧力が得られているのが分かります。

さて、グラフの左上にもう一つグラフの様な物が描かれていて気に成りますが、これは “P-V線図” と言いまして、縦軸に燃焼室圧力(P)を取り、横軸に燃焼室の容積(V)を取って動力として取り出せる燃焼室内の圧力を ”面の大きさ” として表しているグラフになります。
黄色で塗った面と形状が双方で似ていますが、P-V線図の横軸は容積(V)になっているので 左端が容積が最小になる上死点(TDC)となっています。
大きな方のグラフを中央のTDCのラインで二つ折りにして、TDCを左に BTC(bottom dead center) を右に置いて重ねたラインと同一になる様に書かれています。


実際にTDCより左側のラインを右側に転写すると、グラフの黄色の面と“P-V線図”の面が同じ形に成りました。(細かい事は抜きにして。)
TDC手前で点火されているのでTDC到達前に燃焼圧力が上昇した分のラインが右側に転写されるので、黄色の面積が減少したのが分かりますね。

エンジンの出力や効率の向上を図る場合、この黄色の面積を拡大するような燃焼を目指す事になります。内燃機関の熱効率は1990年頃で30%程度でした。SRや他のオートバイはそれ以下なことは確実なので、少しの燃焼の改善でも大きな結果となります。



ココまでで前回言いました、

TDCで点火が行われて、そのTDCで即座に最大の燃焼圧力に達する「神様のエンジン」。

意味が分かる様になりましたね。
ツインカム、ペントルーフ型燃焼室、センタープラグ、本体の水冷化、コンパクトな燃焼室などよく聞く技術の名前ですが、コレらは全てこの少しの面積の黄色の面を増やす為に投入されている事が理解出来ると思います。

このPV線図は燃焼側で得られる側の360℃を表していますが、吸気側でロスするポンピングロスと同じに書かれるのが一般的かな?出典 Weblio 辞書


上側の面が燃焼で得られる上記で説明した圧縮工程と膨張行程で出来る面。
下は吸気でのロスを表す ”ポンピングロス” の面になっていて、排気工程と吸気工程で構成される面に成っています。よく聞きますよねポンピングロス。具体的にはココに効いてくるんです。

言わずもがな
上の面積 ー 下の面積 = エンジン出力  です。




読んでいて疲れますよね。書いていて疲れました。 続く。




ちょっと、エアクリ交換して吸気ロス減らしてみましょうか?


パワーアップ出来ましたねw



Posted at 2022/12/05 15:34:52 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2022年12月04日 イイね!

(SR)スイングアームのガタ。強化ベアリング? その2

(SR)スイングアームのガタ。強化ベアリング? その2前回のブログからの続きの記事になります。

旅行から帰ってきて早速、スイングアームのベアリングを調査してみます。


このスイングアームの内部は少し錆びてしまっていますが、ベアリングの奥には少し奥まで打ち込めるだけのスペースが有りそうです。

ではベアリングを外してみます。

掃除してしまったので少し判りにくくなってしまいましたが、ノーマルのベアリングが付いていた錆の無い綺麗な部分の奥に、少し錆びたスペースがあります。

別角度から。5mmくらいは奥にスペースがありそうです。

では実測です。




27.5mmアルやないかーい。


ノーマルのベアリング幅はTA2220なので20mmです。



スイングアームのベアリングが収まるところのスペースが27.5mmあるので、TA2225の25mm幅の幅広ベアリングが

入 り ま す ね ぇ 〜 。


残念ながらTA2230の30mm幅は入らず。



「SR400」「TA2225」でWeb検索。 ヒット無しですねぇ〜。意外と誰も気付かない???


何か見落としてるかな?ブッシュ側の当たり面も幅広にしても問題無いし。

(茶色く変色している部分がベアリングが接触する部位。余りにも狭過ぎる。。)



25mmベアリング化。今度やってみよーっと。


〜Redevelopment of SR500〜

以上、“強化スイングアームベアリング” の誕生でした。
純正部品の新品はもう勿体無くて買えないなぁ〜






Posted at 2022/12/04 14:47:41 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2022年12月04日 イイね!

エンジンのパワーアップを考える。1

エンジンのパワーアップを考える。1エンジン回転数の10,000rpm(イチマンカイテン)と聞くと超高回転・超高速と感じますね。

10,000rpmとは、1分間に10,000回クランクシャフトが回転している状態ですが、1回転に掛かる時間は何秒なのか? rpmってタコメーターでしか見た事が無いのでそんな物と理解していますが、昔からイコライザーの調整や可聴域20~20kHzなどの表記で馴染みのあるHzでも考えてみたいと思います。

rpmを英語表記に直すと revolution/minutes となり ”分” 当たりの”回転回数” を示す単位として使われていることが分かります。これを60で割ると ”秒” 当たりに変換が出来ます。

10,000/60 = 166.6 rps となりました。1秒間に167回転しているって事ですね。
クランクシャフトの1回転を1Hzと考えると、10,000rpmは 167Hzと言い換える事が出来ます。

