• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

家村浩明のブログ一覧

2015年01月04日 イイね!

多様化するアイテム、軽の自立。小さなリーザが象徴するもの

多様化するアイテム、軽の自立。小さなリーザが象徴するもの§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

軽自動車は、クルマ世界の底辺を構成する、いわゆるベーシック・トランスポーターではなく、「軽」という枠を見事に生かし切ったもうひとつのクルマ世界である。

この事実は、わが軽自動車を考察するに際して、繰り返して確認し続けなければならない重要な真実だ。図式化すれば、軽自動車ワールドは、普通車の世界のその横にサイド・バイ・サイドで並立しているパラレル・ワールド。そういう格好である。

「軽」がベーシック・トランスポーターという役のみであれば、“入門”が終われば、あるいは上級志向とやらでカネさえ余れば、いずれは乗り越えられてしまうカテゴリーなのだが、しかし「軽」は違う。

79年のアルトから、約10年。歴史は「軽の不滅」を証明した。

ボンネット・バンという型式での恩典を、「軽」が持つ主に経済上のメリットに、さらに上乗せする。この巧みな展開によって、「軽」は見事に普通車からの独立を果たした。軽王国の救国のヒロインは、やはりアルト以外には考えられないが、その“独立国”が今日いかに強大なものであるかを教えてくれるサンプルを挙げるとすれば、それはリーザであろう。

何と言っても、カタチがいい。軽自動車史に残るべきデザインであり、しかも、あくまでもこれは法的には「バン」(商業車=トラック)というのが泣かせる。レギュレーション・マジックここに極まれリ、である。

また「軽」とは、サイズのみが異なる、もうひとつのクルマ世界であるのだから、普通車と同じように、さまざまなタイプやアイテムがあってよい。スペシャリティ・カー? もちろんOK!……というわけで、「軽」におけるその種の代表がリーザでもある。

90年代を迎える今日、軽自動車を「軽」として、ひとくくりにすることには、もうムリがあるようだ。普通車がそうであるように、「……としてのクルマ」「……としての軽」というように、注意深く語られねばならない。

日常使用車として、主婦のお買い物グルマとして、スポーティ・パッケージとして、改造の素材として、ラリー車のベースとして、ストリート・ファイターとして、そして、スペシャル・パッケージとして──。以上のような、それぞれの「……としての軽」が既にあり、それぞれで競争が行なわれているのである。このアイテム数は、これからもさらに増えよう。

愛らしいリーザの問題点を、もし挙げるなら、このような多様化の現実の把握ぶりが不足なことだ。その呈示の仕方が、何ともおずおずとしたものであることだろう。「軽」でこんなクルマ、作っていいんだろうか……? この種の迷いが作り手側にあるようなのが、何とも解せない。

スペシャル性や特権性を、もっと表面に押し出すべきだ。リーザは全車、パワーステアリングが付くとか、独特の眼=ヘッドランプは、たとえばイエローにしてしまうとか、スモールの時はその眼がうっすら光るとか、スペシャル作戦はいろいろあると思う。(むろん、現状はこうではない)

他の「軽」と同じような、たとえば女性仕様車の品揃えだって要らないかもしれないし、そういえば今回のマイナーチェンジで、室内のモノトーンは捨てられて、よくあるツートーンのシートになってしまった。

堂々とスペシャリティせよ! かわいいリーザに提言する。

そして、こういうクルマがミラやアルトと同じような数で売れるわけがない。ゆえにスペシャルなのであって、このことも前提に置いて作ってもらいたい。

自分自身ではその美しさに気づかず、厚化粧だけ覚えてしまった少女を、リーザは連想させる。悲しい……。必要なのは、自信だ。

(1989/03/14)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
リーザ(89年1月~  )
◆マイナーチェンジしたリーザは、この時、男のコ向けというべきバージョンを加えた。アルト・ワークス以後、男のコが「軽」へ降りてくる傾向が生まれたという。1300とか1600のクラスよりも、同じような金額でも、こっち(軽)の方がはるかに性能が詰まっているという判断でもあろう。クルマを「おもしろがる」ためなら、たしかにこっちの方が刺激的だ。「オトナになる前に乗りたい」というコピーを掲げたのはアルト・ワークスだった。これは巧い! “確信犯”同士、売る方も買う方も。そんな状況の証言的な広告コピーであった。

○2015年のための注釈的メモ
多様な展開を探り続けた軽自動車の世界は、90年代の半ばに新展開した。「ハイト系」という“ぶっとい鉱脈”を見つけるのだ。93年・秋、ほんとに何気なく、また半ば試供品のような感じで登場したスズキの「ワゴンR」が、メーカーやジャーナリズムの想像を超えたヒットとなった。高い着座位置(ヒップポイント=HP)のクルマは、使いやすくて乗りやすい。人にとって「やさしい」クルマとは、こういうカタチをしている。「走り」よりも、人との協調と融合の方がずっと重要だ。日本の賢いユーザーは、軽自動車に、そしてコンパクトカーに、欧州とは異なる新たな価値を発見し、21世紀に向けて、その新ジャンルを育てて行く。
Posted at 2015/01/04 09:33:43 | コメント(0) | トラックバック(0) | 80年代こんなコラムを | 日記
スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

プロフィール

「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2015/1 >>

    1 23
45 67 8910
1112 13 1415 16 17
1819 2021 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

愛車一覧

スバル R1 スバル R1
スバル R1に乗っています。デビュー時から、これは21世紀の“テントウムシ”だと思ってい ...
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation