2016年05月03日
【スポーツ column 】レスター・シティ!
英国サッカーのプレミア・リーグで、岡崎慎司選手が属する「レスター・シティ」がリーグ優勝を達成。創立して130年以上もの間、ずっと弱小だったチームが“プレミアで勝つ”というのは、英国人にとってはあり得ないことであるらしい。ただ、その“あり得なさ”の度合いが一日本人としてはイマイチ実感できない……と思っていたら、ネットでこんな記事を見つけた。
何でも賭けの対象にしてしまう英国のブックメーカーは、もちろん、プレミア・リーグでレスター・シティが優勝するかどうかでオッズを設けていたが、その倍率が5000倍だったというのだ。
ちなみに、先に「世紀のジャイアント・キリングだ!」として騒がれた、ワールドカップ・ラグビーでの日本対南アフリカ戦。ここでの南アの勝利はブックメーカーでは「1倍」だったという。つまり、南アが勝つのが当たり前で、賭けてもらっても元金を返すだけ。一方、日本の勝利は「34倍」だった。つまり、みんながあり得ないと思っていても、ある一試合での勝敗であれば、せいぜいこのくらいのオッズということなのだろう。
しかし、レスター・シティのリーグ優勝、そのオッズは「5000倍」である。一試合の勝敗と、シーズン通してどんな順位かというのは比較にならないとしても、この違いは相当なものだ。そして、あるネット記事は、「レスター・シティの優勝」よりも低いオッズがあるとして、以下のようなことを載せていたのである。
……いやぁ、これが可笑しい! たとえば、「今年、ネッシーが見つかる」というのが500倍だ。そして、「オバマ大統領が月面着陸はウソだったと明かす」が、同じく500倍。しかし、この二つって、いくら500倍がついても買おうとは思わないのではないか。そして、さらにその“上”がある。オッズ1000倍が「ウイリアム王子に三つ子が生まれる」こと。また、2000倍が、何と「エルビス・プレスリーは生きている」! そして、あり得ないことの極めつけ、「ローマ法王がレンジャーズでプレイする」というのが4000倍だという。
このレンジャーズとは、英フットボールのクイーンズ・パーク・レンジャーズのことで、これは要するに、そもそもいま何歳であられるのか、ともかくそのローマ法王陛下がサッカー・チームに加わってピッチを走り回るということ。「ネッシー発見」に始まって、どれもみな、笑っちゃうくらいにあり得ないことなのだが、しかし、「レスター・シティの優勝」は、これらを超えているのだ。ゆえに「5000倍」であり、そのくらいに起こり得ないことというのが、英国民の判断だったのだろう。
たとえて言えば、日本のJリーグで、J1とJ2を行き来していたようなチームが、J1に上がったすぐの年に優勝したというような感じだろうか。ただ、日本のプロ・サッカーリーグは始まって歴史も短く、レスターの苦節百数十年……といったドラマには及ぶべきもない。
またプロ野球でも、弱小だった大洋ホエールズや近鉄バファローズでも優勝したことはあるし、そもそも日本のプロ野球の場合は「地域」に根ざしていないので、もし弱小であれば、親会社にさっさと見切りを付けられ、捨てられるか、どこかに売られてしまう。野球チームが同じ状況で何十年も続くことは、まずない。(広島カープは、その例外のうちのひとつだが)相撲にしても、平幕力士の優勝は、そんなに珍しいことではない。
……と、ボンヤリ考えているうちに、ようやく、私たち日本人にも実感できそうな事例を思いついた。それは、東京六大学野球のリーグ戦で、東大が優勝すること! これはオッズ500倍でも誰も買わない“馬券”になりそうだが、英国でのレスター・シティの優勝とは、この「東大優勝」以上の、圧倒的な“あり得なさ”だったのだろう。
でも、そんなレスター・シティの奇跡の優勝に、日本人選手である岡崎慎司が、それも中心選手(FW)として関わっているのは快挙だ。時間軸で見るなら、岡崎が加入した今シーズンから、弱小レスター・シティの快進撃が始まった……らしいではないか。岡崎はFWでありながら守備にも意欲的であり、試合開始時からピッチ中を縦横に駆けめぐって、そのため、後半になるとお役ご免でベンチに退くことも多い。
スタメン選手でありながら途中交代するその回数では、岡崎はダントツでリーグ一であるらしいが、そんな献身的なところも、英国のファンはちゃんと知っているようだ。やったね、慎司! そのままずっと走り回って、プレミア・リーグを掻き回し続けてくれ。そして、かつてのパク・チソンがそうであったように、アジア選手の存在価値を欧州のフットボール界に知らしめてくれ。コングラチュレーション!
ブログ一覧 |
スポーツcolumn | 日記
Posted at
2016/05/03 16:18:05
タグ
今、あなたにおすすめ