
CDトランスポート DP-S1とD/Aコンバーター DA-S1 は1993年発売

DP-S1はCD盤を回転させてデジタル符号を読み取るユニット、DA-S1はデジタル符号をアナログ信号に変換するユニット。
2つのユニットに分けたのは他社製DACユニット所有者がCDトランスポートを使えるように、他社製CDトランスポート所有者がDACユニットを使えるようにするためです。
1990年初期、CDトランスポートのデザイン方向性が決まらないのでデザイン部の藤本昇さんと岩国のサウンドファミリーと言う販売店を訪問した。頑固な店主とディスカッションした中でデンオンのフォノモーターをアイデンティティにしたけど1991年のオーディオフェア展示用にこんなデザインのモックアップが来た。
ヘンテコリンなので社内外で非難轟々だった。

デザインコンセプトはそのままに、DP80の様な方向性に練りに練ったらこんな風になった。
1994年グッドデザイン賞受賞
1990年代はCDメカのコストダウンのためにギアドライブ用ピックアップになっていたが、DP-S1で採用したピックアップは「無接触で微小送り分解能に優れたリニアトラッキング式」を採用した。リニアトラッキング式はレンズがCD盤のピットと垂直関係にあるが、外部からの振動の影響が大きい問題がある。
これは設置場所の振動や音響フィードバックによる読み取りエラーが生じる。読み取りエラーに強くするためにスレッドアクチュエーターのサーボループゲインを上げなければならない。
白河工場の後木慎吾君からピックアップにはレーザーディスク用を使うことを提案されたけれども後々の部品供給面で問題になると思いティアックやワディア等も採用していた当時一般的なソニー製KSS 151Aを採用した。

このためDPーS1専用の砂型鋳物アルミ製の超高精度リニアトラッキングメカを設計

シャーシへの装着構造を工夫して対策した

大径スタビライザの慣性モーメントでスピンドルサーボが穏やかな特性としてサーボを極少化する事で高音質を実現する」ということでした。

DPーS1が発売された1993年から28年も経った今日でも、CDトランスポートの高音質技術を理解せず、「いかにCDを正確に回転させるか。そして正確に信号を取り出すか。」と言う抽出データの正確性が高音質の要であると誤解しているデノン設計部の人も居る。
「正確な信号といい音は、実はイコールではありません。」と言いながらCDトランスポートのジッターを理解しておらず、「データを正確に拾い上げることの先にある音楽的な再生」と言っている。
CDトランスポートはデジタル機器なので「0」と「1」を正確に読み取ればよいと思ってる。
まさか「サーボ電流にCDソフトの音楽成分が重畳する」とは思いもしていない人が殆どだと思います。
「サウンドステージをきちんと再現すること」を徹底的に追求したのがDP-S1でしたと言うのが正にサーボ電流特性向上による効果です。
この当時輸入オーディオ商社さんと交流してました。ワディアやFMアコースティックを扱うアクシスやウィルソンオーディオやアバロンやジェフローランドを扱う大場商事。大場商事の方々はDP-S1の超低域の強大なエネルギーがお好みでした。「CDトランスポート単体で使ってみたら凄いんですけど何故ですか?」とご質問頂きましたが穏やかなサーボ特性に関する解説はしませんでした。
その後、デンオン 三鷹工場でDP-80を設計した荒木さんがティアックに移籍して色々やってました。
ティアックのPゼロというソニーのKSS-151Aを使ったCDトランスポートを発売した時に、サーボ電流の特性を調整して音質を可変する機能を装備してたので感心しました。
データをできるだけ正確に拾い上げるためには、いかに外乱(振動、その他)を遮断するか、いかにストレスなく読み取りを可能にするかが重要です、とか言っているデノンの設計部の人達は居ますけど・・
DP-S1では砂型アルミ鋳物を使った4重構造のメカニズムを構成し、さらに大型のスタビライザー(下写真中央の金色の円盤状のもの)を採用しました。

