シェルと出光の合併話がモメてます。
2年前に
昭和シェルが出光興産と対等合併して経営統合するとの日経の記事を見ました。

当時、大規模ガソリンスタンドとセルフ化を進めていたシェルが何故出光と合併なの?と思った。
シェルは早くからセルフ大規模店舗化に乗出した。
日本市場でのガソリン商売は薄利なのでヤル気を失ったのか?
ヤル気を失ったけど、今迄の投資は取り返したいから大規模GS化とセルフ化に遅れてる出光に買って貰おうと思ったのか?
シェルの大規模GS化とかセルフ化に関していえば、以前、私が通っていた鎌倉の小規模ガソリンスタンドも現在は更地になってる。
このGSはシェルだったけれども廃業を決めたのは、改正消防法が発端だった。
営業を更新するためには40年前に埋設された地下タンクの改修義務が課せられた。

営業を続けるには数千万円の費用が必要だったので結局廃業した。
現在の経営陣は合併推進のために創業家持株比率が約26%に下がる公募増資を表明。
でも出光創業者一族が反対してます。
てっちゃんは出光創業家を支持します。
さて、シェル石油といえばフェラーリと切っても切れない関係の石油会社。
フェラーリF1チームのユニフォームには、黄色いエンブレムが縫い付けられている。
F1チームユニフォームだけでなく、フェラーリ本社工場の従業員作業着にも付いてる。
FCJのフェラーリ工場見学
こんな関係もあり普段はシェルV-Powerを入れている。

こんなタンクローリーが走ってると気分はウキウキです。

日本でハイオクタンガソリン新製品を導入する時にフェラーリカリフォルニアを登場させ宣伝してた。
清浄剤入ハイオクV-Powerだとエンジン内部が綺麗になると言ってるね。
シェルGSで配布冊子にはドロドロに汚れたエンジンバルブの写真が掲載されていた。
V-Powerでバルブが綺麗になったの?。

上記のシェルの宣伝
素人が脚本書いた?

2017年フェラーリF1のパワーユニット062は
直噴だからバルブは綺麗にならないよ!
フェラーリカリフォルニアのエンジンも直噴
バルブは綺麗にならないのにと思ったらば、昔のフォルクスワーゲンのポート噴射エンジンに清浄剤が入ってないレギュラーガソリンを入れて実験した事が判りました。
清浄剤は
PEA(ポリエーテルアミン)

V-Power国内発売時、海外シェルGSでPEA清浄剤入りハイオクを売ってたね。
それ迄ハイオクに清浄剤は入ってたけど、
それはPBA(ポリブテンアミン)
V-Power発売前エネオスだって出光だってPEA清浄剤入っていたでしょ?
エネオスヴィーゴの宣伝にはPEA清浄剤の添加でインジェクター噴射口周りが綺麗になるってちゃんと説明してるよ。
国内精製設備の関係でPEA入ハイオクの市場投入が遅れたのに何故そんな宣伝するの?
