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家村浩明のブログ一覧

2016年06月09日 イイね!

「ミニバン」と「SUV」 《1》

「ミニバン」と「SUV」 《1》私は「ウインドウズ95」でようやくコンピュータに接した、遅れたパソコン・ユーザーだった。そしてデジタル方面の素養がまったくなかったために、コンピュータを使いはじめてはみたもののワケわからず、やむなく救いを求めて雑誌を買いに行ったら、さらにナゾは深まるばかりだった……という、あまり笑えない記憶がある。

──そう、雑誌や書籍などを読んでも、そこで使われている用語がわからない。したがって、何とか活字を追ってはみるが、「パソコン」というそもそも知らないことについて、それまでに聞いたことがない用語で説明されている。そんな悪夢のような循環に陥ったのだ。

ただ、このとき反省もした。私はモーター・ジャーナリズムという世界の片隅で、主に雑誌作りや文章書きに携わってきたが、このジャーナリズムがやってることって、業界用語や専門用語が飛び交うという点においては、コンピュータ雑誌がやってることとあまり変わらない。われわれは、誰にも通じないような表現と物言いで、したり顔で雑誌などを作りつづけてきたのではないか。そのことに、ナゾだらけのコンピュータ雑誌を「眺める」ことで気づかされた。

もちろん、それぞれのジャンルに特有の専門用語が存在することは、まあ、やむを得ないと思う。問題は、それについてジャーナリズムとしてどうするか。そして、大ざっぱな言い方になるが、「専門性」と「一般性」をどうやってつなぐか。

自動車もコンピュータも、いまや、ある特定の人々だけが使うという製品/商品ではない。しかし、それを作ったり報じたりしている人々は、やっぱり専門家であろう。彼らが、またわれわれジャーナリズムが、その「説明責任」を放棄しているわけではないはずなのだが、ただ、では専門用語抜きに何かを解説することができるかというと、これもなかなかむずかしいことであったりする。

さて、そんなクルマ関連の業界用語で難解なものといえば、それはもう無数にあるだろうが、近年に登場してなかば定着したもののうち、最もわかりにくく、またイメージしにくいものを探すと、それは「ミニバン」と「SUV」ではないだろうか。

そのわかりにくさの理由を先に種明かしすれば、この二つはともに「米語」そのままであること。そして、これらが生まれる背景にはアメリカ独自の事情があり、その事情とこれらの用語がべったり“貼りついて”いることだ。

そして、そんな「純・米語」が日本に入ってきて、なぜ、それなりに流通してしまったかというと、われわれ日本人もけっこう「困っていた」からだった。むしろ、渡りに舟という感じで、メディアも含むニッポンのクルマ業界は、これらの新しい用語に飛びついたのである。

まず「ミニバン」だが、これはご承知の通りに、ハコ型というかワゴン・タイプの、室内の容量がたっぷりある「多用途車」(マルチ・パーパス車)のことをいう。とはいえ、ここで日本人にわかりにくいのは、たとえばアルファードやエルグランドなど、私たちにとって“小山のように大きい”クルマであっても、なお、それらが「ミニ」と呼ばれている現実。そして一方では、「ミニバン・タイプの軽自動車」というような言い方もあるらしい?……ことである。

ここでの「ミニ」には、サイズの概念がないのか? 日本マーケットにおいては、その通りである。日本での「ミニバン」はボディの形状を示す用語でしかなく、そのボディの「大きさ」には各種がある。これが現状であると思う。

ただし、この用語を輸出してきた本家のアメリカでは、「ミニ」とはもちろん、そのサイズを示すものだった。というのは、アメリカで「バン」といった場合は、われわれが“小山”と感ずるより、さらにもうワンランク大きい、巨大なハコ型車のことをいうからだ。

したがって、1990年代の半ばに米国マーケットに出現した、たとえばクライスラーのボイジャー(この初代は1983年に登場)やトヨタのエスティマ(初代)など。これらは、カタチとしては同じように「バン」であっても、そのサイズやキャパは「バン」よりもずっと小さい“おチビさん”だった。ゆえに彼らは、おそらく自然発生的に、そうしたコンパクトなニュータイプのハコ型車を「ミニバン」と呼んだ。

そして、その新語としての「ミニバン」が情報として、また現地のニュース用語として、日本に伝わりはじめる。それまで、日本では(いまでもだが)ワゴンとバンとの区別がなく、そして、ハコ型の自動車を「RV」として総称しようとしても、これにクロスカントリー風のモデルが含まれるのかどうかという論議があったりで、エスティマのようなモデルをうまく位置づけることができなかった。そこへ、比較的覚えやすい用語としての「ミニバン」が、アメリカからやってきたのだ。

