EV入門編連発。EVは情報が少ないので・・お許しを(笑)
今回はバッテリー編です(前回はバッテリー素材編(笑))
と言いつつ、モーターに続き、バッテリーについても私は素人ですので、バッテリーの現在地を一緒におさえましょう(笑)
中国自動車市場は2035年の販売規制まで残り10年あまりを残して、(中国自身が掲げている)新エネルギー車、いわゆるNEV(BEV、PHEV、CEV)への移行が猛スピードで進んでいます。
(私も勘違いしていましたが)また、中国は新エネルギー車には含めてはいませんが、意外な事に2035年以降もハイブリット車(HEV)の販売はOKです。
ですから、純内燃機関車は、NEVとHEVに挟撃されて、スーパーカーや、USトラック等、富裕層が乗るジャンル以外は急速に縮小していくでしょう。
勘違いといいますか、最近のCATL関連のニュースを見ていて、もう一つわかったことがあるのですが「REEV」いわゆる、レンジエクステンダー付きEV、中国語で「航続距離延長型電気自動車」も中国が定義する新エネルギー車に入ることがわかりました。
「2024年9月、中国国内の新エネルギー市場の浸透率は53%に達し、3カ月連続で50%を突破しました。新エネルギー車のうちわけはPHEVが32%、REEVが11%で、合計43%を占めています。このようにPHEVは「ガソリン車から電気自動車への転換」過程における移行製品という位置付けではなく、独立したカテゴリーとして認識されています」
まぁ、日本も自身で定義したHEV(ハイブリット車)が新車販売(軽自動車除く)の50%を既に超えていますけどね。
中国としては、要は国家戦略的に戦略製品に定めた「バッテリー」を大容量で搭載する車の製造販売を奨励し、他国がハイブリット車に進むにしてもどのみち使用するバッテリー産業において圧倒的優位なポジションを取らせる戦略だったようですね。
さて、日本においてはカー雑誌以外、ハイブリット車の種類を理解していない報道が多く、ストロングハイブリット車、プラグインハイブリット車、レンジエクステンダー付きEVの区別がついていないようですが、TDKさんのHPに以下の図と説明がありました。さすが、TDKさんは、CATL設立にいっちょ噛みし、モバイルバッテリーで世界最大手のATL(100%子会社)を傘下に持つだけありますね(笑)
図中、上がハイブリット車。バッテリー容量も小さく、バッテリーへは外部充電機能がない。よって、EVだけでの走行は数キロ分

図中、下がプラグインハイブリット車。バッテリーが空になったら、エンジンも動力として使用。バッテリー容量も小型BEV並みに大きい為、EVのみの走行距離も、比較的大きく現在の主流は100km前後。バッテリーへは外部給電も可能。
そして、NEEV(レンジエクステンダー付きEV)は、エンジンは動力に使用せず、発電のみ。ここまでは日産のe-power搭載車と同じ。バッテリーも大きく、中国が新エネ車に含めるものは外部給電も可能。

この中国の新エネ車であるPHEVとNEEV用に、CATLが先月凄いバッテリーを投入してきました。
「10月24日、CATL(寧徳時代)はREEV(レンジエクステンダー付きEV)とPHEV(プラグインハイブリッドEV)市場向けに「※驍遥(ぎょうよう)超級増混電池」)を発表。このバッテリーは、REEVとPHEVの需要に合わせて専門的に開発・設計されたものであり、EV航続距離は400km以上。4Cレートによる超急速充電が可能で充電時間も大幅に短縮するという」
※「驍遥(ぎょうよう)超級増混電池」は、フリーヴォイ スーパーハイブリッド バッテリー(Freevoy Super Hybrid Battery)
「EVモードで400キロも走るなら、BEVで良くね?」と言う声もあるようですが、安価で高効率大容量バッテリーの開発により、エンジンをおまけにつけても、安く、そして軽く(従来比)できる、と言うところを読み落としています。
また、日本のネットでよく現れる「一回の給油(充電)で2,000キロ以上走らなければ実用車とは言えない!」に応えるジャンルです。冒頭の方で記したように、中国で普及の進むPHEVやNEEVは、もはやBEVへの移行製品ではなく、恒久的な一つのジャンルになっています。
最後に、まとめとして、CATLで現在発売されている主力バッテリーを3つ並べてみます。
①「麒麟」バッテリー。
