では、前編に続きましてここからは走りに関して書いていきましょう。

スポーツカーのように低く座らされるコックピットに身を収め、シートを調整。
ドラポジの調整幅は広いです。
エンジンをかけるとセンターコンソールからダイヤルが飛び出てくるので、Dをセレクト。

まず感じたのは、足がしなやかな事。
F30やW205の前期モデルではランフラットタイヤということもあり、日本の一般道ではタイヤの硬さを意識させられる事がありましたが、XEは普通のタイヤであるため、あたりがドイツ勢と比べると優しいのです。
ジャガーはもうネコ足ではないとの声があるようですが、ドイツ車から乗り換えれば、ちゃんとネコ足に感じられます。
街乗りでは、トルク豊かなディーゼルでストップアンドゴーもラクラク
普通に乗っている分には音も気になりません。
前回、XE AWDは1740kgもあり
X350 XJと同等の重さと書きましたが

この重さの要因は、遮音材を多く使っているためではないかと、"午前零時の自動車評論"という本の"バトルオブブリテン"で書いてありました。

実際、ボンネットを開けてみると、遮音材がかなり張り巡らされています。
F30のBMWはボンネット裏側のインシュレーターが省かれているグレードなどもありましたし、この点ではかなりジャガーは努力してますね。
ただ、その結果としてこの重量の増加と。
また、アイドリングストップすると再始動時の振動が気になりました。
ここはディーゼルなので仕方ないでしょう。
ですので、途中からアイドリングストップはオフにしました。
高速道路の合流で、アクセルを全開にしてみます。
ディーゼルエンジンということもあり、音ははっきり言って残念です。
メルセデスのW202 C200のように無機質な音で、聞いていて気持ちの良い音ではありません。
一方でコーナーリング。
ステアリングは低速域でこそ軽いものの、60km以上出ていれば適度な重さに。
そんなステアリングを切ると、電動パワステにありがちな無機質なフィールではなく、そこにきちんとステアリングインフォメーションが伝わってきます。
そのお陰で、タイヤの状態や路面状況を掴みやすいのです。
また、ロールも抑えられていて、ステアリング操作に対して正確に車が反応する為、運転が楽しくなってついついペースが上がってしまいます。
そして、意味もなくただひたすら走り回りたくなるのです。
気が付けば、深夜2時まで走り回っていました。
電動パワステでありながら、ここまで気持ちよく走れる車は中々ないと思いますね。
エンジン音が残念なディーゼルで、これだけ楽しいのですから、XEの前期モデルに存在した、V6スーパーチャージャー 340psのXE Sに乗ったらどれだけ楽しいか、期待してしまいます。
今回乗ったXEはPrestigeとの事で、BMW F30で言えばLuxury相当のグレードでしょうか。
それでいながら、ランバーサポートを調整できるのは良いですね。
また、シートもホールド性が良く、尚且つ疲労も少ないです。

往年のジャガーを愛する人からすれば、ウッドに囲まれない内装は残念に感じたり、外装のデザインがスポーティ過ぎる感はあるかもしれませんが、近代の車として、とても上手くまとまっていますね。
XEは、内外装のデザインが往年のジャガーと大幅に変わった事もあってか、日本市場では販売面で決して成功しているとは言えません。
しかし、車自体の出来はとても良いですし、僕個人としては、このセグメントの中では、G20系3シリーズやW205系のCクラスよりも好みな乗り味です。
この車は、E46やE90あたりまでの3シリーズやアルファロメオ159あたりに乗ってきた人が乗ると、何かピンと来るものを感じるのではないでしょうか?
ジャガーという固定概念だけで、スポーティーな走りには応えてくれ無さそうなどと思わずに一度触れてみると、驚くと思いますよ。
こんなに素直で、気持ちよく走れるDセグメントはなかなか無いですから。
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ところで、2000年初頭、X308

やS-type、X-typeが現役の頃は、都内では1日に1台くらいジャガーを見かけてもおかしくない時期もありましたが、その頃と比べて、ジャガーを見かける機会は少なくなっている印象です。
日本では、ジャガーのクラシカルで伝統的なスタイルが好まれていたのでしょうか?
しかし、ジャガーはその路線を続けた結果として、X350

やS-type、X-typeは世界規模で見れば決して商業面では成功とは言えずに終わってしまいました。
その結果として、当時の親会社のフォードはジャガーをタタに売ってしまった訳です。
その後BMW出身のラルフ・スペッツCEOの元で
https://www.autocar.jp/news/2020/02/06/474219/
新世代のジャガーを模索していくわけです。
その結果として、ジャガーは往年のE-typeなどを引き出して、スポーツカーメーカーとしての出自を意識した商品計画を立てていくようになりました。
そもそも、XJだって1968年のデビュー当初は最先端のスポーティーサルーンでしたからね。
そして、漸くこの路線が上手くいって、近年は会社が上手く回るようになってきたそうです。
(そんな最中、イギリスのEU離脱など色々と、ジャガーの経営に悪影響を与えそうな出来事がまた起こりつつありますが…)
1980年代〜2000年代初頭にかけてまでのイメージと大分変わってしまったジャガーではありますが、新生ジャガーもなかなか魅力的です。
見た目だけで拒否反応したりせずに、とにかく触れてみることが大切ですね。