CDを前から入れる通常のフロントローディングではなく上からセットするトップローディングとしCDの上からディスクを覆ってしまう大口径のスタビライザーを被せます。しかし密着させるとスタビライザーに張り付いてくる。この問題を回避するために小型ピンをスプリングで押す機構を追加した。

スタビライザーは重量があるため、回転系の重心が上がります。スピンドルシャフトが短いとすり漕ぎ運動が生じて軸受けが痛みます。
このためデンオン のターンテーブルは全て長尺になっていました。

コレは往年のDP-80のモーター。

長尺スピンドルシャフトで擦りこぎ運動による軸受損傷を防止している。
ディスク一体化した回転系の負荷は非常に大きくなるためにスピンドルシャフトの軸受にはルビーを用いた。
DP-S1 DA-S1発売時にワディアやティアック、ソニー、パイオニア等が採用している米国規格のコア径62.5μmのST端子ファイバーケーブル接続が前提のAT&T社製光モジュールに対応しています。

日本の神奈川県にあるとあるメーカーが光ファイバーは細い50μmの方が音が良いと言い出した。光端子はAT&Tの50Mbpsのモジュールではなく、ヒューレットパッカードの150Mbpsの超高速光モジュールを採用した!とカタログに記載して自慢していた。
しかしhp製のHFBR 2416と言うのはAT&Tの様な駆動回路一体型ではなく、コンパレータは別に基板に載っている。このhp製フォトカプラーが150M bpsだと言うならばBNC端子は1G bpsに対応しているという表現が出来る。

150Mbpsとの事だったけどコンパレータは30MbpsのICが載って居たのは不思議だった。
光端子を駆動する回路アプリケーションは150Mbpsの例もある
新日本無線製の高速コンパレーターはTTL-ICで構成されている。
TTLで150メガで送信できるんでしたっけ?
>ST規格のフォトカプラは150Mbpsまで使えるってだけだろ。
アキュフェーズが使っているST端子はhp社のHFBRシリーズ。
これはWADIAやTEACが使っている駆動回路内蔵ST端子ではない。
hpのHFBRシリーズは、駆動回路を外付けで組まなければいけない。
hpのデータシートを見ると、TTLで組んだ駆動回路は20Mbpsと書いてある。
150Mbps対応回路も掲載されているけれども、C-MOSやTTLではない。
そもそも発光波長や光パワーレベルが異なるので、この神奈川県のメーカー製CDトランスポートをWADIA Proに繋ぐと光量不足でロックしません
GenLock VCXO バリメガ切り替えスイッチ

そもそも何故デジタルインターフェースが3種類装備されているのか?理解している人は少ないです。
ロックインレンジが広く多少のクロック偏差があっても繋がる回路とか、保持幅が狭いPLLなので外れやすい回路とかがある。
ジッターが少なく外れないデジタルインターフェースというのは何なのか?
CDメカの信号処理LSIのクロックは16.9344MHz

このクロックを高速光ファイバーケーブルでそのまま伝送するST GenLockと言う光ファイバーケーブルを2本使う方式を考案した。

RFアンプ内蔵ピックアップしか供給されなくなったのでギアドライブになるけれども、それでは商品性が低下するのでピックアップは固定してメカを動かす事にしたなんとか丸さんが居た。その人のクロック同期システムは東芝のトスリンク二本でデータとクロックを送信する。
しかしこのクロックは16.9344MHzではなく44.1kHz。クロック周波数はPLLで復調するワードシンクなのでクロックの純度は所詮PLLで復調するのでクロックのC/N比が悪化する。
DPーS1とDAーS1を使った場合には、AT&TのODL50と言う高速光伝送モジュールで16.9344MHzを送る。

当初、STツインリンクと言っていたらばなんとか丸さんからクレームが来た。ツインリンクは商標登録してるとの事なので、STGENLOCKと言う名称にしました。