
一般の人々が日常的に使う「商品」の場合、それについての説明の言葉は、やっぱり短くて簡単な方がいいのではないか。その意味で、この11月にニッサン・ノートのラインナップに加わった新バージョン、「ノートe-POWER」の「シンプルさ」を積極評価したい。
この「ノートe-POWER」について、自動車業界の用語を使って、これは「シリーズ・ハイブリッド」方式で……と始めると、ハナシは逆に長くなってしまう。まあメカに詳しい人にとっては、そういうふうに言ってくれたらすぐにわかるよ……かもしれないが、ただ「シリーズ──」をわかってもらうには、一方で「パラレル──」っていうのがあって……ということからハナシを始めなければならない。
でも、この「ノートe-POWER」の場合、既に街を走っている「EV」や「電動車」と同じジャンルと言い切って、何ら問題がない。……というか、その通りにこれは「EV」なので、ただ、その取り扱いの部分が“ピュアEV”とは違っているだけ。
──「ノートe-POWER」ですか? これはEVです、モーターで走る電動車。既にご存じのリーフと同じです。ただし、リーフのように「充電」はしません。このクルマは「給電」ではなく、ガソリンスタンドで「給油」します。それでOKで、その後は、タンクのガソリンがなくなるまで走れます。普通のクルマというか、ガソリンエンジン車とまったく同じように使って下さい。
何故、給電しないのに電動車として使えるかといえば、それは、エンジンによって発電するシステムを車載しているから。そして、そのシステムを稼働させるために、ガソリンが要るということ。“車上の発電所”は一種のブラックボックスで、ドライバー&ユーザーは、それに関与することはできない。そして、エンジンは発電だけを行ない、車両の走行には関わらないという単純さである。
そうは言ってもギョーカイの分類では、この「新ノート」はやっぱり「ハイブリッド」のひとつになっているのだろう。ただメーカーは、この新バージョンについて、「シリーズ……」も含めて「ハイブリッド」という語を一切使っていない様子。でも、それでいい。説明し始めても長くなるだけだし(笑)。
むしろ、既にリーフを市販している“先進のEVメーカー”として、リーフとこのノートの違いを簡単に述べていく方が、はるかに建設的ではないか。開発担当者は「ガソリンで走るEV」と語っていたが、この言い方は大正解だと思う。
そしてニッサンが、こんな「シリーズ・ハイブリッド」方式のモデルを出したのも、既にリーフを持っていることでもわかるように、「モーター駆動車」や「電動のビークル」は、単に「時代性」ということではなく、そのドライバビリティも含めて、クルマとして“いいもの”だと、作り手として考えているからであろう。そんなEV的なドライバビリティとは、大トルクによる豪快な加速であったり、今回のモデルで選択できるようになったアクセル・オフ時のブレーキ感覚(ワンペダル・ドライビング)であったり……。
私は、いろいろな種類のビークル(クルマ)があっていいと考えているひとりなので、「原動機としてのモーター」が普通のレシプロ・エンジンとは異なるテイストを持ち得るということは、逆に、アピールすべき部分であると思う。
また、現状の、給電可能箇所よりもガソリンスタンドの方が圧倒的に数が多いというインフラを見れば、「EV」の日常的な使い勝手を良くする方策として、たとえば車上で発電するのは大いにアリである。その意味でも、この「ノートe-POWER」はおもしろい提案であり、(リーフ以上に)より現状に即した「EV」として、この新ビークルを拍手とともに迎えたいと思う。
Posted at 2016/11/08 11:17:23 | |
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New Car ジャーナル | 日記