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2018年02月15日 イイね!

Legacy(伝統)を振り切ってModern(現代)にチャレンジするジャガー

~新しいジャガーとモダンな英国車像を広めるために久々登場したDセグジャガー~

Xタイプが生産終了してから長らくジャガーで、いや、英国車では不在(ローバー75も、最早古い話)となっていた量産Dセグメント久々のモデル。

前車がBMW320dツーリングで、正直この価格帯で買えるクルマとしてはとても完成度が高いし、更にワゴンなので広さも有り、特に文句の付けようも無かったが、イギリス被れとニッチに惹かれてしまう性分(まだ乗ってる人が少なかった初代ミニ・コンバチやイオスに乗ってる時の勝手な優越感が忘れられず)なのか、思い切ってしまった。

ジャガー、一目惚れではなく本当に徐々に慣れていった感じ。正直に言うと最初はXタイプの方がデザインは好きだったくらい。それに初代XFが出た頃は、同時期にタタ・モーターズの買収ニュースも重なって、XJ-Sに憧れ育った自分としてはこんなのはジャガーじゃないと思ったし、「ナノ」を作った企業が買い取ったジャガーの将来への不安を感じたことだけが当時の記憶だった。

しかし、そこから10年、ジャガーはブレずにイアン・カラムが中心となって構築したデザイン言語をどのモデルにも徹底し、モダンなジャガー像を提示し続ける事に腐心した。

そうこうしている内に、僕のような古いジャガーに憧れたような層も、新しいジャガー・デザインに慣れてきたというか、ジャガー云々を置いておくとしても、イアン・カラムのデザインは、セクシーだけどシンプルだし、むしろ怖い顔つきが増えた現代のクルマとしては大人しいくらいのデザイン(特にグリル周りとか)なのだけど、それでいて見れば見るほど美しいプロポーションだなと思うようになり(例えばリアフェンダー付近とか)、段々意識が変わっていった。

要するにブランド戦略にまんまと乗ったんだと思う(笑)。しかし、そういうストラテジーを10年がかりで出来るのは大したものだとも思う。

デザインばかり言ってるけど、クルマとしても力作というか意欲作で、まだまだ3シリーズとかに比べると肩肘張り過ぎな所、意外と手抜きな所も有ったりするのだけど、新しいシャーシと足回りが生み出すコーナリングのポテンシャルは、ノーマルDセグセダンとしては随一のものだと思うし、しなやかさも内包している。

久々のジャガー・ランドローバー自社開発エンジン、インジニウム・ディーゼルもイギリス車として云々よりは、現代のヨーロッパ車基準(スペック、環境性能)を照準に合わせ、ジャーマンスリーと対抗すべく開発された感じで、癖もあるけど力持ちな良いエンジンだ。

一時期日本では超高級車のマセラティよりも登録台数が少ない時も有ったジャガーだが、XEやF-Paceの様なモデルも出てきたし、更にコンパクトなE-Pace(身内のイヴォークがライバル?)も登場したのでこれからの展開やアップデートにも期待したい。
Posted at 2018/02/28 03:54:02 | コメント(0) | Jaguar | クルマレビュー
2018年02月15日 イイね!

改めて、Dセグセダンを考察してみる(中間管理職のアイドル達は地味に復活傾向) その1

改めて、Dセグセダンを考察してみる(中間管理職のアイドル達は地味に復活傾向) その1上から"アルファロメオ・ジュリア"、"ジャガーXE"、"VWアルテオン"
近年のセダンがちょっとした"クーペブーム"な事を裏付ける。そして、ようやっとジャーマンスリー以外にも個性的、魅力的な選択肢が出てきたと言える。最もVWはアウディと兄弟関係だが。


-実は地味に盛り上がりつつ有るDセグセダンの今日(こんにち)-


週末に久々洗車をした。流石に歳を取って寒さも堪える冬には昔ほど洗車しないのだけど、基本的に自分で洗車するのが好きなので、出来るだけ時間と気力が有れば自分で洗車している。特に気になったのが東京を久々に襲った大雪。聞けば48年ぶりに氷点下4度まで冷え込んだのだとか。と言うことは僕ですら生まれて初めての

「東京は氷点下4℃」

を経験したことになる。まるでピチカートみたいな感じだがそんなに洒落た話でも無い。しかし、出張の多い人間なので本気の寒さは幾度か経験しており、氷点下10℃辺りを超えてくるとちょっとゾワッとしてくるのでそこまでではないかなと(それでも朝方寒さで目が覚めたが)。

※これを書き始めた時点が1月下旬の大雪時期だったが、色々有って更新が遅れたのでその体で読んでもらえれば。

話がそれているが、大雪が降ると、雪を早く溶かすために塩カルのような融雪剤を巻くのは知られているだろうけど、その巻きっぷりが半端ではなく、首都高などを走ると軽く煙たい位の勢いだった。仕方のないことだけど、これがクルマには良くないのでちょっと下回りを中心に早めに流したかったのだ。

しかし、昼でも3~4℃がザラだった今週に洗車をしたのはやり過ぎで、完全に身体を冷やしてちょっと体調を崩し気味である。若くないので無茶はいけない。

さておき、今日は自動車のタイプについて少し。少なくとも日本での主流はここ10年以上ミニバン、トールワゴンと言った実用車が強い時代だ。それは狭い国土で一家に一台という事も多い日本ではマルチな能力がクルマにも求められており、理解できるところである。ミニバンとまで言わなくてもコンパクトカーだってマーチやヴィッツのような純粋にコンパクトなクルマよりもフィットやノートのように屋根が高めでスペースを稼げるタイプの方が人気が有る。また、大型ミニバンの人気はそのスペースや車内の広さ、ラグジュアリーさだけではなく、箱型で大きな体躯のクルマが相応の威圧感を持つこともあり、そういう要求を満たす存在にもなりつつある。

とは言え、最近では環境性能を意識すればプリウスやアクアのようなハイブリッドカーも人気だし、スペースはある程度必要だけどスタイルもという向きにはSUVという選択肢も出てきた。特にSUVはB~Cセグにもモデルが増え、コンパクトカーを置き換える勢いだし、大型のSUVはミニバンの代替としての能力も持つ。つい最近リリースされたCX-8の好調なスタートはまさにそういう事だろう。値段帯はともかく、JLRのディスカバリー、ディスカバリー・スポーツもそう言った役目を担っている。

つまり、それらはたしかに利便性はミニバンに劣ったとしても、毎日7人乗るわけではないのだが、いざという時の乗車人数、積載量は確保したい。しかしながらそういう中でも箱型ではなく、デザインされたクルマにも乗りたいというニーズを満たしている。そもそもSUVのヒットはガラパゴスな話ではなく、世界的なものである。マセラティやベントレーのSUVなんてとうにリリースされているし、とうとうランボルギーニからもウルスというSUVが出るし、フェラーリもアストンマーチン(マーティン)もSUVを開発中だ。正直最近の人にとってポルシェとはマカンやカイエンのような高級SUVを売るブランド(ライバルはランドローバー的な・・)だと思われているフシも有る(当たらずといえども遠からずだが)。911だけで成り立った時代は随分前の話になった。

そんな風にスタイルが多様化してきた中で、特に日本では急激にセダン、ステーション・ワゴンというものが衰退した。本当に最近では街中でも3ボックスで背が低いクルマって見る機会が減ったという実感が有る。自分はここまでもミニだとかBMWだとかジャガーに乗ってきているわけだが、その視点から見ていると、常に隣の人のほうが視点が高いことが多く、前の車も大体背が高いので信号が分からないなぁと思う。昔子供の頃はこんんなに視野が狭くなかったのになぁと思うことが多い。

だが、都心部では別の事情も存在する。それは駐車場だ。中大型マンションの多くで今では立体駐車場が採用されており、先ずここで引っかかるのが高さだ。1.55mの壁が多くの立体駐車場で存在するので、ミニバンやSUVだと車高が高すぎるという事が有る。それは街に出かけても起こり得る。流石に最近では減ったが今でもスペースを活かすためにテナントでも立体駐車場は有るだろう。そうでなくても高さ制限が存在する駐車場はそれなりに有るので、そういう時に悩まくて済むクルマに乗りたいというニーズは確実に存在している。

そうなると、多くはCセグ位のクルマ(ゴルフ等)が日本、都市部でのベストサイズになってくるし、それ以上でもDセグくらいが車高、車幅(最近欧州車の車幅は大分マッチョ化しているが)が気にならない限度と言える。このニーズが残っているので今でも都市部を中心にDセグ位で、そこそこプレミアム感の有るクルマは売れ続けているのだと思う。言わずもがなこのレンジは"アウディA4、BMW3シリーズ、メルセデスCクラス"が一大勢力だ。これらは中間管理職のアイドル的存在だと勝手に思っている。程良いしつらえと程よい大きさのサイズ感、分かりやすいブランドバリューが「頑張った中年」の心を幾ばくか満たすのである。それは自分だってそうだと思う。

