• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2015年01月02日

クルマに「意味」という衣装を着せない──'89ローレルの意味

クルマに「意味」という衣装を着せない──'89ローレルの意味 §日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

何にも目新しいところはないじゃないか……と一部に評されそうなクルマ。こういうのは、絶対に必要なのである。

意義や意味や、さらには記号性やらモニュメント性やら。そんなものは、さらさらない。そういうクルマをむしろ欲する。いや欲求するではなく、身辺に一台置いておく。何のためにという問いへの答えはとくにないのだが、クルマは買う(使う)。そういうマーケットを、いま、この国は確実に有している。クルマは、このような意味で、まさに大衆商品であり、たとえばトヨタは、このあたりの層を見事にすくい取る、巧みな商売をしているといえよう。

1988年、一方のニッサンはアグレッシブだった。意欲的な商品を、連続してニッポン市場に送り出した。年が変わったいま、88年のニッサンについて、あれは「DC攻勢」の年だったと総括したい。

シーマ、シルビア、セフィーロ、マキシマ……。ニッサンという“デパート”のフロアにいくつかの新ブースが生まれ、特選ショップ風にニューカマーが配された。まったくのブランニューのネーミングや、ほぼ忘れられていたブランドの再生的なデビューというのも偶然の仕業とは思えず、それがさらに「DC性」を盛り上げた。それぞれに主張があり挑戦がある、特有の濃厚な匂いをたたえた新型車であったし、ニッサン・デパートの中で、それぞれが、何かしらの、人の足を止めさせるものを持っていたと思う。

新しいニッサンを見てくれという意味では、この「DC」つまり、デザイナーズ&キャラクター風のブランド戦略は有効であったし、成功もしたはずだ。新しいマーケットも掘り起こしたし、トヨタを食った部分すらあった。

ただ、特選ショップは眺めてはみるけど、そこではカネは出さないという層。デザイナーもキャラクターも要らないけど、着るものは何か買わなくてはならない人々。このような、いわば本文冒頭に考察したような顧客層へ静かなアピールをしようというニューモデルは、88年の新・ニッサン車には存在しなかった。

「DC」の年が去って、1989年。ニッサンは、今度は「スポーツ」の年を目論んでいるようだが(スカイライン、フェアレディZ)、そうだとすれば、さらに、今回のニュー・ローレルのポジションは貴重になる。その印象の淡さ、クルマが“おしゃべり”でないこと、そして刺激性がない。これらが逆に、好材料として作用するのではないかと、ぼくは読む。

新しいニッサンに注目はしているのだが、でも(「DC」ばかりで)自分が買おうと思うクルマに出会えなかった……。このような人々への目立たぬプレゼント。それが新型ローレルであろう。

また、トヨタ・マークⅡが創りだした「マークⅡ的マーケット」に、新たに参入したニッサン車という意味でも、その成果のほどが興味深い。乗り心地や静粛性では、兄弟車であるセフィーロをしのぐものがあり、全体の洗練度も高い。ニッサンの、この攻撃的でない新型車。実は、ちょっと気に入った。

(1989/02/07)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
ローレル(88年12月~  )
◆「マークⅡ的マーケット」というがおそらくあって、次のように解釈している。それは“白いブラックホール”だ、と。白というのは先代からのマークⅡのシンボルカラーだが、何かのクルマを検討して「これはちょっと……」となって、次のクルマに行く。次も同様に見ていって……という風に続けて、どんどん各車を否定した先に待っているのが、その白いブラックホール。結果としてここに行き着き、そして、そこではもう否定する材料を探せない。消去法の選択というより、もう少し積極的な、しかし穏やかなクルマ選び。そこで待っているのが白いマークⅡ……というわけだ。
ブログ一覧 | 80年代こんなコラムを | 日記
Posted at 2015/01/02 11:22:43

イイね!0件



タグ

ブログ人気記事

【お散歩】大食王決定戦の予選ですー ...
narukipapaさん

レッツエンジョイっす。o(*≧∇≦ ...
KimuKouさん

みんカラ:モニターキャンペーン【C ...
あしぴーさん

なんか偉い事になってる!?(((( ...
takeshi.oさん

みんカラ:モニターキャンペーン【C ...
あぶチャン大魔王さん

2025年の台風15号の爪痕
ヒデノリさん

この記事へのコメント

コメントはありません。

スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

プロフィール

「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/9 >>

 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

愛車一覧

スバル R1 スバル R1
スバル R1に乗っています。デビュー時から、これは21世紀の“テントウムシ”だと思ってい ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation