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家村浩明のブログ一覧

2015年03月31日 イイね!

【90's コラム】グランパたちのリンカーン

「この種のクルマ? グランド・ファーザーがアメリカにいる限りは、ずっと不滅だろうね(笑)」。米フォードのラージ&ラグジュアリー・カー・ビークル・センターでリンカーンを担当しているエンジニア、エド・ナロッカ(Ed Nalodka)氏は、微笑みながら、自信とともにこう言った。

地球環境保全、温暖化への対応、省エネ……。「いま」という時代は、いろいろな声をクルマに投げかけて来る。しかしアメリカでは、4~6リッターの巨大な多気筒エンジンを積んだビッグ・セダンが、リンカーンに限らず、まだまだ作られ続けている。そしてリンカーンでいえば、タウンカー・グレードだけで年間9万6000台が生産され、それにコンチネンタルとマークⅧを合わせると、約20万台というのが年間のセールス数なのだ。

こういうビッグ・セダンに、果たして「未来」はあるのか? 日本人からのこの質問に対するアメリカの作り手側の答えが、冒頭に掲げたコメントだったのだ。キーワードは「お爺ちゃん」、もっと具体的には60歳以上の人々の存在である。

「既にリタイヤした彼らにとっては、クルマは(奥さんと)カップルで使うもの。だから、これ以上大きい必要はない。ミニバン? あれは家族がたくさんいるときのクルマだよ」(エド・ナロッカ)

さらにエドは、重要なのは「6人乗り」であることだと言った。これは家族を乗せるからというのではなく、同じような環境にある友人たちのカップルを乗せることがあるからである。彼らは一緒にゴルフに行ったり、互いの家を行き来したりするが、そのときの単位はあくまでもカップル(=2人)。故に、シートは2の倍数でなければならないのだ。前席がバケットシートになっていて、5人乗り仕様である欧州車や日本車のプレスティージ・カーが、彼らグランド・ファーザーたちの選択の対象にならない理由は、実はこの一点にある。

そして、もうひとつは価格。「外国車は高いんだ」とエド。アメリカでのリンカーン・タウンカーの価格はベースが37000ドル程度で、装備をおごっても4万ドル前後で収まる。一方、日本車はといえば、レクサスLS400は52000ドルであり、インフィニティQ45はベース車でも47900ドルする。それなりに稼いでリタイヤしたとはいえ、ここでの1万ドルの価格差はやはり気になるということであろう。

──ちょっとリッチな、アメリカのリタイヤした人々。もう子どもたちも独立していて、夫婦二人だけの暮らしになっている。そして、クルマは生活の必需品だ。クルマを使いはじめてから既に数世代以上というアメリカでは、こういう状況にミートしたリンカーンのようなクルマが必要なのだった。

では、この日本だが、クルマと人が本格的にかかわって、せいぜい1.5世代だろうか。クルマ社会と“熟年”(注1)がどう組み合わされるのかというのは、実はこれから先の問題。また、アメリカとは“リッチ度”も違うはずで、そんな日本モータリゼーションは、未来にどのような答えを出すか。

たとえば、現状では一見ポジショニングがなさそうなトヨタの新“リッチ・コンパクト”の「NC250」(プログレ)というセダンがある。これはベンチ・シートではないが、こうした観点からは、これから先に、けっこう“アリ”なクルマであるようにも見えるが……?

(「ドライバー」誌 1998年)

○注1:熟年
かつて「女中さん」を「お手伝いさん」としたのと同様の、マス・メディア得意の(?)言葉の“言い換え”だったが、いま見ると、何のことだかわからない? 「老年」や「老人」という言い方がいけないとして、たしか一般公募もして、この言葉を“作った”のではなかったか。しかし言葉は生き物であり、そうした「官製」の用語がそのまま、人々の言葉として流通するわけではない。今日では「シニア」という外国語が、これに代わって使われているのではないか。
Posted at 2015/03/31 08:32:39 | コメント(0) | トラックバック(0) | 90年代こんなコラムを | 日記
2015年03月28日 イイね!

【90's コラム】カローラとは何か?

【90's コラム】カローラとは何か?トヨタがカローラを日本の「大衆車」として、この国に、さらには世界に氾濫させたため、日本のクルマは、たとえばエクィップメント偏重といった奇妙な方向へ“成熟”してしまった……という、もっともらしい説がある。本当だろうか? 