この"ジャーマンスリー"に関してはここまでも良く話を出しているし、このクラスが目標とするところでも有る、と言うかこの10年位日本のDセグで相応のプレミアム感が有るセダンって乱暴に言えば御三家+レクサスくらいしか無かったとも言える。特にセダンの衰退ととともに国産のモデルも激減している現在、ジャーマンスリーの存在価値は相応に高い。

ところが近年、スポーティなスタイルでセダンが世界的に流行しつつある。後席にも配慮し、紳士的(ダンナ仕様とも言う)で明確な3ボックスらしいノッチバック・スタイルから、重心の低く、やや天井も低めでクーペライクなファストバック・スタイルへの移行が見て取れるのだ。

この流れはスペースに勝るSUVやマルチパーパス(ミニバン等)が確立されてきたので、逆に今までのセダンは車高の低さを活かした美しいデザインやスポーティな走行性能を与えてユーザの住み分けを明確にしようとするものだと思う。

要するに、家族の為にセダンを選んでいた層は、今ではSUVやミニバンをチョイスしているはずだ。だから古典的でCピラーの立ったノッチバック(セダン)への需要は減ってきているわけだ。スタイルが多様化した現在、それでもセダンを選ぶ層と言うのは、やはりどうしても重心の高いSUVやミニバンには抵抗が有るとか、コーナリングでのオンザレール感など、スポーティな走りを楽しみたい、若しくはDINKSや子供は1人なので、ミニバンほどのスペース重視なクルマはちょっと手に余る、だが、ドアは4枚有るとやはり助かるし、リアシートやトランクはいざという時は活用したいと言う人向けになりつつ有るのだ。

だからその先陣を切ったといえる5ドア・ファストバック(変形ハッチバック・クーペとも言える)のA5スポーツバックが思いの外流行ったのはそういうニーズを満たしたからなのだと思う。アウディらしいプレーンさに流麗なシルエットを加えたA5はリリース当時、非常に感心した記憶が有る。

ざっとDセグのセダン、クーペを列挙してみよう。他にも有るかもしれないが、日本で入手でき、ディーラーの正規販売を範疇にしている。

[ドイツ]
・BMW3シリーズ(セダン/ワゴン) 430~850万(セダンプライス)

・アウディA4(セダン/ワゴン) 447~839万(セダンプライス、S4は含みRSは含まず)

・メルセデス・ベンツ Cクラス(セダン/ワゴン) 441~726万(セダンプライス、AMGは含まず)

・フォルクスワーゲン・アルテオン(5ドアクーペ) 549~599万

・フォルクスワーゲン・パサート(セダン/ワゴン) 339~589万(セダンプライス)

・BMW4シリーズ・グランクーペ(5ドアクーペ) 601~880万

・アウディA5 スポーツバック(5ドアクーペ) 546~913万(S5は含みRSは含まず)

[スウェーデン]
・ボルボ V/S60シリーズ(セダン/ワゴン) 449~614万(Sシリーズ、Polestarは含まず)

[イギリス]
・ジャガーXE(セダン) 451~839万(SVRは含まず)

[日本]
・レクサスIS(セダン) 470~638万

・日産スカイラインV37(セダン) 417~585万

・トヨタ・マークX(セダン) 266~443万

・マツダ・アテンザ(セダン/ワゴン) 280~401万

[イタリア]
・アルファロメオ・ジュリア(セダン) 446~587万(クアドリフォリオは含まず)

[フランス]
・プジョー508(セダン) 434万

[アメリカ]
・キャデラックATS(セダン) 444~528万(ATS-Vは含まず)

ざっとこんな感じ。A5や4シリーズのようなクーペライクなファストバックのリリース以降、明らかにとんがったデザインのセダンが増えていることが分かると思う。アウディやBMWは資本力や規模で3シリーズと4シリーズのように分けてある意味二種類のサルーンを提示(3シリーズセダンと4シリーズのグランクーペ、更にはここでは言及しないが3シリーズにはグランツーリスモのようなロングホイールベースのファストバックまである)しているが、それ以外のメーカーではワンモデルであっても、スタイルとしては明らかにクーペ寄りなデザインになってきている。その代表例がジャガーXEやアルファロメオ・ジュリアと言えるだろう。

これまでのDセグ車を見ると、日本では御三家に続いて堅調な売上を残しているのがボルボ60シリーズで、近年はどんどんボックススタイルのデザインから離れていき、プレミアム、スポーティ色を強くしていっている。例えば2017年の年度新車売上では約5,300台を売り上げて、これは輸入車全体で15位となり、14位のアウディA4の約6,200台との差は1,000台無い位だ。そして16位のパサートの約4,700台を600台近く凌いでいる。ディーラー店の規模などを勘案すれば大健闘ではないだろうか(因みにこの年のDセグ1位はベンツCクラスの約18,000台、全体でも3位に入る強さだ)。

ただ、恐らくボルボの場合、60シリーズの主流は明らかにワゴンのV60だと思われる。今でも日本では「ボルボはステーションワゴンやクロスオーバー」というイメージが根強い。勿論御三家も今ではワゴンのほうが強いイメージなのだが、それでもセダンは見かける。なので今回はちょっと話からは勝手に外すことにする。もうすぐモデルチェンジもありそうだし、その頃にでも。

で、今回はそんな復活傾向にあるDセグでも御三家以外の選択肢ってどうなの?という所である。特にジュリアの登場でイタリアからも再び「らしい」セダンが登場したし、VWアルテオンのような本来はベーシックなモデルを中心としているブランドからも改めてプレミアム・モデルと言えるようなファストバックも登場しているのでまとめておさらいしてみようという所である。

今回は赤字で書いたクルマをジャガーXEを含めてサラッと比較してみようと思う。要点は「ジャーマンスリー以外の選択肢の現実と比較」とでも言えば良いだろうか。まぁ独断と偏見に満ちたレビューでは有るし、実際試乗してみないとわからない所も有るので、先ずはリストアップという感じだ。後は装備関連を中心に比較してみる。要するにコスパも勘案しての比較だ。これだけの値段を出すのだからシビアに見ないとね。

また、基準はDセグとして多く出る中間グレードや普及グレードをベースとした。ローワーグレードとアッパーグレードには各社考えの違いは有るのだが、少なくとも2Lのガソリンかディーゼルというのは各社に存在しているので、その価格帯での考察となる。御三家なら以下との比較でどうかという感じ。セダンならガソリンのほうが良いかなと思ったが、メルセデスなどはCクラスのスポーツパックと言えるローレウス・エディションは1.6Lガソリンか2.2Lディーゼルの何れかのみの設定となり、バリューレンジがダウンサイジング・ガソリン、ミッドレンジが2L級ディーゼルという流れになっているので比較をディーゼルとした。

・BMW 320d Luxury(2L直噴ディーゼルターボ 190ps/40.8kgm) 602万(M-Sportsなら608万)

・メルセデス・ベンツ C220d(2.2L直噴ディーゼルターボ 170ps/40.8kgm) Laureus Edition 575万

・アウディA4 2.0TFSI sport(2L直噴ターボ 190ps/32.6kgm) 556万(参考までにS-Lineパッケージにすると703万に跳ね上がる)

こんな感じで御三家のミッドレンジにラグジュアリーやスポーティなエアロパッケージ付きグレード、オプションを選択すると大体550~600万くらいの範疇に入る。特にローレウス・エディションが設定され、メルセデスがコスパが良い。逆にアウディはS-Lineパッケージはグレードではなくあくまでオプションなのでかなり高くなってしまう。ただ実際にこの辺りのボリュームレンジは値引き云々も絡むのでこの3グレードなら500~600万で購入できるのではないかと思われる。なお、BMWとメルセデスのディーゼルモデルは燃費もかなり良く、両車共にJC08モード燃費は20km/Lを超えてくる。日本の軽油代とハイオク代の差を勘案するとかなり燃料代は安くなると言えるだろう。

1.アルファロメオ・ジュリア(ALFA ROMEO GIULIA)

・GIULIA SUPER (2L直噴ターボ) 543万~

※同価格帯にあたるライバル車
・BMW 320i Sport 560万~
・メルセデス・ベンツ C 200 AVANTGARDE 530万~


「伊達なイタリアン・デザインと久々本格FRユニットを奢り世界戦略車として世に問うスポーツ・セダン」

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159以降しばらく途絶えていたアルファロメオのDセグ車、以前より発表されており話題になっていた。弟分のジュリエッタと同じく数字のモデル名を止め、過去の名車から名付けられたモデル名は"ジュリア(GIULIA)"。プジョーもそうだったが正直モデルチェンジの度に番号の末尾が変わっていき覚えづらかったし、このくらい気取った名前が似合うセクシーなデザインだ。

