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2014年05月22日

欧州の地に道を求めて。マツダ626の後ろ姿が愛しい

欧州の地に道を求めて。マツダ626の後ろ姿が愛しい §日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

その実験課のスタッフは、ヨーロッパの各所で、路面に糸を張りわたし、道の起伏の度合いを計りつづけたという。幾度かの誰何と、不審者を見る視線にもめげずに。

また、石を敷き詰めた舗装、いわゆるベルジャン・ロード用の石を探しまわり、ようやく、彼の地で不要になっている材料を見つけて、数千個持ち帰ったという。ついでに、昨今では純粋ベルジャン路は減っており、その上にアスファルトを流すことが多いが、それが剥げかけ始めている事実も重視。そのミックスの度合いも注視してきたとの由。

これ皆すべて、ヨーロッパの人とクルマはどのようなアンジュレーションとサーフェスの上を駆けているかを知るため。そして、そのような道路を、自社のテストコースにおいて再現せんがためである。

道はできたか? できた、広島の三次(みよし)に、それはある。マツダのテストコースである。そこにはちゃんと、アスファルトが剥げたベルジャン・ロードさえあった! 

──発想として、あまりにも箱庭的、盆栽的だろうか。そうかもしれない。しかし「熱意」の具現ではある。涙ぐましいとも思う。

西独で最も人気のある外国車として、マツダ626が選ばれたことは、このようなメーカーにとって、おそらくこの上ない喜びであろう。626、すなわちカペラに改めて試乗した。仕様こそ少し違うが、日本人としてカペラを評価してみる。

果たして、これはあまりにも生硬なクルマであった。無表情に過ぎた。おそらく、ハード主義的に西ドイツ車を追究してツメすぎたのだと思われる。本物の西ドイツ車だって、こんなに無味乾燥とはしていない。

ゲルマン人は機械作りに長けてもいるが、同時にベートーベンやルートヴィヒ、果てはヒトラーという存在すら生んだ民族である。クルマでいえば、ポルシェは、いわば狂気の商品化である。メーカーにとっての西ドイツ車の研究は、そろそろ、このへんまでも突っ込む必要性が出て来たのではないか。

事実、RX-7は低中速での旋回における微妙な挙動というのを、ポルシェの暴力性に抗して盛り込んだスポーツカーになっている。このように『日本』をカウンターにするか、それとも、より深く『ゲルマン』に入り込むか……。

サーフェスからインナーへ。

“箱庭的研究”を責める気はまったくないが、いま求められつつあるのは、ここまでの研究と踏み込みであろう。「ヨーロッパ」というのは、おそらく、そのくらいまでしたたかなのだ。けっこう、深いのだ。

そして、これはべつにマツダに限ったことではないのだが、日本のクルマというのは、あまりにも「理科系」的にのみ、作られているのではないだろうか。エンジニアリングという語に囚われすぎてはいないだろうか。

「文科系」という異分子の、クルマ作りへの導入。このようなミクスチュアとシェイクが、これからの日本のクルマを大きく動かし、そして展望を開いてゆく。このように思えてならない。

次期カペラ──いや、マツダ626が持つべきテーマは、おそらくこれだ。

(1986/04/23)

○単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
カペラ(82年9月~87年5月)
◆トヨタはセルシオのためにコース(道)を作ったというが、いわば密室としてのテストコースでひたすらクルマをツメる。一方で、未発表車を割りと気軽に路上に持ち出し、人目も構わず、じっくりとセットアップする。日・欧のクルマ作りの差異はこのへんにもあるが、これは「スクープ!」に飛びつく習性と、「あれが次期の△△か」で済ますマーケットとの違いでもあると思う。情報過敏症なのだ、われわれは。80年代後半、日本車も海外では路上テストを、ニューモデル熟成の手だてに使うようにはなってきたが……。
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Posted at 2014/05/22 08:40:54

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