ドオでしょうか? 10,000rpmってもっと高い周波数だと思いませんでしたか? 10,000rpm=167Hz とは、スピーカーから出る音と捉えると低音域と言う事が出来ると思います。クランクシャフト1回転でピストンが1往復。スピーカーの振動板1ストロークで1Hz。ピストンと振動板の1ストーロークを等価と考えてみました。

2,000rpmを考えてみると単純に1/5となるので 33.3Hz になります。
これはもう 重低音 の領域で目視で振動板が動くのが分かる振幅ですね。
1,000rpm では 16.7Hz。 高橋名人の16連射と同じくらいの速度ですね。

エンジンの回転速度をスピーカーの振動板に例えるとこの様に捉える事が出来ると思います。

ーーーーーーーーココは読み飛ばしてもOKーーーーーーーー
では1回転で何秒かかっているか?を考えると、
10,000rpmの場合は、 1S/(10,000rpm/60S) で求めて、0.006S。
1,000rpmでは、0.06S となります。
かえって分かり難くなっちゃいましたね。
言いたかったのは電子制御の高速さに比べてエンジンの回転は遅いという事。電子工作で使用されている格安の8Bitマイコンでも20MHzと言うクロックで作動します。この格安マイコンでも1秒間に 20,000,000 回の演算を行える性能が有り 1回の演算の処理速度は 0.00000005S となるので、1万回転で回転しているエンジンのクランクシャフトが1回転している時間の中で 120,000(12万)回の演算が行える性能が有ります。
もちろん現在の市販車に搭載されているマイコンはさらに高速です。
なのでコンピューターを使用してエンジンの状態を自在にコントロール出来ると言う事がこの速度差から理解が出来ると思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


何となくエンジンの回転数が感覚で理解できたでしょうか?
エンジンの回転は目には止まらない速さでは回転しているものの、魔法のように? 超音波の様に? 高速なものでは無い事が理解できたでしょうか?


では本題です。
混合気がスパークプラグで点火されてから 燃え尽きるまでの時間を考えます。
アイドリング時と10,000rpm時では混合気の燃焼に掛かる時間は同一なのか??

上記でエンジンの回転が意外とゆっくりなのが判明しましたが、燃焼もまた意外とゆっくりです。 スパークプラグで混合気に点火してから燃焼室の端まで炎が広がるまでには結構な時間が必要になります(分かり易くオーバーな表現ですが)。
圧縮上死点で点火を行うと排気工程が始まるまでに燃焼が終わらなかったり。なので動力を取り出すのに最適な燃焼タイミングとする為にピストンが圧縮上死点に達する前に点火が行われます。
93-00年のSRではアイドリング時(1,500rpm以下) の点火タイミングは 12° に設定されています。これはクランクシャフトの角度を表していて、ピストンが圧縮上死点に到達する手前12°の所と言う意味になります。
分かり易くアイドリングを1,000rpmとして1回転に掛かる時間は 0.06S。圧縮上死点前12°に点火されると、ピストンが上死点に達するまでの時間は 0.06S/360°×12° で求まるので 0.002S と求める事が出来ます。

この場合、混合気が点火されてから燃え広がるまで(上死点到達まで) に 0.002S かかると言う設定ですね。燃焼にも一定の時間が掛かるという事が理解出来ると思います。
一般的にですが、エンジン内での燃焼はピストンが上死点に差し掛かった所で最大圧力に達するような設定が概ねBESTと考えます。
神様の完璧なエンジンがあるとすると、圧縮上死点で点火が行われてその上死点で即座に最大圧力を迎える事が理想となります。それが現実には燃焼の伝播に時間が掛かり叶わないので上死点より前に点火が行われる。と言う理解が良いようです。





WEB上でこのようなグラフを拾ってきました。出典https://glanze.sakura.ne.jp/propagate.html
グラフの横軸がクランクシャフトのアングルで真ん中がTDC圧縮上死点となっています。
縦軸は筒内圧力。富士山のような形が点火を行わなかった場合の圧力変動で、圧縮工程で高まって膨張工程で低下しています。グリーンのラインが燃焼により得られる燃焼圧力になります。
MBTと書かれた赤い点が最良の点火タイミング。MBTの意味はMinimum advance for the Best Torque の頭文字をとったもので、一番トルクが出る点火タイミング と言う意味になります。(wikipediaより)
グリーンのラインの近くにうっすらとしたラインが有りますが、コレが神様のエンジンの理想のラインですね。グリーンはシャバでのBESTなラインとなります。この理想と現実との乖離が原因で熱損失とかノッキングによるピストンの溶損とかそういう話が出てきます。
燃焼が開始されて圧力がmaxに到達するまでの時間で、最初に燃えた混合気の熱は燃焼室壁を伝いシリンダーヘッドを温めてしまい熱損失が起きる時間となったり、プラグを無駄に熱してノッキングを誘発してしまったり。

