昨年の秋に陥没事故が発生した
シールドトンネル工事
外環道は、大泉JCT~中央JCT(仮称)~東名JCT(仮称)を結ぶ約16.2kmの整備が進められていました。
【(仮称) 中央JCT】
完成すると、関越自動車道(関越道 , E17)~中央自動車道(中央道 , E20)~東名高速道路(東名高速 , E1)がつながりことになります。
正に夢の懸け橋のような道路です。(トンネルですが... )
【(仮称) 東名JCT】
関越道から東名高速まで、現在はトンネルの東側、都心寄りの環状八号線を利用して約60分かかっていますが、外環道を利用すると約12分で移動できるようになるということです。
計画当初は2020年東京オリンピック・パラリンピックまでの開通を予定していましたが、途中で困難であるとし、開通時期は未定になっていました。
自分は、スケジュール的に最初から無理だろうと思っていました。
シールドマシンと呼ばれる円筒型の掘削機で、片側3車線の道路となる外径15.8mのトンネルを構築しています。
トンネルの大部分は、約40mよりも深い大深度地下を通ります。
大泉JCTから南へ向かう大泉南工事と、東名JCTから北へ向かう東名北工事を、それぞれ2機、計4機のシールドマシンで掘り進めていました。他に3機のシールドマシンが使用されており、合計7機で工事が行われています。
それぞれ2機のシールドマシンは、大泉JCTの大泉たて坑から約7.0km、東名JCTの東名たて坑から約9.2kmの区間を掘削して、井の頭通り付近の地中で接続する予定であるとされていました。
事故に繋がった東名北工事の南行トンネルのシールドマシンは『みどりんぐ』、隣の北行トンネルのシールドマシンは『がるるん』という愛称で呼ばれています。
{ちなみに大泉南工事の南行トンネルのシールドマシンは『グリルド』(『みどりんぐ』と対面)、北行トンネルのシールドマシンは「カラッキィー』(『がるるん』と対面)}
しかし、なぜこのような愛称に... 公募だったでしょうか...
住宅地の真下、地下40m超の大深度に掘ったシールドトンネル工事の影響で、昨年秋に地表が陥没する事故が起きました。
この、いわゆる大深度を潜るトンネル部は大深度地下法により、土地所有者の権利が及びません。ただしJCT近辺などのそれより浅い部分や、地上に出る部分は用地や区分地上権(地下を通す権利)の取得が必要となります。
外環道は3車線×上下線の2。その分シールドトンネルの径が大きく、工事は難しいことが予想されていました。
5年前、福岡市の地下鉄工事で起きた陥没事故のトンネルは深さ約22m。
道路下だったので、民有地への被害は大きくはありませんでした、それでも凄まじい事故でした。
2020年
10月18日 調布市東つつじが丘のシールドトンネル直上にて、地表面の陥没を確認(10月19日埋土)
11月 3日 陥没箇所の40m北で空洞を発見(11月24日充填)
11月21日 陥没箇所の南30mにて空洞を発見(12月 3日充填)
2021年
1月14日 陥没箇所から北120mにて空洞を発見( 1月22日充填)
空洞はすでに埋めたものの、ボーリング調査等の結果、陥没個所の南北約150m(幅16m)のトンネル直上で、地盤の緩みが確認されたとのこと。原因は、シールドマシンによる土砂の取り込み過ぎと推定されています。
この付近は、関東ローム層(5〜10m)の下は厚い砂層で、地質が柔らかいため、シールドトンネル掘削の音や振動が地上に伝わりやすく、かなり以前から住民による苦情が出ていたそうです。
事故がトンネル内の被害なら、工期が遅れるだけで、問題は小さかったと考えられますが、
地上に影響が出たとなると、これは大事です。
地上の住民にすれば、勝手に自分たちの土地の地下にトンネルを掘り、それで地盤が緩んだわけですから。
今後、地盤沈下が起きたり、大地震で液状化する可能性もありますから、今、現在、問題にすべきは空洞はなく、前後150mに及ぶ区間の地盤の緩みということになるはずです。
現在『みどりんぐ』は、この場所の地下40mで停止しているとのこと。
他の3台も稼働していません。
陥没を戻せるものでしょうか。
住民側は元に戻して欲しいと要求し、事業者であるNEXCO東日本はそれを約束して、原状を回復するまで工事を全面的にストップし、再開しないことになりました。
今は、この状態が続いています。
NEXCO側は原状回復を約束していますが、対象全戸が納得するとは思えません。
当事者だったら、原状回復工事をNEXCO側が行ったとしても一抹の不安は拭えないのではないでしょうか。
NEXCO側は、あらゆる損害(家賃減収や不動産価値の低下等。希望すれば土地家屋の買い取りも約束)を補償するとしていますが、一度緩んだ地盤を完全に元に戻すのは困難でしょう。
原状回復工事のため、被害のあった区域の約40軒に対しては、仮移転を依頼しています。
引越してください、というわけですが、あくまでお願いですから、もちろん強制力はありません。
移転してもらった上で本格的に調査し、工事を行う手順なのだそうですが、そもそも原状回復という言葉に疑問が生じますよね。
どこまで工事すれば納得してもらえるかは住民次第となるでしょう。
一人でも納得しない地権者がいれば、工事は永遠に停止したままになるのではないでしょうか。
現場では工事関係者が24時間巡回し、地表面の監視を続けているそうです。
家屋を建てたままできる工事は、ボーリング口からの薬液(凝固剤)の注入程度になるのではないでしょうか。
それ以上は家屋を取り壊して、重機を入れる等の大工事となりますが、それでも地下40mまで完全に元に戻すのは不可能に近いでしょう。
NEXCO東日本によれば、東つつじヶ丘地区の原状回復工事を2年で終了させ、再びシールドマシンを稼働させる計画だといいます。
しかし、わずか2年で対象区域の住民の同意を得て、工事を完了させるとなると到底不可能としか思えませんね。
関越道と中央道だけでも結べないかといった声もありますが、工事は全面的にストップしているわけですから、今後の見通しは不透明です。
大深度シールドトンネル工事の信頼性が崩壊した以上、部分開通の可能性も限りなく低いと言わざるを得ません。
迂回案などを立案、実施するとなれば、また何十年も待たないとならないでしょう。
C3は工事再開が不可能なのではないでしょうか...
Posted at 2021/07/16 08:30:31 | |
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REPORT | クルマ