チェーン張りの謎を解明(ショートサス取り付け時のチェーンのタルミ調整)
目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
![](/images/icon_difficult_on.svg) 初級 |
作業時間 |
30分以内 |
1
チェーンのタルミ調整を考えていたら沼にはまりました。私の500はハブの容量が足りないのか?520へのコンバートが影響しているのか?ダウンサスが悪いのか?チェーンが落ち着きません。
チェーンのタルミは通常整備要領書の書かれている「サスの伸びきりの状態で30mm~40mm」を基準に考えていると思いますが、どういう事なのかを調べたら
”走行中の使用頻度が高くて負荷が1番高まるあたりで、軸間距離の3〜4%(SRは580×(0.03〜0.04)で17.4〜23.2mm)のタルミに設定する”
という事のようです。
ではオートバイのチェーンはその基準通りに調整すれば良いのかと言うとそうでは無く、スイングアームが動く事によりスプロケットの軸間距離に変化が起きるので特性が生まれてしまいます。なので走行中に丁度良くなる張り具合を逆算する形で、”サスが伸びきった状態での基準値” に合わせる事に成っているようです。
※工業表現では1~2% とか 1.5~2%という表記ですが片側の値でした。オートバイ表現ではタルミを上下合わせるので、2~4%、3~4%と表記を変えています。概ねの表記で2~4%でしたが椿本チェーンさんは3%~4%と謳っていました。
ここまでだと少し理論があやふやですね。
2
サスペンションの動きによるチェーンのタルミの変化を調べたデータが欲しかったので、ノーマルサスペンション長の320mmの時にタルミを30mmセットと40mmセットにして、サスの動き10mm毎にデータを取りました。
緩い方へイッパイの40mmのセットではサスペンションの常用域と思われる紫〇の範囲で概ね3%~4%の領域にある事が分かりました。荷物を載せて深いストローク迄使えそうです。
キツイ方へ一杯の30mmのセットでは乗車1Gで3%弱となり、体重の軽い人がプリロードいっぱいで乗って適正くらいかな?荷物の積載や2ケツをしてしまうとチェーンやスイングアーム痛めてしまう設定になっています。コレがバイク業界でのチェーン張りすぎ問題の元凶かな?整備要領が説明不足ですね。
にわかには信じ難いとは思いますが、、、 思っていたのとは違いませんか?
整備要領書通りにしておけば全域に渡り「適正」と言うのは幻想です。 30〜40mmという設定値は「適正範囲」というよりも「使用可能範囲」かな?40mmにすれば荷物も人も積めますがそのままでは1人乗りでは少し緩い。30mmに詰めれば軽い人が乗る分には最高のフィーリング。だけど荷物を乗せて仕舞えばパツパツ。
55kgの一人乗り〜100kg+荷物の範囲が30〜40mmって感じです。
さて、あなたの適正な設定値はどこでしょうか? 10mmの調整範囲でコレですから、キツ目とか弱めとかの調整は使用目的に合った設定から1mm単位での調整が必要になると思われます。
どちらにしても、負荷が掛かる程にチェーンの張りが強くなる特性を持っています。ノーマルは良く出来ていますね。
特に難しい理屈や測定では無いのですが、この様なデータを見たことが無かったので良いデータに成りました。
コレで使用頻度が高くて負荷が1番高まるあたりで、軸間距離の3〜4%(SRは580×(0.03〜0.04)で17.4〜23.2mm)のタルミに設定する必要がある。という仮説を少し理解していただけましたでしょうか。
そこからセンタースタンドを立てて、サスが伸び切った所でタルミがいくつになるのか?それが自分用の設定値になります。
3
では、高性能サスペンションに交換して少し車高が上がっている場合はどうなるのでしょう。 乗車1Gが少し高くなったとしてもコーナリングや加速のGが高くなり常用域は変わらないと想定すると、サスペンション長さが33cmの場合はチェーンのタルミを51mmまで緩めないとノーマルの40mmのラインに乗らないように変化します。エンドアイを調整するとチェーンに大きく影響を与える結果です。
整備要領書至上主義で車高が上がった状態でチェーンを張るとどうなるでしょう? 負荷がかかった時には貼り過ぎパツパツですね。
オートバイ界隈はチェーン張り過ぎが当たり前と言われる程なので、ここの所の理解が浸透してないのだと思います。SRの場合はハブクラッチを痛めますよ。
「走行中の適正な貼り具合を再現する為」の、サスの伸びきり状態でのチェーン調整なのです。
仮説をだいぶ理解して頂けたのではないでしょうか?
