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家村浩明のブログ一覧

2015年01月06日 イイね!

エボルーションは続いている、ファミリアは成熟している……

エボルーションは続いている、ファミリアは成熟している……§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

はじめに、たったひとつと言ってもよい欠点を書いておく。それは、クルージング時における乗り心地の、ある部分である。試乗ルートには、舗装の継ぎ目がシビアな(尖った)有料道路があったのだが、それのクリアの仕方である。80㎞/h程度で流す時、新ファミリアはここでけっこう「コツン!」と来るのだ。

確認すると、それはあくまでも「(コ)ツン!」であって、決して「ガツン!」や、ましてや「ガタピシッ!」ではない。つまりボディの四隅の遠くの方で、小さく「ツン!」と鳴る音である。これをもう少し、「ヌルッ」という感じでクリアしてくれたら、新ファミリアの乗り心地はさらに一層リファインされたものに……と書いてきて、気がついた。こりゃあ、ことさら言い立てるほどの短所ではないなあ……!

この小さな「ツン!」は何を意味するか。それはまず、ボディ剛性の高さである。みじんもキシまないから、こういう音になる。また、この程度の音で済むのは、そしてこれが聞こえてしまうのは、静粛なクルージング空間が実現されているおかげである。

そして、舗装の継ぎ目くらいの足まわりへの「入力」は、サスペンションや、それを結合しているところのボディまでは、決して届かせない。そういうフトコロの深い「足」を持つクルマであることの証明でもある。

そもそも、この「欠点」が何によって発見されたと言えば、もっと大きくて重くて高価な車種──たとえばマークⅡなんかと、無意識のうちに較べている。そうした「比較」の結果なのだった。

ただし、事実としていえるのは、GTのようなスポーツ・パッケージ版でなくとも、今回のファミリアの足と乗り心地は硬めであるということ。対ニッポン市場において、ちょっとどうかなという懸念もあって、冒頭のような指摘もしてみたが、しかし、その心配は、この国の自動車市場でもそろそろ不要なのかもしれないと思う。

そしてそれは、マツダ・ファミリアというコンパクト・カーが獲得し得た個性でもある。旧型の同車は堅牢なボディの実現を急ぐあまりに、やや“肌触り”が冷たく、シートもコチコチでいかにも生硬であったし、デザインの無骨さも目立った。しかし、最新ファミリアは、シンプル・パッケージはそのままに、シートも含めて、魅力ある“柔らかさ”を併せ持つ存在に生まれ変わった。

良いクルマである。もし、ぼくがいまVWのどれかに乗っているとすれば(実際に、そういう時期もあったのだが)ためらわずに、このニュー・ファミリアに買い換える。西独製コンパクト・カーの良所を拡大し、騒音や粗さといったいくつかの短所を見事に取り除いたクルマ。それが新ファミリアである。その成熟度は高い。

(1989/04/04)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
ファミリア(89年2月~  )
◆まず、3ドア/4ドアがデビュー。後に、4ドア・クーペというべき車型のアスティナが加わって、現在は3タイプ。本コラムのような評は少なくなかったと見えて、アスティナでは、サスペンションの初期作動時での硬さが改善され、「コツン」の度合いが和らいだ。いずれ、3ドア/4ドアでもこのアスティナ風の足のフィーリングに統一されると、ぼくは読む。要は、街乗りレベルでの乗り心地を、作り手として、また買い手として、どう判断するかということ。これは、たとえば販売店の周辺を試乗するだけでも体感はできるので、各自で検証されたい。

○2015年のための注釈的メモ
このコラムでいう「コツン!」がどの程度のものだったか、いまではちょっと記憶を探れないというのが正直なところだが、今日の私の評価基準では、もし、いまの新型車にこれが感じられたら、開発陣には欠点あるいは要改良点として指摘すると思う。また、ここでは時速80キロでの状態について言っているが、今日の乗用車でもっと重要なのは、時速50キロ以下、そんな低速域での「足」の動き、そのしなやかさだと考える。

また、ここでのVW車とは具体的にはゴルフ/ジェッタのことで、コラム中で「買い換える」と語っているのは本気だった。とくに静粛性とデリカシー(繊細さ)といった部分では、自分で乗ったがゆえに、この頃(80年代)のVW車は評価できなかった。また「個体差」であったのかもしれないのだが、私のところに(新車で)来たゴルフ/ジェッタは、そのどちらも、トラブルで走行不能になる事件を起こした。“信頼の西独車”でこれなのか……をカラダで知った私は、以後、自身の生活に欧州車を取り込むことはなかった。
Posted at 2015/01/06 17:50:02 | コメント(0) | トラックバック(0) | 80年代こんなコラムを | 日記
2015年01月04日 イイね!