過去には156時代はかなりヒットしたのだが、それ以降ちょっと日本ではそれ程話題になっていなかったアルファロメオのサルーンだが、DセグらしくFRに駆動を移行し、やはりアルファロメオも「走りとデザイン」を強く意識したコンセプトで作られたのがジュリアだろう。見るからに良いコーナリング性能を有していそうなワイドアンドローな重心、傾斜の緩やかなCピラー、独特のサイド・キャラクター・ライン。そのどれもがスポーティでプレミアムな4ドア・クーペと言った風情で、家庭的な雰囲気はジャガーXE以上に希薄だ。

最も、一番ジャガーXEとガチンコなのはスタイルだけを取れば間違いなくジュリアだと思う。とにかくこの両車、グリルやエンブレムなどを除いて全体のシルエットで見たらかなり近しい雰囲気だ。何れも極端なロングノーズ、ショートデッキが特徴のファストバックスタイルだがハッチバックではないこと、ライバルに比べても車高が低くワイドアンドローな傾向が強いことなどが挙げられる。違いは、やはり独特のフロントフェイスや伊達なキャラクターラインでマセラティ以降のイタリアン・ブランド感を彷彿させるジュリアと、モダンな中にも基本はシンプルでややクラシカルなグリルを中央に配し、リアにも大きくジャガーモチーフのエンブレムを描くジャガーのイギリス車らしさと言った所か。

グレード構成はシンプルで、ローワーグレードでも2L、200馬力と比較的力強い直噴ターボからになる。フィアットグループのバルブトロニックとも言えるお得意のマルチエアエンジンだ。プラットホームは今回FRで用意するに辺り、同グループ傘下のマセラティと共同で開発。最安値はACC等が付かない無印グレード(446万)だが受注生産なので、実質的にはSUPERがベースになるだろう。レザーシート、インフォテイメント、45タイヤ、プリクラッシュセーフティは全て付く。但し、インフォテイメントにビルトインナビが付かないので、スマホ接続(Apple Car PlayやAndoroid Auto)に明るくない、興味がない人の場合、別途ナビの準備が必要になるのでその点は要注意だ。僕は個人的にこれで良いかなと思うが、クルマにはカロッツェリアみたいなHDDやSSDの立派なナビが付いているべきという向きには気にかかる所だ(後で気づいて加筆した)。

パッと装備一覧を見て特筆すべき所はオーディオシステムかな。ハーマン・カードンの900W、14スピーカーシステムが実質の普及グレードSUPERから装備されている。ジャガーXEもMerdian(メルディアン)のオーディオシステムが標準では有るが、380Wとなり、700Wのものは高価なオプションとなる。後はアルミ・アクセルペダルなども標準装備だが、これは結構この手のモデルでは意外と付いてない。

なお、上位モデルは同じ2Lながら280馬力を捻り出すVELOCEとなり、こちらは587万からだが、それでも全体的にややバリュープライスと言える戦略的な価格設定で、3シリーズやジャガーXEと同じ予算を出すと一つ上のグレード、若しくは装備が視野に入る価格帯なのも注目だ。最も外車はデビュー時は価格を抑え、後はどんどん値上がりする傾向が強いので、リリース当初のサービスプライスな面も有るが。

但し今のところディーゼル車の設定は無く(ヨーロッパではMultijet Ⅱを積んだ2.2Lディーゼルモデルがある)、SUPERのJC08モード燃費は13.6km/Lと、サイズを勘案すれば悪くないが、ディーゼルやPHV等の燃費が走りを犠牲にすること無く近年抜群に良いし、エコカー減税も馬鹿にならないのでエコ系の選択肢が有っても良いのかなとは思う。

なお、最上位には3L、510馬力のモンスター・マシン、"クアドリフォリオ"が鎮座するが、1130万もするのでこの辺りに乗りたい人の比較車はアルピナとかAMG C63なんだと思う。

サイズ的には全長は最近どんどん長くなるDセグの中では短めな方、しかし全幅はクラスでも最大レベル。セクシーなスタイルと走行性能を高めるワイドなトレッドのためという所だろうか。ミッションは8速ATなので調べてないが安定のZF製だろうか。全体的にコスパも高くデザインも良いので気になる存在だが、本国やUKに存在する2.2Lのディーゼル導入などは検討されてないのだろうか。

正直個人的にはイタリア車には常に目は奪われつつも自分が買うとなると何となく自分には合わないというか、それだけの伊達さが無いというか、想像できないので本気で検討したことはないのだが(フィアット500とかはまた別だが)、ドイツ車以外の選択肢がもっと有っても良いとは思うし、フィアットグループとしては、アメリカでの展開などはかなり重要で、たしかに西海岸の裕福な地域に行くと、ジャーマンスリー、レクサス、インフィニティのセダンはザラに走っているので、クライスラーも擁するフィアットグループとしてはパイの大きなアメリカ、中国への進出の緒として、プレミアム・ブランドであるアルファロメオに対する期待は大きいのだろう。

何れにせよ近く一度試乗して愛車のXEとの違いなんかもレポートしてみたいと思っている。

ALFA ROMEO SUPER
全長:4645mm 全幅:1865mm 全高:1435mm
エンジン:1995cc 直4 マルチエア・ツインスクロール・直噴ターボ
スペック:200ps(4500rpm)/33.7kgm(1750rpm) JC08モード燃費:13.6km/L
ミッション:8速AT 駆動:FR

2.ニッサン・スカイライン V37(グローバル名:INFINITY Q50)

・350GT HYBRID Type SP(2WD 3.5L+モーター・ハイブリッド) 556万~

・200GT-t Type SP(2WD 2L直噴ターボ) 472万~

※同価格帯にあたるライバル車
・BMW 320i Sport 560万~(350GTとの比較)
・BMW 318i Sport 490万~(200GTとの比較)


「目立たずとも上質かつ性能、最新テクノロジー、価格で欧州車だけでなく、レクサスISも上回るコスパの高いインフィニティの日本版」

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既に2014年からリリースされているが昨年末マイナーチェンジを経て、引き続き数少ない国産のDセグサルーンとして販売されているのがスカイラインだ。実質的にインフィニティQ50の国内版となり、デザインからも伺えるようにフーガ(Q70)の弟分という立ち位置と言った方が分かりやすいだろう。但し、曲線的かつかなり強めのキャラクターラインが入るフーガより全体的に大人しめ(それでも今までの国産セダンには余り見られないCピラーの傾斜やキャラクターライン、鋭角的なフロントフェイスは共通だ)ではある。

スタイルとしてはグローバル・モデルということもあり、他のブランドと同じく、はっきりとしたノッチバックではなく、キャラクターラインがシャープさ、モダンさを主張しつつ全体的にクーペライクなシルエットではあるが、全長が4.8m超えな分、ジャガーXEやアルファロメオ・ジュリアのようなロングノーズ、ショートデッキという風情ではなく、もう少し落ち着いた雰囲気だ。敢えて言うならどちらかと言うとヨーロッパ的と言うよりは北米的なデザインと言えるかもしれない。ベンツAクラス/GLAとのバッチエンジニアリングに近い姉妹車、Q30/QX30等メルセデスとの連携は深めつつ有るが、やはりインフィニティの主戦場はアメリカだろう。

グレードは大きく分けて2つで、3.5Lのエンジンにモーターを合わせたハイパワー・ハイブリットか、メルセデスと提携し、メルセデスの2L直噴ターボを積むグレードに大別される(ヨーロッパではメルセデス製2.2Lディーゼルグレードも有る)。なお、この2LはCクラスならC250に積まれるC200よりも上位のものである。残念ながらC250は日本ではカタログ落ちしてしまったが。

メルセデスの2Lユニットを扱えるのも少しお得感は有るが、やはりスカイラインの最大の特徴はシステム出力364psを誇るスピード・ハイブリットかつハンドリングバイワイヤー等最新技術を奢ったハイブリット・モデルのほうだろう。これのスペック上のライバルは3Lシルキー6とモーターを合わせたアクティブハイブリッド3だったと思うが、既に存在して無く、330eではよりエコにシフトしているので(直4との組み合わせによるPHV)、国内では唯一無二の存在だ。

国産と言うこともありコスパの高さが先ず目を引く。性能だけで行ったらこのクラスでは最もコスパが高い。320iのスポーツパッケージとほぼ同等の値段でV6 3.5L+ハイブリッドの最新テクノロジーを投入したモンスターマシンが手に入る。INFINITY UKの0-100km計測値は5.1秒、これに匹敵する同クラスはジャガーXE S(840万~)の5秒、アウディS4(840万)の4.7秒、メルセデス・ベンツAMG C43(886万)の4.7秒と全て800万オーバーの上位クラスになる。しかもハイパワーとは言えハイブリッド車だから燃費もJC08モードで17km/L前後と悪くない(踏み込んでしまうとダメだろうけど)。そしてこの比較は最上位モデルであるSPなので装備も文句なしだ。

