寒冷凝集素症という病気になってから、インターネットで何度も検索した言葉があります。
「寒冷凝集素症 障害年金」
ところが、情報が本当に少ない。
障害年金について詳しく説明している社会保険労務士さんのサイトには、さまざまな病気の事例が掲載されています。
しかし、私が探した範囲では、寒冷凝集素症で障害年金を請求した具体的な事例は、ほとんど見つけることができませんでした。
個人のブログなどで、それらしい体験を書かれている方をほんの数件見つけた程度だったと思います。
「この病気で障害年金を請求していいのだろうか」
「そもそも対象になるのだろうか」
私自身、そこからのスタートでした。
そして今回、寒冷凝集素症(自己免疫性溶血性貧血)で障害厚生年金を請求し、障害厚生年金3級の支給決定を受けました。
もちろん、同じ病名であれば障害年金が支給されるという意味ではありません。
障害年金は病名だけで決まる制度ではなく、障害認定基準に照らして、その人の病状や検査所見、日常生活や労働への影響などから個別に判断されます。
ですから、これはあくまで「私の場合」の記録です。
ただ、私自身が情報の少なさに心細さを感じた一人なので、いつか同じ病気で障害年金について調べている方の参考になればと思い、支給決定までの経過を書いておこうと思います。
始まりは会社の健康診断でした
最初のきっかけは、2024年8月の会社の健康診断でした。
血液検査でヘモグロビン値が10.1g/dL。
貧血を指摘され、2024年9月4日に近くの内科を受診しました。
そこから総合病院の血液内科を紹介され、9月18日に詳しい検査を受けました。
直接クームス試験陽性。
寒冷凝集素価は8,192倍。
その後の診察や検査を経て、寒冷凝集素症として診療を受けることになりました。
この「最初に受診した日」は、後になって障害年金を請求するときに非常に重要な日になりました。
障害年金には「初診日」という考え方があります。
私の場合は、健康診断で異常を指摘されたあと、最初に医療機関を受診した2024年9月4日から医療機関をたどることができました。
最初の内科から総合病院、そして大学病院へ。
振り返ってみると、この医療機関の流れを途切れずに整理できたことは、請求の土台として非常に重要だったと思います。
数字だけでは説明しにくい病気
寒冷凝集素症で難しいと感じたのは、単純に「貧血の数値」だけでは、自分が困っていることの全部を説明できないことでした。
私の場合、慢性的な疲労感や息切れに加え、寒冷環境にさらされることで症状が悪化します。
寒い場所では手指などが冷たくなり、露出した部分に網状の紫斑が現れたり、顔色が赤紫色に変化したりすることもありました。
そして私の仕事は、もともと屋外での業務が中心でした。
病気になる前なら普通にできていた仕事でも、「寒さを避けなければならない」という条件が加わると、事情がまったく変わります。
外勤から車を使用する業務へ変更してもらった時期もありました。
それでも体調が悪化し、仕事を終えたあとに強い疲労が残ることもありました。
最終的には、医師から屋内業務が望ましいとされました。
ところが、会社にはすぐに配置できる内勤のポジションがありません。
つまり、
「まったく働けない」ということではない。
しかし、「これまでと同じ条件では働けない」。
ここが、私の障害年金請求で一番説明が難しく、同時に一番重要な部分だったように思います。
診断書と申立書で大切にしたこと
障害年金の準備を始めてからは、年金事務所にも相談しました。
社会保険労務士さんへ依頼することも考えましたが、最終的には自分で請求することにしました。
もちろん、一人ですべて考えたわけではありません。
診断書については主治医の先生に相談し、病歴・就労状況等申立書についてはAIにも何度も文章を見てもらいながら整理しました。
その作業で一貫して意識したのは、
「大変さを強く書くこと」ではなく、「実際に起きたことを正確に書くこと」
でした。
症状を必要以上に重く表現しない。
逆に、我慢できているからといって軽く書きすぎない。
いつ受診したのか。
どんな検査結果だったのか。
仕事中に何が起きたのか。
会社からどのような配慮を受けたのか。
それでも何ができなかったのか。
医師からどのような就労上の判断を受けたのか。
これらを時系列に並べていきました。
そして特に気をつけたのが、診断書、初診日の証明、病歴・就労状況等申立書の内容が互いに矛盾しないことでした。
申立書だけを読めば重症なのに、診断書にはそのようなことが書かれていない。
あるいは、医療機関の記録と本人の説明で時期が違う。
そうならないように、自分の記憶だけに頼らず、受診歴や会社で起きたことを一つずつ整理しました。
「働けるか、働けないか」の二択ではなかった
今回の経験で、私自身の障害に対する考え方も少し変わりました。
以前は障害年金というと、
「働けないほど重い人が受給するもの」
というイメージがありました。
