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家村浩明のブログ一覧

2016年08月30日 イイね!

映画『おもひでぽろぽろ』の「スバルR-2」が絶妙だ! 《5》

映画『おもひでぽろぽろ』の「スバルR-2」が絶妙だ! 《5》市街地を抜け、田園風景の中を行くスバル。車内では、タエ子とトシオの会話が弾んでいる。
「紅花摘みに来たって、染色か何かやってるんですか?」
「いいえ、ただの物好き。ほら、紅花って珍しいでしょ」
「いやあ、名前ばっかり有名でね。とうの昔にすたれた特産品ですから。俺ンとこでも作ってないし」

「でも、江戸時代はスゴかったんでしょう?」
「そう、紅花大尽とかね。儲けた人にはスゴかったんでしょうが、百姓にはただの作物ですからね。……えーと、『行く末は 誰が肌ふれん 紅の花』って知ってますか?」
「ええ。 芭蕉の句でしょ。来る前に調べたから」
「へへ、いや実は俺も一夜漬けで(笑)。その本に書いてあったんですけどね、花摘みをする女たちは、一生にいっぺんだって、紅なんか付けられなかったって」

空が明るくなり、話題が農業のことになって、トシオは「有機農業」をタエ子にレクチャーした。
「オレはね、一生懸命やれそうなんです、農業。おもしろいですよ、生きものを育てるっていうのは」
「酪農の方も?」
「あ、そうじゃないです。牛もニワトリも飼ってるけど、イネだってリンゴだってサクランボだって、生きものでしょ」

「有機農業は堆肥なんか使って、農薬や化学肥料はできるだけ使わない農業」「生きもの自体が持っている生命力を引き出して、人間はそれを手助けするだけっていう、カッコいい農業のことなんです」

タエ子は列車から降りてそのまま、農作業をするための畑に向かっていた。それでいいのかと、トシオは先刻、タエ子に確認している。花畑が見えてきて、クルマは農道へと右折。道は穴ぼこだらけで、そこに昨日降った雨水が溜まっている。右折の際にマフラーから一瞬白いケムリが出たのは、R-2のエンジンが2サイクルだからか。(芸が細かい!)

やがて、周りが黄色い花が一面に咲く花畑になる。タエ子はそこで、農家の人たちの満面の笑みに迎えられた。「タエ子さん、よく来たこと」「よく来た、よく来たなあ!」「疲れてないかあ?」

タエ子は「いいえ、ちっとも」「ほら、元気いっぱい」と応じて、彼らに自身のモンペ姿を見せた。これは列車内で、既に着替えていたようだ。「あれえ、モンペなんか穿いて、張り切ってるでねえの」「いやあ、いまどき、ここらの若妻でもメッタに穿かね。タエ子さんの方が、よっぽど本格的だぁ。ハハハ(笑)」

ナレーション
「こうして、私の二度目の田舎生活が始まった」
「この黄色い花から、どうして、あんなに鮮やかな紅色が生まれるのだろう」
「ひと握りの紅を採るには、この花びら60貫が必要で、玉虫色に輝く純粋の紅は 当時でさえ、金と同じ値段だったという」

作業をしている畑に、朝日が昇った。太陽に向かって、手を合わせるおばあちゃん。タエ子もそれに倣っている。こうして花摘みに始まり、その後の処理や加工など、タエ子は一連の農作業の手伝いをしていく。

タエ子のナレーション。
「いまでは機械を入れたり、いくぶん手間を省いてはいるけれども、こうした作業のすべてを、毎日、花摘みをしながら繰り返す」
「花餅はカビやすく、花は摘みどきがあって、待ってはくれない」
「やっと摘み終えて振り返ってみると、いつの間にか、また新しい花が咲いている」
「梅雨の雨は容赦なく降り注ぎ、時には仕事が深夜に及ぶこともある」

今回、タエ子が山形にやって来たのは梅雨時のようだ。そしてタエ子は、去年は稲刈りを手伝ったと言っていた。稲の収穫は秋のはずだから、そうすると、タエ子は半年も間をおかずに、この農家に野良仕事をしに来ているということか。

タエ子は言う(ナレーション)。
「あっという間に一日一日が経ち、私は快く疲れ、遠い昔の『花摘み乙女』の身の上を思った」
「もし子どもの時、こんな手伝いをやる機会があったら、読書感想文なんかじゃなくて、もっと生き生きした作文が書けたのに──」

作業を終えたタエ子が、軽トラ(このクルマはナンバープレートが黄色だ)の荷台に乗って、農家(本家)に帰って来た。そこでは娘のナオコが、高価なプーマの靴を買ってくれと親にねだっている。それを見て、「小学5年生の私」を山形に連れてきているタエ子は、よみがえる自身の「10歳の頃」と向き合ってしまった。

