
コスモAP CD23(1975)
「コスモ」とは、世界で唯一マツダだけが量産化に成功したロータリーエンジン搭載のスポーツカーに与えられた名だった。1967年に登場したその2シーター車は、路上の宇宙ロケットといった風情の超・低姿勢な造形で、同時に、エンジンが(コンパクトな)ロータリーだとこんな流麗な格好も可能なのか!……という、そんな驚愕と衝撃に充ちた未来的なクルマであった。
その後、近年ではユーノス・コスモが記憶に新しいが、「コスモ」はスポーツカーからスペシャリティ・カーのための名前になった。(スポーツカーには、メーカーは「RX」系を用意した)1975年のこのクルマが、そんな“スペシャリティ・コスモ”としての原点になる。
ただ、1960年代の“初めてのコスモ”の鮮烈な印象とともに、このクルマを見ると、スポーツカーとスペシャリティ・カーは違うものなのだと、いくらアタマで納得しようとしても、この“スペシャリティ・コスモ”は、どうしても鈍重に見えた……かもしれない。もちろん、その意味や「こだわり」にちょっと窮屈なところもある「スポーツカー」ら脱して、広い世界で伸び伸びと“スペシャリティしたこのモデルの、豊かさや多用途性を歓迎した人々も一方でいたはずだが。
さて、このクルマでは、コスモの後に付けられた「AP」というが、ちょっと気になるところである。これは「アンチ・ポルーション」、すなわち低公害車の意で、実は1970年代の前半は、クルマのエンジンを「低公害化する」ために各メーカーがシノギを削った“技術の時代”でもあった。
そんな難問に、ロータリー・エンジンならそれをクリアできる!……として、メーカーが送り出したモデル。それがこの「コスモAP」だった。作り手として、その時代の「最先端モデル」には、いつも「コスモ」という名を与える。この意味では、メーカーの姿勢は1960年代も1970年代も、まったくブレていなかったということになる。
この車名には、もともと窒素酸化物(NOx)が少ないロータリー・エンジンの特質を活かして、他社に先駆けて排ガス規制をクリアした誇りが込められていた。ネーミングの話が多くなってしまったが、「コスモ」であれ「AP」であれ、どちらでもキモになっていたのは、やはり「ロータリー・エンジン」……。これは、やはりマツダのIDで、そして、日本工業界の「適用」技術の高さを自動車史に刻んだモニュメントである。
(ホリデーオートBG 2000年3月より加筆修整)
Posted at 2016/09/28 06:18:58 | |
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