2014年09月20日
ペダルの踏み間違いを考える その1
やっぱり今年も、おそらくアクセルとブレーキのペダルを踏み違えたと推察される事故が起きています。メディアで報道されるのは、負傷者の数など、事故の規模が大きかった場合に限られるはずで、そうでない事故は、おそらく数え切れない数なのでしょう。一説では、この種の事故は、年間に6000件以上起きているともいわれます。
一方では近年、クルマの前方や後方をレーダーやカメラで確認するシステムが一般化し始めました。そこから、そのセンシング技術を「踏み間違い」の対策に用いようという動きがあります。……というか、既に各社が具体化させています。そんな機能を搭載したモデルの試乗会で、その説明を受け、実車でアクセルを踏んで体験もしてみた(いくら踏んでもエンジン回転が上がらない)後に、担当したエンジニアと話をしたことがありました。
*
----あのぅ、この種の事故というのは、実はペダルを踏み間違えていて、ドライバーの予測とは違う動きをクルマがしている、し始めている……ということですよね?
「そうですね」
----その際に、クルマの動きがイメージした“予定”とは違ってるわけだから、アッ!ということで、ペダルから足を上げるとか。つまり、その『入力』を、いったんやめる。ペダルを踏む動作をキャンセルすればいいと思うんですけど?
「いやあ、それはできないと思います」
----え?
「信じておられるんですよ、ペダルを踏んでいる方は……」
----あ、間違ってないんだ、と?
「そうです。だから(クルマが)止まらないと(ペダル=実はアクセルを)さらに踏みます」
----ははあ!
「われわれ、事故を起こしたクルマも調べますが、ペダルやステーが(強く踏まれて)曲がってしまっているという例は非常に多いです」
----おお、そのくらいに、踏んでるんだ!
「何でクルマが止まらないんだ? おかしいぞ……ということですね」
----ウーン、でも何で、そんなに“信じて”しまうんでしょうか?
「というか、それがパニックということなのでは?」
----そうか、パニクってるから、その際に自分がしている行動を、さらに激しく行なう?
「そういうことだと思います。(自身の行動を)検証できるとかやり直せるとか、そういう余裕があれば、パニックではないので」
----私の場合、自分自身も、また自分のやることも、まったく信じてないので(笑)。だから、とくにクルマに乗った時なんかは、いつもコワゴワ『入力』してますけど。
「そうやって(そこから)キャンセルもできる方は、大きな事故には至らないかもしれないですね」
----この種の事故って、単にクルマ留めを乗り越えるくらいじゃなくて、ガラスを突き破ってコンビニの陳列棚まで壊してしまうとか、そういうことであるわけで。
「あと、立体駐車場から落ちてしまったり、ですね」
----ということは、相当にクルマは“速い”! そのくらいに、強くアクセルが踏まれている?
「はい、そういうことです」
----それで、ある条件下では、どんなにアクセルを踏んでも、エンジンの回転が上がらないという制御を、今回、加えた?
「なぜ(不適切にアクセルが)踏まれてしまうのかは、実は、われわれにはわからないんですね。ですから(不適切に)踏まれてしまった場合に限るしかないんですが、もし起きたら、それに対しては対応しようと」
*
……なるほど! この種の事故の場合、何をしていいのか、しているのか、それがわからないほどのパニックであった、と。そして、俺は絶対にパニックにはならないとは誰も言えないはずですから、つまりは、誰にでも起こり得る。そういう可能性があるのが、ペダルの踏み間違い事故なのでしょう。
また、パニックであったので、当事者からその時の状況を事故後に聴取しようとしても、「いやぁ、何も憶えてなくて……」ということになりそうです。ゆえに、その際の状況がどうであったのか。そして、どうしてそが起こったのか。こういうことが、なかなか見えてこないのが、踏み間違い事故の実態と現状でもあるでしょう。
つまり、この種の事故っていうのは、どうも「よくわからない」のだ、と。わからないということだけが、ここで「わかった」わけですね。また、キーワードが“パニック”であるということも。
ここからひとつ言えるのは、まったく月並みで、提案にも何にもなってませんが、なるべく“パニック”にはならないようにしよう、と。いや、24時間、絶対にパニックになるな!……というのはムリですが、ただ、クルマに乗っている時間だけでも、そうならないようにしよう。こう意識するだけでも違うのではないか。
パニックにならないためには、自己観察というのもいいと思います。その時々の自分の状況を、たとえば、言葉にする。これはべつに、実際に言葉を発しなくてもいいんです。(キーを捻りました、エンジン、オッケー。前方、何もナシ、発進、どうぞ!)……とか、ココロで呟く。
おそらく、鉄道の関係者、とくに運転士さんは、こうやって列車を動かしてますね。そして、(コンビニ前に来ました、減速します、仕上げに、ブレーキを踏んで~)(はい、クルマ留めに接触する前、寸止め状態で停めましょう!)……とか。こんな感じに、内心で解説しながらクルマを動かす。これでかなりパニックにはならずに、コンビニで買い物ができるのではないかと思います。
(つづく)
ブログ一覧 |
茶房SD談話室 | 日記
Posted at
2014/09/20 23:22:55
タグ