昨日予告した自動車運搬船火災編。EVの購入をためらう最大原因は、価格と自宅充電有無と、日本では人気の無さからくる下取り価格かな、と思います。
危険だから、みたいな誤った認識から購入をためらう方はこちらにはあまりいらっしゃらないかと思いますが・・一応、カテゴリー「BEV入門編」として書き進めていきます。
事実。リチウムイオン電池の危険の 1 つは「熱暴走」による火災。リチウムイオン電池は燃えた場合、通常の火災の2倍のエネルギーで燃焼するため、日本の消防白書を見ても、蓄電池火災への備え、研究・対策が記載されています。
ただ、内燃機関車よりも、EVが燃える、爆発の可能性が高い、と言う話と、燃えた場合は消化には特殊装備、テクニックがあり大変だ、と言う話は全く違います。
昨日記したように、今あるデータからは内燃機関車よりも(しかも今よりも昔の技術で作られた)バッテリー搭載車の方が発火確率が極めて低いと言えるでしょう。
ですが、冒頭のとおり燃えたら大変なのは事実。となると、発火の可能性が高くなってしまう欠陥バッテリーの流通は危険なのです。
クドイですが、対策されたリチウムイオンバッテリーの燃えにくさを証明したのが、この動画。↓再掲になりますが、
VIDEO
消化実験なので、まず燃やさないと実験になりませんから(笑)バッテリーに穴をあけたり、叩いたり、いろいろしても燃えないので、最後はガスバーナーで焼いたり(←通常ならどういうシチュエーションや(笑))という、燃やすのに大変だったやつです(笑)
さて、本題の自動車運搬船の火災事故の話に入りますが、世界を見渡すと、「発火元はEVが起因か?」と報道されているものもあります。ただ、EVが発火原因と断定されてはいないようです。
日本の船舶火災を消防白書から調べても、EVが発火原因とされているものは(今のところ)ありません。(興味ある方は、図中に記載がある火災報告をお読みください)
戻しまして、その「発火元はEVか?」と報道されているのは、下記の2件ではないでしょうか。
■フェリシティ・エース(商船三井・パナマ船籍)
2022年2月16日、ドイツのエンブデンから米国東海岸に向けて航行中、アゾレス諸島の南西約90海里で火災が発生。2022年3月1日に船が沈没するまで燃え続けた。ポルシェ、ベントレー、ランボルギーニ、フォルクスワーゲン、アウディなどガ内燃機関車とEV合わせて約4,000台の車両が積まれていた。この事故に関してはパナマ海事局の調査報告書が同年5月にIMO(the International Maritime Organization:国際海事機関)に提出されたが、まだ公表されていない。
本件ですが・・・
2024年3月6日 日経新聞
商船三井、ポルシェを提訴 「運搬船火災は電池が原因」
商船三井は、頑なに自車が発火原因と認めないポルシェ社の態度に業を煮やしたましたかね。
これ、訴訟案件なので外野は意見を軽々に言ってはいけないと思いつつも、言う(笑)
素人の私なれど、いちおう発火バッテリーの可能性がある車(LGケムバッテリー搭載車に乗っていた)に乗っていた私としては、あるとしたら、バッテリーが原因で、EVが発火元の可能性は「0」では無いんジャマイカ?って思うのですよ。
調べたら、ポルシェタイカンのバッテリーは、バッテリー製造世界シェア第二位(21.5%)であるLGケム(現LG Energy Solution)のポーランドのヴロツワフ工場製とのこと。
このLGケムのバッテリーは日本でもいまだ原因不明なれど、2023年に幕張のディーラーでアウディe-tron(LGケムかサムスンバッテリー製)が充電中に?燃えた事実もありますし。
このブログでも、
リコール情報速報
として、一度詳しく記しましたが、LG Energy SolutionはGMはじめいろいろなメーカーから訴えられています。なんといっても世界第二位のメーカーですから、製造工程に問題があり、不完全なものを作ってしまうと影響大きいのよ。
ジャガーもアウディのLGケムバッテリー搭載車も数件のようですが発火し、リコールにつながったように、当時LGケムの三元系リチウムイオン電池の製造工程には問題があったのは間違いありません。
この辺、アウディもダンマリを決め込んでいますが、アウディやポルシェを統括するフォルクスワーゲングループあたりが代表して、何が、そしてどこが原因で、そしてこれからこういう対策したから、安心である、と言うことを発信していかないといつまでもネタに使われてしまいます。