エンジンの混合気の燃焼のロマンは、この理想と現実の僅かなハザマに全てが集約される事になります。上死点前で発生してしまうエネルギーを上死点後に移動する事ができれば同じ燃料の量でも高い出力を得ることが出来ます。ですがグリーンのラインの終端部近くでは圧力が下がり始めてしまっています。コレはピストンが下がり始めて燃焼室の容積が大きくなる事で起きているので、これ以上点火時期を遅らせると燃焼エネルギーを圧力として取り出すことが出来なくなってしまいます。
上死点前から燃焼を開始しているのに後燃えも発生発生してしまう。火炎の伝播は歯痒いくらいに遅い事がイメージ出来たと思います。逆に言えば燃焼室の火炎伝播の性能がエンジンの性能に成ると言って良いかと思います。
左上にある別表ですがP-V線図で言うと燃焼圧力のグリーンのラインはココに当たるよと指示しています。上死点で燃焼圧力を上げても動力として取り出せ無いのでは?と言う疑問も湧くと思いますが、P-V線図を理解するとその理由が分かったりします。興味がある人はP-V線図で検索ですね。

上死点の事をTDC(top dead center トップデスセンター)と呼びます。
点火時期の表記で BTDC XX° と表記が有りますが、「B」はBeforeの頭文字で、上死点前 XX° と言う事になります。 Afterの意味のATDCもありますが殆ど使われていません。BTDC12°をATDCで表現すると、ATDC -12°となります。
排気上死点で点火は行われないので”吸気”とかは省略で。

6,000rpmの点火時期はBTDC 33° に設定されていたと思います。
高速回転中でも燃焼には等しく時間が必要なので、回転が高速になるにつれて点火タイミングは早まって行く仕掛けになっています。上死点前33°で点火をしてしまってはエンジンが逆回転をしてしまいそうですが、それだけ燃焼には時間が掛かるという事になります。
大昔のハーレーで速度を出すときに、左手のハンドルを捻って点火時期を手動で進める機構の物が有るとか無いとか。点火時期が一定だと高回転で燃焼速度が間に合わずにパワーとして取り出せないので、手動で点火時期を進めてパワーを出すそうです。SRはCDIが回転数に合わせて12〜33°まで自動で点火時期を進めてくれる(進角する)ので高回転まで普通に回ってくれているのです。


回転数に合わせた適切な点火時期が必要だという理由の一端が見えればこれ幸い。燃焼には時間が掛かるので、燃焼に掛かる時間を逆算する形で点火のタイミング(点火時期)が決められているという事ですね。


高速回転の6,000rpm では1回転は 1/6,000×60 = 0.01S と求まり、
6,000rpm時の点火タイミングBTDC 33° から TDC に至る時間は 0.01S/360°×33° = 0.0009Sと求まります。

1,000rpm時は 12° で 0.002S。
6,000rpm時は 33° で 0.0009S。

燃焼に掛かる時間は等しく必要な筈ですが、 6,000rpm時の方が燃焼に必要な時間が短く設定されているようです。


それはなぜでしょうか? 理由は何処に??

(この時点で点火時期を標準設定よりも進めたらパワーが出るのカモと思った人は感がイイですね。)

エンジンのパワーアップと聞くとマフラーやエアクリーナーの交換のイメージが有ると思います。エンジン本体に手を加える訳けではありませんが、それでもその効果は最終的に燃焼スピードの改善と点火タイミングの話に結実する事になります。

長くなったので次回以降、詳細を追いたいと思います。


今回は、

・エンジンの回転はレーザーや超音波の様に超高速では無くて、音で例えれば “重低音” くらいでしかないので、1回転する時間は“一瞬”では無くてそれなりの時間が掛かる。

・エンジンでの理想の燃焼とは、圧縮上死点で燃焼が開始されて、その上死点で瞬時に最大の燃焼圧力を得る、グラフのラインで言うと垂直に立ち上がる燃焼状態である。←ココ大事。ここテストに出ま~す。

・実際の混合気の燃焼には時間が必要なので、回転数に合わせて圧縮上死点の手前12〜32°の所で点火が行われて、理想ラインに近づける工夫がされている。

・理想の燃焼と実際の乖離を改善するために “圧縮比の設定” や ”燃焼室の形状の工夫“ があったり、着火性の良いプラグの使用もその一手。エンジンの効率改善やパワーアップとは、いかに燃焼を理想に近づけるか? 燃焼を瞬時に終わらせるか? その改善の方法にある。




釈迦に説法ですみません。若い子向けに、面白いなと思ってもらえればと思って 基本のキから書いてみました。。





※注 写真はイメージです。


続く。

Posted at 2022/12/04 03:19:58 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2022年12月03日 イイね!

(SR)A/F セッティング

(SR)A/F セッティング私は時々、キャブセッティングで空冷では特に「低回転では薄めに」「高回転では特に濃いめに」と書く事がありますが、その理由を端的に説明?実験している良コンテンツを見つけたので紹介します。
https://youtu.be/lOH4NWfiLG4

(250ccのパラレルって最高速結構出るんだなぁ)

実験で使用されている車両は水冷ですが、空冷エンジンは放熱が不得意なので効果はテキメンです。


SRの高回転はパワーが下がる一歩手前まで濃くして良いと思います。


Posted at 2022/12/03 20:04:52 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

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何シテル?   09/05 02:04
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