このカローラ(初代・1966年)に先立つこと数年、トヨタはパブリカというコンパクト車を、同社が考える国民車として世に呈示していた。当時の官製の「国民車構想」ではエンジンは500ccとなっていたが、それに敢然と反旗を翻しての、実際にクルマを作る側からの現実的な大衆車の提案だった。(パブリカは空冷2気筒の700ccエンジン。軽量かつ安価というこのクルマのコンセプトは、後に「トヨタS800」としてスポーツカーに活きることになる)

しかし、このメカ的にも庶民的な、また、ゲタ的ともいえるクルマのパブリカを、日本の「大衆」は決して歓迎しなかった。作り手としては、小型の大衆的なモデルだからこそ……というメカニズムの選択で、それがたとえば空冷2気筒のエンジンだったのだが、そうした大衆のために「別仕立て」にしたようなクルマを、現実の大衆は望まなかったのだ。60年代当時の大衆が渇望したのは、それまでに存在していたフツーのクルマ、そのサイズ的な、そして価格的な「大衆仕様」だった。

1966年という同じ年に、トヨタからカローラ、そしてニッサンからはサニーがデビューする。この年が実質的な日本の「大衆車・元年」であり、この時にトヨタとカローラが掲げた伝説的な広告コピーが「隣のクルマが小さく見えます」であった。さらに事実としてエンジンは、サニーの1000ccに対してカローラは1100ccであったため、「プラス100ccの余裕」という勝利宣言的なコピーも生まれた。

サニー1000は、なぜカローラ1100に敗れたか? それはサニーもまた、パブリカと同じ轍を踏んでしまったからではないか。大衆や庶民は、「大衆」であるが故に「大衆車」を欲しがらない! この逆説に気づかなかった。初めて、そして、ようやく買うクルマだからこそ、ずっと憧れて眺めてきた上級車や“普通のクルマ”と同じもの、その縮小版が欲しい。この庶民の切実な夢と願望を、ニッサン&サニーは見抜けなかった。(サニーは、メカ的には上級車と同じFRだったが、装備は簡素であり、見栄えや内装もチープだった)

一方、パブリカという簡潔なクルマで一度“失敗”していたトヨタは、大衆の、そんな切なくて秘かな夢を肌で知っていた。軽自動車(むろん当時もあった)にちょっと何かをプラスしたようなコンセプトではなく、そして価格としては安価なクルマ。求められているのは、そんなモデルではないか。これがカローラのテーマであり、ニッサン初の大衆車サニーとの差異がここにあった。

とはいえ、この「大衆車を、大衆車らしく作らないでくれ……」(!)というニッポン庶民の願望は、誰にも責められないと思う。よくヨーロッパの小型車が引き合いに出されるが、あれは大衆車というより「階級車」なのではないか。クルマに夢など託さない(託せない)ロワー・レベルの人々の、その生活に必要な、そして庶民が自身で行動するための移動用具。それ故のコンパクト車で、それが彼の地における小型車や大衆車なのではないか。

東洋から距離をおいて見た場合に、そうしたクルマが機能主義的に映ったとしても、虚飾を求めず機能を追ってああいう小型車が出現した……のではないと思う。販価を考えれば、走る機能以外のものはクルマに盛り込めないのだ。だから、欧州の小型車はシンプルで、余計な装備が付いていない。

一方で、カローラとサニーが登場した1966年のわが国は、「戦後」ということでは既に20年が経っていた。その間ずっと、表面的には“階級なき年月”を過ごしてきた戦後日本の庶民が、初めて「クルマ」というものを買おうとしている。それが60年代の中葉から後半である。

その時に、もう、ふたたび戦前のような「階級」には出会いたくない。上級車とはメカニズムが違うクルマ、安価さを追求して「大衆」のためだけに作りましたよ……というようなモデルを、わざわざ買いたくもない。こうした無意識の感覚が、当時の大衆や庶民にあったように思う。故に、60年代前半にいくつか生まれた「大衆的」で小さなクルマたちには、庶民はさしたる反応を示さなかった。

もちろん、たとえば大卒初任給で見れば、1966年は60年に対して2倍(2・5万円)になっていた。64年には東京オリンピックも行なわれ、東海道新幹線も走り始めた。そんな背景もあっただろう。“昂揚の70年代”に向けての助走が始まっていた、そんな時代だったからこそ、人々は、ようやく登場した「大衆的」ではない小さなクルマ(カローラ)に喝采した。

ともかくカローラは、販売戦争でサニーに勝つ。そして、その勝因のひとつはカローラの“非・大衆性”だった。カローラは、欧州的な意味での大衆車ではなかったのだ。あるサイズに限定された「小さなトヨタ車」であり、故に人々(大衆)の支持を得た。このように考えると、カローラと、その後の日本クルマ史の謎も解けてくるのではないか。