清浄剤入って無いレギュラーと、清浄剤入りハイオクを比べるのもアレですけど、
吸気バルブから空気しか入ってこないのに、そんな訴求するのはどうかと思うヨ。
直噴エンジンの「スカベンジング」って説明してるけど、これは排気脈動を利用して充填効率を高める技術なのでノンターボの458用F136FBエンジンにも使われてる。
ここで問題なのは、
直噴は煤が多い事
ポート噴射とかキャブよりもガソリン粒子が大きいので、燃え残りの煤が出るわけです。
昔の三菱自動車のGDIエンジンって、煤で大失敗したんです。
ボッシュのGDIは筒内噴射圧力が200バールと高く、霧状にする気流の流れを改善している。

この図では排気ガスが掃気されてますけど、実際は吸気バルブ側に排気ガスが戻る。
これは、てっちゃん458の
インテークマニホールドです。

十数万km走ったらば、
こんな感じで汚れます。
そこで私。
シェル石油日本法人にフェラーリカリフォルニアのエンジンは直噴なので、
インジェクターは綺麗になるけど
吸気バルブの汚れは落ちないよ
と指摘するメールを送りました。
一方の出光興産と言えば・・・
中小規模のガソリンスタンドが多く設備も古く従業員も年配者が目についた。
出光興産は2016年の10月23日迄、非上場の会社だった。サントリーなども非上場だったけれど、こう云う会社は従業員とお客を大切にする所謂「日本的経営」をしていた。
会社の資本を株式によって支える場合には、3ヶ月単位で儲かった損したと騒いで短期的な利益を追求して従業員を簡単に解雇する株主優先な経営になりやすい。
正直にいえば出光に対してはあまり良い印象は無かった。
セルフ化と大規模化に遅れた出光がシェルを買収するのは良い経営判断だと思ったけど、非上場だったのでセルフ化するための資金が無かったんだよね。
ガソリンスタンドを大規模化すると、今迄頑張って協力してくれていた中小ガソリンスタンドと決別しなければならない。
「出光佐三の大家族的経営」を標榜していた経営方針とは違う路線を行かざるを得ない。
でも昨年の秋に上場したので大規模GS化とセルフ化が進んだ昭和シェルと合併するための資金が出来た。出光興産の今後の展開を考えると大規模GS化とセルフ化が短時間で達成できる・・?
おいおい!
じゃぁ今迄頑張って協力していた中小の出光ガソリンスタンドはどうなるんだ?
利益を前提に考えれば廃業して貰うことになるのは明白。
出光佐三の大家族的経営は変わらないの?
極く稀に出光のGSで給油した時。
ガソリンの品質が良いのか?すごく走りが良くなった印象があった。思い込みだろうと思っていた。
出光は一族経営をしてきたが、7代目社長の出光昭が外部資本を受け入れ上場を決断。
出光昭が経営から手を引くことで、出光家の取締役は一人もいなくなった。
出光興産歴代社長
初代:出光佐三(1940年~1966年)
2代:出光計助(1966年~1972年)
3代:石田正実(1972年~1977年)
4代:大和勝 (1977年~1981年)
5代:出光昭介(1981年~1993年)
6代:出光裕治(1993年~1998年)
7代:出光昭 (1998年~2002年)
8代:天坊昭彦(2002年~2009年)
9代:中野和久(2009年~2013年)
10代:月岡隆 (2013年~ )
ちなみに月岡隆さんは出光興産の生え抜き。
金融機関からの落下傘組ではない。
昭和シェル石油の亀岡剛さんも生え抜き。
こんな折に「日章丸事件」を知った。
出光佐三がイラン石油を直接買い付けた話。
当時のイランはイギリスの植民地支配から脱却して製油所をイランの国有にした。
このためイギリスはペルシャ湾に戦艦を送ってイランを海上封鎖した。
イランの石油を買い付けたイタリアタンカーがイギリス海軍に拿捕されたとか緊張状態だった。
こんな状況で1953年昭和28年3月。
出光佐三は石油精製施設の国有化を宣言したイランに向けて自社タンカー「日章丸」で石油の直接買い付けに行くことを決断。
日章丸は無事石油製品を積んで川崎港に帰ってきたが、石油精製施設を建設した英国アングロ・イラニアン社は積荷所有権を主張して東京地裁に提訴。
その後、提訴を取り下げ出光の勝訴となる。
海賊と呼ばれた男
「海賊と呼ばれた男」のブルーレイを買ってみた。
海賊と呼ばれた男
日章丸
色々書いたけどココ必聴!
ココを聴いた結果・・・
出光が合併に失敗したらば
フェラーリのGSを出光にします!
がんばれ!出光創業者一族!
