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家村浩明のブログ一覧

2016年01月16日 イイね!

プリウスに乗った 《2》

プリウスに乗った 《2》……うーん、いまにして思うと、じゃあ“EV感覚”って何だったのだろうかと、逆にちょっとフシギになってくる。無理やり思い出してみると、あの感覚は、おそらくは、ある種の過剰さだった。トルクにしても、アクセルペダルを踏んでいる(システムに指示している)ドライバーの感覚やイメージ以上に、「電動車」はチカラが出ていた。また、そのチカラの出方には、ブワッというような唐突感が含まれていた。そしてそれとも似た感覚だが、二次電池などの重いものを積んだ巨大な“マス”が、ようやく動き出す。そんな風情もEVにはあったと思う。

もちろん、ガソリンエンジンにおいても、トルクはペダルの“踏みしろ”に応じてリニアに発生するわけではない。ただし、高回転域では爆発的にチカラが出ても、低中速域では、パワーもトルクもその出方はおとなしい。

そして、それに馴れてしまうと、それが「自然だ」という感覚になって、その「自然さ」と異なるものには、人はしばしば「違和感」という言葉を投げつける。そうした“人心”の動き、また、人の感覚と心理における機微といったことを、トヨタは深いところまで分け入ってみたのではないか。

そして、モーターの持つトルク感を失うことなく、しかし“過剰さ”は抑える。そんなチューニングであれば、電動時の走り、そのトルクの出方において、多くの人が「リニア」と感ずるであろうフィールになる。そこまで探索が到達し、ついでに、ヒューンというモーターの回転音も室内に入らないようにした。こうすれば、多くの人が「自然」と感じるはずだ──。

今回のプリウスは、そこまでやっているクルマのように思う。結果として、2010年代の「電動車」とその走行フィールは、初期の“電動アピール”の時代を終え、新次元に入った。そして、われわれが知る(体感する)ことのできる、その最初の成果が今回のプリウス(とミライ)なのではないか。

もちろん一方では、あの“電動感覚”は21世紀を切り拓くクルマの新提案と、その象徴だったのにぃ……とか、せっかくハイブリッド車(異種混交)を買ったのに、パワーソースを二つ持つという“優越感”を味わえなくなってしまった……といった文句を、今回のプリウスに向けることはできる。

ただ、そうした電動車的な要素を強調することは、このプリウスのテーマではなかった。ハイブリッド車だからとか、そうした前提ナシに、無条件で他車と較べてほしい。同じ地平に、一度、ハイブリッド車プリウスを置いてみたい。これがおそらく、この4代目でやりたかったことで、「お客様には、とにかく、クルマに乗ってみてほしいんです」と開発陣が言うのは、そういう意味だと思う。

さて、搭載電池のタイプが異なることによる「走り」の違いはない(感じられない)と先に記したが、とはいえ、シリーズ全モデルの走行フィールが同じというわけではない。そう、装着タイヤによる差異である。新プリウスでは、各グレードの「ツーリングセレクション」に17インチタイヤ仕様が装着されている。この大径タイヤを付けた仕様の乗り心地が悪い(固い)とはいわないが、でも、私のパーソナルチョイスは断然、15インチタイヤの“普通仕様”の方である。

この普通のバージョンによる、路面を掴みつつ、同時にしなやかに動きながら走っていくという滑らかさ。その度合いが、17インチ仕様ではやはり低下する(消える、とは言わない)。もちろん、見た目ということはあるのだろうし、17インチタイヤとしては良好な乗り心地なのかもしれないが、市街地などでこんなにイイですよ……という、せっかくのプリウスのホスピタリティを、違う“靴”を履くことによって失いたくない。これが私の意見だ。

それに、そもそもプリウスは、そんなに「スポーティ」方向に振らなくても、多くのカスタマーにとって十分なのではないか。プリウスの商品性として、そうした要素が、そんなに必要なのか。私としてはそんなふうにも思うのだが、しかし、この点も(繰り返しにはなるが)、仮に「走り」のパートだけを抽出されて評価されても、そこで他車との比較に耐えるものにしたい。それが、今回のプリウスの狙いであり、野望であった。

それと、こうしてすぐに比較とかライバル車の想定といったことにハナシを持っていくのが、メディアとそれに関わる者特有の習性であるらしい。VWゴルフがライバルですよね?……と訊かれるので、それをあえて否定はしていない。これが開発陣の立場で、実は、対抗モデルというのは何も想定していないというのが本音であるようだ。「ライバルを問われるのは、実はいつも困っています」と、開発陣の一人は苦笑いとともに語った。

さらには、セダンとしてまとめることにこだわったプリウスである故に、たとえばヒップポイントにしても、対旧型比で59ミリほど下げている。しかし、今回で呈示した新プラットフォームから生まれるモデルは、べつにセダン系とは限らない。これは容易に想像できることで、たとえばSUV的なコンセプト&パッケージングのモデルが、いずれ、このラインから派生してくるのは確実。高いHPのクルマについては、「プリウス以後」に注目しつつ待つべし、ということであろう。

(つづく)
Posted at 2016/01/16 23:24:18 | コメント(0) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
2016年01月16日 イイね!