2件目。この事故も原因調査注中のようですが、
■フリーマントル・ハイウェイ(正栄汽船・パナマ船籍)
自動車運搬船「フリーマントル・ハイウェイ」(FREMANTLE HIGHWAY)は、オランダ沖を航行中に火災が発生。新車約3,800台が積まれており、そのうち約500台がEV車。報道されている情報では、約2,700台が火災による損傷を受けている。火災の鎮火確認後にオランダのエームスハーヴェンへ入港し、貨物として積まれていた車両の搬出や事故調査がおこなわれている。
この約500台のEVのうち、メルセデスEQEも積まれていたようですね。
これに関しては、EVが原因?と最初に報道されるも、下記の報道もあります。
「EV車が大火災を引き起こしたという説に対しては疑問視する声が上がっているという。
火災が起きた「フリーマントル・ハイウェイ」の船体外板を見ると火災による影響で塗装が剥がれていることから船体の上半分に被害が集中していることが分かる。また車両火災も上層の貨物エリアに積まれていた車両に火災が集中しており、下層エリアの車両はほぼ無傷であったという。そして、その下層エリアに積まれていたのは大部分がEV車であった」
あとは・・自動車運搬船がらみでは7件の火災事故がありましたが、EVは関係なさそうですね。
昨日のデータのとおり、今日も日本のどこかで9.3台のガソリン車、ディーゼル車が燃えていますから、内燃機関車が燃えるのは目新しくなく「ニュース(新しい話)」ではないのであまり報道されません。ただ、フェラーリとかが炎上したら別ですがね。
船も同じです。「EVは燃える」方が目新しく、ニュースになりますからね。
■グランデ・コスタ・ダヴォリオ(イタリア船籍)
2023年7月5日、ニュージャージー州ポート・ニューアークで輸出用の中古車を積み込んでいた際に火災が発生。
■ヘーグアモイ
2020年6月4日、フロリダ州ジャクソンビルで火災が発生した。
2,420台の中古車(EV無)を積んでおり、車両は全焼。
■グランデヨーロッパ
2019年5月15日、スペインのパルマ・デ・マヨルカ沖を航行中に発生。
乗用車、バン、トラック、掘削機を含む 1,687 台の車両と主に食品が入ったコンテナも49個あった。火災は車両デッキで発生。約 45 分後に消し止められたが、数時間後、別の甲板で二度目の火災が発生し、そこから延焼した。
調査では、2件の火災は積まれていた2台の異なる車両から発生し、その後近くにあった他の車両に燃え広がった。(いずれもEV車ではない)
■グランデアメリカ
2019 年 3 月 12 日、ドイツのハンブルクからモロッコのカサブランカに向かう航海中火災発生。2日後ビスケー湾で沈没。
NTSBは、消防チームが車両のデッキでトラックからの火花を発見したこと以外、捜査当局は火災の明確な発生源と原因を特定できなかったと述べた
■
シンセリティ・エース(商船三井・パナマ船籍)
2018年12月31日、オアフ島から約1,800海里離れた太平洋の真ん中で火災が発生。日産車3800台が積まれていたが、原因不明。
■オナー(米国船籍自動車運搬船)
2017年2月24日、英国のサウサンプトンからメリーランド州ボルチモアに向かう途中、車両上部甲板で火災が発生。
NTSBは、火災の考えられる原因は、船舶の貨物スペースで輸送されていた個人所有の車両の1台のスターターモーターソレノイドの故障であると判断した。
■カレイジ(Courage)(米国船籍自動車運搬船)
2015年6月2日、ドイツのブレーマーハーフェンから英国のサウサンプトンへの航海中に貨物倉で火災。
新車(メルセデス・ベンツとBMW)、軍用車両、軍人や政府職員の個人所有中古車、家庭用品の輸送を積んでいた。
NTSBは、火災の考えられる原因は、搭載されていた車両の自動ブレーキシステムモジュールでのアーク放電であると判断された。
結論として、EVだからと言う理由だけで燃えると言うことは少ない。燃える確率も低い。でもさすがに欠陥品は燃える可能性高い。だから、叩かれるべきは、ある一時期のLG Energy Solution製バッテリーではないのか?
ここは、同じ、韓国勢のヒョンデのコナも、LGからCATLのLFPバッテリーに切り替えてますからね。
今や、1年で1,000万台のEV(PHEV)が売れる国中国でのEV炎上のニュースもあえて探されて報道されてしまうので目につきます。
不正改造バッテリーの使用などのケースもあるようですが、まだ調査しきれてません。何かの機会でまとめてみようと思います。