しかし、少なくとも私の場合、問題はそれほど単純ではありませんでした。
体を動かすことはできます。
車を運転することもできます。
日常生活でできることもたくさんあります。
一方で、寒冷凝集素症という病気の性質上、寒冷環境を避ける必要があり、慢性的な疲労や貧血症状もあります。
そのため、従来と同じ労働環境、同じ勤務条件で働くことには現実的な制約があります。
今回3級の支給決定を受けたとき、私が感じたのは、
「働けない人と認定された」ということではなく、
「今までと同じ条件で働くことには現実に制約があることを、公的制度として認めてもらえた」
ということでした。
これは私にとって、とても大きな意味がありました。
振り返って、請求で大切だったと思うこと
結果が出た今だから振り返れることですが、今回の請求では、いくつかの要素が一本の線につながっていたように思います。
まず、初診日から現在までの医療経過が明確だったこと。
次に、検査によって病気そのものが客観的に確認されていたこと。
そして何より、
病気 → 症状 → 医師による就労上の制限 → 実際の職場での配慮 → それでも就労継続が困難になった経過
がつながっていたことです。
たとえば単に、
「寒いところが苦手です」
ではありません。
寒冷曝露によって実際に症状が現れる。
そのため医師から屋内業務が望ましいとされる。
会社も外勤方法を変更するなどの対応をする。
それでも症状や体調の問題が残る。
そして、適した内勤業務がなければ復職が難しい。
このように、医学的な制約が現実の仕事上の制約としてどう現れているのかを説明できたことは、大きかったのではないかと思っています。
もちろん、これは私自身が審査内容を知っているという意味ではありません。
最終的にどの記載がどの程度評価されたのかは、私には分かりません。
それでも、請求書類を作ってきた過程を振り返ると、単独の検査値や一つの強い表現より、こうした「一貫した事実の積み重ね」が重要だったのではないかと感じています。
主治医に「障害年金用の診断書」を書いてもらうということ
そして、もう一つ大きかったのが主治医の先生の存在でした。
障害年金の診断書は、ただ病名を書いてもらう書類ではありません。
日頃の診察で、自分の症状や仕事上困っていることをきちんと伝えていなければ、先生も診断書には書けません。
私は大学病院の主治医に、これまでの経過や仕事の状況について相談してきました。
診断書にも、現在の病状だけではなく、就労にどのような制限があるのかを医学的な立場から記載していただきました。
支給決定を受けた今、改めて主治医の先生には感謝しています。
そしてこれから請求する方には、診断書を書いてもらう直前だけではなく、普段の診察から、
「何に困っているのか」
「仕事をするとどうなるのか」
「どのような環境なら働けるのか」
を具体的に伝えておくことも大切なのではないかと思います。
そして、支給決定
長い準備と審査期間を経て、2026年8月。
障害厚生年金3級の支給決定通知が届きました。
受給権発生は2026年3月。
通知を見たときは、うれしいというより、まずホッとしたという感覚の方が大きかったように思います。
病気が治ったわけではありません。
仕事の問題がすべて解決したわけでもありません。
これから会社や産業医とも相談しながら、自分の現在の状態を前提として、安全に働ける条件を探していく必要があります。
ただ、障害年金という一つの支えができたことで、選択肢は確実に増えました。
同じ病気で情報を探している方へ
もし今、
「寒冷凝集素症でも障害年金を請求できるのだろうか」
と検索して、この文章にたどり着いた方がいたら。
少なくとも、
寒冷凝集素症で障害厚生年金を請求し、3級の支給決定を受けた例はあります。
ただし、病名だけで支給されるわけではありませんし、同じ寒冷凝集素症でも症状や生活・就労への影響は一人ひとり違います。
だからこそ、自分の場合は、
「検査値がいくつだから」
だけではなく、
その病気によって、自分の生活や仕事に具体的にどんな制限が生じているのか。
そこを主治医と相談しながら、一つずつ整理していくことが大切なのだと思います。
私も最初は、ほとんど情報がありませんでした。
何を書けばいいのか。
この程度で請求していいのか。
診断書には何が必要なのか。
申立書にはどこまで書けばいいのか。
何度も迷いました。
だから、この記録を残します。
これは「こう書けば障害年金が通る」という記事ではありません。
一人の寒冷凝集素症患者が、
実際の病状と仕事上の制約を一つずつ整理し、
医師や年金事務所の助けを借りながら障害年金を請求し、
支給決定に至った記録です。
ネット上にほとんど事例がなく、私自身が心細かったからこそ
この記録が、いつか同じ病気で同じように検索している誰かにとって、
「自分も一度、障害年金について相談してみようかな」
と思える小さな材料になれば幸いです。