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2015年11月06日

スバルのWRCエンジン in 1998 その1

WRC=ワールド・ラリー・チャンピオンシップにおいて、1997年で3年連続のメーカー・チャンピオンに輝いたスバル・ワークス。インプレッサというマシンの素性の良さ、水平対向のパワーユニットと4WDという組み合わせの合理性、プロドライブの技術力と戦闘力、あるいはドライバー、コリン・マクレーの闘志──。

輝かしいリザルトをもたらしたファクターとして、これまでさまざまなことが語られてきたが、なぜか、ラリーカーの心臓であるエンジンについては、あまり語られることなく過ぎていたのではないか。

最強マシンの強力な心臓、そのスバル・エンジンは、どこでどのようにして作られ、どんな人が関わり、また、コンペティションを闘うためにどんなマネージメントがなされているのか。WRCというハードなフィールドを闘うスバル・エンジンについて、今回あらためてスポットを当ててみることにした。

        *

東京の西部、武蔵野の面影を色濃く残す三鷹市郊外にある富士重工の三鷹工場(正式には東京事業所)。スバルのモータースポーツ活動のヘッドクォーターであるスバル・テクニカ・インターナショナル=STIは、この中に拠点を持つ。そして、「ラリー用スバルエンジン」も、このファクトリーから生まれる。

“闘うエンジン”はここで設計され、ここで組み立てられ、ここでテストされて、世界へと送り出される。その意味では完全な一貫生産であり、ラリー・スバルのパワーソースのすべては、この三鷹にあると言って過言ではない。では、その現場では、いったいどれくらいの人員が、このワークス・スバル・エンジンのために活動しているのだろうか?

「40人……と言いたいんですが(笑)、実質は、今日ここに来た4人ですね」。STIの技術部エンジン設計課のチーフエンジニア、岩井智俊は、こう言って豪快に笑った。エンジンを設計しているのが、その岩井智俊。そしてエンジン組み立てが、エンジン・メカニックの上杉貞二と鈴木晋。そして、テスト担当が斉藤力。この4人である。

たったこれだけの人数で、世界を相手にワールドレベルの闘いを仕掛け、しかも、そこで勝っているのか? それだけでなく、さらに、それをここ何年も続けている? 聞けば、上杉にしても鈴木にしても、ひとつのエンジンは、まったくひとりで組むのだという。ほとんど手作りのようなそういう“作品”が、大メーカー/大資本の手になるプロダクトに、文字通りに後塵を浴びせている。そんな痛快なことが、いま起こっている! 

        *

では、そのラリー・エンジンについて、基本的なことをいくつか聞いてみよう。サーキット・レースの世界、たとえばF1エンジンでは、こんな話がある。本番が300キロのレースだとすれば、走行301キロで「壊れる」のが最良のエンジンだというのだ。つまり、このくらいにまで性能を極限的にツメたもので闘っている。そのことを象徴した“伝説”なのだが、では、WRC用エンジンの場合はどうなのだろう?

「サーキットだったら路面も決まっているし、そういうツメ方も、ひょっとしたらできるのかもしれない。でも、ラリーでは無理です。グラベルからターマックまで路面は違うし、環境だっていろいろに違う」
「第一、何が起こるかわからないから、ラリーのエンジンは、そんなにデリケートには作れない。そういう名セリフは、ちょっと吐けないなあ……(笑)。壊れちゃったら終わりですしね」

では、ラリーの場合、何よりも耐久性重視か? 「いや、それでは甘いです。それは重要ではあるけど(突き詰めたレベルでの)性能も要る。要はバランスです」(岩井)

ひとつのラリーで、スペシャルステージ(SS)の走行距離だけを見れば、合計しても約500キロということがある。しかし、だからと言って、サーキットのような“綱渡り”的チューニングはできない。だが、そうであっても、ツメ切っていない“甘い”エンジンでは、やっぱり勝負にはならない。

そしてラリーでは燃費制限はないが、もし燃費が悪ければフューエルタンクを大きくせざるを得ず、重量面でも不利になってくる。ゆえにパワーだけでなく、燃費、高効率という側面も無視できない。それが4大ワークスがしのぎを削っている、現在のWRCとそのエンジンの現状なのである。

(文中敬称略)(JAF出版「オートルート」誌 1998年記事に加筆修整)

(つづく)
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Posted at 2015/11/06 17:41:38

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