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2016年11月01日 イイね!

【 70's J-car selection 】vol.30 アルト

【 70's J-car selection 】vol.30 アルトアルト初代 SS30V(1979)

新しい「軽」は、いつもスズキから――。こんなフレーズを思わず書きたくなるくらいに、このメーカーは1950年代からずっと、その主戦商品である軽自動車に何か「新しさ」を盛り込もう、可能性を広げようという奮励努力をし続けて来た。

不整地走行に強いジープ・タイプのクルマを「軽規格」でまとめたジムニーはその一例だし、「FFの軽」というのも、実はこのメーカーが日本最初に作ったものだ(1958年・スズライト)。その後に、一転してRR方式とした軽乗用車フロンテでは、後輪駆動という特質を活かして、スポーツカーと呼んでもいい運動性と流麗なスタイリングのフロンテ・クーペを送り出した。

そんな歴史を持つ軽メーカー・スズキが、またしても1970年代の末、当時やや沈滞の気配もあった軽自動車マーケットを覚醒させるような新ジャンル・カーを生み出した。それがアルトである。

この頃、つまり1970年代後半のコンパクト車事情について、「SUZUKI STORY」(1992年・三樹書房刊)は、セカンドカー需要を狙って、リッター・カーが多く輩出されたと、まず解析。そしてそんな新傾向に、軽の専業メーカーとして対抗する必要があり、ベーシックと低価格に着目した新ジャンル・カーの開発に向かったと記す。

さらに同書によれば、その企画は、まず開発部門から上がってきたものだという。それが、「物品税が安く、価格が安くできる商用車でありながら、乗用車スタイルのクルマ」という提案だった。そこには、軽自動車って何人乗って動いているのか。実はひとり+アルファではないのかという市場観察からのデータも入っていた。

これに対して社内の営業サイドからは、商用車と乗用車ではそもそもユーザーが異なるし、受注時の混乱も予想されるとの反論があった。しかし開発スタッフ側は、そんな区分は法律と統計上のものでしかなく、一般カスタマーには関係がないこと。何より、作る側としてそんな“旧習”は打破しなければ、新しいタイプやジャンルの新型は生まれないと主張した。

重要なのは、軽の専業メーカーとして「軽自動車界を活性化させなければならない」(同書)ということ。その一端としての、リアル・ベーシックと低価格への着目。そうした軽自動車の原点を直視しての「商用車」カテゴリー、それを利用したパセンジャー・カー作りというアイデアであった。

さらにそこには、同社の上層部から、具体的な数字が開発陣に下りて来た。それは新型の軽自動車は、「目標価格45万円以下」にするというオーダーだった。当時の同社の軽乗用車は、フロンテが約55万円、セルボは70万円近かったから、この価格は破天荒な“社長命令”でもあった。

これについての結果を先に書くと、「45万円」ではどうしても利益が出ないことがわかり、アルトは結局「47万円」でデビューすることになる。ともあれ、この価格でアルトが登場した時には、ジャーナリズムもマーケットも驚きを隠せなかったが。

このアルトのデビュー時には、ひとつアイデアが盛り込まれた。それは、2ドアのハッチバック車はアルト(商用車)のみにして、4ドア車は乗用車ジャンルのフロンテだけとするというラインナップ設定だ。これによって、「アルト」といえば2ドアのバージョンしかないということで、カスタマー側の混乱も避けられた。そして予想通りに一般カスタマーは、そのクルマ(アルト)のカテゴリーが「商用車」なのか「乗用車」なのかということなど、まったく気にしなかった。

こうして、日本の“スーパー(マーケット)カー”アルトは、1979年に誕生。「こんな手軽な軽もあるんだ」ということで大ヒットし、軽自動車の世界を拡大するとともに、その商品としての可能性を広げた。

そして、このアルトは1980年代。安価+軽量という属性を逆に活かして、これにハイパワーのターボ・ユニットを組み合わせた、その名も「ワークス」をデビューさせ、“速い軽”という新ジャンルを提案することになる。

(ホリデーオートBG 2000年3月より加筆修整)

◆この【 70's J-car selection 】シリーズは、今回をもって終了と致します。お読みいただき、ありがとうございます。
Posted at 2016/11/01 15:45:40 | コメント(0) | トラックバック(0) | 00年代こんなコラムを | 日記
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家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
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