こうして、まずはラージ・クラスのハコ型について、アメリカ並みに「ミニバン」という分類用語が与えられ、それと同時に、サイズの概念(ミニの意味)が消えた。そして新たに、日本的なサイズとジャンルの区別が生まれてくる。

折しも、この手のモデルが日本での人気車種として拡販を果たし、その種類も増えてきていた。そこでエスティマ・クラスを日本での「ラージ」として、以下、ミディアム、スモール……というように、この用語の解釈を広げていったというのが、日本マーケットでの流れではなかったか。

(3列目のシートを持つ多人数乗車可能なモデルに限定して「ミニバン」と呼ぶ。こういう作り手としての、また、そういうメーカーにジャーナリズムとして倣った。こうした分類とスタンスもある)

(つづく)

(2004年5月、web「Poplar Beach」掲載文より加筆修整)
Posted at 2016/06/09 15:12:07 | コメント(0) | トラックバック(0) | 00年代こんなコラムを | 日記
2016年05月26日 イイね!

スターレット EP71 (1984)

スターレット EP71 (1984)最新のメカではないから、つまりFR車だということで逆に注目されていたスターレットだったが、このサイズでFRというのは、たとえば足許の狭さなど、1980年代半ばの量販車としてはさすがに通用しにくくなっていた。レビン/トレノのようにクーペの衣装でもまとっていれば別だが、スターレットはただのコンパクト・ハッチバック。ライバル(FF車)はいっぱいだった。

そして、1984年の10月。ついにスターレットがFF車となって登場する。ただ、駆動方式こそ変わったが、運動性重視というキャラクターは従来型を引き継いでいて、身の丈に合ったタイトな走りを好むドライバーに、この新型は静かに浸透した。デビュー時は自然吸気の1300ccエンジンがパワー的な頂点であり、車体とのバランスも勘案されたスポーティなシリーズでもあった。(後に追加されたターボ・バージョンは、けっこうなジャジャ馬FFだったが)

こうしてスターレットがFF化されたため、トヨタの“小さなFR”は「ハチロク」だけになる。ただし、レビン/トレノがFRでいられた時間は、そんなに長くはなかった。1987年には「AE92」として、FF化されたレビン/トレノが出現してしまうからだ。“ハチロク”が「FR」とドリフトの二つの言葉とともに伝説になり、惜しまれ、そして愛され始めるのは「92」登場以後ではなかったか。“絶版”という称号は、やはり「AE86」が一番似合う。

(ホリデーオートBG誌「80's 絶版車アルバム」2000年4月より 加筆修整)
Posted at 2016/05/26 20:57:40 | コメント(0) | トラックバック(0) | 00年代こんなコラムを | 日記
2016年05月25日 イイね!

ブルーバード U12 (1987)

ブルーバード U12 (1987)この「U12ブルーバード」は、史上最良のブルーバードのひとつであろう。スタイリングでは、やや線が細い感じはあったものの、しかし、シンプルでクリーンなシェイプは品格があって美しかった。しなやかな乗り心地と着実なハンドリングとのバランスもよかった。

注目はオンロード用の「乗用四駆」として、新たにフルタイム4WD(アテーサ)を提案したこと。当時の4WDは操縦感覚でのクセがあったり、走行フィールが荒っぽかったりするものも少なくなかったが、このアテーサはそうした点を見事にブレークスルーし、どんな状況でも安心して走れる乗用車として仕上がっていた。また、そのハンドリングと走行性能はすばやくラリー・フィールドで活かされ、スポーツ・ギアとしても活躍した。

(ホリデーオートBG誌「80's 絶版車アルバム」2000年4月より 加筆修整)

○追記
この「1987ブルーバード」については、登場時に「週刊漫画アクション」誌に書いたものがありますので、近々掲載します。ちょっと“若書き”で青臭いコラムではありますが(笑)。また、この「絶版車アルバム」シリーズは、次回のスターレット篇をもって終了と致します。お読みいただき、ありがとうございます。
Posted at 2016/05/25 22:10:06 | コメント(0) | トラックバック(0) | 00年代こんなコラムを | 日記
2016年05月24日 イイね!