プリウスに乗った 《1》

プリウスに乗った 《1》「事前試乗」ではなく、正式に(?)発表されて以後の新型プリウスに乗る機会があった。もっとも、先にプロトタイプとして公開された仕様と、発表後のプリウスとの違いは、開発陣によれば、それは「皆無」だそうだ。言葉として「プロトタイプ」(原型)と称していたが、もう何も変更することはないという段階になったから、報道陣にも公開した。

ゆえに、プロトとしてクローズドな場で乗ったプリウスと、今回、市街地(公道)で乗ったプリウスで、印象として、何か大きな違いがあるかというと、それはない。プリウスのコンセプトやその歴史については、本ブログの「ちょっと寂しいプリウス『4代』の“旅”」を参照いただくとして、ここでは、市街地(公道)で乗った場合のプリウスの印象、そしてそこで聞いた開発陣からのコメントなどを中心に、少しだけメモしておく。

まず、ニッケル水素電池とリチウムイオン電池、この二種のバッテリーを、2015年登場の新型車に載せている問題だが、これは開発陣にとっては、そんなにフシギなことではないようだ。なぜなら、3代目のプリウスもニッケル水素電池を搭載していたから。つまり、このクルマはずっとその仕様で来ていて、そしてこの4代目で、リチウムイオン電池の仕様もラインナップに加えましたよ、ということ。

……なるほど、エンジンの歴史をちょっと思い出せばいいわけですね。SOHCエンジンでずっと来たけど、今回の最新型では、それにDOHC仕様も加えた。二つの仕様は、それぞれに特徴と価値あり。ずっと作って来たSOHCエンジンは、まだまだ十分に“戦力”だし、また能力的に将来性もある。従って、これからも使っていく。これと同じような共存関係が、ハイブリッド車のパワーソースの一環である電池においても存在するということなのだろう。

もちろん、同じ重量、同じ大きさで性能比較するという“レギュレーション”であれば、その場合はリチウムイオン電池が勝つ。たとえば携帯電話の電池であれば、それはニッケル水素タイプでは無理。しかし、クルマに搭載する電池は、サイズの問題にしても、もう少し余裕がある。二種の電池で同じ性能を出そうとすると、ニッケル水素の方が大きく、また重くなるが、言い換えれば、ただ、それだけのことなのだ。

ちなみに、プリウス・シリーズ搭載の二種の電池では、その重量差は15・8キロであるという。この軽くできた分を装備品を積むために当てると、その結果として、ベーシックな仕様はニッケル水素電池が積まれていることになる。また、乗り較べてみて、この二つの電池の差が体感できるかというと、ニブい私(笑)のセンサーでは、それは到底ムリ。……というか、もしそうであったなら、開発段階で、どちらか一つのタイプに収束していたことだろう。

そして、従来型よりも低められた、問題の着座位置(ヒップポイント=HP)だが、クルマに乗り込む際には、私はやっぱり(低いなあ……)とは感じる。ただ、シートに収まってしまえば、HPが低いことによるストレスやデメリットは、ほとんど感じない。たとえば前方視界にしても、アイポイントが低いことは気にならない。

新プラットフォームの採用による低重心化とクルマの低姿勢化は、このモデルの大きなテーマのひとつだが、しかし、そのテーマ達成のために何かを犠牲にしてはいない。ちょっとおもしろいハナシとしては、クルマのフロント部分に掲げられるトヨタの“地球マーク”だが、その位置の「低さ」においては、このプリウス、日常使用を重視のセダン系でありながら、あの「86」と一緒なのだそうだ。

そして、二つのパワーソースがあること、その片方──といってもエンジンだが、それが状況に応じてオン/オフもしていること。これを感じ取ることも、ほんとにむずかしい。エンジンが掛かった(回り始めた)こともわからないし、その種の“継ぎ目”を感じ取ることも不可能に近い。

このことは同時に、(あ、いまはモーターで走ってるな?)という“EV感覚”というか、「電動車」を動かしている感覚がないことを意味する。そういえば、燃料電池車とはいえ、駆動は電動であるはずの「ミライ」に乗った時に、モーターで走っているという感覚、つまり“EV感覚”がないことに驚いたが、このプリウスも同様である。

おそらくだが、トヨタは、こういう「挙動」だと“EVチック”になる……という要素をいったんピックアップして、そして、それを消すにはどうするか。そして、どういう「挙動」と感覚であれば、普通の自動車っぽくなるか。こうしたことを徹底して探究したのではないか。

(つづく)
Posted at 2016/01/16 12:06:13 | コメント(0) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
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「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
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家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
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