2017年2月にJXと東燃の合併が発表された

「首位JXを追撃」は遠く彼方に霞んだ。
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1951年3月 日章丸、起工式。当時日本最大のタンカー
1952年6月15日 イタリアスイス共同出資ローズマリー号、イギリス海軍にアラビアで拿捕。
1952年9月8日 日米サンフランシスコ平和条約を締結し、日本独立
1952年9月16日 日章丸、進水式
1952年10月16日 イラン首相、イギリスとの外交関係破綻を宣言
1952年10月22日 イラン、イギリスとの国交断絶を通告
1952年11月5日 出光の出光計助専務と手島治雄、日本を出国
1952年11月6日 出光計助専務らパキスタンに到着、入国拒否を受けるも強引に入国
1952年11月8日 出光計助専務らパキスタンからイランに向けて出国
1952年11月9日 出光計助専務らイラン首相と会談し交渉を開始する
1952年11月19日 出光計助専務ら日本に帰国
1952年12月22日 日章丸、完成
1953年1月10日 日本外務省、出光のイランとの接触の情報入手
1953年1月 出光、チャータータンカーをキャンセルされる。日章丸で渡航を決断。
1953年2月6日 出光計助専務ら再度イランに向けて出発
1953年2月15日 イランと出光、石油貿易の正式調印
1953年3月16日 アメリカから日章丸が日本の川崎港に帰着
1953年3月18日 日章丸、川崎港から神戸港に荷卸しの為、移動(着翌日)
1953年3月23日 日章丸、目的地を偽装し神戸港を出港
1953年3月25日 日章丸、フィリピン北のバリンタン海峡を通過
1953年3月31日 日章丸、マラッカ海峡を通過
1953年4月5日 日章丸、コロンボ沖で暗号電文を受信し、無線封鎖
1953年4月7日 日章丸、オマーン湾に到達
1953年4月8日 日章丸、夜陰に隠れてホルムズ海峡を通過
1953年4月9日 日章丸、シャルル・アル・アラブ河口に到達
1953年4月10日 日章丸、アバダン港に入港。AFP、ロイターが報道
1953年4月10日 イギリス外務省が駐日大使エスラー・デニングに調査を命じる。
1953年4月11日 出光、記者会見を行う
1953年4月15日 日章丸、アバダン港を出港。船底部を僅かに擦りながら浅瀬を突破
1953年4月16日 日章丸、夜陰に紛れてホルムズ海峡を通過
1953年4月26日 日章丸、大きく迂回しスンダ海峡を通過しイギリス海軍駆逐艦三隻を回避
1953年4月26日 日章丸、夜陰に乗じてジャワ海の暗礁海域を通過しイギリス海軍を回避
1953年4月29日 日章丸、ガスパル海峡を通過
1953年4月30日 日章丸、南シナ海に到達し、無線封鎖を解除、出光と連絡を取る
1953年4月30日 イギリス、駐英大使松本俊一を呼び出し厳重抗議
1953年4月30日 日本政府外務省、何も知らず民間の取引に介入できない旨、イギリスに弁明
1953年4月~5月 自動車6団体がイラン石油輸入を歓迎する旨発表。
1953年5月4日 日章丸、フィリピン北のバシー海峡を通過
1953年5月7日 イギリス日章丸の日本領海到達を確認。仮処分申請を東京地裁に提出
1953年5月8日 出光、イギリス海軍が軍用機を飛ばしている情報を受け陽動情報を流す
1953年5月8日 日章丸、土佐沖にて新聞社に撮影され、陽動情報である事が露見
1953年5月9日 日章丸、川崎港に到着。同日、東京地裁にて第一回の口頭弁論開かれる
1953年5月9日 通産省はこの紛争に巻き込まれたくないとの見解を記者に述べる
1953年5月13日 日章丸、陸揚げを完了し、船の差し押さえを逃れる
1953年5月14日 日章丸、イランに向けて再度出港し、貿易を既成事実化する
1953年5月16日 東京地裁にて第二回口頭弁論開かれる
1953年5月27日 東京地裁、仮処分申請を却下。
1953年5月27日 日本外務省が政府は何ら関与しない旨を発表
1953年6月 イラン政府、出光との契約を見直し石油価格を大幅減額で提供する旨を発表
