消音工学各論　～レゾネータ設計手順～

熱心に私の投稿を閲覧いただいた方から質問がありましたので
レゾネータを使って低音を消す手法をご紹介いたします。

マフラー設計で最も難しいのは低音を消すことだと思っています。
高音を出そうとすると、消音機構は無いほうがよいのですが
そうすると実用域、低回転域での低音がうるさくなる。

そこで低音のみを消音する手段が、レゾネータ（ヘルムホルツ共鳴器）です。

ヘルムホルツ共鳴器

レゾネータというのはこういう構造をしておりまして

行き止まりの共鳴室です。
（共鳴室の形状は球形でなくていいです）

レゾネータの首の部分に音（空気の振動）が入力
↓
首の部分の空気が共鳴室（図の球形の部分）の空気を圧縮する方向に変位する
↓
あるところまで圧縮されると、今度は共鳴室の空気の反力で、首の部分の空気は反対方向に変位する
↓
これを繰り返して、首の部分の空気が振動して、入力してきた音を消す

この機構によって消音できる周波数は以下の通りに表されます。


ではぱらり自動車的レゾネータ設計手法

①消音したい周波数帯（回転数域）を決める

周波数は・・・回転数÷60÷2×（気筒数）で求めます。
たとえば6気筒1900rpm周辺でうるさいと感じたら1900÷20で95Hz。

②レゾネータの形状を決める

上の数式の値が①で決めた周波数になるように、首の部分の開口面積（S)、等価ネック長（L)、内容積（V）を決める。

ここで、とにかく低音を消そうとすると、
１．Sを小さくする（首の部分のパイプ径を小さくする）
２．Lを大きくする（首を長くする）
３．Vを大きくする（共鳴室を大きくする）
ことになるのですが、
１．をやると、首の部分の空気の質量が減ってしまい、消音エネルギーが小さくなってしまいます。
一応消音できますが、体感できるほどの効果が無いので、スペースの許す限り２，３をやってしまいましょう。


ちなみに1900回転(95HZ)周辺を消したかったぱらり管の寸法は・・・
首の部分のパイプ径はちょっと大きめの32パイ→S＝0.0008m^2
首の長さL=19センチ
共鳴室は直径76.3パイ高さ30センチの円柱形状→V=0.00137m^3

これを上に出てくる数式に代入すると
消音したい周波数がちょうど95Hzくらいになります。

ちなみにこれはけっこうデカイです。

ぱらり管は2200回転(110Hz)消音用のレゾネータもあるので、
フロア下のスペースをほぼ使い切っております。

AUDI＿S5さん、わかりにくいかもしれませんが、
これを参考にレゾネータの寸法を計算してみてください。

コツは
・なるべく首を長く
・共鳴室の内容積を大きく
です！

ちなみに、私は本職ではないのでもっと良い方法があるかもしれません・・・