
レーシングカーや海外のウルトラ・スポーツカーにはその例があることを知ってはいても、「ミッドシップ」というレイアウトのクルマは、この国の一般ピープルにとってはずっと“幻”でありつづけた。
それには理由がないわけではなく、このミッドシップという方式は、どうしてもクルマの挙動がシビアになりがち。ドライバーがヘタな「入力」をすると、スピンにもつながり、つまり非常にデリケートなドライビングが求められる、いわばプロ仕様のレイアウトとされていたのだ。
1984年、そのミッドシップ・レイアウトのクルマが、意外にも(?)トヨタから出現した。車名の「MR」は、ミッドシップ・ラナバウトの意であるとされ、クルマの側からは、スポーツカーとは決して名乗らなかった。
その通りにこのクルマは、何よりもトータルなバランスを重視し、誰にでもクルマと人とのダイレクトな「交感」が行えるよう、よく“調教”されていた。そうであっても、クルマと人とが密着するMR2独自の感覚は、極めてスポーツライクなものであり、メーカーが何と言おうと、このクルマをスポーツギアとして楽しむ人々は少なくなかった。
トヨタ博物館には、この初代MR2が、そのクレイモデルも含めて展示されている。メーカーにとっても、ミッドシップを一般向けの市販車として仕上げたのはエポックメーキングなことだったのだろう。そんな意味でも歴史に残る、これは小さな名車なのだ。
(「カーセンサー」誌、1995年。「昭和名車伝」より)
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クルマ史探索file | 日記
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2015/04/30 15:00:20