1953年6月7日 日章丸、アバダンに再到着。イラン政府高官、数千人民衆の出迎受ける。
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2017/7/3 19:04
出光1400億円増資へ
創業家持ち株比率低下
出光興産は3日、国内外で公募増資を実施し約1400億円を調達すると発表した。借り入れ返済や成長投資に使う計画だが、昭和シェル石油との合併に反対している出光創業家の保有比率は約26%に下がる見通しで、株主総会で合併を拒否できなくなる。出光の経営陣には合併の実現を急ぐ狙いもあるとみられ、創業家側は増資の差し止めを求める方針だ。
出光は発行済み株式の3割にあたる4800万株を新たに発行する。創業家代理人は同日、「創業家の議決権比率の希釈化を目的とすることは明らかで直ちに株式発行の差し止めの仮処分を申し立てる」とコメントを発表。
出光と昭シェルは2015年11月合併で基本合意したが16年6月の出光の株主総会で33.92%の株式を保有する創業家が企業文化の違いなどを理由に合併反対を表明した。
合併の特別決議を拒否できる3分の1超の議決権を持つ創業家の反対により合併協議は壁に突き当たる。
今年4月としていた合併期日は延期され先週の出光の株主総会でも創業家側は月岡隆社長らを選任する人事案に反対していた。
創業家代理人である鶴間洋平弁護士は総会後「合併反対の方針は変わらない」と強調。
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2015/7/30付
出光・昭シェル、16年めどに統合 JXと2強体制に
石油元売り国内2位の出光興産と同5位の昭和シェル石油は30日、経営統合することで基本合意したと正式発表した。まず出光が昭シェル親会社の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから33.3%の株を取得、2016年をめどに統合をめざす。両社の連結売上高は単純合計で約7兆6000億円と首位のJXホールディングス(JXHD)に迫り、海外展開を加速して成長を狙う。内需減少を背景に繰り返されてきた石油の業界再編は2強誕生で、最終段階に入る。
両社の社長が都内で記者会見して発表した。出光興産の月岡隆社長は「シナジー(相乗効果)を最大化させるのに昭シェルはベストパートナーだ」と強調。昭シェルの亀岡剛社長は「国内にしっかりした収益基盤を作り、世界に乗り出していく」と述べた
出光は英蘭シェルが保有する昭シェル株35%のうち、33.3%を1691億円で買い取ることで英蘭シェルと合意。出光は規制当局の審査をへて16年上半期の取得を目指す。統合時期は未定だが昭シェル株の取得に合わせて「できるだけ、すみやかな経営統合をめざす」(出光の月岡社長)。
統合形態は今後の協議で詰める。昭シェルの亀岡社長は「当社が子会社になることはない。対等な立場での統合をめざす」と説明。株式交換などを検討するとみられる。
昭シェル株売却で英蘭シェルは、日本での石油精製・販売事業から撤退し、化学や液化天然ガス(LNG)事業に集中する。昭シェル株の約15%を持つサウジアラビア国営石油のサウジアラムコは経営統合を支持。今後も株を保有し、原油供給などで協力を続ける。
合計で全国に6カ所ある製油所については、すでに能力削減に一定のめどをつけており、関東や中部など地域的な重複もないため、「統廃合は必要ない」(出光の月岡社長)。一体運営による生産・輸送などの効率化でコストを削減する。
両社のガソリンスタンドは国内で計約7000カ所ありそれぞれの特約店などが運営する。
出光の月岡社長は「当面、両ブランドは維持する」と述べた。
国内ガソリン販売シェアは計3割超と最大手のJX日鉱日石エネルギー(33%)とほぼ肩を並べる。
石油製品は国内市場が縮小しアジアなど海外市場の開拓が急務だ。
出光と昭シェルは統合で国内経営基盤を強化
生まれた投資余力を基に出光が進めているベトナムでの製油所事業等海外展開を加速する
出光・昭シェル経営統合は10年の新日本石油と新日鉱ホールディングス統合によるJXHD発足に続く大型再編だ。