そして、マーケットとカスタマーがそのようであったが故に、クルマの作り手もまた、カローラに「大衆車」としての限定をしなかった。クルマ作りにおいて、大衆車だから……と諦めることもなかった。カローラの全モデルが4バルブでインジェクション仕様になった(1987年)としても、この国では、それはむしろ必然であったのだ。

世界のクルマ史にカローラが与えた衝撃は少なくないが、そのひとつが、クルマ作りにおけるこのような“限定解除”だったのではないか。そしてその影響か、コンパクト・カーにも最新の技術を惜しげもなく注ぎ込むことを、いまやヨーロッパのメーカーがやっている。彼の地の「階級車」は、日本の大衆車によって、その概念は打ち砕かれた。これが「大衆車・元年」(1966年)から30年を経た、クルマ世界の現在であろう。

○タイトルフォトは初代カローラ。トヨタ博物館にて。

(「ドライバー」誌 1996年)
Posted at 2015/03/28 08:25:33 | コメント(0) | トラックバック(0) | 90年代こんなコラムを | 日記
2015年03月25日 イイね!

アルト・ターボRSに乗った

アルト・ターボRSに乗ったこれは、おもしろい! アイデアとして最高だ。「最軽量」ゆえに「ターボ」。ついでに、ベース車がアルトということは「最廉価」という要素も加わる。ベースが廉価であれば、かなりのことをやったとしても、さして高価にはならないはず。実際にも、このターボRSに付けられたプライスタグの数字は130万円を超えていない(2WD)。

新型車として登場したアルトの基準車、それがあまりにも軽量に仕上がったために、社内で誰かが思いついたのか。それとも、今回のアルト・シリーズは、企画段階から「ハイパワー車」をラインナップに加えることがプランに入っていたか。そのあたりは定かではないが、とにかく、こうして実車ができあがった。

ちょっと驚くのは、このハイパワー車の外観がそんなに“コワモテ”ではないこと。……いや、こっちが勝手に期待してしまって、ものすごく派手なチューニングカーが出て来ると思い込みすぎた(笑)かもしれないが、とにかくこのRS、そんなにド派手な感じではない。

もちろん、ディスチャージ・タイプになって目(ヘッドランプ)の感じは若干キツくなり、フォグランプも装備され、バンパー部では黒いグリルが口を開けている。そして、サイドミラーは、ボディカラーが白でも黒でも、ミラーだけは赤色。(ボディが赤の場合は、そのまま赤)さらに、よく見るとルーフエンドにリヤ・スポイラーも付いているのだが、そんなディテールをまとめても、このクルマは、むしろ穏やかな佇まいであると、私には思える。

そして、この「穏やかさ」は走り出しても変わらず、ひとたびアクセルを踏み込めば、暴力的な加速で、ドライバーの背中を激しくシートに叩きつける……ようなクルマではない。またターボは、ある回転数に達した瞬間に、そこで驚くようなパワーをドカーン!と発する……わけでもない。

走行フィールを手短かに言うなら、トルクが豊かなエンジンを駆使して、低中速から自由自在にクルマを操ることができる、であろうか。これはもちろん、エンジンの排気量が660ccであることを忘れてしまう感覚で、その原因に過給器があることは確かなのだが、ただ、ターボがどういうことをもたらすかを常に気にしながら運転しなければならない……ようなクルマではない。(かつては、そういう軽ターボ車やターボ付きコンパクト車というのは少なくなかった)要するに、テイク・イット・イージー感覚で道を“コロがして”もいい。そういうターボ・モデルなのである。

あらためて、ちょっとスペックを確認してみると、このターボ・エンジンの最大トルク発生回転数は3000回転であった。この回転で“チカラ”的にはフル稼働している、あるいは、これ以上回してもトルクは同じ。エンジンとしてそういう設定で、なるほど、そういうことであれば“イージー・ドライビング”も可能だろうなと納得した次第。

そんなエンジンに呼応するように、乗り心地もドライバーに寛大だ。ブレーキを大径化することも含めて、パワーに対応して全体的に“締め上げてある”足なのだが、そうであっても、一般道を流していての余計なゴロゴロ感や突き上げ感はない。スポーティに走る時だけ持ちだして、ちょっと遊ぶ……というようなサスペンションではなく、硬めの乗り心地を愉しみつつ、日常的にも十分に使える。そんな足になっていると思う。

