• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2014年12月19日

これは正しい決めつけである、クルマはインテリアだ──ペルソナ宣言

これは正しい決めつけである、クルマはインテリアだ──ペルソナ宣言 §日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

ぼくはこのクルマを静かな微笑みとともに、あたたかく迎えたいと思う。そして、語りかけたい。ペルソナ、きみはまさに「時代の子」だ。それも悲しいほどに、ニッポンの「いま」に添い寝している、と。

その出発点において、ペルソナは確実に正しかった。では今日では正しくないのかというと、そんなことはなく、3年半前のコンセプト・ワークだとは作り手側の告白であるけれど、むろん、いまでも十分に有効だ。

ついでに言っておくと、コンセプト・ワークから世に出るまでに、最低でもこれくらいの年月を要するというのは、クルマという商品の宿命である。いま売りたいものを、いま作る──このような呈示の方法をクルマは採れない。服作りとは違うのだ。

「NOW」と「トレンディ」からのみ、クルマを、それもクルマ作りや発想法を採点し、批判までするという「批評」の方法は、ゴールして着順がわかってから競馬を語るという予想屋ならぬ“結果屋”の解説に、どこか似たものがある。「NOW」に対して、クルマはハンディキャップを負っていることに、認識を欠いている。

さてペルソナだが、クルマとはついに「インテリア」と「細部」であり、キカイやパーツの集合体ではないというのが、おそらくその主張である。インテリアは、クルマから自立(!)しなければならず、細部にこそ、意味が宿らなければならぬ。キカイは完璧に隠蔽されるべきで、そのような「クルマ」こそが、今日のニッポン市場で求められているものである……というわけで、これにぼくは深く同意する。むしろ、3年以上も前にニッポンの特異性を読み切って具体的にゴーサインを出したことに、敬意すら表したい。

クルマへのアプローチが、この国では複雑怪奇なのだ。そして、ヨーロッパやアメリカとは違う尺度や基準があり、非関税障壁とはむしろこのことなんじゃないかと思うほどなのだ。そして、そのフクザツさを、ただ批評しているんじゃなく、そのようなマーケットを解するためのキーワードを探さなければならない──もし、クルマを作るとすれば。それが「インテリア」と「細部」だったというのは、ウーム……やっぱりほかにはないだろうね。

ステアリングホイールさえ無ければ、ほとんどクルマの中とは思えないようなインテリアを作ってしまおう。スイッチも、やっぱりキカイであるから、それらも、インテリア・デザインの“内部”に溶かしてしまおう。その「溶かす」思想は、物入れ・物置きの類にも、しっかりと適用しよう。

そして、車室内の「全体」をワン・ユニットと見えるような連続性とトータル性を与える。そのためには、これまで部品や「部分」の集合体だからとして無視されてきたところにも補足や“詰めもの”をして、一体感とラウンド感をつくり出す。それによって、室内が仮に狭くなろうとも、それは厭わない。そう、ペルソナとは、ここまでやった「クルマ」である。

……と、ここまでペルソナが発信する周波を受け取った上で、いくつか意見を述べたい。まず、室内における物入れスペースの容量不足である。ペルソナが企図したのは、すべてがキレイなフタの内部に収まっているシステムキッチンの姿であろう。ただ、それを可能にするには──たとえばフライパンが外にぶら下がっていないというのは、その種の物を十分に包み込む収納能力が要る。

ウエス、曇り取り、カセットテープあるいはCDディスク、地図や、その他もろもろ……。クルマを日常的に使うには、けっこう雑多なものが、トランクの中ではなく手許に必要で、ペルソナをペルソナらしく使うためにこそ(美しく使いたい!)、それらを隠しきるためのスペースがほしいと、切に願う。

そして、これから先は個人的な趣味も含むが、エクステリアについてである。ペルソナのデザインとは、要はディテールに細かな工夫を凝らした“小さなルーチェ”であろう。しかしルーチェのボディシェルにはマツダのオリジナルという香りは少なく、また、マツダというメーカーのアイデンティティも感じられない。まあ、そういうデザインである。