かつて10社以上あった石油元売り大手は4社に集約され残る東燃ゼネラル石油やコスモ石油の動向が今後の焦点になる。
出光興産
1911年に北九州で出光佐三氏が創業した出光商会が前身。2015年3月期連結売上高は4兆6297億円で従業員数は8829人。
北海道苫小牧、千葉県市原、愛知県知多に製油所を持つ。海外への事業展開に積極的で、現在はベトナムで製油所建設を進めている。
昭和シェル石油
1985年に昭和石油とシェル石油が合併して発足した。
2014年12月期連結売上高2兆9979億円で、従業員数は6039人。
川崎市など国内3カ所に製油所を持つ。
株式35%を英蘭ロイヤルダッチシェルが、15%をサウジアラビアのサウジアラムコが保有する。
---日経新聞2015年7月30日---
出光と昭和シェル対等統合で目指すもの
国内市場の縮小にどう対応していくのか
ついに出光興産と昭和シェル石油が経営統合に向けて動き出した。出光は7月30日の取締役会で、昭和シェル株の35%を保有する欧州最大の石油メジャー、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから33.3%(議決権比率ベース)を取得することを決議。昭和シェルの筆頭株主に躍り出る見込みだ。
取得額は7月30日時点の株価から約15%プレミアムを乗せた1株当たり1350円で取得総額は1691億円。出光は全額借入金で賄う予定。なお公正取引委員会の独占禁止法の許認可を得るのに1年弱かかる見込みで、株式取得は2016年の上半期になる見通しだ。
その後株式交換かTOB株式公開買付けか、方法は明らかにしていないがすみやかに両社の経営統合へ動き出す基本方針を定めている。
下流の精製販売は収益性が低い
再編は必然だった。
低燃費車普及や人口減少でガソリンをはじめとする国内の燃料油需要は1999年をピークに右肩下がりが続く。
経産省は石油元売り会社の共倒れを防ぐため各社製油所の精製能力削減を促すエネルギー供給構造高度化法や産業競争力強化法第50条を適用し業界再編へ圧力をかけていた。
折から収益性の低い下流の精製販売事業からの撤退方針を明らかにしていたシェルも保有する昭和シェル株の売却へ前向きだった。
昭和シェルとしてはシェルから自社株を買って独立する選択肢もあったものの海外への事業展開などで「時間がかかる」(昭和シェルの亀岡剛CEO)。
こうした状況の中、2014年来から水面下で、出光の月岡隆社長と昭シェルの香藤繁常前CEOがトップ会談を幾度も重ねてきた。
出光と昭シェルとしては「製油所の重なりがなく物流コストの削減などが見込めるベストパートナー」(出光の月岡社長)。
ところが2014年12月に2社の統合交渉が報道で明るみに出るとピタリと再編の動きは影を潜めてしまう。
「対等の精神で統合する」――
7月30日に開かれた記者会見で両社首脳が何度も強調したのは出光の昭和シェルに対する買収ではなく”対等な経営統合”であることだった。
経営統合が遅れた背景にはガソリンスタンド(SS)を営む販売店の大きな反発があったとみられる。特に昭シェル側の一部特約店が「出光に飲み込まれるのでは」と懸念していた。今年3月、香藤前CEOからバトンタッチをした昭シェルの亀岡CEOは、その後も出光と協議を継続。「月岡社長と2人で酒を酌み交わしながらビジョンを語ったこともある」(昭和シェルの亀岡CEO)。
両社は統合後も、当面の間、「(SSの)両ブランドを維持していく」うえに、「製油所の統廃合もしない」ことを明言。株式取得後、一時的に昭シェルは出光の関連会社になるが、「株式取得後はすみやかに経営統合に動き出す。親子関係になることは全く考えていない」(出光の月岡社長)と言い切る。
---東洋経済2015年7月31日---
最近になって、出光興産創業者の出光佐三一族が合併に反対している事を知りました。
出光興産は2015年7月30日の取締役会で、昭和シェルの33.24%を保有する欧州最大石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルから全株を取得すると決議しました。