……着るものにしても持ち物にしても、姉たちの“お下がり”しか回ってこない(と感じている)小学生のタエ子。ほしいと思っているエナメルのハンドバッグも、次姉は、なかなかタエ子におろしてくれない。そして、家族で食事に出かける際にダダをこねすぎ、果ては裸足で玄関の外に飛び出して、いつもは優しい父に平手で頬を張られてしまった。

この記憶とエピソードを、トマトを収穫しながら(これはたぶん夕食用だ)タエ子はナオコに語っている。
「お出かけは、もちろん中止。ほっぺたが腫れて、タオルで冷やしたんだけど、いつまでもジンジン痛むの」

「お父さんに叩かれたの、 それが初めて?」
「うん。初めてで終わり。一回だけ」
「ふーん……。あたしなんか、時々でもないけど、何回かあるよ」
「一度だけだと、じゃあ、どうしてあの時って考えちゃうのよね」

ナオコと二人で歩きながら、タエ子はふと見つけたカタツムリを手に取って、自分の手の甲に載せた。
「でも、タエ子姉ちゃんが子どもの頃ワガママだったなんて、信じられない」
「ワガママでね。好き嫌いもタマネギだけじゃなかったし」
「ああ、なんだかあたし、安心しちゃった(笑)」
そしてナオコは、タエ子に耳打ちする。
「あたし、プーマの靴あきらめる」
「えらい! じゃあ、お小遣い、奮発しちゃおうかな(笑)」

二人が戻った本家の中庭には、スバルが駐まっていた。トシオが来ているようだ。水で冷やしてあったキュウリを囓ったトシオは、「タエ子さん。明日、蔵王へドライブに行きませんか、息抜きに」と誘った。
「山寺は去年行ったって聞いたから。あっ、先に本家のOK取って来た」
「まあ」
タエ子は嬉しそうに笑みを返す。

(つづく)

○フォトは山形・高瀬地区の紅花畑。web「やまがたへの旅」より。
 
◆今回の名セリフ

* 「牛もニワトリも飼ってるけど、イネだってリンゴだってサクランボだって、生きものでしょ」(トシオ)

* 「生きもの自体が持っている生命力を引き出して、人間はそれを手助けするだけっていう、カッコイイ農業のことなんです」(トシオ)

* 「花餅はカビやすく、花は摘みどきがあって、待ってはくれない」「やっと摘み終えて振り返ってみると、いつの間にか、また新しい花が咲いている」(タエ子)

* 「一度だけだと、じゃあ、どうしてあの時って考えちゃうのよね」(タエ子)

* 「あたし、プーマの靴あきらめる」(ナオコ)
Posted at 2016/08/30 21:09:06 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマから映画を見る | 日記
2016年08月30日 イイね!

【 70's J-car selection 】vol.07 シビックRS

【 70's J-car selection 】vol.07 シビックRSシビック1200RS SB1(1974)

もし、1970年代前半のオイル・ショック(第一次石油危機・1973年)が無かったら、このモデルは、もっと華やかな生涯を送れたのではなかったか。ベース車からしてかなり俊敏だったシビックに加わった新バージョンだったが、デビュー当時はちょうど石油危機の真っ最中。日本中がいろいろな意味での“自粛”モードになっていて、そんな時に登場することになってしまったのが、この仕様(RS)だった。

「RS」というのは何、どういう意味ですか?……と世間様から問われることを想定したのか、メーカーは何と、それは「ロード・セイリング」ですという答えを用意していた。もちろん開発陣にとっては、そんな“ふやけた”意味合いの追加仕様ではなく、スピリットはハッキリ「モータースポーツ」。「R」はレーシングで、「S」はスポーツだったと、当時のスタッフは証言する。

ゆえに、エンジンはシリンダーヘッドを“全交換”してツインカムにする予定だったし、タイヤのサイズも上げて、さらにワイドにするというプランもあった。しかし、この点についても、当時の社会情勢が関与してきた。後付けオーバー・フェンダーと「暴走族」はリンクしている。これがその頃の“当局”の判断で、「RS」はタイヤのサイズアップというチューンを行なうことができなかった。

……「ロード・セイリング」という言葉の範囲内で作られた「RS」は、シビックより“ちょっとだけ速い”クルマとしてまとめるしかなかった。いろんな意味で中途半端なモデルになってしまったと開発陣は述懐するが、それでも、人気のシビックに加わった新バージョンとして注目され、レア物としてのポジショニングも得て、今日に至っている。

(ホリデーオートBG 2000年3月より加筆修整)
Posted at 2016/08/30 04:43:39 | コメント(0) | トラックバック(0) | 00年代こんなコラムを | 日記
スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

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何シテル?   01/15 10:59
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