
──較べない? 比較しないってこと?
A「エンジニアっていうか、クルマ作ってる人たちは、何かと較べながら作ってるかもしれないですけど」
──ムカシは、“となりのクルマが小さく見えま~す”とか、隣家のガレージには何が駐まってるんだろうとか(笑)。
A「聞いたことがある話ですけど(笑)。そういえばそれって、クルマを作ってる側のことじゃないですね」
──そうです、カスタマー視点というか。少しでも“いい”クルマをとか、周りより何とか“先に”行きたいとか。広告にしても、消費者にそのへんを巧みにアオってた(笑)時代があった。
A「まあ、明らかにライバル関係にあるような車種だったら、較べてるかもしれないですけど。WRXとラン・エボとか」
──ほら、やっぱり較べるでしょ?(笑)
A「でも、その二台にしても、見てる人はもう、どっちかに決めてるんじゃないですか? WRXカッコいいよなとか思っていて、それを前提で……」
──あ、記事なんかも見てる、と? そうか、確認のためなんだ、言ってみれば。何となく決めてる自分の選択を押してほしいというか?
A「たとえばですよ、ニッサンのキューブみたいなクルマ、買おうとする人が、何かほかのクルマと比較してると思います?(笑)」
──うーん……(笑)
A「まあ、このクルマの場合は、キューブほどの“強烈さ”はないですけどね。でも、ちょっと近いものはあるかな? 比類なしライバル少なし、ということでは」
──なるほど。
A「ただ、キューブみたいに強烈すぎても困るっていうのがあって(笑)。そういう意味ではこれ、“濃すぎない”という感じで、悪くないです」
──ははあ……。
A「キューブまで行っちゃうと、あれはあれで、勇気が要るんですよ(笑)。見てください、私はこれほどのものでも買えるんですよって」
──これに乗れるワタシって、ちょっとすごいでしょ、と?
A「そう! まあ、ちょっと気に入っただけで自慢なんかしてませんよって、当人は言うかもしれないですが」
──その感じは、何となくわかるかな(笑)。
A「そういう意味ではこれ、“濃くない”のがいい。日常の片隅に、ひょいっと置いておけると思う。何でこれ買ったんだよ?とか、聞かれないで済みそうだし(笑)」
──なるほどね。
A「あ、ダメなデザインだって言ってるわけじゃないですよ。けっこう力感あるし、カタマリとしてしっかり存在してるっていうか、そういう感じもあるし。そうなんだけど、でも、これなら後ろ指も指されないだろう、とか(笑)」
──なかなか大変なんですね、クルマ選びも(笑)。
A「でも、どんなシャツでも着る……ってわけじゃないでしょ。Tシャツ一枚だって、着る時は、どれ着るか選ぶでしょ」
──話題をちょっと変えますが、このクルマのインテリアなんかは?
A「ドアハンドルがいいと思いました。インナーの、シートに座って、ドアを締める時に持つやつ。なんか丸い棒で、持ちやすい。手触りもよかったな」
──「高輝度塗装」にしてあるって、メーカーは言ってますね。たしかに手に触れる感じがちょっと違ってた。ステアリングとかシフトノブも、実は本皮で。
A「あ、そうなんだ。けっこう指とか掌が触るパーツについて、気にしてるのかなっていうクルマみたい。こういうの、重要ですよね」
──ヒップポイントの『615ミリ』っていうのは? 前席の場合ですけど。
A「……? 何ですか、それ?」
──前席のシート座面が、地上からどのくらいの高さにあるか。それをクルマの開発用語で“ヒップポイント”って言ってます。和製英語みたいですけどね(笑)。ちなみにワゴンRは初代からずっと、それを「620ミリ」付近にして──正確には代ごとに数ミリは違ってたりするらしいですが、そうやってクルマを作ってきた。
A「はあ……。違和感はなかったですけどね。つまり、ワゴンRと同じようだったからかな」
──もっと低い方がいいとかは?
A「まったく思いません! そうか、タクシーに乗る時なんかに、(あ、低いな)とか思ってたけど、そのヒップ……?(笑)つまり、シート座面の違いだったんだ、そうか!」
──アイポイントも高めになって、運転も乗降する際もしやすいと、メーカーでは言います。
A「ワゴンRと同じように“使える”ってことですよね。いいと思いますよ!」
──あの、先刻から、ワゴンRのことがよくお話に出て来ますけど?
A「最初に買ったのがワゴンRでした。中古でしたけど。初めてのクルマだったこともあって、それではけっこう走りました」
──乗り込みやすいとか、シートにスッと収まれるとか、思ってましたか?
A「え~、乗ってる時にはあんまり気づかなかったですけど(笑)。……というか、クルマってそういうものだと思ってたので。最初のクルマでもあったし」
(つづく)