取得価格はその時点の株価に約15%のプレミアムを乗せた1株=1350円で、取得総額は1691億円。また、株式取得後は速やかに経営統合する方針も確認されました。ただし許認可を得るのに1年程度かかるため正式取得もその後になるとのことでした。
経営統合の方法は「合併」で合意していたようですが、出光昭介・名誉会長をはじめとする創業家に十分な説明をしていなかったようで、あとで大問題となります。
経営統合が「買収」ならば出光興産が全株を買い取るため、5000億円以上の資金が必要となりますが、出光興産の発行済み株数は増減せず創業家の持ち株比率(後述)もそのままです。
ところが「合併」となると、昭和シェル株主に出光興産株が割り当てられます。ロイヤル・ダッチ・シェルには1691億円を支払うとしても、それ以上の資金は不要。その代わりに出光興産の発行済み株数は大幅に増え、創業家の持ち株比率も減少してしまいます。
出光興産の経営陣は、単純に「資金負担が少なくて済む方で」と考えたはずですが、大株主である創業家にはおいそれと承諾できるものではありません。
さらに昭和シェルにはサウジ・アラムコという第2の大株主(サウジアラビアの国営石油会社で14.96%保有)がいます。彼らもまた日本の石油元売りビジネスに見切りをつけて撤退するため、ここで出光興産株を受け取る「合併」に合意するはずがありません。
6月28日に出光興産の定時株主総会。合併承認を求める臨時株主総会は2016年中には改めて開催される予定で、このときは現経営陣の取締役選任と一部監査役の選任を承認するだけのものでした。
ところが、その席で創業家の代理人である浜田卓二郎弁護士(元衆議院議員)が、合併と現経営陣の取締役選任に反対を表明しました。また、創業家は出光興産の33.92%を保有しているとも表明しました。合併承認は出席者の3分の2以上の賛成が必要なので、これが本当なら「合併」そのものが承認されません。
さらに8月3日になって浜田弁護士は、次なる一手を放ちます。創業家の出光昭介・名誉会長が昭和シェル株式を40万株(全体の0.1%)取得したと発表したのです。なぜ0.1%なのか!? これには理由がありました。
浜田弁護士によると、出光興産はロイヤル・ダッチ・シェルが保有する昭和シェル株の33.24%を「相対で」取得することになっていますが、出光昭介氏が0.1%を取得したため、出光興産が合意通りに33.24%を取得すると合計33.34%の昭和シェル株が出光興産“側”に渡ることになります。
証券取引法では、有価証券報告書提出会社の3分の1(33.33%)以上を取得するときはTOB(株式公開買付け)で全株主に公平な売却機会を与えなければならない決まりになっています。ゆえに、出光興産は昭和シェル株を相対で取得することはできない、というのが浜田弁護士の主張です。
ただ、浜田弁護士の主張には、かなりの無理があります。そもそも出光昭介氏の所有する昭和シェル株(0.1%)を、出光興産が取得する予定の33.24%と合算して出光興産“側”とすることは適当ではありません。
確かに出光昭介氏は出光興産の名誉会長ですが、この件では明らかに対立しており「利害関係人」とは言えないからです。仮に「利害関係人」であるとするなら、出光昭介氏が昭和シェル株を取得した事実にはインサイダー取引の疑いが出てきます。
それに出光興産の経営陣にすれば、ロイヤル・ダッチ・シェルから取得する昭和シェル株を少し減らして33.32%までにすれば済んでしまいます。事実、経営陣はその方向で検討しているとも報道されています。
しかし、出光興産の経営陣に昭和シェルとの経営統合を成し遂げる強い意志があるなら、堂々と「出光昭介氏が利害関係人ではない」との判断を裁判所に求めるべきでしょう。当局はすべて「現時点で会社の経営陣に座っている方の味方」であるため、十分に勝てる主張だと思います。
ただ、今回の対立は明らかに出光興産のサラリーマン経営陣が安直に「経営統合を仕上げてしまおう」としたことが招いた事態であり、彼らにそこまでの強い意志があるかはかなり疑問です。事前に創業者一族に話を通していなかったことといい、サウジ・アラムコに根回しをしていなかったことといい、詰めが甘すぎるのです。
---闇株新聞2016年8月12日--