カリーナED ST160 (1985)

カリーナED ST160 (1985)新FFセリカも注目されたが、この「160型」は、実は作ったメーカーもビックリというヒット作を生んでいた。カリーナEDである。これは型式名でもわかるように、カリーナ・セダンとは何のかかわりもなくFFセリカの兄弟機種で、比較的コンサバなカリーナ・セダンから大きくジャンプし、突如として優美にして華麗な「4ドアのクーペ」として登場した。

そして、おもしろいことが起こった。マーケットはこのEDのカッコよさを歓迎し、パーソナルに使えるおしゃれなモデルとして、とくに女性層からは絶大な支持を受けた。しかし、一方でジャーナリズムは、このクルマの「4枚ドア」という事実を盾にとって、そうであるのに(4ドアは実用的であるべきなのに、という意味だったのだろうか?)このクルマの居住空間の狭さは何なんだ!……といった類の論陣を張ったのだ。

……いや、たしかに、このEDのAピラーの傾斜はきつく、また、大柄な男にとっては天井に頭がつかえて、フロントウィンドーも近すぎる、そんな造形ではあった(注1)。しかし、街を走っているカリーナEDを観察しても、小柄な日本女性にとってはヘッドルームにも余裕があり、この居住空間でも何ら不満はないように見えた。

そもそも、「狭いわね!」と思われていたなら、誰も買ってない。要するにそれだけのことで、またメーカーがどこであれ、カッコいいとかカワイイとか、そうした自分なりの評価と判断があれば、誰に何をいわれようとも、その感覚をもとに人はクルマを買う。そういう時代が来ていた。

いまにして思えば、この頃、つまり1980年代の半ばあたりから、わが国のリアルなマーケットやカスタマーの状況と、メディアや自動車ジャーナリズムとの間での微妙な乖離が、少しずつ始まっていたのかもしれない。

○注1:それを言うなら、あの名匠ジゥジアーロのデザインといわれたピアッツァの前窓の前傾、そしてルーフの低さも相当なものだった。造形をあくまで優先し、好きな人だけ、乗れる人だけ買ってくれ(!)というクルマ作りは、トヨタに限らずどのメーカーであれ、やる時は「やる!」のではないか。

(ホリデーオートBG誌「80's 絶版車アルバム」2000年4月より 加筆修整)
Posted at 2016/05/24 17:54:36 | コメント(1) | トラックバック(0) | 00年代こんなコラムを | 日記
2016年05月23日 イイね!

セドリック/グロリア Y30 (1983)

セドリック/グロリア Y30 (1983)VIPカーというような言い方はとくになかったはずだが、この頃、つまり1970年代末期から1980年代前半にかけては、そんな尊称が似合いそうなモデルがいくつかあった。当時は、フロントグリルの飾り立て方にしても、そうしたゴーカケンランなクルマに仕立てることへの“テレ”が、作る側にも買う側にもあまりなかったと思う。「ケバさ」を恐れなかったという意味では、この頃の日本車(の一部)は、アメリカ車の1950年代末期から1960年代の初頭、あのテールフィンを高々と掲げた華やか志向に似たものがあっただろう。

そんなゴーカさ目いっぱい、ケンラン垂れ流しに徹するというド派手な80年代車のひとつが、このセドリック/グロリアの「30」系である。シリーズの中でも、4ドアハードトップ系のリヤウィンドーがCピラーまで回り込んだリヤクォーター周りの処理は見もので、爛熟の美学というような言葉を与えたくなる過剰なゴージャス感があった。

また、それと比較すれば温和しかったセダン版でも、いわゆるシックスライトでウインドーとサイドビューを造形し、ただでさえ太くないCピラーに、そこにさらに細いウィンドーを埋め込むという細かい芸をしていた。フロントグリルのメッキの量と、その輝ける度合いにおいて、この「Y30」セド/グロは、同時代のクラウンにはしっかり勝利していたのではないか。

(ホリデーオートBG誌「80's 絶版車アルバム」2000年4月より 加筆修整)

○2016年のための注釈的メモ
1980年代の半ばは、日本の市販車が「外向き」と「内向き」に分かれ始めた時だった。「外向き」とは、そのモデルを輸出することも考えてのクルマ作り。そして「内向き」のクルマは、ひたすら国内市場をターゲットにした。セドリック/グロリアはライバルのクラウンと同様に、その開発テーマに「海外」は入っていない。欧州車なんて知らない(要らない)ぜ!……という日本のお客様に、どうすれば(日本の)「高級車」としての満足を得てもらえるか。そのようにして作られた、ひとつの頂点。それがこのモデルであった。
Posted at 2016/05/23 15:47:57 | コメント(0) | トラックバック(0) | 00年代こんなコラムを | 日記
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「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
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