
……ふと、「文化戦争」という言葉が思い浮かんだ。もし、その種のバトルを仕掛けるとすれば、その場合の“大本営”は、メーカー内部ではどこ(どのセクション)になるのか。開発現場の主管やチーフエンジニアはクルマ作りで多忙を極めるだろうから、その「戦争」の司令官や参謀総本部長を兼任するのは、おそらく不可能。そうなると、技術陣(エンジニア)以外で総合戦略や「フィロソフィー」を司ることになると思われるが、でも日本のメーカーで、こういう「戦い」が得意なところって、たとえばどこだろう?
対して欧米メーカーであれば、その種の「戦争」は恐ろしく巧みに展開しそうである。たとえば「電動車」として走りだし、この時は化石燃料は使ってないので超・省エネである。そして、必要に応じてエンジン(内燃機関)をオン/オフし、クルマが止まったら「EV」状態にする。その時にはエンジンは止まっているので、すなわちアイドリング・ストップ。そして走れる状況になったら、ふたたび「電動車」として行動を開始する。
……とは、もちろんプリウスのことなのだが、こういうシステムの「新ビークル」を、もし欧米メーカーが最初に世に出していたらどうだったろうか。ロータリー・エンジンどころではない、自動車史上における大発明と喧伝して、さらには、従来車とは異なるから革新的なのであり、走行フィールにしても“旧車”とはいかに異なっているかという点が強調される。
さらには、その新システムの発見者を技術史の中でのヒーローに仕立てたり、その「彼」は南アジアを旅行中に、某都市の渋滞の中でクルマの「新しい動かし方」を思いついたのだとアピールしたり……。そして文化・哲学方面では、高速で走り回ってコーナリング・スピードを競うだけではない、「欧州発」とは異なる新しいクルマ文化が、当社によってもたらされたとか。各種メディアともリンクさせつつ、さまざまな挿話や物語が「新ビークル」を取り巻くようにするのではないか。
(クルマ史における最初のテストドライバーは、愛する夫カール・ベンツが作った世界初の三輪自動車を、グランマのいる街まで、息子とともに敢然と運転したベルタ夫人であるとされている。彼女の愛と勇気のドライブは、メモリアル・ルートとして今日に残され、125年後の2013年、メルセデス全自動運転車の最初の公道テストコースとして、ふたたび用いられた)
そして、そうした文化的なサポートとパラレルなら、「新ビークル」の開発陣は安心して、それをEVベースの異なるフィールのクルマとして究めていける。また、「新ビークル」とその「走り」は、従来の内燃機関によるクルマとは違っていればいるほど、そのインパクトも強くなる。
嗚呼、しかし! 寂しいことではあるが、プリウスは、そうした“文化的”な(?)サポートは望むべくもなかった。クルマ世界の評者や識者たちも、初代プリウスが提案した「新しさ」や「異文化」に寛容ではなかった。孤高の戦いを強いられたプリウスは、その2代目以降は「新文化」を語ることは少なくなり、クルマ作りとその「まとめ」の基準と“文法”を「ヨーロッパ車」に求めて、ひたすら“ゴルフ超え”に邁進することになる。
……とまで言ってしまうと、あまりに私感が入りすぎているだろうか? でも、初代プリウスに対して「電車みたいに走る」という“評”がネガティブな意味で与えられたのは事実だったし、着座位置を上げた「21世紀の高姿勢セダン」というパッケージング&レイアウトも(少なくともジャーナリズム上では)あまり注目されなかったはずだ。
ただ、「ヨーロッパ」という市場で求められるものを、2代目以降のプリウスに順次投入していったとして、それでクルマが“悪くなった”わけじゃないんだから、それでいいじゃないか。そうした「充実」を、何で「寂しがる」のか? そういう声は聞こえる。
あるいは、00年代以降、多くの人々が「セダン以外」に乗るようになったから、逆にセダンは「ピュア志向」になった。たとえば60センチ以上のHP(ヒップポイント)のクルマに乗りたい人は、クロスオーバーでもSUVでも、その種の選択肢の中から、さっさと自分のクルマを選んでいるのだという解析もある。
そういう「分化」が進んでいる時代に、そうであっても「セダン系」に乗りたい人々は、あえて高いHPを望まない。この点について、マークXの開発陣は、たしかにHPは一度上げたが、その後、カスタマーからの要望で、新型では下げたと証言していた。プリウスの弟分で、2010年代に登場した新コンパクト・ハイブリッドのアクアも、軽量化を求めたせいもあって、HPは530ミリ付近でまとめられている。
また、最新の4代目では、たしかに全高は低くなっているが、人間工学でクルマを作ることを放棄したわけではない。ペダルと足/足首の関係、操作的にもこうなった方がベターであるということについては、人間工学的にも新たな発見があった。そういう要素は新プリウスに盛り込んであると、開発陣は語っていた。
(つづく)
Posted at 2015/12/30 14:45:06 | |
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New Car ジャーナル | 日記