サイズとしてはDセグのサルーンで、それなりのラグジュアリー感が有れば車種は問わない、性能重視という事であればスカイライン350GTが最強だ。もはやDセグでは珍しい3.5L V6の大型エンジン、最新のテクノロジー(ハイブリッド、ハンドリングバイワイヤー、プリクラッシュセーフティ)、ダブルウイッシュボーン・フロントを採用した4輪独立懸架式サスペンション。上記のような走行性能に加えて、LEDヘッドライト、デジタルメーター、タッチパネルコントロールを含む二画面液晶モニタ、Nissan Connectナビゲーション、多彩なドライビングモードなど、このクラスに必要な装備はほぼ揃っていると言って良い。これらはハイブリッド、ハンドリングバイワイヤーを除いてほぼ2L直噴ターボ・モデルでも採用されている標準装備だ。

話題になったBoseの16スピーカーのサウンドシステムは残念ながらオプション。標準のサウンドシステムはやや貧弱なので、これはセールスポイントなのだから上位モデルには標準にしてほしかったが。後はパーキングブレーキが足踏み式なのはちょっと。このクラスならもう電動式にして欲しい。ハンドルですらバイワイヤーなのだから。。

このクラスを国産だと、ブランド感とラグジュアリーさならレクサスIS、バリュープライスかつ美しいデザイン、或いはクリーンディーゼルという選択肢ならマツダ・アテンザに流れがちで、ちょっとスカイラインは影に隠れているが、実はレクサスISに全く引けを取らないラグジュアリー・サルーンとして、スカイラインという選択肢も有りだと思う。

外車厨ならインフィニティ仕様にするのも有り。既にロゴバッチはインフィニティそのものなので、リアのエンブレムとかそういう所で「雰囲気INFINITY Q50」仕様は簡単に演出できると思う。何れにせよ、BMW 3シリーズ・アクティブハイブリッドでは700万超えだった、"3L以上の6気筒エンジン+ハイブリッド=爆速セダン"と言う、走行性能向上のための「エンジン+モーター」と言うモデルが500万台なのはかなりお得だと思う。

後はC220dと同じ2.2Lディーゼルモデルも出しちゃえば良いのにと思う。メルセデスでは日本にも導入済みなのだから。今は一つくらい燃費で訴求出来るモデルも必要な時代だからね。

日産 スカイライン(V37) 350GT HYBRID Type SP
全長:4815mm 全幅:1820mm 全高:1440mm
エンジン:3498cc V6 DOHC + モーター
スペック:306ps(6800rpm)/35.7kgm(5000rpm)[エンジン] 68ps/29.6kgm[モーター]
※システム最高出力 364ps[エンジン+モーター合計最大出力] JC08モード燃費:17.8km/L
ミッション:マニュアルモード付電子制御7速ハイブリッドトランスミッション 駆動:FR


本当はね、2ドアクーペのQ60も日本で販売してくれれば良いのにと思う。Q60、Cクラス・クーペにだって負けないセクシーなデザインなんだよね。スカイラインって、GT-Rが独立してスーパーカー化したせいで、その間のスポーツカーが余り無いんだよね。まぁ日本車でそういうのは殆どレクサスくらいしか無いのだけど。どうしてもニッサンのスポーツクーペならフェアレディZにしてくれって事なんだろうけど、もう少し2ドアだけど4シーターらしいクーペも有って良いと思うのだが。

q6001.jpg
「INFINITY Q60」
スカイライン・セダン(Q50)の2ドア・クーペにあたる、グレード展開もハイブリッド、直噴ターボ、ディーゼルとスカイライン・セダンにほぼ準ずる。Q60。特にリアビューのデザインは日本車では中々無いセクシーさ。


つづく
Posted at 2018/02/15 05:42:08 | コメント(0) | トラックバック(0) | Car Review | クルマ
2018年02月14日 イイね!

カローラが主役から1バリエーションへと確実に変化しつつある

カローラが主役から1バリエーションへと確実に変化しつつある-国民車と呼ばれたクルマの現在-

プリウス、アクアが台頭するまでは国民車と呼ばれたカローラの現在がカローラアクシオとワゴンのカローラフィールダーだ。

実はカローラ、グローバルモデルと国内モデルでは全く異なる車となっており、現在のカローラはガラパゴスな5ナンバーサイズの国内向けモデルだ。

愛車が事故に巻き込まれて1ヶ月程代車として利用させてもらったので折角だからレビューを書こうと思う。

自分は変な車とか外車好きだし、親も当時とすれば相当なカーキチであり、少年時代からトヨタ車に縁がなく、子供の頃からジムニー(JC30)だとか、カスタム化されたダットサンWピックアップ(U620)だとか、挙句日産パオだとか、非トヨタ車ばかり乗っていたので(強いて言えば父は日産派だったと思う)、トヨタ車の、所謂国民車と呼ばれたカローラは自車として乗ったことも無いので、貴重な経験だと思った。

先ず乗っての感想は、思ったよりもサイズ相応の感じがしないこと。これは良くも悪くもである。そして一昔前の国産セダンと比べても、想像以上に乗車姿勢がアップライトな事だ。正直かなりドライビングポジションが低い部類の愛車XEから乗り換えると、まるでミニバンと言うか、それは言い過ぎとしてもフィットみたいなトールワゴンスタイルのクルマに乗っているような気すらする。

昔義父のカローラに乗った時はここまでアップライトな感じではなく、もう少しセダンらしかったと思うのだが、アップライトな姿勢と立ったピラーがサイズ以上のスペース感を感じさせるのに一役買っている。これがポスト・ミニバン、ポスト・トールワゴンな現代日本のクルマの作り方なんだなと改めて独りごちる。

とは言えサイズ的には全長4.4m、全幅1.69mと、CセグからDセグ(国内モデルなので余り関係ないだろうけど)くらいの大きさなのだが、見切りも取り回しも良い。

反面、本来ヴィッツ向けのプラットホームをそのまま流用しているからか、サイズ相応のと言うか、昔のようなある種のカローラ感と言うか、クラス感にはやや欠ける気も。特にリアが気になる。実はヴィッツとホイールベース、トレッドが殆ど変わらないので、リアオーバーハングも今のセダンとは思えないほど長めだし、5ナンバーギリギリの車幅の割に、そういう踏ん張り感は全く感じない。リアのバタつき感はサイズ相応のホイールベースが無いことも有るかもしれない。

例えばほぼ同じ車幅だったミニクーパー・クラブマン(R55)は、全くタイプの違うクルマとは言え、5ナンバーとは思えない程踏ん張り感が有ったが、それは足回りだけではなく、オーバーハングのないサイズ以上のホイールベースやトレッドも影響していたと思われる。

想像とかなり違かったのは内装。勿論今の自分のクルマと比べても仕方がないのでそれは別として、余り機能的ではないのである。ドリンクホルダーの位置も取りづらいし、サイドポケットこそペットボトルが入るけど、ちょっとした物置も余り無く、さりとてアームレストボックスも大した容量がない、USB給電機能とかも無いと言う感じで、国産車は軽だって凄く便利というイメージで居た期待とは大分異なった。

だからと言ってデザインコンシャスな内装でもないので、カローラという、日本ではミドルサイズの範疇のクルマとして見た場合でも、質感の低さは気になってくる。質感は価格的に重視しづらいのは分かるので、だとしたら機能はしっかりして欲しいと思ってしまうのだ。

プロボックスが信じられないほど多機能内装なのだから、もはやカローラもあの路線で良いのではと思う。これだと若いユーザはカローラは選ばず、軽やトールワゴンのほうが全然使い勝手が良いとなってしまうだろう。

本音を言えば、ドイツ内では恐らくガチンコくらいの価格設定のはずのVWポロがシンプルながらも決して質の低い内装ではないので、もう少し頑張りようが有る気がするのだけど。。。

デザイン云々を言うクルマではないのかもしれないが、フロントフェイスは最近のトヨタらしく大分凝った造型になっているのだから、ハッチバックから載せ替えたかのような長いリアオーバーハングや、色気のないリアビューももう少し気を利かせても良いのでは?と思う。そうでないと若い子は買わない。アクアの方が未来感も有るし良いよね、となる。家族が多いなら間違いなくシエンタだろう。

最も、今日本でカローラのようなセダンに巨額の開発費を投じるのは難しい時代なのかもしれない。ある程度の年齢で、カローラを何台も乗り継いだユーザやトヨタを大事にしてくれるユーザのために用意しなければならない車種なのかもしれない。だからメカやプラットホームも基本流用なのだろう。昔のように先ずカローラから開発という時代ではない。既に激しい売上争いを繰り広げるライバルだった日産サニーは10年以上前に生産を終了している(後継のラティオも2016年で終売)。

とは言え、ヴィッツやアクアより車格は上なはずで、そういう点での気遣いはもう少し有っても良い気がするのだ。それは内装だったり、静音性であったりだ。先に書いたけど、大きなロードノイズやタイヤハウスからの金属的な色んな音は静音性が高い車の増えた現代ではまるでバンのようなのでそこは気になった所。

車の何処にお金をかけるか、それは内装なのか、走行性能なのか、デザインなのか、はたまたハイブリッドのようなテクノロジーなのかはメーカーや、その国のニーズにもよるのだが、クルマが売れなくなっているのは、クルマが余りに実用道具になり過ぎて、これなら乗らなくても電車で十分という方向になってしまうのではないかと言う現実も感じた。