ここまで理解出来れば、計算で大体良いところを算出して、後は作業と実走行で合わせ込みができます。
YouTubeでもプロの方が色々と説明されていますが、具体的な設定値の求め方まで説明している人は居ないみたいです。(自分調べ。)
今回はオートバイ業界からのチェーンの知識では無く、工業用途のデータからチェーンの弛みの調整値を調べたのと調整後のフィーリングの確認を繰り返したのがミソに成りました。
何だか雲が晴れるみたいに分かり易いグラフですW。
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ここからが今回の本題。さらにもう一歩、話を進めます。
ショートサスに交換して車高を落とした場合、チェーンはどうなるでしょうか?
デイトナの30mmショートのサスでプリロードはMax締め上げ、これで70kgの私が乗ると18mm程沈みます(約2cm)。 全ストロークは4cmなので常用域はそこから2cmの25cmの所までが常用域になります。
40mmセットのラインで見ますがストロークに対するチェーンのタルミの特性が逆になってしまいました。張りの一番強い所も3%を切っています。実際に乗ると街乗りで少しハブを叩く感じで張りがキツイみたいです。
ココ大事なところですが、サス長さ29cm(のびきり)の時に整備要領書通りの30〜40mmにタルミを“キチン”とセットするとどうなるのか? 答えはそこからスイングアームがストロークする事により更にチェーンが緩むのでダルダルです。
コレがSRアルアルのチェーンがクランクケースを削るシステムです。きちんとチェーン調整しているのに残念ですね。
この逆特性は厄介です。
スイングアームの逆関節とか言えばキャッチーかな
ノーマルサスでチェーンを調整してからサスを交換しなきゃダメ、とか、すればOK。とか何処かで聞いた気がするけど、半分正解で半分間違いかな? 特性や使用頻度も加味しないとダメですね。古い(間違った)考え方そのままのショップさんや、そもそも理解がない事もあると思うので、ここは注意が必要です。
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実際のところは私のSR500にショートサスを入れた場合、特に常用する箇所が「3%だとキツイ」、「4%だと少しユルイ」。そんな感じのようです。椿本チェーンの基準がSRには合っている様です。コレは実際に調整して確認しました。
調整の結果は街乗りでちょうど良いのは、サスペンション長さ29cmの所でタルミ25mmでのセット。少しキツメなのが23mmでのセット。バランスとって24mmがbest?
逆特性なので仕方なしですが、普通に走っている時はキツ目〜普通。加速時は少し緩め。そんな感じの調整です。23〜25mm。
(最近のデイトナのショートサスは280mmですね。その場合は20〜22mmがいい感じだと思います)
計算・調整・測定・実走行を繰り返して求めた結果の値です。
そんなに範囲が狭いのか?と思いますが、乗ってみると1mmで結構フィーリングが変わります。
理想はチェーンを内側から支えるチェーンテンショナーが有ればイイんですけど、そうすればサス長26cm位からタッチを開始させて張りの特性を修正できるのですが、、ボアエースさんに問い合わせしたら外(下)からしか掛けられないそうなので、諦めました。。
新作で中(上)から押さえるタイプを出してくれませんか?
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チェーンの調整でどれだけタルミが変化するのか? 計算で求めてみました。
チェーンの長さが 0.194mm変わるとタルミは 20mm→25mmに変化します。
実際にはチェーンアジャスターのネジのピッチを1mmとして 1/10回転で0.1mm。 チェーンの上下合わせて0.2mm分動くので、チェーン張りのネジの調整範囲は1/10回転以下の範囲の中にある事になります。
チェーン張りって本当に繊細な調整です。
これが分かったのが一番の成果だったかな。
そんな繊細な調整だったとは露知らず(つゆしらず)です。
ショートサスを入れるのは、チェーン・ブレーキ・スイングアーム垂れ角、どれを取っても全て「マイナス性能」でした。
何でこんなモノ売ってるんだろう?
でもダウンサスは外しません。
「だって楽だから。」
ショートサスを入れた場合(車高を変えた場合)は特別なチェーンのタルミの管理をしないとですね。
チェーンの弛みの設定の事を初めは「何故チェーン屋さんはもっと正確な事を流布してくれないんだろう。」と思っていました。その次はスプロケット屋さん。でも実際は、チェーンの弛みは「サスペンション屋さんがしっかりとした情報を流してくれないといけない」と分かりました。チェーンの弛みはサスペンション屋さんに聞け!そういう事です。
とことん「SR」。
SRじゃなかったらここまで考えなかっただろうな? SRっていじってて面白いからここまで考えられる。
今日はいい記事が出来たと、自己満足w。
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あとはストロークが深くなるとブレーキロッドが引っ張られてしまうためブレーキの引きずりが出てしまいます。これも盲点でした。
ストロークしても引きずらない所まで遊びを増やしてやる必要がありました。
本当はトルクロッドのリンクでドラムカバーの位置を補正してくれるのでしょうけど、SRはトルクロッドがスイングアーム止めなので補正が効きません。ここもSRの欠点ですね。
ヨーロッパ向けのトルクロッドが上に来るタイプはもしかすると上手く出来ているのかも?…
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