多様化するアイテム、軽の自立。小さなリーザが象徴するもの

多様化するアイテム、軽の自立。小さなリーザが象徴するもの§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

軽自動車は、クルマ世界の底辺を構成する、いわゆるベーシック・トランスポーターではなく、「軽」という枠を見事に生かし切ったもうひとつのクルマ世界である。

この事実は、わが軽自動車を考察するに際して、繰り返して確認し続けなければならない重要な真実だ。図式化すれば、軽自動車ワールドは、普通車の世界のその横にサイド・バイ・サイドで並立しているパラレル・ワールド。そういう格好である。

「軽」がベーシック・トランスポーターという役のみであれば、“入門”が終われば、あるいは上級志向とやらでカネさえ余れば、いずれは乗り越えられてしまうカテゴリーなのだが、しかし「軽」は違う。

79年のアルトから、約10年。歴史は「軽の不滅」を証明した。

ボンネット・バンという型式での恩典を、「軽」が持つ主に経済上のメリットに、さらに上乗せする。この巧みな展開によって、「軽」は見事に普通車からの独立を果たした。軽王国の救国のヒロインは、やはりアルト以外には考えられないが、その“独立国”が今日いかに強大なものであるかを教えてくれるサンプルを挙げるとすれば、それはリーザであろう。

何と言っても、カタチがいい。軽自動車史に残るべきデザインであり、しかも、あくまでもこれは法的には「バン」(商業車=トラック)というのが泣かせる。レギュレーション・マジックここに極まれリ、である。

また「軽」とは、サイズのみが異なる、もうひとつのクルマ世界であるのだから、普通車と同じように、さまざまなタイプやアイテムがあってよい。スペシャリティ・カー? もちろんOK!……というわけで、「軽」におけるその種の代表がリーザでもある。

90年代を迎える今日、軽自動車を「軽」として、ひとくくりにすることには、もうムリがあるようだ。普通車がそうであるように、「……としてのクルマ」「……としての軽」というように、注意深く語られねばならない。

日常使用車として、主婦のお買い物グルマとして、スポーティ・パッケージとして、改造の素材として、ラリー車のベースとして、ストリート・ファイターとして、そして、スペシャル・パッケージとして──。以上のような、それぞれの「……としての軽」が既にあり、それぞれで競争が行なわれているのである。このアイテム数は、これからもさらに増えよう。

愛らしいリーザの問題点を、もし挙げるなら、このような多様化の現実の把握ぶりが不足なことだ。その呈示の仕方が、何ともおずおずとしたものであることだろう。「軽」でこんなクルマ、作っていいんだろうか……? この種の迷いが作り手側にあるようなのが、何とも解せない。

スペシャル性や特権性を、もっと表面に押し出すべきだ。リーザは全車、パワーステアリングが付くとか、独特の眼=ヘッドランプは、たとえばイエローにしてしまうとか、スモールの時はその眼がうっすら光るとか、スペシャル作戦はいろいろあると思う。(むろん、現状はこうではない)

他の「軽」と同じような、たとえば女性仕様車の品揃えだって要らないかもしれないし、そういえば今回のマイナーチェンジで、室内のモノトーンは捨てられて、よくあるツートーンのシートになってしまった。

堂々とスペシャリティせよ! かわいいリーザに提言する。

そして、こういうクルマがミラやアルトと同じような数で売れるわけがない。ゆえにスペシャルなのであって、このことも前提に置いて作ってもらいたい。

自分自身ではその美しさに気づかず、厚化粧だけ覚えてしまった少女を、リーザは連想させる。悲しい……。必要なのは、自信だ。

(1989/03/14)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
リーザ(89年1月~  )
◆マイナーチェンジしたリーザは、この時、男のコ向けというべきバージョンを加えた。アルト・ワークス以後、男のコが「軽」へ降りてくる傾向が生まれたという。1300とか1600のクラスよりも、同じような金額でも、こっち(軽)の方がはるかに性能が詰まっているという判断でもあろう。クルマを「おもしろがる」ためなら、たしかにこっちの方が刺激的だ。「オトナになる前に乗りたい」というコピーを掲げたのはアルト・ワークスだった。これは巧い! “確信犯”同士、売る方も買う方も。そんな状況の証言的な広告コピーであった。