誰もがクルマ好きで、自分で色々調べたり試乗したりするわけではないので、こういう入り口に居る(居た)ようなクルマが、もう少しだけFunな要素を持っていても悪くはないと思うんだけど、それはクルマ好きの戯言なんだろうか。

そういう意味では愛車ジャガーXEが如何に癖があり、そして自分には如何に愛すべきクルマか思い知ったという点で実りは有るかな。早く元気に帰ってきて欲しいなぁ。

それでも3ナンバーサイズになっているグローバルモデルを国内には投入せず、ちゃんとこれまでのユーザのために国内専用車としてカローラアクシオを作り続けているのは流石トヨタでは有る。視点が違う人間なので厳しいレビューでは有るけど、移動する乗り物としての必要なもの、エコはちゃんと備えているのはトヨタの引き出しの多さでも有る。

ただ、今の若い層がハイブリッド車が欲しいとなった場合、カローラアクシオを選ぶ理由はそれ程無いかもしれない。プリウスのようなHVのフラッグシップ感も無いし、アクアのような若さも無い、ノアやシエンタのような積載能力も無いし、C-HRのようなトレンド感もない。トヨタ以外が良いのならホンダにも一杯HV車は有るし、ガソリンで走るEV、ノートがメカ的には楽しいだろうし広さも有る、スズキなら個性とバリュー感も有る。それらと比べて訴求する要素がカローラというネーム以外にはあまり無いような気がした。

変なクルマが美徳であるという家系で育ったので小さい頃から街中で見かけたカローラへのアンチと言うか、そこまで日本人が愛する「普遍の良さ」には愛憎的な想いが有ったような気がする。ウチには無くても友人のお父さんや奥さんの義父など、何処かで乗った記憶が何度も有り、それ程までに愛される良さは何なんだろうと。その時に感じていた「普通であることの重厚さ」みたいなモノは現在のカローラに対して僕は感じなかった。

つまりそれはカローラが最早トヨタの代表とは限らないと言う事なんだと思う。例えばゴルフに乗ればVWの現在地が解ると言えるし、今でもVWの真ん中にいるクルマだと思うけど、このカローラに乗って「これがトヨタだ」と言うのはちょっと違う気がする。つまり時代や日本人のニーズの変化の中で、中心からトヨタのバリエーションの要素になったのが、カローラの現在地なのかなと、そう思った。
Posted at 2018/02/15 14:31:36 | コメント(0) | Car Review | クルマレビュー
2018年01月21日 イイね!

ミニ史上最大?のマイナーチェンジへ(F世代ミニ・ハッチがゲトラグDCT化)

ミニ史上最大?のマイナーチェンジへ(F世代ミニ・ハッチがゲトラグDCT化)-エクステリアはユニオンジャックテール、ミッションはDCT採用-

ジャガーのブログでミニの話が続くが、、ミニがマイナーチェンジを行うことが発表された。既に完成されているとも言えるBxx系のエンジンは多少のパワーアップや3気筒モデルのバランサーシャフト見直しなど、スペック的には軽微だ。それは毎回マイナーチェンジでは多少変わる項目だと思う。

http://www.motoringfile.com/2017/12/18/mini-dct-dual-clutch-transmission-makes-official-debut/

恐らくミニファンの人たちには既に以前から事前情報は得ていただろうし、日本のミニ系情報サイトでも詳細は公開されている。エクステリアとして特筆すべきところはテールランプのユニオンジャック化だろう。これは去年のJCW GPコンセプトやEVコンセプトで既に披露(予告?)されたものの実装とも言えるが、実はもっと前に無きMG2シーター・オープンをミニなりにオマージュしたような"ミニ・スーパレッジェーラ"でもユニオンジャックなテールランプは装着されていた(これ、ずっと正式発売を待ちわびてるが出る気配も無い・・)。

minispr01.jpg
"ミニ・スーパレッジェーラ・ヴィジョン(2014)"イタリアのカロッツェリアによってデザインされたミニは息を呑むほど美しい。そして、古い英国2シーター・スポーツへのオマージュも見え隠れする。色々噂は有ったけど結局販売は叶わなそうだ。やっぱMG-TF探そうかな、大分値段も安くなってきたみたいだし。

だが、今回特筆すべき事はトランスミッションの入れ替えだ。入れ替え時期はグレードによって多少ずれるようだが、少なくとも今年度中に一部モデルを除いて初代から長らく利用してきたアイシンAWのトルコンATから、ミニでは初採用となるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)が採用される。メーカーは海外のサイトを見る限りBMWのMシリーズでも採用されているゲトラグ製のようだ。

http://www.motoringfile.com/2017/05/12/mini-dct-is-coming-here-are-the-details/

ポイントは、サイトでも書かれているように採用範囲で、段階を追ってマイナーチェンジ後から7速DCTが順次ミニ(今回の対象は3、5ドアハッチバックとコンバーチブル)に搭載されていくようだけど、採用グレードは以下になる。

ワン(One)、クーパー、クーパーD、クーパーS

一方で以下のグレードは引き続きアイシンAWの8速ATが継続される。

クーパーSD、ジョン・クーパー・ワークス

何だかややこしい採用の仕方で、何故クーパーSDとジョン・クーパー・ワークス(JCW)は採用されないのかという事になるが、上記サイトでは、恐らく上記2グレードはトルクがかなり大きく(SD/36.7kgm、JCW/32.6kgm)、DCTユニットには不向きだからとレポートされている。(現行のアイシンAW製ATは45~50kgmまで許容するモデルと思われる)。

「え、でも50kgm超えのBMW MでもゲトラグDCTは採用されてるじゃん」って思われるだろうし、僕も最初はそう思った。もしかしてVWの7速DCTみたいに乾式なのかなと思ったが、湿式クラッチのようだ。これはあくまでも自分で調べたレベルだが、ゲトラグのDCTはコンパクトなモデル(FF用)だと湿式でも最大トルク耐性が320Nm(32.6kgm)のため、JCW、SDには不向きのようである。因みにMに搭載されているDCTはFR用の大型なもので、耐性トルクは700Nmにまで達する。なので今回はDCTのスペック的に全置換えは出来なかったのだろう。

「参考:ゲトラグ製FWD用7速DCTのデータシート」

参考までにVWのDCT(DSG)は当然FF用だが上位かつパワーモデルに搭載されている6速DCTは以前よりゴルフGTI等に採用されているし、最新の7速DCTは280ps/35.7kgmの新作クーペ、"アルテオン"に採用されているので、単にFF用DCTの限界というよりは、メーカーの考え方、製造過程の違いだと思われる(VWはシェフラー製、BMWミニはゲトラグ製と言われている)。

所で、何故ミニは今になってトランスミッションの置き換えを行うのだろう。エクステリアやエンジンのアップデートはマイナーチェンジで良くある話だし、多段ATの過渡期には確かに年次変更とかでもミッションが変わったことは有るのだが(初代XFなんてその例だろう)、ATからDCTへの変更というのは結構大きい変化だ。

VW(グループ)がDSG(Sトロニック)として広く普及させたDCT、当初は鳴り物入りで「トルコンに変わる次世代のオートマチック・トランスミッション」として紹介されたものの、減速時の癖や特にストップアンドゴーが多い日本などでは耐性も含めてネガも散見した。特に普及モデルに搭載された乾式クラッチのDCTは問題が多かったようだ。

以前イオスでDSG(DCT)に触れている個人の印象として言うと、僕はDCT支持派だ(DCTが上ということではなく、トルコンもDCTもそれぞれ良さが有ると思うという意)。変速ショックを出さず矢継ぎ早にシフトアップしていくその様は、比較的スポーティなエンジンを積むイオスとの相性も良かったし、スリップ感無く、かと言って硬めのトルコンみたいにソリッド過ぎるわけではないダイレクトなフィールは"新しいオートマ"そのものだった。その前がミニクーパーのCVTだったこともあり、ちょっと差が激しかったのかもしれないが。

ただ、たしかに減速時の処理はイマイチ、特に街乗りでダラダラしている時は特有の癖も見受けられた記憶が有る(シフトダウンは遅れがちになったりしていた、しかもランダム性も有る)。

そういう意味では良く言われているように、DCTはスポーティな乗り味を特徴とするモデルには合っているとは思う。その代わりストップアンドゴーとかも含めた全体で捉えればスムーズとは言えないので、ラグジュアリーなサルーンとかには似合わないのかもしれない。ミニは確実に前者なのでそういう意味での合点はいく。

とは言え、DCTへの置き換えで気になるところとして、重量が全て増えていることである。つまりわざわざ重いトランスミッションを今回は採用したのだ。普通このサイズのクルマでは余り有り得ないと思う。そこまでしてDCTに変えたい理由があるとしたら、以下の様なものが上がるのだが