エネルギー密度は三元系電池版で255Wh/kg、安価なリン酸鉄リチウム電池版でも160Wh/kg。72%の体積利用率を実現したことにより、1,000キロの走行が可能。また世界初の電池セル冷却技術により、※10分間の急速充電で10‐80%までの充電に対応。また5分間での急速ホットスタートにも対応している。
既に、Zeekr 009、Zeekr 001、 ファーウェイのAITO(問界)ブランドの新モデルや、ニュルブルクリンクで4ドア最速タイムを叩きだしたシャオミ(小米汽車 Xiaomi Auto)SU7の「MAX」と「Ultra」に搭載されている。
※日本の充電インフラでは、無理(笑)
②「神行」バッテリー
安価なリン酸鉄リチウム材料を使用した4C超急速充電電池。700キロ以上の航続距離を可能とし、充電性能は10分間の充電で400キロ分の航続距離を実現。
前出のシャオミSU7で言えば、Proがこの「神行電池」を搭載。
ちなみに、SU7のノーマルはBYDのLFPバッテリーを搭載。
③「驍遥」(フリーヴォイ)バッテリー
EV航続距離は400km以上。4Cレートによる超急速充電が可能で充電時間も大幅に短縮されている。フリーヴォイにはCATLのナトリウムイオンバッテリー技術が搭載(混載)され、摂氏-40度までの極寒環境下での放電能力、摂氏-30度までの充電能力を達成。摂氏-20度まで常温に匹敵するシームレスなパフォーマンスを
2025年から吉利(Geely)や奇瑞(Chery)のPHEVを始め30モデルへの搭載が始まります。
EVガー。マイナス35度対応までもう一歩(笑)
この航続距離の1,000kmやら700kmやら400kmやらの根拠(何kWhのバッテリーで?)が見えないですが、ちょうどSU7がグレード別に異種類のバッテリーを搭載しているので、そこから航続距離を逆算してみると、
MAXの麒麟バッテリーの電池容量は101kWhで航続距離は810km。
PROの神行バッテリーの電池容量は94.3kWhで、航続距離は830km。
しかし、上記は中国独自のCLTCモードですから、WLTC換算(21.7%悪化)810kmは、634km。830kmだと650kmですかね。
まぁ、SU7のMAXはシステム総出力が673ps(495kW)/838Nm。0→100km/h加速2.78秒、最高速265km/hの車として、WLTC換算の航続距離634kmなら、まぁ、良い方かと。
リチウムイオン電池については、ノーベル賞を受賞した日本の吉野彰博士が、1985年に安全で実用的にする決定的な発明をし、現在のリチウムイオン電池の基礎を築きました。その為、リチウムイオン電池は日本企業が先行し、しばらくは日本企業の独走状態でしたが、その後、韓国勢が台頭。そして2015年には中国勢が日韓勢を抜き、現在はバッテリー生産のみならず、サプライチェーンの上流から下流までも抑えていて独走体制に入っています。
その先行、独走している中国でさえ、リチウムイオン電池から、ナトリウムイオン等、リチウムを使用しない電池への移行を初めています。
リチウムは、200年分以上の埋蔵量がありますが、実はオーストラリアとチリの2か国で81%もの産出量を占めています。その為、中国勢とて、戦略的にナトリウムイオンバッテリーへの移行を進めていく必要があります。
これは、中国でさえ調達に不安があるコバルトを使用しないLFPバッテリー普及で克服している動きにも似ており、戦略的に動いているのが見てとれます。
ちなみに、何度か記していますが、CATLは、日本のTDKが無ければ、少なくとも今の形のものは存在していなかった、と言うのが、日本人として一つ溜飲が下がるところです。
「1999年、エンジニアのロビン・ゼン氏が設立した※アンペレックス・テクノロジー社(ATL)が2003年にアップルからiPod用バッテリーの製造委託を受け、急成長を遂げました。その後2011年、ATLのEV用電池事業は、CATLにスピンオフしました」
※ATLはTDKの子会社。
昨日の結論と一緒ですが、バッテリーの進化も1年ひと昔のスピード。
無尽蔵にある資源を利用できるナトリウムイオン電池も、密度、重量にまだまだ克服すべき課題があり、ようやくリチウムイオンとナトリウムイオンの良いところ取りの混載として「驍遥」(フリーヴォイ)バッテリーが登場してきた所。
また、世界で競争が繰り広げられている「自動車用全固体電池」もコストが克服できておらず、ここはメルセデスベンツが先行しているようですが、このような高級な車からの搭載で進むことが予想されます。
普及型は、莫大な研究開発費を注ぎ込み続けているCATLとBYDの2強が市場を引っ張り、そしてその体制がしばらくは続くでしょう。