ターボ・エンジンと組み合わされるミッションは、最新アルトが装備した「AGS」(オート・ギヤ・シフト)が、チューニングを若干(クイック方向に)変えて、そのまま使われている。……というより、このRSはあくまでも「アルト・改」なのであり、アルトの2ペダル・ドライビングがそのまま流用されているということ。このモデルのために特別なMTを新設などしてしまったら、価格にも響いてくる。また、これならAT限定免許でも乗れるわけで、MTがあった方がいい説は私は採らない。

シフトチェンジは中央のセレクターのほか、パドル方式でも可能。ただ、このパドルシフトは、ステアリングを「9時15分」の位置に持っていないと、形状的にやりにくい。ハンドルを「10時10分」の位置で持つドライバーもいることであり(私のことだが)この形状については、もう少し工夫の余地はあるかもしれない。

そして、最後にひとつ欲をいえば、このクルマ、もう少し“ビョーキ”の部分があれば、もっとイイのに……ということだろうか。いや、アルトをこうやって「化けさせた」というだけで十分ビョーキだという説はありそうだが、何というか、ただ“キレイに速い”だけでなく、このクルマにしかない強烈な《何か》がある。そんなトンガリ部分があれば、さらにヨイのではないか。

そもそも、こういうクルマに注目するのは、私も含めて“ビョーキ部分”がある(笑)タイプのドライバーであり、そのへんの「交感」関係があるかどうか。現状では、このRS、ちょっと優等生に過ぎるという感はなきにしもあらず……。ただ、こうしたサムシングを盛り込むのは、もはやメーカーのジョブではなく、いわゆるチューニングの領域であるかもしれないのだが。

ともかく、愉しい“イタズラ”のおもしろいモデルが出た。アルトほど軽量である軽自動車はほかにないはずで、その点に気づいて、廉価はキープしつつ「スポーツ」の領域に打って出た。そのスピリットこそ“fun”である。アルト・ターボRSに、まずは拍手だ! 
Posted at 2015/03/25 14:57:51 | コメント(0) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
2015年03月23日 イイね!

SX4 S-CROSS に乗った

SX4 S-CROSS に乗った2013年に二世代目になっていたスズキの「世界戦略車」SX4に、短時間ながら乗ることができた。ネーミングも、この二代目からは「S-CROSS」というサブネームが加わっていて、正しくは「SX4 S-CROSS」という長い名前になるようだ。二代目も初代と同様に、ハンガリーのマジャール・スズキで生産される“国際車”であり、日本市場は、このモデルが狙う世界のマーケットのひとつ。中国市場もこのモデルのターゲットで、2013年の12月に、重慶長安鈴木汽車で生産が開始されたという。

こうした「世界戦略車」であるため、日本のタワーパーキングへの収納を意識した全高(1550ミリ)ではなく、SX4は“国際車”としてフリーに設定された。この二代目の車体は初代に対して、わずかながら全体にサイズアップされて、全高は1575ミリとなっている。これは初代に対して、10ミリのプラス。これに対応したか、前席座面の地上からの高さ(ヒップポイント=HP)も初代に対して4ミリプラスの「619ミリ」になっている。

そして、このモデルをメーカーは「クロスオーバー」と位置づけている。さらには「SUVの外観を併せ持ったクロスオーバー」であるとも言うが、しかし外観的には、マツダのCX-3ほどには「SUV色」が濃くないと思う。むしろこのクルマは、いわばセダン系のクロスオーバーであり、セダンの要素に、多用途性(マルチ・パーパス)やオフローダー的な性能を盛ったという感じではないだろうか。(それこそを“SUV”というのだ、ということなら、その通りである)

さて、このクルマが持つ、そのオフローダー的な、あるいはオールラウンダー的な部分では、今回新装された「 ALL GRIP 」が注目である。これは、2WD→4WD、走行モード、さらには車両の走行安定性を「4モード」で切り替え可能という電子制御のシステムで、通常走行では「オート」にしておけば、基本的に2WDで走行し、タイヤがスリップした場合にのみ自動で4WDになる。

さらに、これだけでなく、「スポーツ」モードではエンジンの回転数を高く保ってトルクの前後配分も行ない、ワインディング路走行に適したセッティングとなる。また「スノー」では、アクセルとステアリング操作に応じて、雪道に適したトルク配分をするとともに、トラクション・コントロールの介入を多くして走行性を上げるという。

そして、もうひとつの注目は、スタックした時などに緊急脱出に使える「ロック」モードがあること。この時は、空転しているタイヤにはブレーキをかけるとともに、空転していないタイヤに積極的にトルクを配分するというセッティングになり、直結4WDに近い状態となって十分な(脱出のための)駆動力を発揮するという。

今回の短時間の試乗では、これらのモードを試す機会はもちろんなかったが、ただ、このクルマが「世界戦略車」として、さまざまな気候やさまざまな路面・道路の状況に対応するための“ウェポン”を持っている。そんなことを考えた時には、ちょっとした感慨があった。とくに、「ロック・モード」はなかなかお目にかかれない4WDのシステムで、そんなものが、この平凡な(?)外観の“クロスオーバー車”に何気なく装備されている。それもまた快挙だと思った。ここで「羊の皮を……」的な表現をムリヤリ持ち出せば、これは“鷹の爪を潜めたカラス”とでもいうべきクルマだろうか。

そんなシャシー性能を秘めたSX4だが、このクルマを流して乗っている時には、そんなタフさはまったく感じることがない。まずは静粛であり、そして路面を舐めるような走りがとてもスムーズだ。滑らかにして、なお、しっかり感のある乗り心地で、無言のまま、忠実かつ着実に仕事をするパートナーに出会ったような感じである。

このクルマの造型も、何も突出したものはないが、しかし、どこにも不満は探せないといった雰囲気。クセがない分、鮮烈な記憶とはならないが、しかしそれだけに飽きが来ないというデザインといえそう……。前席ヒップポイントの「619ミリ」も低すぎず、そして高すぎずで、これまたさり気なく、人を静かに車室内に誘う。

……毎日乗っているうちに、いつの間にか何年か経ってしまった。そういえば忘れてたけど、あの突然の雪の時に、あの急坂でもちゃんと登れたのは「ロック・モード」のせいだったなあ! この「SX4/Sクロス」というのは、そんな風にして時が過ぎ、何となくずっと“乗れて”しまう。そういうタイプのクルマであるのかもしれない。
Posted at 2015/03/23 14:44:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
2015年03月22日 イイね!

【90's コラム】 “RV時代”のニューカマー、トヨタ・イプサム

ぼくらが、クルマの乗り方や選び方はもっと“自由”であっていいとして、古い概念にとらわれず、普段に乗るクルマをどんどん「RV」方向へシフトした。その傾向を、いま、メーカーが必死に後追いしている。これが1996年的な現在であると思う。

その流れをリードしたモデルやメーカーはあったが、しかし、さらに先を行っていたのは明らかに「使い手」の側だった。そもそも、昨今の「RVブーム」とは、メーカーが「商用車」という分類の中で作ってきたクルマ──つまり、ワンボックス車にしてもワゴンにしても、またクロカンにしても、それらのクルマを、ユーザーの側が勝手に日常車として使い始めた。それがコトの発端だったのだから。

言われるところの「RV時代」とは、クルマが変わったんじゃない。ユーザーとマーケットが変わって、そこから、どんなクルマを買うかが変わったのである。

そんな今日にミートすべく、遅ればせながらニュー・カマーがトヨタから登場した。それが「イプサム」である。このクルマは、オデッセイがヒットしたので慌てて企画した……なんてことは、もちろんなくて、昨秋のモーターショーの時点で、ほぼ完成形が既に公表されていた。(クルマって、そんなに簡単に、かつ短時間で、ピョコッとできてくるような商品ではない)

……とはいえ、ぼくらにとって気になるのは、やはりオデッセイであろう。セダンでもなく、さらに旧来のワゴンともいえないという「新しさ」、そして、その狙いどころ。さらには、サイズやエンジンのキャパといったところがほぼ共通しているからである。(メーカーも同じ“時代”を見て、そして同じ空気を吸っている。ゆえに、同時代のクルマは似るのだ)

ただ、イプサムとオデッセイで大きく違うのは、イプサムの方がカタく(?)5ナンバー枠に収めてきたこと。この「枠」への抵抗感は、もはや薄れてきていると言われるが、とはいえ、同レベルの性能を確保することが、その「枠内」で可能であれば、クルマはそれに収めて作る。これがトヨタ流の選択というものだろう。

コロナ用の実用的な2リッターエンジンを使い、前サスもコロナからの流用部分があるが、フロアやリヤ・サスはイプサム専用の新設計。このあたりは、この種のクルマが今日に求められていることへの、後発メーカーとしての意欲の現われであろう。

スタイリングでは、顔に、コロナの“ブラザー”であることを敢えて謳った感があるが、サイドウィンドーからリヤ周りへの処理には、なかなかの“冒険心”も見られる。これはスッキリ路線のオデッセイと一線を画すところ。もちろんボディ構造には、衝突に対応した「GOA」設計を採用している。

(「スコラ」誌 1996年)
Posted at 2015/03/22 22:28:05 | コメント(0) | トラックバック(0) | 90年代こんなコラムを | 日記
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「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
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