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2015年01月28日

私の“ニュル”ノート 《3》

私の“ニュル”ノート 《3》 その3 “ニュル伝説”

「都市伝説」とは、いかにも本当のことのようで、ふと信じかけてしまうけれども、しかし、よく考えればそんな実態はなく、要するに一種のホラ、もしくはウソ……ということであるらしい。そうすると、ニュルブルクリンクの「北コース」にまつわる話で、うっかり“伝説”という言葉は使わない方がいいのかもしれないのだが、ただ、「ニュル」では、そんな“伝説”の域に達したようなエピソード、また、この“道”についてのジョークや笑い話が、私の知る限りでもいくつかある。

まずは前回にも記した、レース中に、フラッグの指示に従わないクルマの屋根をオフィシャルが叩くという話。たしかに、このコースの「狭さ」を語るには、これはよくできている。しかし、走るレーシングカーは、たとえコーナリング中であっても相当に速いはず。そんなクルマの、しかもルーフという限られた面積を、棒でも旗竿でもいいが、その種のもので的確にヒットすることは可能なのか? この話はやはり眉にツバを付けて聞いた方がよさそうで、「ニュル」をめぐるジョークのひとつとして、静かに微笑んでいることにする。

そういえば、コースの狭さ、すぐにガードレールがあるという状況では、こういう話も聞いた。ある人がここでのレースに出場しようと、既に何度か参戦経験のある先輩に、スペアパーツとしてはどんなものを用意したらいいかと質問した。その時に返ってきた答えは、こうだった。「あ、要らない。あそこ(ニュル)は、やっちゃったら“航空事故”だから」……

「ニュル」では、もし事故ったら、クルマはグシャッとなって修復不可能。直せないくらいに壊れるから、スペアパーツなど要らない。これはなかなか本質に触れたブラックジョークで、冗談の衣を着たリアル話だとも思う。そして、このコースでレースする(他車と闘う)ことのシビアさを示す挿話でもある。

さらには、ちょっと不謹慎だが、こういうのもある。「ニュル」で事故があった。そして、ヘリコプターが飛んで来た。この場合は、事故ったドライバーは、デッド・オア・アライブのうち“アライブ”の方である。一方で、事故の後でピーポピーポと、救急車が走ってきたら、それは、もはや“アライブ”ではない可能性が高い。一刻を争う必要がないので、空軍でなく陸軍が来たのだ。そしてこれは、そのくらいにここでの事故が多いことを示してもいる。

あるいは、不肖私が自身の体験から作った、やや情けないレベルでの逆説ジョーク(笑)。それは、「ヘタッピで遅いドライバーほど、“ニュル”は安全である!?」。そう、コースは見えない、長くて憶えられない。ゆえに、遅いドライバーは何のプランもイメージもなく、目の前に次から次へ現われるコーナーを、ただただドロドロッとなぞるだけ。そういうドライバーは、そもそも、このコースが危険になるような速度で、ここを走ることはできない。ゆえに、壊さず、ケガもせず……。

そして、もうひとつ。あるメーカーのテスト担当の某氏が語ってくれた“ニュル伝説”がある。ただ、これは私が勝手に想像を入れて拡大解釈している恐れもあるので、メーカー名と人物名は伏せておく。

テーマは、「ニュル」を走るクルマにとって、必要な要素は何か。まずは基本的なこととして、ボディの剛性がある。強烈で複雑な「G」がかかるこのコースを走るクルマは、しっかりした足と、それを支える(それの支点となる)髙剛性のボディが必要。これが「ニュル」を走るための第一の要件、つまりボディの「張り」だ。

ただし、その髙剛性のボディ、つまり「張り」が有効なのは、「ニュル」においては、ある速度域までだという。それよりも速い領域、さらに高速で「ニュル」を攻めるなら、もう「張り」だけでは間に合わない。その領域で求められるのは、ボディの「しなり」である。「張り」と「しなり」、この二つの要素があって、はじめて、「ニュル」を走るに適切なクルマ(ボディ)になる。

その理由は、これまた私の想像が含まれるが、「北コース」のこの“道”は、コースや路面からのクルマへの「入力」が恐ろしく複雑! そして、そうした「質」だけでなく、その「量」もまたハンパではない。そこから、ある速度以上の高速で走ろうとすると、サスペンションの「能力」を使い切ってしまうのだ、おそらく……。そして、そこから先の領域では、ボディ(車体)自体を“サスペンション”にして、コースに立ち向かう。

言い換えると、そういう機能を持ったボディを、「ニュル」というコースは求めてくる。そして、クルマとボディにそんな「性能」を求めてくるのは、世界広しといえども、この「北コース」だけ。「ニュル」はそんな“伝説”を抱えた唯一無比の“道”なのであった。
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Posted at 2015/01/28 23:57:21

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