
トヨタ・イストが登場したとき、そのコンパクト車らしからぬ重量感ある「閉まり音」を発するドアについて、本コラムでもリポートした。そして数ヵ月後、さすがにゲンキなこのギョーカイ、すぐにライバルが登場してきた。それがマツダのニュー・デミオである。
イストの場合は、あまたあるヴィッツ・ブラザースの中での“特異性”として、あるいは独自の売り文句として、「プレミアム」なるものをオモテに出してきた。そして「ドア音」は、いわばそのプレミアム性のシンボルでもあった。一方デミオは、キャンバストップの再登場や、グレードではなく三つの「タイプ」に展開したといったあたりがニュースになっていて、あまり「ドア音」が注目されていないようでもある。
しかし、このデミオのドアは侮れない! まだ、イストと並べて音を聞きくらべてはいないが、これはまさに、勝るとも劣らないというレベルでのバトルになっている。デミオの場合、このドア音を作っているハード的な理由としては、そもそもドア全体の剛性が向上していること。そして、閉まるときにぶつかるラッチの部分に施されている「樹脂コーティング」を変更したという。
そして、イストの開発グループでも同じようなことを言っていたが、こうしたドア音などを「作る」という場合には、ハード的な処理をどうするかという以上に、いい耳とワザとを持った「チューナー」の存在が重要になってくる。マツダにも、この点に関しては相当に優れたスタッフがいたようだ。ボディ開発部でドア・リッド開発グループに属し、デミオのドアを作ってきた奥田勇人主任は、今回のドアについて、「お客さまの感性に響くような『職人の味』が出せたのではないか」と語る。
そしてデミオの場合、こうしたドア音の“高級度”とそれへの満足感をさらに加速してくれるようなバージョンが実はある。それが「スーパー・コージー」と呼ばれるタイプで、何とシートは本革仕様(ファブリックとの組み合わせ)。そして、それとコーディネイトさせた木目調のパネルをインテリアに張りめぐらし、これはほとんど“小さな高級車”モード。聞けば、デミオの主査・藤原清志氏は、あのヴァンデン・プラのひそかなファンであるとか。
ハナシがここまで行くと、使われているパネルの「木目調」というのが、ちょっと画竜点睛を欠く感じになってくる。本物のウッドでやった場合、シートの明るい色と「いい感じで揃わなかった」のでいったん諦めたというのだが、ただリアル・ウッドをほしがる人って、そんな色味の違いはあっていいと思っているのではないかと思う。何にしてもこのスーパー・コージー、今後まだ“ひと化け”あるかもしれない。要注意!
(「ワゴニスト」誌 2002年)
Posted at 2015/12/03 05:46:40 | |
トラックバック(0) |
00年代こんなコラムを | 日記