・何らかの理由でDCTの方が燃費や環境性能が上がる

→変速タイミング調整がより細かく出来るだとか、パワーロスが少なく出来るとか、そう言った要素が有るなら起こり得る可能性はある。因みに現行ミニ5ドアのJC08モード燃費はクーパー(1.5Lガソリン、6AT)が18.3km/L、クーパーS(2Lガソリン、6AT)が16.4km/L、クーパーD(1.5Lディーゼル、6AT)が23.9km/Lとエコカーとまでは言わなくても昔に比べて随分良くなっている。クーパーDなんて高速巡航だけなら30km/Lが見えてくるだろうし、ハイブリッドでも敵わないだろう。つまり良好なんだよね。。

・現行のATには何らかの課題がある

→DCTが優秀かどうかはともかくこういう理由も有りえるのかなと。実は自分がR55クラブマン(アイシンAW製6速AT)に乗っていた時、一番気にかかったところの一つがトランスミッションだった。イオスの後がR55のクーパーSだった訳だけど、スリップ感こそ少なくかなりソリッドなチューニングがされていたが、何というか硬いと言えば良いのか、愛車紹介でも書いたけど、特に始動時には変速タイミングも引っ張りがちで、変速ショックもイオスの後だと多少感じるようになった。少なくとも2010年代のATとしては少々前時代的なのかなと言うのは否めない気がしたのだ。

だが、F世代のミッションは6速ATもブラッシュアップ版だし、8速ATは採用当時はかなり新しいミッションだったはず(アイシンAWの8速ATはボルボにも採用されている)。だから一概にR世代のミニとの比較は出来ない。F世代のミニは6速、8速、もしくはガソリンやディーゼルも含め何度も試乗しているが、乗ってすぐにミッションは随分良くなったかもと思ったので。とは言え試乗だけではこのあたりはわからないところでは有る。

BMWがオートマチック・トランスミッションに求める質の向上なども考えられる。BMWのFRモデルの多く、いや、ヨーロッパ車のFRモデルに多く採用されているZF製の8速オートマチック・トランスミッションの完成度が高すぎるというのも有るのかもしれない。FFベースのE-Paceを除く全てのジャガーのATもこれだ。正直このミッションの存在がDCT化に流れそうな雰囲気に待ったをかけたと言っても過言ではない(VWの乾式クラッチDCTにおけるトラブルが頻発したことも大きいが)。

確かにZFの8速ATを偶然2台乗り継いでるが(BMW320d、ジャガーXE)、変速の時の滑らかは双方ともに同系ミッションということも有り良く似ているし、シルキーな変速フィールはもう慣れてしまうと後に戻れない感じもする。キックダウンこそ少し反応がおっとり目な気もするが、スポーツモード時のシフトダウンのブリッピングの効き方も優秀だし、変速自体は早いというか段々気づかなくなってしまう類のものだ。スポーティかつ相応のエレガンスさも求められるサルーンにジャストなミッションだと思う。ストップアンドゴーの多い日本でも細かくテンポの良い変速が相性も良い。

そう言った「基準」から勘案すると、何らかの理由でFFのミッションも見直したかった、そして、DCT有りきというよりはFFに載る優秀な多段ユニットを検証した結果としてゲトラグの7速DCTが採用されたという可能性も。スポーティなクルマに合うと言われるDCTだし、ミニとは上手く行けば相性も良さそうだが、今回の変更、ミニだけでなく同じプラットホーム、エンジンであるBMW2シリーズやX1にも及んだので、スポーティ≒DCTということだけでは無さそうだ。

だが、自分はF世代のミニユーザではないので今のATの評価は出来ない。アイシンAWのミッションも世界的に評価は高い。必ずしもDCTにしたからと言ってポジばかりではないかも知れない。そもそも先述のようにミッションの入れ替えで重量増となってしまっている。なので、これはミニだけではなく、BMWのFFモデルも含み全体でバランスを取った結果、DCTが扱いやすいという結論に至ったのかもしれない。同じモジュラーユニットを共有しながらBMWはDCTでミニはトルコンで、サプライヤも違うとなれば、全然合理的ではなくなってしまうので。

・どちらかと言えば政治的な理由

→上記後半とも関係するが一番はこれなんじゃないかなと思う。ゲトラグとの取引で何らかの有利な条件を引き出せた。スペックやチューニングも随時改善しますよとか生産ロットの安定(優先)供給案を受けたとか。ゲトラグからしても、少数生産のMとかだけでなく、もっとボリュームが見込める量産車に自社製品を展開したいだろうし(実際今回のDCTはBMWとミニのFFモデルに多く展開予定)。

全体導入までに妙に段階を追う理由としては、アイシンAWとの提供契約期間も有るのではないかなと邪推している。

そのアイシンAWとの関係も考えてみたが、トヨタ系列なので、BMWとの関係は悪くないはずだ(技術提携を結んでいて、Z4とスープラを兄弟車として共同開発しているのは良く知られているだろう)。なので昔のダイムラー・クライスラーとのトライテック社みたいな「意図せぬ技術共有」とかは無いはずだ。自動車売上最大級のエース(トヨタ)と最大のニッチ層(BMW)を抱える両者はバランスが良いと思う。

まぁそうなるとやはり理由はイマイチ判然としないのだが、それはそれ、ミッションはミッションで色々取引が有るのだろう。

蛇足だが、FR用8速ATを供給しているZFとの関係は揺らぐことは無さそうだ。そう言えばZFの場合FF用の多段ミッションとなると、9速AT(イヴォーク、チェロキー、ジャガーE-Pace等に搭載されている)も有るが。

あと、AT関連で大きいのが「シフトバイワイヤー」化かな。サイトでもわかるようにシフト周りのデザインが大きく変わっているけど、ここはようやく兄貴分のBMWと歩調を合わせたという事だろう。ギアチェンジの時、物理的にガチャ、ガチャとシフトを下げていくのではなく、全てクリック、つまり電子制御で操作できるコントローラ式に。これ、BMW最初乗った時、「高級だなぁ」と感心した(笑)。Pが同一線上から外れたので最初少し戸惑うが、慣れるととても扱いやすい。

確かにシフトって旧態依然だったかもと、この電子制御シフトに触れて思った。勿論しっかりとした操作感、位置感の必要なマニュアルはともかくとしても、オートマって運転中はDかNが多いわけだし、細かいギアチェンジはパドルシフトとかはとっくに採用されているわけで、これが普通になるんだろうなって。ただ、シフトノブとしてはちゃんと残っているので何となくギアに手をかけておきたい時、意識せず有ると思うのでそこはキープされていて良いのですよ、質感的にも触りやすい。こういう所が後に回される感じがちょっとミニファンとしては少しもどかしいんだが。iDriveなんてR世代の頃は載せようとすらしてなかった気がするし。価格だって実質1シリーズと変わらないどころかオプション派手に行けばあっと言う間に超えちゃう時も有るくらい高いんだからもう少し何とかして欲しい。

シフトバイワイヤーと言えばジャガーもそうで、ダイヤル式のアレ、"ジャガー・ドライブ・セレクター"がエンジン始動とともにウィーンとせり上がってくるのだけど、これ、最初は「おぉ」とか思うんだけど、別段使いやすくないんだよな。特に始動時にせり上がるまで待たされる感じがちょっと。。何か運転中も手持ち無沙汰だし、Sに入れても(入れるというよりダイヤル回す)シフトノブみたいに気持ちのスイッチが入らない(笑)。分かりますかね、この感じ。

まぁパネル周辺はスッキリしていて悪くないんだけどね。恐らくドライブセレクターだとダッシュボードの操作ボタンとかもシフトノブに邪魔されない分低い位置まで配置できるとか利点も有るのだろうけど、僕は何か棒が出てる方が好きかな。

まぁこれからレビューも増えてくるだろうし、試乗も何れ出来るようになると思うので、機会が有れば、また、ここで。
Posted at 2018/01/21 15:00:49 | コメント(0) | トラックバック(0) | MINI | クルマ
2018年01月17日 イイね!

追憶の愛車シリーズ 「R52 ミニ・コンバーチブル」と初代BMWミニが出来るまでの話

追憶の愛車シリーズ 「R52 ミニ・コンバーチブル」と初代BMWミニが出来るまでの話-20世紀と共に去ったクラシック・ミニの後継として必然とされていた新たなミニ-

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MINI Cooper Convertible(R52)

今回は過去の所有車の話。僕にとっては2台目のクルマで2代目のミニの話、BMWミニ・コンバーチブルだ。世代で言うとR52、つまりBMWとしては最初の世代のミニ。マイナーチェンジ前後に追加登場したのがコンバーチブルということになる。

既に愛車紹介で自分の思い出についてはある程度触れているので、初代BMWミニが出た頃のエトセトラを中心に。

クラシック・ミニからBMWミニに乗り換えたせいか、当初は急激に今の車になった事もあり、最初は細かい事に気が行かず、「取り敢えず快適としか言いようが無い」っていうのがBMWミニの感想だった。オープンもボタン一つで出来てしまう。燃費や残走行距離も一目でわかる。当時徐々に当たり前になっていた機能の一つ一つがクラシック・ミニ乗りだった自分には新鮮かつ最新で感動したものだ。

BMWミニ登場の背景は、クラシック・ミニの終了とローバーとBMWのあれこれが大きく影響している。

先ず、1960年代から基本は変わらず長らく愛されていたミニだが、20世紀の終わりを前に、いよいよ衝突安全性や排ガス規制が高まり、継続が厳しくなっていった。モデル末期には運転席エアバッグ(ハンドルのみ)やサイドインパクトバー、そしてインジェクション化なども行われたが、設計自体も古いミニでは何れにせよ限界が有った。

そこでローバーでは従前から次世代ミニの開発が始まっていた。途中BMWの買収も有ったが、それらは引き続き行われていた。別の回でも紹介したが、97年には2つのコンセプトモデルが発表された。何故2つかというと、BMW買収以前からローバーが計画していたものと、BMW主体で計画した2つを発表するという異例なものだったのだ。

mini1997concept.jpg
1997 MINI CONCEPT

これも前に書いたが、左がBMW、右がローバーが発表したコンセプトだ。見ての通りBMWのコンセプトはその後発表されるミニに直結するようなスポーティかつプレミアムなデザインだ。対するローバーのものは大人4人が乗れるシティコミューター、実用車の側面が強く感じられる。エンジンもRRを想定したようだ。つまり、三菱i(アイ)のようなクルマを作ろうとしていたのではないかと思われる。それは短いフロントノーズ、高いデッキデザインからも見て取れる。

本質的にはローバーが発表したコンセプトの方がミニの後継らしい気もする。だが、機能的なデザインだったはずのクラシック・ミニは、その簡素さと可愛らしさが受けに受け、末期には機能性よりもデザインで選んでしまうクルマになっていた。

確かにクラシック・ミニは小さくて、大人4人が乗れる良く出来たシティコミューターだったのだが、90年代末期にはその居住性、性能を上回るクルマは幾らでも有ったし、2ドアで乗り降りも不便、安全性は危険な領域に居るクルマと言っても良かっただろう。つまり利便性で選んでいる人は殆ど居なかったのだ。あの素晴らしいデザインを手にしたいという人のための生けるクラシックカーだったのだ。

その点で捉えると、ローバーのものは恐らくこのデザインが好きで乗りますという類には成りづらかった気がする。結局三菱iも既に生産されていないし、少しスタイルが似ているメルセデス・ベンツのAクラスは2代目まではモノフォルムなトールワゴン的だったが、3代目で一気に重心を下げ、ゴルフ、BMW1シリーズ、アウディA3と同様のスポーティでプレミアムなハッチバックというオーソドックスなスタイルに変わり、Bクラスをトールワゴン(ミニバン)的に住み分けた。結局最初にメルセデスがAクラスで提唱した現代のシティコミューターというコンセプトは今のAクラスには引き継がれていない(それはSmartに譲ったとも言えるが)。

BMWはミニを違う視点で見ていた。それは正に「ミニだから乗りたい」という視点で、機能美から生まれた素晴らしい初代のデザイン、ノスタルジックな雰囲気あふれるセンターメーター、小さくシンプルながらもイギリス車らしい佇まい。これをアイコニックな形で現代に持ち込もうとしたのだ。重要なのはシティコミューターとしての能力ではなく、プレミアムな気持ちになれるコンパクトという事だ。

この頃、ローバーは大きく揺れていた。90年代前半、苦境が続き、自社での新車開発が進まない状況だった中でホンダとの連携を強め、バッジエンジニアリングで実質ホンダ車をローバーブランドとして多く売っていた。そして、合併か買収が近いと思われていた最中、突然BMWへの身売りをしてしまったのだ。

だが、BMWが買収した後も、品質は中々上がらず、BMW買収後、最初に出た"ローバー75"も、そのクラシカルなデザインは好評だったが、肝心の車の質に問題が有ったようで、売上が伸び悩んだ。

そんな混乱期に次世代ミニの開発は始まっていたので、コンセプトモデルも別々に発表されたのだが、それでも終売が迫るクラシック・ミニの事も有り、急がなければならなかった。そんな中で97年にはエンジン開発に関してローバーはクライスラーと合弁会社を作ることで締結する。これはミニだけでなく、お互い小中型車を開発する中で、エンジンを一緒に開発しましょうという事だ。この頃クライスラーもネオンや後にPTクルーザーのような小型車を開発していたし、欧州のマーケットを睨んでということも有るだろう。

逆にローバーにとってもそれは同じこと。この契約にどれだけBMWが絡んでいたかは分からないが、BMWにとっても、決して小型車は得意分野とは言えず、当時は1シリーズもまだ出てないし、FF車もBMWとしては作ったことがなく、流れに任せたのではないかと推測する。

しかし、不味いことに98年にクライスラーはダイムラー・ベンツと合併。あろうことかBMWグループのローバーは同郷の最大のライバルとエンジン開発に関して関係性を持つことになる。そんな複雑な経緯?から生まれたエンジンが「Tritec(トライテック)エンジン」だったのだ。後に「ペンタゴンエンジン」とも言われたこのエンジンは結局初代BMWミニに載ることになる。このトライテックエンジンに関してはまた後述する。

結局BMWとローバーの関係はシナジー効果も生み出せず、ローバーに愛想を尽かすような形で2000年にブランドをバラバラにして売却。BMWは実質ミニ・ブランドのみ手元に残して残りは売り払った。その中でランドローバーはフォードへ、それ以外はフェニックスコンソーシアムという投資会社に僅か10ポンドで売却したのはニュースにもなったので覚えている人もいるだろう。要するにBMWからしたら、ミニ以外は価値なしと判断したわけだ。

フォードに売却されたランドローバーはともかくとして、その後ローバー本体の末路は悲惨だった。今では跡形も無く(ローバーというブランド商標のみタタ・モーターズが所有しているが特に利用してない)、それはブリティッシュ・レイランド以前、以後から紆余曲折を経て続いてきたイギリスの自動車史の一つの終わりでも有った。

もしかするとBMWは最初からミニしか興味がなかったのかもしれない。当時Bセグ以下のコンパクト・セグメントの展開は、その頃FFも小型車も無かった彼らにとって重要課題だったと思うのだ。それはダウンサイジングな時代が来ることも想定していたのだと思う。そこにミニ・ブランドはピッタリだったのだ。

資本、シャーシ、エンジン(特にR56以降)にはBMWが大きく介入したが、敢えてデザインはBMWとは一線を画した。つまり特にBMWと共通点を持たせたりせず、ミニはミニとして生産はイギリスで、外観はブリティッシュネスをしっかり残した。この手法が大きかったと思うのだ。この「見た目イギリス車、中身BMW車」路線がミニを大きな成功に導いたポイントの一つだったと思う。

結果出来上がったのが初代BMWミニだ。ふっくらとはしたがクラシック・ミニと共通のアイコンを散りばめ、ミニらしいルーフを強調するためにピラーを極力目立たせないデザインに。フェンダーの存在感を高めるために敢えてSUVなどで採用されながらも普通の車では余り無いブラック(無塗装)のフェンダーも取り入れた。

正直4人乗りとは言え、今の車としては広いとは言えなかったし(サイズの近いポロは見た目よりずっと中は広い)、特に後ろは前席が前目にスライドしないと足も入らない。これは大型タイヤを装着させるためだったり、リアも独立懸架式サスペンションに拘ったり、車高(ドライビングポジション)を低く保つためだったりと、居住性よりデザインと走行性能に気を配った。内装や外装も機能性というよりはミニというアイコン性を最大に活かし、それらをモダンに、デザインコンシャスに仕上げた。そのバリエーションの一つがコンバーチブルだったとも言える。とにかくミニは小さなプレミアムカーだというコンセプトでセールスを展開したのだ。実際に同車格のクルマに比べても設定は高めだった。

それが後に大当たりし、これ以後は車格も含めて様々なバリエーションが出てくるのだが、初代BMWミニは基本的に3ドアハッチとコンバーチブル以外の展開は無く、まだまだ何処かニッチだったし、クラシック・ミニ好きのユーザーに慣れてもらう、若しくは移行対象として捉えてもらうことにも腐心していたような気がする。

そんな初代BMWミニ、エンジンフードと一体型のランプユニットを奢ったり、メッキドアノブが金属製だったりと、2代目以降はコスト削減も含めて変更、簡素化された所も多く、気合の入った質感を持っていたことを思い出す。内装も当時の量産車としてはかなりデザインコンシャスで斬新だった(質感はイマイチだったけど)。サークルをモチーフにしたそれらは格好良いけど使いづらいくらいで、機能美のBMWとは180度違う路線だったと言っても良い。何れにせよ、BMWグループ初のFF車の船出は相応に気合の入ったものだったのだ。

だが、BMWが介入する以前(ローバー)から計画されていた部分も多く残っており、その中で大きなものがエンジンだったのではないだろうか。今考えると、エンジン屋を自負するBMWにとって、ここにはもっと力を入れたかったかも知れないが、先述のように既にローバーとクライスラーの間で進められていた計画であったこと、そして小型車(特にFF向け)向けのエンジン開発経験が多くなかったこともあり、結局ローバーからトライテック社の共同権利も買受け、トライテックエンジンはそのまま新しいミニに載ることになった。なおトライテックのミニと同型のエンジン(1.6L)は、クライスラーではネオンやPTクルーザーにも搭載された。

シャーシやスタイルの点では"ビッグマイナーチェンジ"に近かった2代目(R56)のモデルチェンジ時に、トライテック社の株をクライスラーに売却し(つまり、共同開発を止めたということ)、トライテックエンジンは止めてPSA(プジョーシトロエングループ)と共同開発した所謂"Prince"エンジンに切り替えてしまったのだが、後にBMWはトライテックエンジンに関して「燃費、性能等が前時代的なエンジンだった」と切り捨てているのでやっぱりここは気がかりだったのだろう。

それに契約締結後ではあるが、クライスラーはダイムラー・クライスラーとなり(当時)、それは同じドイツの、BMWにとって最大のライバルとも言えるメルセデス・ベンツ傘下との合弁会社という事になってしまった。勿論ライバル同士でも手を組むことは有るけど、意図しないものだったし、お互いが台数、売上そのものよりは「量より質」を重視したメーカー、ブランドと言える事から、機密が漏れるのも嫌で継続開発は難しいと感じたのではないだろうか。

後のPrinceエンジン(BMWではN13/N18とも呼ばれた)ではお得意のバルブトロニック化やツインスクロールターボ、直噴化を行い、BMW1シリーズやミニのようなコンパクトカーだけでなく、ダウンサイジングユニットとして、プジョー(508、3008、308等)シトロエン(C5、ピカソ等)の多くの中大型モデルでも採用されたエンジンとなった。

そんな訳で何となく初代ミニは既に古いことも相まって中古市場では「ハズレ感」も有るのだけど、ふと思い返してみると、ちょっとじゃじゃ馬的なエンジンとも言え(特にクーパーS)、燃費とかはともかく中々個性的で面白いエンジンだったのではないかと思う。

先ず、僕が乗っていたクーパーは自然吸気だったしパワーもトルクも1.6Lのごく標準(ちょい低めくらい?)なスペックだった(116ps/15.2kgm)。パワーウェイトレシオも10kg/ps台だろう。もしかしたらトルクフルな昨今の直噴ターボやディーゼルに乗り慣れた後に乗るとかったるく感じるかもしれない。回転もヒュイーンと吹け上がるという感じではなく、4~5000rom辺りまで、意識して踏み込むとグォーって感じで自然に力感が上がっていく実用エンジンという感じだった。確かにトルクピーク(4500rpm)もパワーピーク(6000rpm)もバランス良く配置されているので速くは無いが回しただけ力はしっかり出る感じのエンジンだった。今の直噴ターボの様にトルクが特定回転の間フラット(良く1250-5000rpm位までフラットでピークトルクが出たりする)に出続ける現代的?な雰囲気ではなかったね。もっと人の走り方に対する考えが介在するエンジンだったと思う。

散々叩かれたCVTは今思えば特筆するような良さは無かったけど、2000年代前半だとまだ3~4速ATが普通だったし、そういうのは結構変速ショックも残っていたような時代だったので、盛り上がりには欠けるけど変速感が無いのはある意味スムーズだなぁとか思っていたような気がする。

対して、クーパーSは全く異なるキャラクターだった。先に言うけど、初代クーパーSが「一番楽しいクーパーSだった」「ある意味一番速い(加速感のある)クーパーSだった」って人、乗り継いでる人で居ないだろうか?僕は初代のクーパーSに一番鮮烈な印象を持っている。

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MINI Cooper S(R53)
良く代車で借りていたクーパーS。しかし、当時世話になっていたミニ品川(東邦モーターズ)は酷いディーラーだった。。2年で営業担当もコロコロ変わって嫌気が指してそれ以後のメンテと乗り換えはミニ世田谷(BMW東京)に切り替えた。そして程なく東邦モーターズ自体が自動車業界から撤退し、ミニ品川も無くなった。


所有していたわけではないが、良く自分のクーパーが壊れたもので、代車で借りるのは大概クーパーSだったのだ、しかもマニュアル。これは本当にホットハッチという称号が相応しいリトルモンスターだったと思う。

とにかくこれくらい軽量なクルマに170psをスーパーチャージャーで強引に捻り出す感じがたまらなく(170ps/22.4kgm)、どんなに直噴ターボが進化してターボラグが無くなっても、体感的に出足からスパチャが効いて「ミューン」みたいな音を響かせながら序盤に凄い加速をする感じ、何というか「一瞬1トン車のミニに2.5Lのエンジンを積んだ」かのような錯覚を起こさせるのがスパチャの味だったと思う。とにかく途中までは直線的にパワーが上昇し(直噴ターボ等と異なり特定の回転域で最大トルクやパワーが継続するのではなく、N/Aのエンジンがボアアップしたかのように最初からピークまでパワー、トルクが上がる)、トルクステアも出まくりながら加速していくあの感じ、あれが初代クーパーSの醍醐味だったような気がする。スパチャらしく5000rpmくらいでもう息切れ感があり、そこから先は伸びないのだが、街乗りというか日本では十分過ぎるパワー感だったな。

元々小排気量こそスパチャが活きるとも言われてるし、少しの間倍速でエンジンが処理されているかのような錯覚を起こすクーパーSのスーパーチャージャーはとても楽しかった。N/Aだと重めだが特徴のない印象なのだが、エンジンとしてプレーンな分、スパチャとの相性も良かったのかもしれない。

その後、R55のクラブマンをクーパーSで所有し、あんなサイズで184馬力もある直噴ターボだったので速いのは間違いなかったが、初代クーパーSのような鮮烈でじゃじゃ馬な印象ではなく、もっと今様で扱いやすい印象だった。それについては別の回に触れようと思う。

ただ、クーパーもクーパーSも排気量からすれば燃費が全然良くなかった。自分のクーパーなんて毎日高速通勤なのに1給油で10km/L行った記憶が無い。大体7~8km/Lだったかな。当時は外車なんてそんなものだったの知れないし、流石に当時の他の車のスペックまで覚えてないのだけど、ミニの10・15モード燃費を見返しても11~12km/Lくらいなので実測はそんなものなのかもしれない。でも、1.6Lのクルマとしては微妙な数値だ。

後はラジエーターホースが弱く、水が何度か漏ってオーバーヒートしたのと、ミッションオイルも漏れやすかった(何かパッキンか何かにリコールレベルのものが有ったような)。更にCVTはバッテリーが弱ると、エンジンやオーディオ、ランプは使えても電圧が下がってCVTが変速しなくなるというとんでもないトラブルも有った。この時は実質1速のまま20kmくらいでディーラーまで走っていったのも思い出す(周囲にはすごい迷惑なことだ・・)。

結局"エンジン屋BMW"からしたら本意のエンジンではなかったのかしれないが(BMWミニ登場から程なくして発売された初代BMW1シリーズは1.6Lモデルが有ったが、トライテックエンジンが載ることは無かった)、あの泥臭さすら漂うクーパーSのじゃじゃ馬感は中々今の車では味わえないので、スポーティに走りたい、ホットハッチが大好きという向きには程度が良ければ(大分減ってきているだろうけど)価格は安いのでしっかり最初にメンテしてから楽しむのも有りかもしれない。

後半はエンジンの話が中心になってしまったが、英国車史末期の混乱の中でBMWにさらわれつつも、明確なコンセプトによって新たな価値とユーザ層を取り込んだミニ、昨年(暦年)の外車モデル別売上でもトップに輝き、2年連続1位だった。それまで10年以上トップに君臨してきたVWゴルフを抜いての1位だ。ま、ミニの場合、ハッチからクロスオーバーまで「1車種」という扱いでグレード違いという事になるので、VWの純然たる1モデルと比較するのはどうなのかとは思うけど。。

まだ荒削りだった初代のBMWから見た目はキープコンセプトでも進化が続き、最新のF世代ではいよいよシャーシやエンジン、インフォテイメント(実質iDriveの搭載)、プリクラッシュセーフティなどBMWとの共通化が進んでいる。価格を勘案すればまともなインフォテイメントやプリクラッシュセーフティは当たり前の時代だと思うし、モジュラーユニットエンジン、シャーシの共通化による効率化はメーカーとしては当然だと思うけど、何処かミニらしさという点で、少しづつそれは「BMWブランドの1コンパクトライン」という方向に向かって確実に集約されているのかなとも思う。だから初代クーパーSのような、クライスラーと作ったエンジンに強引にスーパーチャージャーぶち込んで、ガチガチの足回りでノーマルみたいな、ちょっと無茶な個性は今後ミニからは出てこないのかもしれない。
Posted at 2018/01/17 08:29:30 | コメント(0) | トラックバック(0) | MINI | クルマ

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