○2015年のための注釈的メモ
多様な展開を探り続けた軽自動車の世界は、90年代の半ばに新展開した。「ハイト系」という“ぶっとい鉱脈”を見つけるのだ。93年・秋、ほんとに何気なく、また半ば試供品のような感じで登場したスズキの「ワゴンR」が、メーカーやジャーナリズムの想像を超えたヒットとなった。高い着座位置(ヒップポイント=HP)のクルマは、使いやすくて乗りやすい。人にとって「やさしい」クルマとは、こういうカタチをしている。「走り」よりも、人との協調と融合の方がずっと重要だ。日本の賢いユーザーは、軽自動車に、そしてコンパクトカーに、欧州とは異なる新たな価値を発見し、21世紀に向けて、その新ジャンルを育てて行く。
Posted at 2015/01/04 09:33:43 | コメント(0) | トラックバック(0) | 80年代こんなコラムを | 日記
2015年01月02日 イイね!

クルマに「意味」という衣装を着せない──'89ローレルの意味

クルマに「意味」という衣装を着せない──'89ローレルの意味§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

何にも目新しいところはないじゃないか……と一部に評されそうなクルマ。こういうのは、絶対に必要なのである。

意義や意味や、さらには記号性やらモニュメント性やら。そんなものは、さらさらない。そういうクルマをむしろ欲する。いや欲求するではなく、身辺に一台置いておく。何のためにという問いへの答えはとくにないのだが、クルマは買う(使う)。そういうマーケットを、いま、この国は確実に有している。クルマは、このような意味で、まさに大衆商品であり、たとえばトヨタは、このあたりの層を見事にすくい取る、巧みな商売をしているといえよう。

1988年、一方のニッサンはアグレッシブだった。意欲的な商品を、連続してニッポン市場に送り出した。年が変わったいま、88年のニッサンについて、あれは「DC攻勢」の年だったと総括したい。

シーマ、シルビア、セフィーロ、マキシマ……。ニッサンという“デパート”のフロアにいくつかの新ブースが生まれ、特選ショップ風にニューカマーが配された。まったくのブランニューのネーミングや、ほぼ忘れられていたブランドの再生的なデビューというのも偶然の仕業とは思えず、それがさらに「DC性」を盛り上げた。それぞれに主張があり挑戦がある、特有の濃厚な匂いをたたえた新型車であったし、ニッサン・デパートの中で、それぞれが、何かしらの、人の足を止めさせるものを持っていたと思う。

新しいニッサンを見てくれという意味では、この「DC」つまり、デザイナーズ&キャラクター風のブランド戦略は有効であったし、成功もしたはずだ。新しいマーケットも掘り起こしたし、トヨタを食った部分すらあった。

ただ、特選ショップは眺めてはみるけど、そこではカネは出さないという層。デザイナーもキャラクターも要らないけど、着るものは何か買わなくてはならない人々。このような、いわば本文冒頭に考察したような顧客層へ静かなアピールをしようというニューモデルは、88年の新・ニッサン車には存在しなかった。

「DC」の年が去って、1989年。ニッサンは、今度は「スポーツ」の年を目論んでいるようだが(スカイライン、フェアレディZ)、そうだとすれば、さらに、今回のニュー・ローレルのポジションは貴重になる。その印象の淡さ、クルマが“おしゃべり”でないこと、そして刺激性がない。これらが逆に、好材料として作用するのではないかと、ぼくは読む。

新しいニッサンに注目はしているのだが、でも(「DC」ばかりで)自分が買おうと思うクルマに出会えなかった……。このような人々への目立たぬプレゼント。それが新型ローレルであろう。

また、トヨタ・マークⅡが創りだした「マークⅡ的マーケット」に、新たに参入したニッサン車という意味でも、その成果のほどが興味深い。乗り心地や静粛性では、兄弟車であるセフィーロをしのぐものがあり、全体の洗練度も高い。ニッサンの、この攻撃的でない新型車。実は、ちょっと気に入った。

(1989/02/07)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
ローレル(88年12月~  )
◆「マークⅡ的マーケット」というがおそらくあって、次のように解釈している。それは“白いブラックホール”だ、と。白というのは先代からのマークⅡのシンボルカラーだが、何かのクルマを検討して「これはちょっと……」となって、次のクルマに行く。次も同様に見ていって……という風に続けて、どんどん各車を否定した先に待っているのが、その白いブラックホール。結果としてここに行き着き、そして、そこではもう否定する材料を探せない。消去法の選択というより、もう少し積極的な、しかし穏やかなクルマ選び。そこで待っているのが白いマークⅡ……というわけだ。
Posted at 2015/01/02 11:22:43 | コメント(0) | トラックバック(0) | 80年代こんなコラムを | 日記
スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

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「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
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