ルーチェを捨ててほしかった。エクステリアでも、アッと言わせてほしかった。出発点において大いに共感するがゆえに、その展開にも新しさがほしかったと、ここでは評したい。

そして、もうひとつの恐るべき現実……。ペルソナを一見しての直感批評に、「なんかトヨタみたいなマツダ車だね」というのがあったのだが、トヨタは実はカローラ・クラスに至るまで、とっくに“ペルソナの思想”を具体化していたのではないか? それも、トヨタ風に巧みに薄めたかたちで、目立たせず、反発を起こさない範囲で……。トヨタというのは凄い。だが同じように、このペルソナにもオマージュを捧げたい。1988年・秋、ワタクシはそんな心境です。

そして、このようなクルマを作ろうとする、あるいは希求しているマーケットというのは、世界広しといえども、わがニッポンだけであろう。日本人にしか意味がわからないクルマがあったって、いいじゃないかっ! 『アクション・ジャーナル』は軽自動車の数々をはじめとするいくつかの日本車に、このフレーズを捧げてきたが、今回も、そのように宣言したいと思う。

(1988/12/13)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
ペルソナ(88年10月~  )
◆この国では、クルマというものが「多義」である。この事実を象徴するモデルを挙げよと言われたら、ぼくはやっぱりこのペルソナをピックアップしたい。そして、たとえばニッポン市場を解したいと望む外国メーカーがあるなら、そのサンプルとして、このクルマの研究を勧めたい。もちろん、ハード的な解剖ではない。コンポーネンツはカペラだ……なんてことではなく、このクルマのコンセプトと求めたもの、つまりペルソナのテーマを解析すべきであると思う。

○2014年のための注釈的メモ
クルマは、どのようなものであっても構わない。そもそも、クルマについてのイメージが(ヨーロッパのように)凝り固まってない。それは、この国のみんながクルマについて無知だからよ……という説があるかもしれないが、でも、それでもいいと思うね。とにかく、クルマへのアプローチが柔軟で何でもあり! これがこの市場(日本)の一大特色であり、80年代から既にその気配はあった。

ゆえに、メーカーからはいろいろ提案が出て来る。そういう市場だから、90年代に米語でいうミニバンやSUVが入って来ても、すぐに受け入れた。……というよりSUVなら、80年代にクロスカントリー・タイプ(クロカン)をさっさと乗用車として使っていたのがこの日本だった。その意味では、アメリカよりも先を行っていたことになる。

この「ペルソナ」というモデル自体は、みんな(私も含めて)もう忘れてしまっていたかもしれない。ただ90年代目前、そんな日本マーケットの「柔軟性」というフィールドに咲いた、季節を逸した早すぎた花……。それがこのクルマだったのではないかと、いまにして思う。
ブログ一覧 | 80年代こんなコラムを | 日記
Posted at 2014/12/19 19:58:24

イイね!0件



タグ

今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

慣らし運転殺人的猛暑により断念💦 ...
ケイタ7さん

時速400km/hと富士
Zono Motonaさん

愛車と出会って8年!
PON-NEKOさん

リンク。
.ξさん

宮の前公園で早朝徘徊してスッキリ〜 ...
S4アンクルさん

【ホンダCRF250X】 ヤフオク ...
エイジングさん

この記事へのコメント

2014年12月20日 18:16
後部座席がラウンドしていて包まれる様な形でしたね。
昔、親父と試乗しました。
結局ギャランVX-Sを選んでおりましたが…。
コメントへの返答
2014年12月20日 22:21
> 後部座席がラウンドしていて包まれる様な形でしたね。
> 結局ギャランVX-Sを選んでおりましたが…。

コメント、ありがとうございます。
理念や意欲をそのままクルマに──ではない「インテリアにした」というモデルで、興味深い存在ではありました。
でも、やっぱり普通の(?)ギャランにされた、そのセンスというかお気持ちも、とてもよくわかります。

スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

プロフィール

「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/8 >>

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

愛車一覧

スバル R1 スバル R1
スバル R1に乗っています。デビュー時から、これは21世紀の“テントウムシ”だと思ってい ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation