
『脱炭素』
2050年CO2排出ゼロを掲げる企業も多く、人口増加とエネルギー消費の増大に備えた国際的な動きです。
国によるEVの推進も発表されました。
多くの自動車メーカーもこれに追従し、電動化の予定を次々に発表。
あのマツダでさえ電動化に舵を切りました。
これに異を唱えたのがトヨタです。
トヨタは急激な電動化は自動車産業の雇用を維持できないとして、水素エンジンをアピールを始めました。
既存の内燃機関技術を活かすことができ、自動車関連産業の550万人の雇用をこれにより守る、と公言しています。
トヨタが本気で水素エンジンをやるのか?
答えはNoです。
その理由は、水素エンジンは内燃機関の効率、コストの面でガソリン・EVに負けているからです。
・単純にガソリン車に比べ効率が悪い
・車は水素の搭載スペースが限られている
・ガソリン車と同等の燃料を搭載しようとすると70MPaを超える高圧タンクが必要
・金属の水素脆化による耐久性の問題
・水素の製造効率がガソリンより劣る
・水素の特性として漏れたら止めにくい
水素エンジンの弱点を挙げ連ねると「水素エンジンは開発初期だから仕方ない」と言われますが、それは嘘です。
海外では1807年から存在します。日本国内でも1970年から研究されてます。
つまり日本国内だけでも50年も研究されている既存技術なわけです。
50年経っても実用車として普及しないのは上記のような理由があるからです。
水素の物性は変わらないので、ガソリンに比べて優位性を生み出す技術的難易度が高いことが読み取れます。
デメリットが環境負荷軽減とトレードオフにできるレベルに無いと判断されている証拠です。
そんなものにあのトヨタが本腰を入れるか?
いれませんよね。
では、なんでこんな事を言うのか?
ここから少し長くなります。
トヨタは「関連する会社も一緒に強くなりましょう」という会社です。
トヨタの生産方式や考えを関連会社にまで叩き込みます。
そして出来上がった強固なサプライチェーンで車を供給し続けます。
つまりトヨタはバックエンドがめちゃくちゃ強いのです。
多数の車種を展開するマーケティングと販売力。
それに伴う無数の部品の供給を無駄なくこなして高い利益率を上げています。
開発→設計→生産→流通→販売
どこにも無駄がありません。
しかし、自動車のサプライチェーンを破壊する企業がでてきます。
高い技術を持って車の生産を担う会社が現れ始めました。
90スープラってどこが生産してると思います?
BMW?トヨタ?
→違いますよ
オーストリアのマグナ・シュタイヤーです。
トヨタが生産をトヨタグループ以外に委託するのは異例中の異例だそうです。
今後、自動車業界は生産工場を持たない企業が参入してくることが予想されます。
工場を持たない分コストがそれだけ抑えられるし、経営リスクも低くなります。
参入障壁は下がり、EVに活かせる技術を持った企業が押し寄せます。
EV化に伴う自動車業界のパラダイムシフトが起こりつつあります。
トヨタが最高益を出しても社長自ら「トヨタ存亡の危機」と言うのも頷けます。
つまり「雇用を守る」というのは建前で、
本音は「利益を生み出し続ける自前のサプライチェーンを維持したい」。
それがトヨタの水素エンジン車アピールの真の狙いです。
一方でトヨタがEVを真面目に取り組んでいないのかというと、そうではありません。
バッテリー技術や自動運転・半導体等に投資したり、それに必要な技術者も採用してます。
この辺はやっぱり強かです。
雇用を守りたいという欺瞞でステークホルダーを繋ぎ止めて、トヨタの利益を生み出す歯車にするという怖い思惑が見え隠れします。
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2021/06/20 10:36:39